トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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トリスタの怪奇事件

復讐者、ゲオルク

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 その人物はゆっくりとした足取りであたしとアリアへと近づいてくる。

 そして、その人物が近付くにつれ月明かりに照らされてその顔が明らかとなっていく。

「いやはや、流石はステラ姫様と言ったところでしょうか?」

「あなたは……っ!?」

 そしてその顔がはっきりと見えた時あたしは驚愕した!
 その人物は以前ニーナを放り投げ、あたしがこのトリスタから追放した兵士だった!

 しかし、その兵士……いや、元兵士・・・は黒いローブに身を包み、肩には禍々しいショルダーガードを着け、そして首には同じく禍々しい首飾りを付けていた。

 何より聖なる眼鏡でこの元兵士を、特に首飾りを見ると魔力の塊が見えた。

 あれは一体何なのかしら……?

「はははは……っ!僕のことを覚えていてくれて光栄ですよっ!そう僕は『ゲオルク・シュトラウス』!父であるフリードリヒ・シュトラウスの息子だっ!」

 ゲオルクと名乗る男は高らかに笑い声を上げると自らの名を宣言する。

 て言うか、あの兵士ってゲオルクって名前だったのか、知らなかったわ……。

「それで、そのゲオルク・シュトラウスが今更この街に戻って来て何の用?あたしはあなたにこの街から出ていくか、あたしの剣のサビになるか選べと言ったはずよ」

 あたしは鞘に納めた剣を再び抜くとゲオルクへとその切っ先を向ける。

「何って決まっているではありませんか!父を処刑し、この僕を追放したこの国とあなたに対して復讐をするためですよっ!」

「復讐ですって……っ!?まさかこの街に突然現れたスケルトンや泥人形達はあなたの仕業だと言うの……っ!?」

「そうです!それらは僕がブラウナー・シュミットと言う者から貰ったこの魔の首飾りの力のほんの一部です!」

「ブラウナー・シュミットですって……っ!?」

 ブラウナー・シュミット、子供達を奴隷として売り飛ばしているという謎の奴隷商……。
 まさかこのゲオルクと繋がっていたとはね……!

「あの方は僕に偉大な力を下さった!ですが、魔物を生み出すことなどこの首飾りのほんの一部に過ぎません。ですが、この首飾りには真の力があるのです!この街を滅ぼし、あなたを殺せる程の力をね……っ!」

 ゲオルクは何かの呪文のようなものを唱えながら首飾りを握りしめるとその首飾りから禍々しい光があふれたかと思うとゲオルクを包み込む。

 そして光が消えた時、そこにはゲオルクの姿はなかった。

 その代わり、そこにいたのは先ほどまでの禍々しい首飾りを付けたゲオルクではなく……悪魔のような羽を生やし、身体は黒い肌に爬虫類のような鋭い爪を持った怪物だった!

「まさか……ゲオルクは悪魔に魂を売ったと言うの……っ!?」

「そ、そんな……」

 ゲオルクの姿を見てあたしとアリアは驚愕する。

『ゲハハハハ!そうだとも、これが今のオレの姿だ!』

 そして姿を変えたゲオルクはあたしとアリアを嘲笑っていた。

『この首飾りは素晴らしいぞ?これがあれば何よりも強い力を得られる、無敵になれるのだっ!』

「そんなバカなことが……」

『あるんだよ!それに、この姿になればこんな国など一瞬で滅ぼせるっ!それを証明するためにもまずはこの街から破壊してやるよっ!』

 そう言うと魔物の姿となったゲオルクは咆哮を上げてあたしとアリアに襲い掛かった!

「くっ!?」

 あたしは振り下ろされた爪を剣で受け止める。

「ステラ様!」

『ゲハハ!余所見をしている暇があるのか?』

「しまっ……っ!」

 あたしへと駆け寄ろうとして隙だらけとなっていたアリアの脇腹にゲオルクの尻尾が叩き込まれる!

「かはっ!?」

「アリアっ!」

『ゲハハハハ!いい様だな、だがまだまだこれからだぞ?』

 そして、ゲオルクはアリアをいたぶりながらあたしへと襲い掛かる。

 あたしはその攻撃をなんとか剣で防ぐが、その一撃一撃は重く、そして速い!

『そらそらどうした?守ってばかりじゃオレは倒せないぜ?』

「くっ……このっ!」

 あたしは防戦一方だった。
 どうやら、ゲオルクは力だけではなく素早さも兼ね備えているようだ。

 このままじゃマズいわね……っ!

 あたしは肩で息をしながら額には冷や汗が流れる。

『どうした?動きが鈍くなってきてるぜ?』

「ステラ様!……『火炎球ファイヤーボール』!」

『おっと』

「アリア!」

 あたしの危機にアリアはファイヤーボールを放つが、それをゲオルクは軽々と躱す。

『おいおい、ファイヤーボールなんてオレの前じゃ……』

「今です!ステラ様!」

『何っ!?』

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 アリアの掛け声にあたしは剣を振りかぶる!

『ぐお……っ!?』

あたしの一撃は油断していたゲオルクを捉え、その腕を斬り裂いた!

『き、貴様……よくもオレの腕を……っ!』

 怒りを滲ませているゲオルクの腕からは赤い血出はなく青色の血が流れていた。
 もうゲオルクは人間を捨て、完全に魔物と化しているのかもしれない。

「ステラ様!今です!」

「ええ、分かってるわ!『ライトニングボルト』っ!」

 あたしはゲオルクへと雷撃系の中級魔法、ライトニングボルトを唱える!

 しかし、ライトニングボルトはゲオルクにあっさりと防がれてしまった。

『バカめ!このオレにそんなものが通用すると思ったのかっ!』

「くっ……」

 ライトニングボルトを防がれ、あたしは歯噛みする。

『今度はこちらの番だ!』

 ゲオルクはライトニングボルトのお返しとばかりに口から発した雷撃があたしとアリアへと襲いかかる!

「きゃああっ!?」

「ああぁっ!」

 雷撃を受けたあたしとアリアは吹き飛ばされ地面へと倒れてしまう。

 そんなあたしとアリアの姿を見てゲオルクは満足そうに笑うと再び飛びかかろうと前傾姿勢になる。

『さて、これでトドメを刺してやるよ』

 ゲオルクの鋭い爪があたし達へと向けられる……。

「す……ステラ様だけでも逃げてください……っ!」

「ダメよ!アリアを置いて逃げるなんて出来ないわ!」

 あたしは先ほどの雷撃で痺れている身体に鞭を入れるように立ち上がると、ゲオルクへと剣を向ける。

『ふん、まだ諦めないか……。ならばその思いを抱いたまま死ぬがいい!』

「く……!きゃあ……っ!?」

 ゲオルクはあたしへと襲い掛かる! あたしは振り下ろされた爪を剣で防ぐが、一撃の衝撃が大きく吹き飛ばされてしまう。

『そらそらっ!』

 そして、ゲオルクはあたしへと追い打ちをかけるように鋭い爪で執拗に襲いかかる!

 あたしはどうにか剣で防ごうとするも、全てを防ぐことは出来ず、その度にあたしの身体は切り裂かれ、至るところから血が流れ出る。

「くっ!?」

『まだ耐えるか!いい加減諦めろ!』

 ゲオルクはトドメと言わんばかりに今度は口から炎を吐き出してくる!

 く……、ここまでか……!

 そう思ったあたしの前に一人の男が現れたのだった!
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