白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️

高野マキ

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チェリーブロッサム

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ミチコさんに選んでもらったウエディングドレス。


両肩が大きく開き、わずかなレースの縁どりで胸のラインを飾っている。黒いリボンが胸の下で結ばれ、蝶結びの端のリボンが長くドレスの裾まで伸びている。シンプルなデザインと純白の絹の滑らかな光沢、長い裾はレースとビーズの小花でびっしりと飾られていた。サイズ調整が出来上がったと、連絡が入った。


母親のいない私を、鎌倉のお母さんとミチコさんが まるで実の母と姉のように親身に世話をしてくれた。小さな教会の緑深い美しいガーデンで、出席者それぞれが楽しく談笑し、親睦をはかりながら厳かな気持ちで式が始まるのを待っている。   ブライズメイドはサヤカがかって出てくれた。



髪は長いまま下ろし、サヤカが、アイロンで必死にウエーブを造る。

手作りウエディング…。


先生は、  “ ウエディングプランナーに全てまかせればいい  ”と、初めから“ お金 ”にモノを言わせたゴージャスな式を揚げることが、手間も省けて私が喜ぶと思っていた。

「もぉ―、ミチルっ  パーマ軽くかけとけば良かったのにぃ―」

サヤカが文句を言う。

先生の提案は、お母さんとミチコさんが反対した。

「私達の楽しみを取り上げる気か!」と…。

サヤカだったら、先生の提案を大賛成したかもしれない。  それでも、一生懸命、私の強情な髪を緩やかに波打ち艶やかに輝くウエービィなスタイルに仕上げてくれた。

( 女子力高いんだから! 貴女には やっぱりかなわない…)


私の顔色は、相変わらず悪い。 目の下の青いクマ…それを取り囲むようにソバカスが点在している…。

 ( ほんと…ブス)

瞼も厚ぼったい奥二重…。

(辛うじて睫毛は長くてよかった)

お母さんは、私の肌色のカラーコントロールに苦労している。厚塗りにならないように…用心しながらファンデーションを伸ばしている。


「そばかす  消えますかね?」

私は鏡に映るソバカスだけに注意を向けていた。


「あらっミチルちゃん…ヒカルは、貴方のそばかすが、かわいいって、いつも惚気てましたよ」


「ええっやだ~ ぅうそ―ぉっ…なんでですかぁ~!」


( はっ、恥ずかしい !)



「さあー、ミチルちゃん  立ってみてっ、ドレスの具合を見せて頂戴…」

控室の姿見に別人が映し出された。

〝……………ゴクッ 〟

( 誰? )

鏡に映し出された私は、お母さんのお化粧と、ミチコさんが選んでくれたウエディングドレス、サヤカの頑張りで全く別人に変身していた。



「ミッ 、ミチルぅ~ 綺麗すぎ…ぃうっ…」

サヤカの瞳から大粒の涙が、こぼれ落ち嗚咽が漏れる…。


「サヤカァ…泣かないでよぉ!」


「本当に…綺麗ですよ、ミチルさん…! お兄さまったら どんな顔なさるかしらっ…ウフフ」

〝ドック ドックドック………〟

心臓が高鳴る。脚が小刻みに奮え…歩けるか、不安になってきた。


(どうしよう…サヤカぁぁ)

「サッ、サヤカぁ 私ぃ…歩けないかも」


サヤカは涙を拭き、その跡をフアンデで手早く直すと―!

「ミチルっ、大丈夫だよっ、私の背中をみてついて来てっ」

キリっと、態度を一変させた。


「うっ、うん、わかった!」

(サヤカ…あなたはいつでも私を助けてくれる、ありがとう)

胸がキュンと締め付けられる。ウルウルしてきた…

「あ…!!~ ミチルちゃん、お願いだからっ泣くのは、ヒカルに会ってからにして! お化粧が、崩れちゃいますよっ」


「…はっ、はい」


お母さんにお願いされる。


「さあ、ミチコちゃん、私達は御席に戻りましょうか」

お母さんと、ミチコさんが控室を出ていった…。


(あっ…ヤダー  行かないでぇぇ)


〝ドックドックドックドックドックドック 〟

……………………



控室の出口で、お父さんが待っていた。


「うわっ、ミチルっ!馬子にも衣装って お前の事だったんだぁっ」


(…ったくぅこの人に、感動の二文字はないのかっ)


それでも、私はきちんと挨拶しようと試みた…。

「ミチル、今日までありがとう―なっ、 母さんが、死んでからタダシの世話と、父さんの世話で悪かったなぁ~  まあーこれからは、忙しいヒカル君の世話だが…、元々な、世話好きなお前の事だからよ、世界中何処へ行こうが、父さんは心配してないぞっ、頑張れ   なっ」



(……はぁ…⁉︎ )


父は、一方的に語り終えると、満足げに私の腕を取り サヤカを差し置いて教会へのバージンロードを歩み出そうとした。


「ちっ、ちょっと‼︎  おっ お父さんっ」

サヤカが慌てて新婦の父親を制止した。

「お父さんっ!先導はプライズメイドの私ですからっ!」

「あっ、そうか~  いやぁ申し訳ない」

…………

私は、お父さんに聞きたい事があった。


「お父さん、待って」


「なっ、何だ…よ  長い間お世話とか、何とかの挨拶は止してくれ」


父親の顔が急に赤くなり、小刻みに震えていた。  サヤカが、緊張のあまりゴクリと溜飲する。


「ちがうよ…、この結婚  さ  絶対許して貰えないと思ってた」

先生が、お父さんを説得した理由が知りたい。



「確かに反対した…理由はわかるな?」


「うん…、私がいつ死ぬかわからない病気だから--」



「そうだ… ヒカル君のような世界で活躍する男の嫁が 病気では話しにならんっ  からな…」


「じゃ 何故、結婚を許したの?」


「それはだ…ヒカル君が、  “ ミチルが居ないなら医者は続けられない”
と、大袈裟な事を言うんだ   んな、言葉…信用できるかっ!出来るわけないっと、思って条件を一つ出した」


