天高く、高松と尾上さんが肥ゆる秋

星野ステラ

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日曜日

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 俺の得意料理をアツアツのフライパンから皿に盛り付け、食卓に並べる。
「じゃーん! 余計なもの一切ナシの漢のチャーハン」
 チャーシューと卵とネギ。シンプルイズベスト、これこそTHEチャーハン。それと昨日の残りのレンコンのきんぴらも。
 明日は仕事だから、夕飯も簡単にすませるつもりだ。早く休んで明日に備えておきたい。
「久しぶりに食べたけど美味いな」
「でしょ。これだけは昔っから作ってるからな~」
 一人暮らしをしていた時期も長いから、これくらいの簡単なものは作れる。焼き飯なんて美味ければなんでも良いし、気取らなくていいのも好きだ。
 それより、今日はちょっとしたサプライズがあるんだ。
「今日はデザートがあります。なんだと思う?」
「りんごはこの前食べたからな……梨とか?」
「ブブー」
「じゃあメロン」
「違います」
 バナナ、オレンジ、桃、パイナップルと次々に答えを外していく。ここまで当たらないなんて思ってもいなかった。
「じゃあブドウだ!」
「うーん。まあ……もう正解で良いでしょ。なんとシャインマスカットでした!」
 昨日お昼のワイドショーで見かけて、食べたくなってしまったのだ。今日の昼にスーパーに行って買ってきた。
「シャインマスカットって……高くて美味いやつじゃないのか?」
「確かに他のぶどうよりは高いけど、思ったほどじゃなかったし買ってきちゃった。一回食べてみたかったんですよね」
 シャインマスカット味のお菓子は食べたことがあるけれど、俺も本物は初めて食べる。
 冷やしておいたマスカットを冷蔵庫から取り出す。房から一粒ちぎって口に運んだ。
 口の中で実がはじけて、皮から果汁が溢れ出す。
「シャインマスカットって美味しいですね……」
「ああ。こりゃ人気出るわけだ」
 今まで食べてきたマスカットの中で一番美味しい。他のマスカットをあまり食べたことはないけれど。
「あっという間になくなっちゃった……」



 テーブル上の食器を片付け、尾上さんに皿洗いを任せる。
「それにしても、今週の晩メシ豪華だったな」
 確かに、思い返してみるとそんな気もする。いつもは食べない野菜も果物も、気になってしまってついつい買い物カゴに放り込んでいた。
「食欲の秋ですからね。美味しいものが多いから、俺も楽しくなって作りすぎちゃうんですよ」
 尾上さんの喜ぶ顔が見たくて、色んな料理に挑戦してきた。尾上さんは美味いと言って食べてくれるから、俺だって作っていて楽しい。
「天高く馬肥ゆる秋か」
「だいぶ過ごしやすくなりましたね」
 尾上さんと付き合い始めてからもう半年以上経っている。春と夏を越えて、早いものでもうすっかり秋だ。
 そのうち冬がやってくる。そうしたらすぐに春が来て、一年なんてあっという間に過ぎていく。
 いつまで一緒にいられるんだろう。
 そう思ったら、いても立ってもいられなくて。
「いつもありがとう」
 生活を共にする恋人に感謝を伝えたくて仕方がなくて、尾上さんを後ろから抱きしめた。
「俺こそ、本当にありがとう。いつもいつもお前には感謝してるんだよ」
 尾上さんの顔は見えないけれど、きっと俺にしか見せない、あの優しい顔をして笑っているんだ。
「そうだ。今度さ、俺が飯作っていい? 任せっきりなのも悪いし」
「うーん……一緒に作りましょ?」
 尾上さんと一緒に作るなら何がいいかな。からあげがいいかな、炊き込みご飯も作ってみたいな、なんて考えていると心が踊ってしまうんだ。
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