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終章
タクヤの家族は、タクヤがベルリンのギムナジウムを選択してから数年後に 父親の転勤でドバイへ行く事になった。ドイツに残りギムナジウムを卒業するまで寮に入るか、ドバイの日本人学校に行くか―――の選択。
タクヤ自身が
「アメリカのパパの所に行く」
と宣言した。
先生は困惑し、迷惑だと元妻に伝えたが、当のタクヤは全く意に介さずそのままアメリカに押しかけ、今はハイスクールに通っている。
『タクヤ―お帰りぃ――!』
ユキはタクヤが大好きだった。
『ただいまぁ~ユキちゃんっ、ハッピーバースデー!アンド、メリークリスマス』
タクヤはユキのぷっくりした頬にキスをする。しっかりと、ユキを抱きしめながら、
『ユキちゃん パパは?』
『多分…自分の部屋、皆が揃ったら、呼べって言ってた』
『ふん―わかった』
タクヤはそろりとユキを床に立たせ、バックパックを背負ったまま、2階の先生の書斎へ、階段を一気に駆け上がった。
『ダディ―!ダディっ、入るよっ!』
「なんだっ 騒がしいぞ!タクヤ 」
先生は学生の論文に目を通していた。
『 ダディ…これっ見てよ! 』
タクヤが先生に手渡した手紙には…
《この度 貴殿はハー〇〇〇の飛び級試験に合格した事を伝え 本年度9月より 本校〇〇〇〇校に入学を許可いたします。--------
---- 年 月 日----------------》
「………つぅ!」
先生は額に人差し指を突き立て、 クッ クッ クッと、笑いだした。
タクヤは、黒崎先生と血の繋がりが無い事を母親から知らされた時も自分からアメリカの先生の所に行き、これから どうしたらいいか必死の思いで尋ねた。
「お前の思うままにしろっ、お前の父ちゃんも、母ちゃんも-俺だって お前がしたい事を見つければ応援していく…悩む事はない、好きに生きろ…」
そして…好きに生きるという事は、全て自分で責任を取る事だと…先生から教えられた。ベルリンからドバイへ転勤することを両親から伝えられた時…13歳のギムナジウム4年生のタクヤは、迷わずアメリカへ行く事を選択した。 先生に煩わしいから来るなと言われながらしつこく食い下がったタクヤに…
「来るなら、それなりの結果を出して…お前の母ちゃんと父ちゃんにアメリカへ行かせて良かったと言わせろ! それから…妹の面倒は俺に代わってみろよっ…後から後悔しても遅いからなっ」
と約束させられていた。
そして、タクヤの目の前の先生はゲラゲラと笑い声を上げて、タクヤの頭をポンポンと叩いた。
「ダディ…?」
先生の目にうっすらと光るものがあるのを、タクヤは見逃さなかった。
タクヤの出生について…
彼に全く関係なく、大人のエゴイズムから愛憎の果てに誕生したタクヤ…他人から見れば、離婚したとはいえ母親の再婚相手は世界的な貿易会社のエリート商社マン。かたや離婚した元夫。
タクヤの戸籍上の実父はアメリカS大学の医学部教授…何不自由ない境遇に見えるが…彼がドイツで先の進路を ギムナジウムか、マイスターコースに行くのかを決める十歳の時に 母親からアメリカのパパは本当のパパでは無い事を告げられる。
その時以来彼なりに苦悩したであろうが、彼は素直に成長し自らに目標を持ち16歳で ハー○ー〇大学へ入学を決めた。
しかも法学部―――。
机の上の写真盾に視線を落とした先生は微笑む。
( 不思議だな…お前が叶えられなかった夢に…タクヤが挑戦するとは…フフ)
『さあ、タクヤっ、せっかくだからお前のサプライズ皆に報告するか』
『ダディ 駄目だって、まだ入学できるかわかんないよ。 学費がめっちゃ高いんだ! “ベイリイエキスペンシブ ”っなんだよなぁ―』
『なんだぁ~ その変な発音は!』
『日本のグランパの真似っ!似てるでしょ?』
『アホッ クゥッ』
(綾野のおやじさんには報告しないとなっ)
『ガキのお前が、金の心配はするな。 これでも俺だって結構稼いでんだ…それに、死んだミチル母ちゃんなっ、自分の学資金たんまり溜め込んでたから、お前が使ったらいい』
『ふ――ん じゃさ、ダディがバーバラとの再婚資金とかしちゃえばぁ?』
『その手か‥‥バーバラはいい女だけどな…俺の好みからちょっと外れてんだよなぁ…』
この時、先生はふとタクヤにもわかるほど寂しい表情を見せた。
『わかったよ! ミチルマミーに甘えちゃおうかな…ダディの再婚の事は、もう言わないよ~ 』
『ヒカル―――!早くぅ―降りてきてっ』
階下には、親しい友人達が毎年行われる黒崎ユキの誕生日とクリスマスのプレゼント交換を今か今かと楽しみにしている。 数年前に始まったプレゼント交換。
主役のユキへのプレゼントは勿論の事、年一回の集まりにそれぞれが馴染みの仲間、恋人 同僚 に宛てた様々なサプライズ。
時には、不平 不満をジョークに絡め、時には、愛の告白であったり…
時には胸が張り裂けそうな悲しみだったり…
黒崎ユキの誕生日に託けた大人の集まりは、主役の登場で宴もたけなわとなってきた。
毎年恒例…日本 オーストラリア アラブ首長国連邦からのリモート。
ミチルから…我が子、友、先生に宛てたクリスマスビデオレター
リビングルームの照明の照度を落とし それぞれの第二章に続く
to be continued
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