7 / 7
日曜日
しおりを挟む
俺の得意料理をアツアツのフライパンから皿に盛り付け、食卓に並べる。
「じゃーん! 余計なもの一切ナシの漢のチャーハン」
チャーシューと卵とネギ。シンプルイズベスト、これこそTHEチャーハン。それと昨日の残りのレンコンのきんぴらも。
明日は仕事だから、夕飯も簡単にすませるつもりだ。早く休んで明日に備えておきたい。
「久しぶりに食べたけど美味いな」
「でしょ。これだけは昔っから作ってるからな~」
一人暮らしをしていた時期も長いから、これくらいの簡単なものは作れる。焼き飯なんて美味ければなんでも良いし、気取らなくていいのも好きだ。
それより、今日はちょっとしたサプライズがあるんだ。
「今日はデザートがあります。なんだと思う?」
「りんごはこの前食べたからな……梨とか?」
「ブブー」
「じゃあメロン」
「違います」
バナナ、オレンジ、桃、パイナップルと次々に答えを外していく。ここまで当たらないなんて思ってもいなかった。
「じゃあブドウだ!」
「うーん。まあ……もう正解で良いでしょ。なんとシャインマスカットでした!」
昨日お昼のワイドショーで見かけて、食べたくなってしまったのだ。今日の昼にスーパーに行って買ってきた。
「シャインマスカットって……高くて美味いやつじゃないのか?」
「確かに他のぶどうよりは高いけど、思ったほどじゃなかったし買ってきちゃった。一回食べてみたかったんですよね」
シャインマスカット味のお菓子は食べたことがあるけれど、俺も本物は初めて食べる。
冷やしておいたマスカットを冷蔵庫から取り出す。房から一粒ちぎって口に運んだ。
口の中で実がはじけて、皮から果汁が溢れ出す。
「シャインマスカットって美味しいですね……」
「ああ。こりゃ人気出るわけだ」
今まで食べてきたマスカットの中で一番美味しい。他のマスカットをあまり食べたことはないけれど。
「あっという間になくなっちゃった……」
テーブル上の食器を片付け、尾上さんに皿洗いを任せる。
「それにしても、今週の晩メシ豪華だったな」
確かに、思い返してみるとそんな気もする。いつもは食べない野菜も果物も、気になってしまってついつい買い物カゴに放り込んでいた。
「食欲の秋ですからね。美味しいものが多いから、俺も楽しくなって作りすぎちゃうんですよ」
尾上さんの喜ぶ顔が見たくて、色んな料理に挑戦してきた。尾上さんは美味いと言って食べてくれるから、俺だって作っていて楽しい。
「天高く馬肥ゆる秋か」
「だいぶ過ごしやすくなりましたね」
尾上さんと付き合い始めてからもう半年以上経っている。春と夏を越えて、早いものでもうすっかり秋だ。
そのうち冬がやってくる。そうしたらすぐに春が来て、一年なんてあっという間に過ぎていく。
いつまで一緒にいられるんだろう。
そう思ったら、いても立ってもいられなくて。
「いつもありがとう」
生活を共にする恋人に感謝を伝えたくて仕方がなくて、尾上さんを後ろから抱きしめた。
「俺こそ、本当にありがとう。いつもいつもお前には感謝してるんだよ」
尾上さんの顔は見えないけれど、きっと俺にしか見せない、あの優しい顔をして笑っているんだ。
「そうだ。今度さ、俺が飯作っていい? 任せっきりなのも悪いし」
「うーん……一緒に作りましょ?」
尾上さんと一緒に作るなら何がいいかな。からあげがいいかな、炊き込みご飯も作ってみたいな、なんて考えていると心が踊ってしまうんだ。
「じゃーん! 余計なもの一切ナシの漢のチャーハン」
チャーシューと卵とネギ。シンプルイズベスト、これこそTHEチャーハン。それと昨日の残りのレンコンのきんぴらも。
明日は仕事だから、夕飯も簡単にすませるつもりだ。早く休んで明日に備えておきたい。
「久しぶりに食べたけど美味いな」
「でしょ。これだけは昔っから作ってるからな~」
一人暮らしをしていた時期も長いから、これくらいの簡単なものは作れる。焼き飯なんて美味ければなんでも良いし、気取らなくていいのも好きだ。
それより、今日はちょっとしたサプライズがあるんだ。
「今日はデザートがあります。なんだと思う?」
「りんごはこの前食べたからな……梨とか?」
「ブブー」
「じゃあメロン」
「違います」
バナナ、オレンジ、桃、パイナップルと次々に答えを外していく。ここまで当たらないなんて思ってもいなかった。
「じゃあブドウだ!」
「うーん。まあ……もう正解で良いでしょ。なんとシャインマスカットでした!」
昨日お昼のワイドショーで見かけて、食べたくなってしまったのだ。今日の昼にスーパーに行って買ってきた。
「シャインマスカットって……高くて美味いやつじゃないのか?」
「確かに他のぶどうよりは高いけど、思ったほどじゃなかったし買ってきちゃった。一回食べてみたかったんですよね」
シャインマスカット味のお菓子は食べたことがあるけれど、俺も本物は初めて食べる。
冷やしておいたマスカットを冷蔵庫から取り出す。房から一粒ちぎって口に運んだ。
口の中で実がはじけて、皮から果汁が溢れ出す。
「シャインマスカットって美味しいですね……」
「ああ。こりゃ人気出るわけだ」
今まで食べてきたマスカットの中で一番美味しい。他のマスカットをあまり食べたことはないけれど。
「あっという間になくなっちゃった……」
テーブル上の食器を片付け、尾上さんに皿洗いを任せる。
「それにしても、今週の晩メシ豪華だったな」
確かに、思い返してみるとそんな気もする。いつもは食べない野菜も果物も、気になってしまってついつい買い物カゴに放り込んでいた。
「食欲の秋ですからね。美味しいものが多いから、俺も楽しくなって作りすぎちゃうんですよ」
尾上さんの喜ぶ顔が見たくて、色んな料理に挑戦してきた。尾上さんは美味いと言って食べてくれるから、俺だって作っていて楽しい。
「天高く馬肥ゆる秋か」
「だいぶ過ごしやすくなりましたね」
尾上さんと付き合い始めてからもう半年以上経っている。春と夏を越えて、早いものでもうすっかり秋だ。
そのうち冬がやってくる。そうしたらすぐに春が来て、一年なんてあっという間に過ぎていく。
いつまで一緒にいられるんだろう。
そう思ったら、いても立ってもいられなくて。
「いつもありがとう」
生活を共にする恋人に感謝を伝えたくて仕方がなくて、尾上さんを後ろから抱きしめた。
「俺こそ、本当にありがとう。いつもいつもお前には感謝してるんだよ」
尾上さんの顔は見えないけれど、きっと俺にしか見せない、あの優しい顔をして笑っているんだ。
「そうだ。今度さ、俺が飯作っていい? 任せっきりなのも悪いし」
「うーん……一緒に作りましょ?」
尾上さんと一緒に作るなら何がいいかな。からあげがいいかな、炊き込みご飯も作ってみたいな、なんて考えていると心が踊ってしまうんだ。
38
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる