トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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お転婆姫、冒険者になる

旅の男

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 アリアの先導の元、森の中を走ること数分……、そこには腕をケガした一人の男性と、その彼に明らかな敵意を向けて取り囲む三人の男達の姿があった。

 三人の男性達は冒険者というよりは、髭面に上半身裸の上に革のベストを着ていたりと、見た感じ野盗にも似た風貌をしておる。

 そして、それぞれ手にはシミター片刃剣に槍に斧と持っている武器はバラバラだった。

 一方のその男達に囲まれている男性はと言うと、あたしと同じくらいだろうか、見た目にして年齢は二十代前後くらいで、栗色のポニーテールのような髪型に、この辺りでは見かけない服を着ており、その顔には焦りの表情を浮かべていた。

 事情はよくは分からないけど、一人を三人で囲むなんて卑怯者のすることじゃない……!

「お……おい、ルーナ……!」

 激しい憤りを感じたあたしは、止めようとするクロトを無視して肩を怒らせながら男達へと向かって歩く。

「ちょっとあんた達っ!三人で寄って集って一人を取り囲むなんて卑怯じゃないかしらっ!?」

 あたしはリーダー格と思われるスキンヘッドの男の前へと立つとビシッと人差し指を突き付けるっ!

「あぁ!?なんだ、テメーは!?」

 スキンヘッドの男はあたしに気付くと凄みながら睨みつける。
 けど、あたしはそれに臆することなく睨み返した!

「あんた達に名乗る名前なんてないわっ!」

「なんだとぉ!?このアマァ!!この俺様を『ガレス・ブラッドソーン』様と知っての所業かっ!?」

 あたしの物言いに怒りを露わにした男は手にしたシミターをあたしへと向ける。
 
「はあっ!?知らないわよそんな名前っ!そんな事より、この森にはタコ入道の魔物が出没するのかしらっ!?」

 それを見たあたしは啖呵を切ると、腰に差してある鞘から剣を抜き構えた。

「な……!な……っ!?だ……誰がタコ入道だ……っ!?」

 その男は文字通りタコのように顔を真っ赤にさせながらシミターをあたしへと振り降ろす!

「はあっ!」

 しかし、あたしはそれを自分の剣で受け止める! 

「な、なに!?バカな……!こんな小娘のどこにこんな力が……っ!?」

 男も自分の一撃を受け止めたあたしに驚いたのか、その目を大きく見開いていた。

「ふーん?大層な事を言う割には大した事ない無いわね。それに、剣術は力だけじゃ無いのよ!こう言う風にね!」

 あたしはそう言うと自分の剣を男の剣へと絡ませるとそのまま男の剣を地面へと突き刺す。

 そして、間髪入れずに男の腹部へと蹴りを入れると 男は踏んばりきれずによろめくとそのまま倒れた。

「なっ!?アニキ……!て、テメー!!」

 仲間をやられたのを見た他の男達はあたしへと武器を構える。
 それを見たあたしも剣を構えながら不敵に笑うと再び剣を構えた。

「かかってきなさい!あたしが相手になるわ!」

「はいはい、オイタはそこまでですよ」

「お前達も大人しく投降して武器を捨てろ」

 あたし達が男達と戦闘に入ろうとした時、槍を持った男の後ろにはいつの間にかいたアリアが抜いたツインダガーを男の首へとその切っ先を突きつけていた。

 一方の斧を持った男もクロトから喉元へと剣を突きつけられていて動けずにいた。

「な……っ!?いつの間に!?」

「お、おい!テメー、何者だ……っ!?」

 男達は突然現れた二人に対して驚きの声を上げる。

「目の前にいる女が言ったはずだ、お前達に名乗る名はないと。命が惜しければそのタコ入道を連れてとっとと失せろ」

「分かった……!分かったから命ばかりは……!」

 男の言葉にクロトとアリアは彼らの喉元から剣を退けると、三人の男達は一目散に街とは別の方向へと逃げ去ると、クロトとアリアはそれぞれ武器を収めた後にあたしの傍へとやって来た。

