トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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ルーナの章・名を捨てた王女

ルーカスとの再会

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 あたしの目の前に現れたのは栗色のポニーテールの男性だった。

「……誰のことを言っているのか分からないけど人違いじゃないのかしら?あたしはただの冒険者よ」

 あたしはそう言い、再び切り株へと座るとパンを口へと運ぶ。

「そうか……、てっきり私が探していた人だと思っていたが人違いなのなら仕方ない……が、ここで会ったのも何かの縁だ、自己紹介くらいはしておこう。私は"ルーカス・フェレック"だ。よければ君の名を聞かせてはもらえないか?」

「……ルーナ・ランカスターよ」

 そう、その男性はヴァルゼン帝国の第一皇子、ラインハルト・フォン・ヴァルゼンだった。

 ルーカスと名乗っているということはお忍びかなにかなのかも知れない……が、今のあたしには関係のないことだ。

「ルーナ、隣いいか?」

 ルーカスはそう言い、あたしが答える前にあたしの隣へと座る。

「ちょっと、まだいいなんて言ってないわよ?」

「細かいことは気にするな。……それより、ステラ姫が失踪したそうだな」

「……そうみたいね、少し前まではそこら中に張り紙がされていたわ」

「ルーナはステラ姫の居所を知っているんじゃないのか?」

「さてね……、きっとんでしょ?」

「……そうか。クロトはどうした?」

「知らないわ」

「アリアは?」

「誰のことかしら?」

「一国の姫が冒険者へと身をやつすとは何があった……?」

「さてね、あたしはただの冒険者よ、お姫様じゃないわ」

「そうは言うが、ここに証が……これは……っ!?」

 ルーカスはあたしの首元へと目を向け、王女の証を見ようとすると驚愕した……!

「何をそんなに驚いているのかしら?」

 ルーカスが驚いている理由にだいたいの見当はついているが、あたしは敢えて気が付かないふりをする。

「その火傷のような跡はどうしたんだ……っ!?まさか自分で焼いたのか……?」

「……これはあたしがまだ駆け出しの時に魔物から受けた傷跡よ」

 と言うのはもちろん嘘で、これは自分のファイヤーバレットで焼いた跡だ。

「この後どうするつもりだ?」

「何も決めてはいないわ。でも、どこか遠くに行くのも悪くないかもとは思ってはいるわ」

「それなら……私の国には来るか?別れ際に言った通り私はまだ君のことを諦めてはいない」

「誰かと勘違いしているんじゃないのかしら?最初に言った通り、あたしはルーナ・ランカスターよ?あなたが諦めていないと言う"ステラ姫"じゃないわ」

「私はまだステラ姫の事を諦めてはいない、と君には言ってはいないのだが?」

「……ち!」

 ルーカスはニヤリと笑みを浮かべると、あたしはしまったと思わず舌打ちを打つ。

「それで、何があったんだ?クロトはどした、一緒じゃないのか?」

「クロトの事は本当に知らないわ。ただ、一つ言うとすればあたしはアリアに負けた、ただそれだけよ……」

「そうか……。それなら尚の事私の国に来ないか?ルーナ・ランカスターとしてでもいい、私の妃としてずっと傍にいて欲しい」

「……どうしてそんなにあたしに拘るの?」

「以前、君が我がヴァルゼン城にいた時のことを覚えているか?その時私は君に"私の話を聞いて欲しい"と言ったことを覚えているか?」

 ラインハルトの話……。

 確かにそれは覚えている、彼の昔の話を話すと言っていたけど、その時あたしはそういう気分ではなかった事もあり断ったのよね。

 でも……。

「ええ、覚えているわ」

「今なら私の話を聞いてもらえるかな?」

「……ええ、いいわ」

 でも、今なら彼の話を聞くのもいいかもしれない。

 あたしは彼の言葉に頷くと、ラインハルトは自身の昔の話を語りだしたのだった……。
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