トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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外遊する王女 ラーデンブルク公国編

ハインリヒ公王

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 ラーデンブルク城へと入ったあたし達は、城門の所で兵士達に止められてしまう。

「そこの者達待たれよ、我がラーデンブルク城に何用か?」

「このお方はトリエステ王国の第三王女、ステラ・ムーン・トリエステ様にあらせられる。ハインリヒ・フォル・ラーデンブルク公王様へとお目通り願いたい」

「これは失礼いたしました、ステラ・ムーン・トリエステ王女様。お話は伺っております、どうぞお通りください」

 クロトの言葉にラーデンブルクの兵士達が道を開けると、あたしとクロト、アリアにカティアの四人は城内へと入った。


 城門を潜ると、そこにはトリエステ城とは異なり、海をイメージしてか、青を基調とした立派なお城がそびえ立っており、あたしは思わず見惚れてしまった。

「ステラ姫であらせられますか?」

「え……?あ、はい。私がトリエステ王国のステラ・ムーン・トリエステです」

 お城を眺めていると、声をかけられたあたしはそちらへと目を向けるとそこにはラーデンブルク城の騎士と思われる数人の人の姿があった。

「我々はハインリヒ公王様よりステラ姫の案内を仰せつかった者です。公王様の下へとご案内いたします」

「分かりました、お願いします」

「それではこちらへ、どうぞ」

 あたし達四人は騎士達に案内されるがままに付いて行く。

 城内を見渡すと、海をイメージしているからか、所々に青色の装飾が施されている。

「ステラ様、よろしいでしょうか?」

 城内を進んでいくと、カティアがあたしの近くへと寄り小声で話しかけて来る。

「カティア、どうしたの?」

「はい、公王様の所へと着く前に挨拶のことで……」

「挨拶……?」

「はい、私たち従者は深く頭を下げるだけでもいいのですが、ステラ様はそうは行きません。公王様にご挨拶をする際にはカーテシーと言う方法でご挨拶をすることが求められます」

「カーテシー……?」

 なにそれ、聞いたことない言葉ね……。

「カーテシーとは相手への敬意を表すために膝を折って片足を後ろに引き、身を低くするお辞儀です。その際にドレスのスカートの両端を少し持ち上げておくと尚よろしいかと思います」

「そ……そう……、分かったわ。ありがとうカティア……」

「いえ……」

 カティアはそう言うと後ろへと下がる。

 カーテシー……ねぇ……。
 聞くだけでも面倒くさそうだわ……。

 カーテシーという挨拶方法に対して若干憂鬱な気分を抱えながら城内を進んでいくとそこにはラーデンブルク城の中でも一番立派な扉の前へと辿り着いた。

 その扉には、「R」の文字が書かれた丸い盾の両脇に槍を持った一対のマーメイドが描かれている、ラーデンブルク公国の紋章が大きく描かれていた。

「ハインリヒ公王様、トリエステ王国のステラ姫をお連れいたしました!」

 騎士の一人がドアをノックし、ドアを開けるとそこには、中央に赤い絨毯の敷かれた謁見の間となっていた。

 その絨毯の先、玉座を挟んであたしから向かって右側には公王様の側近と思われる人物が、左側にはあたしと同じ銀色の髪に髪をした女性、あたしの上の姉である"ライラ・クロス・ラーデンブルク"とその夫で、茶色の髪の男性である"エリック・ヴァン・ラーデンブルク"公子様、そしてその中央には玉座に座る一人の男性の姿があった。

 彼がこの国の公王、ハインリヒ・フォル・ラーデンブルク様だ。

 最後にお会いしたのがライラ姉さんとエリック公子様との結婚式の時以来だけど、お変わりはないようだ。

 公王様は長い茶髪を後ろに流した、端正な顔立ちの男性がソファに座っており、あたし達へと鋭くもどこからとも優しさのある視線をあたし達へと送っていた。

「ハインリヒ・フォル・ラーデンブルク公王様、ステラ・ムーン・トリエステ、只今参りました。この度はこちらよりの突然の申し出を快くお受けしていただき、誠に恐縮でございます」

 あたしはハインリヒ公王様へと到着の口上と共にカーテシーでご挨拶を行うと、それに習いクロトとアリア、それにカティアの三人も公王様へと丁寧にお辞儀をする。

「うむ。ステラ姫よ、トリエステ王国より遠路はるばる我がラーデンブルクへとよく参られた。お父上達はご健勝かな?」

「はい、父上をはじめ、母上も兄上も健在でございます。ハインリヒ公王様も姉上の御婚礼の時以来ですが、お変わりなく何よりです」

「そなたも元気そうで何よりだ。それにしても、ステラ姫と最後に会ったのは八年ほど前だったか、しばらく見ぬ間に随分と立派になったものだ。ステラ姫はお転婆だと聞いていたが、人の噂というのも当てにならぬものだな。はっはっは……っ!」

 ハインリヒ公王様はそう言い豪快に笑っているが、あたしは内心冷や汗をかいていたのだった。
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