「…」
  


「ミチルに子供は産めない、それを一生堪えられるか…?  ミチルは必ず、欲しがるぞ…絶対拒否してくれるか?…と、問い正した 」


「お父さんっ  そんな ヒドイっ!!」

父親を睨む。


「ハハハ…ヒカル君は、平然と条件を飲んだんだ   ミチルさえ居れば何も要らないと…」


「……」


「お前ってやつは、 死んだ母さんと似ているからなっ、自分の命を引き換えにしてでも、ヒカル君との子供を欲しがるだろ?」


この人は、私の事を 何もかもお見通し。

「俺のように、母さんとタダシの命のどちらか一つの選択を、ヒカル君にさせたくは無いからな…」


「ああーダメダメ! だめだよ  ミチル泣きは、だめっ! お化粧はげちゃうから、  とにかく、ねっ、ねっ、 結婚できるんだから…それで良か
ったのっ」


そして、サヤカは再度、ブライズメイドが先頭だと、父親に強く宣言した。



バージンロードを進み出す。


      ………



音楽も司会もない  あるのは、木漏れ日と小鳥の囀り――。小さな教会の入口まで 赤い毛氈が引かれたバージンロード。私は、父親の腕に手を添えて、  前を行くサヤカの華奢な背中を見て進む。 桜色の薄いオーガンジーを幾重にも重ねたキュートなワンピース…。  私がサヤカに、プレゼントした、ブライズメイドのドレス。   サヤカの華奢で柔らかいシルエットにピッタリだった。

(サヤカ…まるで “天使”だよ)

手にはブーケを携えて、愛おしいあの人の元へ、導いてくれる。 短い、バージンロードが永久に遠くかのように 目の前の景色がこま送りでゆっくりと動いてゆく。   花々で飾られた教会の十字架の前に、あの人が佇み … じっと私を見つめ、待ってくれている。

(待ってて…ね  あなた )

私の視線の行き先。ブラックモーニングにアスコットタイ。  絹のシャツの光沢が、太陽の光を反射してあの人の精悍な顔を浮き上がらせ…そこだけが、特別な輝きで縁取られて見える。


神様の祝福

その光の輪の中に 私も、今行きます。


先生が、目を細め柔らかな笑顔で私を待っていてくれる。


ドレスの裾を持ち、膝を屈めて正面の神父さんに会釈しサヤカからブ―ケを受け取った。緊張し足がガクガク震えている。  父親の手から先生の差し出された手へ…


父の手を離すと、一瞬ふわりと宙に舞ったような錯覚。   受け取った先生の手で、現実に引き戻された。  先生は、私を見て囁いた。


   
  「きれいだ…」


このまま、先生に抱きしめられたい。



(抱きしめて…)



神父の口から、誓いの言葉が語られる。


『友人 、知人、 私達は、今日此処に  黒崎ヒカル、綾野ミチルの婚姻を祝う為に集いました。  今日、私達が彼らと共に分かち合う、幸せが常に彼らと共にありますように…………。

汝、黒崎ヒカル、

夫として、病める時も、健やかなる時も悲しき時も、喜びの時も、貧しき時も、富める時も、   妻、綾野ミチルを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、死が二人を分かつまで共に歩み、固く節操を守り、真心を尽くす事を誓いますか…』

…………

微かな微笑みと、濡れた黒い瞳が、私を見つめる。  ぽってりとした色
っぽい唇から、澄んだ声が緑の静寂の中に響いた。

 『誓います』


『汝綾野ミチル

妻として、病める時も、健やかなる時も悲しき時も、喜びの時も、貧しき時も、富める時も、   夫、黒崎ヒカルを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、死が二人を分かつまで共に歩み、固く節操を守り、真心を尽くすことを、誓いますか』




 『誓います』


もう…涙で神父様の顔も見えない…。


神父から、指輪が手渡された。


お互いの薬指へ、指輪の交換を行い  立てた誓いを守る事を証明する。


ティアラで留めた顔のベールを、先生がフワッと摘み上げる。 私は涙でぐちゃぐちゃな顔を先生に見せる。   先生は屈み、私は顔を上げと、爪先立って背伸びをした。   瞼を閉じて、誓いのキスを受ける。


唇が触れる寸前

『ひでぇ泣き面…』


  〝…  グッ 〟

先生の熱い唇は、私の唇を強く塞ぎ…しっとり包み込む。 柔らかな感触と激しい舌づかい、強く吸い、弱く啄む。  わずかな隙間から唾液と舌が行き来する…………

〝  あはぁ― 〟

あまりに、エロティックなキスに神父が軽く咳ばらいをした。  先生の唇が、名残惜しげに離れる。  時を忘れ、お互いに見つめ合う……。


『父と子と聖霊の御名において、新郎新婦の婚姻を ここに宣言する』



〝 ワァー――――パチパチパチパチ〟

〝 パン  パンパン パパ~~ン 〟



花びらとお米が撒かれ、クラッカーが弾ける。   私はブーケを
高く放り投げた。ブーケは、大きな放物線を描きながら必要とする人の手元へ……。





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