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一章 日本から来た少女
冒険者ディン
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「本当に、こんな所にオーガグリズリーなんて出るのかよ……」
俺、ディンはボヤきながら冒険者ギルドの依頼でラウルの街から少し離れた近場の森に、仲間と共に来ていた。
ラウルの街はこの辺りでは中規模の街で、多くの冒険者達の拠点にもなっている。
俺もまたその冒険者の一人で、この近場の森へは女魔道士のセーラ、弓使いの男エルフのアルト、女盗賊のダークエルフのサラ、そして剣士の俺の4人で来ていた。
「さあな……、だが一匹だけだが目撃情報は出ているみたいだぜ……」
後ろに手を組んで歩くアルト。
「でも、オーガグリズリーってここより遥か北の方に住んでいる種でしょ?なんでこんな所にいるのよ?」
頬に手を当てながら歩くセーラ。
「多分食べ物が少ないんでしょ?でも、この辺りに居着かれては街の人達の脅威でしかないからね」
腕組みをしながら歩くサラ。
「ま、そういうことだな……」
そして、それに頷く俺。
この森は街から近く、日中は危険な動物や魔物もいないため新米冒険者や街の人達が食材や薬の材料、建築資材などを取りに来たりする。
そんな所にオーガグリズリーなどという食物連鎖の頂点に君臨するような危険な猛獣が目撃されたとなれば、ギルドから討伐依頼が出されるのも無理はない。
目撃された一頭だけならまだいいが、何頭も入り込んでいたとなると並の冒険者では返り討ちになる、ということで凄腕冒険者たる俺達に依頼が回ってきたわけだ。
オーガグリズリーの捜索を始めてからしばらく森の中を歩くが、その痕跡が見当たらない。
(本当にいるのなら糞なり、獲物を捕った後などがあるはずなのだが……、もっと奥の方か……?)
「き……、きゃーーーっ!!!」
俺は半信半疑で歩いていると、どこからか女の悲鳴が聞こえてきた。
ここからそう遠くはないようだ。
「おい!ディン、聞こえたか……っ!」
もしかしたら誰かがオーガグリズリーに襲われているのかもしれない……!
アルトの言葉にみんなうなずくと俺達は悲鳴が聞こえてきた方向へと走り出した。
◆◆◆
「あ……、あぁ……」
悲鳴が聞こえてきた場所にたどり着くと、そこには見たことのない服を着た女の子が一人恐怖に怯えた顔をして座り込んでいた。
そして、その近くにはその女の子を今にも殺そうとしている、一頭のオーガグリズリーの姿も見えた。
「俺が矢で先制をかける!」
アルトは背中に背負っていた弓を構えると、立て続けに数本の矢を放つ!
その矢には風の魔法がかけられているのか、通常よりも早くオーガグリズリーへと狙いを定めて飛んでいき、目標の腕、脚、頭などに突き刺さる!
「今だ!ディンっ!」
「おおっ!」
アルトの矢が放たれた直後に走り出していた俺は、オーガグリズリーの意識が女の子から逸れた隙に腰の剣を抜き素早くオーガグリズリーを仕留めた。
他にオーガグリズリーの姿がないか周囲を確認するが、どうやら他にはいないようだ……。
「ふぅ……、危ない所だったな……。だが、何とか間に合ったようだ。おい、大丈夫か……?」
俺は剣に付着したオーガグリズリーの血を振り払うと腰の鞘へと剣を収めながら女の子に声をかけるも、反応がない。どうやら恐怖のあまり呆然としているようだ。
「こんな所にオーガグリズリーが出るとはな……。餌不足の影響か……?」
最後まで辺りを警戒していたアルトもオーガグリズリーの姿が無いことを確認すると、構えていた弓を背負い直した。
「大変……!この娘、血が出てる!怪我してるみたいよ……っ!」
セーラが女の子に慌てて駆け寄る。
顔に血がついているが、よく見ると鼻血か口の中を切ったようで、そう大した外傷は見当たらない。
「ねえ!あなたしっかりして!大丈夫……っ!?他に怪我はない……っ!?」
サラが呆然としている女の子に声を掛けていたところで、その女の子は体勢を崩して倒れ込んだ。
どうやら気を失ってしまったようだ。
「とりあえずは依頼達成、だな……。しかし、この女の子は一体誰だ……?見たことない服を着ているが……」
「さあな……。だが、このままここに置いていく訳にもいかないな」