「ルーナ様、いくら頭にきたからと言って一人で先走るなんて危険です」

「そうだぜルーナ。その直情径行の性格はどうにかしろ」

「う……っ。ごめんなさい、クロト、アリア……」

「まあ、ルーナらしいっちゃらしいけどな」

「そうですね兄様、それがルーナ様ですもんね」

 ……なんだろう、凄くバカにされているような気がする。

「あ……!そうだ……っ!」

 あたしは剣を腰の鞘へと収めると囲まれていた男性の元へと駆け寄った。

「あなた大丈夫っ!?ちょっとケガを見せて……っ!」

 あたしはハンカチを取り出すと、男性のケガをした腕へと巻いて、応急処置を施す。

「危ない所を助けてもらいすまなかった。オマケにかすり傷とは言え、このような手当てまで……。私の名はルーカス・フェレック。もし良ければ、君達の名を教えてれないか?」

 ルーカスさん……か。
 旅の人のようだけど、あの服装からしてトリスタの周辺の人とは違うのかも知れない。

「えっと……、あたしはルーナ・ランカスターよ。そして、こっちの男性がクロト・ランカスター、そしてこっちの女性がアリア・ランカスターよ」

「ルーナにクロトにアリアか、今回はは危ない所を本当に感謝する」

 助けた相手にいきなり呼び捨てにされてあたしは内心ムッとする。

「別に、気にしないでいいわよ。だってあたし達は冒険者なんだし」

 ルーカスさんに対して、あたしは若干コメカミをヒクヒクとさせながらもニカッと笑ってみせた。

「ところで、ルーカスさんはどうしてこんな森の中で三人に絡まれていたの?」

「私は用があってこのトリスタを訪れた。そして、この辺りで急にあの三人が現れたと思ったら襲いかかってきたのだ。しかし、不意打ちとは言え手傷を負う有様……、全く我ながら自分の未熟さには腹が立つ……!」

「そ、そうなんだ……」

 ルーカスさんは斬られた自身の腕を悔しいそうに見つめると、あたしの巻いたハンカチの上から血が滲み出していることに気が付いた。

 傷がどのくらいの深さかは分からないけど、早めに手当てを受けたほうが良さそうね。

「ルーカスさん、早く街で手当てを……」

「お待ち下さいルーナ様。そちらのルーカス様のお怪我、わたくしが癒してご覧に入れます」

「アリア……?」

 あたしの後ろにいたアリアがやって来ると、ルーカスさんの腕へと手をかざした。

「……ヒール」

 そして、何かを唱えると淡い光のようなものが彼女の手から放たれる。

「如何ですか?ルーカス様」

「魔法か……、アリア、君は魔法が使えるのか。助かった」

 あたしはルーカスさんの腕に巻いたハンカチを解くと、そこにあった傷はすっかりと癒えていた。

「ええ、母から教わって魔法の心得があるだけですわ」

「何にしろ助かった」

 ルーカスさんは自分の腕を擦りながらアリアの顔を見ていた。

 というか……。

「アリアって魔法を使えるの……?」

「勿論ですわ、ルーナ様をお守りするために習得致しましたわ。もしよろしければルーナ様にもお教え致しましょうか?」

「え……ええ……、考えておくわ……。それより、ルーカスさんは変わった服を着ているのね」

 あたしの言葉にアリアはニコニコとしながら答えるが、あたしの苦手な座学のような気がしたので、話を逸らすためにルーカスさんの服装について触れることにした。

「これはヴァルゼンと言う国の服装だ。確かにこの服はこの辺りトリスタでは珍しいかもしれないな」

「なるほど、それで見かけない服装だと思たわ」

 ヴァルゼンか……、確かこのトリエステから南の方に行った隣国の大国だったかな……?

「あの、それよりもルーナ様、魔法のお勉強の方はいかが致しましょう……?」

「と……とりあえずさっきの事もあるし一度街へと戻るわよ……!」

 あたしはアリアからの追求を逃れるようにルーカスさんと共にトリスタの街へと戻る事にしたのだった。
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