アルトの問いに対し、俺は女の子を背負いながら答えると、依頼の達成報告と女の子の保護のためにラウルの街へと引き返すこととした。
俺、ディンはボヤきながら冒険者ギルドの依頼でラウルの街から少し離れた近場の森に、仲間と共に来ていた。
ラウルの街はこの辺りでは中規模の街で、多くの冒険者達の拠点にもなっている。
俺もまたその冒険者の一人で、この近場の森へは女魔道士のセーラ、弓使いの男エルフのアルト、女盗賊のダークエルフのサラ、そして剣士の俺の4人で来ていた。
「さあな……、だが一匹だけだが目撃情報は出ているみたいだぜ……」
後ろに手を組んで歩くアルト。
「でも、オーガグリズリーってここより遥か北の方に住んでいる種でしょ?なんでこんな所にいるのよ?」
頬に手を当てながら歩くセーラ。
「多分食べ物が少ないんでしょ?でも、この辺りに居着かれては街の人達の脅威でしかないからね」
腕組みをしながら歩くサラ。
「ま、そういうことだな……」
そして、それに頷く俺。
この森は街から近く、日中は危険な動物や魔物もいないため新米冒険者や街の人達が食材や薬の材料、建築資材などを取りに来たりする。
そんな所にオーガグリズリーなどという食物連鎖の頂点に君臨するような危険な猛獣が目撃されたとなれば、ギルドから討伐依頼が出されるのも無理はない。
目撃された一頭だけならまだいいが、何頭も入り込んでいたとなると並の冒険者では返り討ちになる、ということで凄腕冒険者たる俺達に依頼が回ってきたわけだ。
オーガグリズリーの捜索を始めてからしばらく森の中を歩くが、その痕跡が見当たらない。
(本当にいるのなら糞なり、獲物を捕った後などがあるはずなのだが……、もっと奥の方か……?)
「き……、きゃーーーっ!!!」
俺は半信半疑で歩いていると、どこからか女の悲鳴が聞こえてきた。
ここからそう遠くはないようだ。
「おい!ディン、聞こえたか……っ!」
もしかしたら誰かがオーガグリズリーに襲われているのかもしれない……!
アルトの言葉にみんなうなずくと俺達は悲鳴が聞こえてきた方向へと走り出した。
◆◆◆
「あ……、あぁ……」
悲鳴が聞こえてきた場所にたどり着くと、そこには見たことのない服を着た女の子が一人恐怖に怯えた顔をして座り込んでいた。
そして、その近くにはその女の子を今にも殺そうとしている、一頭のオーガグリズリーの姿も見えた。
「俺が矢で先制をかける!」
アルトは背中に背負っていた弓を構えると、立て続けに数本の矢を放つ!
その矢には風の魔法がかけられているのか、通常よりも早くオーガグリズリーへと狙いを定めて飛んでいき、目標の腕、脚、頭などに突き刺さる!
「今だ!ディンっ!」
「おおっ!」
アルトの矢が放たれた直後に走り出していた俺は、オーガグリズリーの意識が女の子から逸れた隙に腰の剣を抜き素早くオーガグリズリーを仕留めた。
他にオーガグリズリーの姿がないか周囲を確認するが、どうやら他にはいないようだ……。
「ふぅ……、危ない所だったな……。だが、何とか間に合ったようだ。おい、大丈夫か……?」
俺は剣に付着したオーガグリズリーの血を振り払うと腰の鞘へと剣を収めながら女の子に声をかけるも、反応がない。どうやら恐怖のあまり呆然としているようだ。
「こんな所にオーガグリズリーが出るとはな……。餌不足の影響か……?」
最後まで辺りを警戒していたアルトもオーガグリズリーの姿が無いことを確認すると、構えていた弓を背負い直した。
「大変……!この娘、血が出てる!怪我してるみたいよ……っ!」
セーラが女の子に慌てて駆け寄る。
顔に血がついているが、よく見ると鼻血か口の中を切ったようで、そう大した外傷は見当たらない。
「ねえ!あなたしっかりして!大丈夫……っ!?他に怪我はない……っ!?」
サラが呆然としている女の子に声を掛けていたところで、その女の子は体勢を崩して倒れ込んだ。
どうやら気を失ってしまったようだ。
「とりあえずは依頼達成、だな……。しかし、この女の子は一体誰だ……?見たことない服を着ているが……」
「さあな……。だが、このままここに置いていく訳にもいかないな」
アルトの問いに対し、俺は女の子を背負いながら答えると、依頼の達成報告と女の子の保護のためにラウルの街へと引き返すこととした。
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