チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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一章 日本から来た少女

痴漢

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 ホールで働きだしてから数日経った頃の夜、私は酒が入ってご機嫌な4人組の男性冒険者たちが座っているテーブルへとエールを運んでいた。

「お待たせしました、エール4つです!」

「おう、カナちゃんありがとうな。今日も可愛いな!良かったら一緒に飲まないか?」

「いえ……、それはちょっと……」

 可愛いと言われ思わず顔が赤くなる。

「そんな事言わずにさ、来いよっ!」

「え……?きゃあ……っ!?」

 私がエールビールをテーブルへと起き、離れようとすると男性客の一人に引っ張り込まれ、私はその男性の太ももの上に前を向いて座らされる形となってしまった。

「な……何するんですか……!」

 直ぐに立ち上がって逃げようとするも、腰をしっかりと掴まれて立ち上がることが出来ない……!

「今日の冒険が上手く行ったんだ。カナちゃんも一緒に祝ってくれよ!それにしても、胸は小さくても女だな。柔けぇ~やっ!」

「や……止めて下さい……っ!」

 私は自らの手を使って必死に胸を触ろうとしてくる男性の手を払いのけようとするも、男性冒険者は強引に服の上から私の胸を揉みしだいてくる……。

「おい、俺にもカナちゃんの胸触らせてくれよ」

「ち……、仕方ねえな。なら俺は尻を触らせてもらうか」

 今度は別の男性冒険者が現れ、左手で私の両手を掴むと、空いた右手で私の胸を触り、私の胸を触っていた男性は今度はお尻をなで回す。

「おお~……、確かに柔らかいな。それに初心な感じがそそられるぜ」

「止めて下さい……!もう離して……っ!」

「まあ、いいじゃねえか。減るものじゃあるまいし。それに、カナちゃんの尻も柔らかくて触り心地がいいなぁ~」

「や……やあ……」

 逃げようにも男性冒険者達の力は強く、しっかりと私の身体を掴んでいるため逃げるに逃げられない。

 私が痴漢をされている様子を見てそのテーブルにいる残り二人の男性冒険者達はイヤらしげな笑みを浮かべていた。

 大声を出せばファナさんやグレンさん、それに他の女性冒険者が助けてくれるかもしれない。

 でも、痴漢をされているというショックと恥ずかしさ、さらになぜか私が悪いことをしているのではないかという変な罪悪感や、変に声を出せば更に酷いことをされるのではないかと言う恐怖に囚われる。

 私が我慢すれば済むこと……。
 そう思うが恥ずかしさや悔しさで目からは涙が滲んでくる。

 すると、突然お尻の下に何か硬いものが当たってきた。

 え……?何これ……?

「へへ……、カナちゃんの身体を触ってたら俺のが勃ってきちまった」

 え……?まさか当たってるのって男の人の……っ!?

「止めて下さい……!本当にもう離して下さい……!」

 私は逃げようと藻掻くも男性冒険者の力は強く、逃げるどころかさらに硬いものがお尻へと押し当てられる。

 やだ……!やだやだやだ……っ!!

「へへへ……、そろそろこっちの具合はどうかな?」

 私を太ももの上へと座らせていた冒険者はお尻を触る手を止めたかと思うと今度はスカートの中へと手を差し入れようとしていた。

「や……やあ……!そこは……っ!?」

 だめ……!そこは私の大事な所……っ!
 まだ誰にも触らせたことのない大事な……。

 それをどこの誰ともわからない男に痴漢されて触られる……。

 私は恐怖と恥ずかしさのあまり顔が強張り、声すら上げれなくなっていた。

「おい、騒がれたら面倒だから口を塞いでおけ」

「おう」

「あ……ああ……」

「カナちゃんのキスか、うらやましいぞコノヤロー!」

「後で俺達にもさせろ!」

 残り二人の冒険者達が茶化す中、私の胸を触っている冒険者の顔が近づいてくる……。
 まさかキスを……。

 嫌だ……!ファーストキスをこんな人に奪われたくない……!

「……っ!」

 そう思うが、声も出ず身体が動いてくれない。
 私は思わず目を閉じてしまっていた。

「ぐは……っ!?」

「その辺にしておけ、その娘嫌がってるだろ?」

 もう少しで唇を奪われてしまいそうになったその時、私にキスをしようとしていた男の悲鳴にも似た声と別の男性の声が聞こえてきた。

「……?」

 私は恐る恐る目を開けると、二人の男性冒険者のすぐ近くに片方の脚をあげた銀髪の男性の姿があった。

 歳は見た目にして私よりは少し上だろうか、ディンさん達とは違うまた別の冒険者だ。

 銀髪の男性は両手をズボンのポケットに突っ込んでおり、多分キスをしようとしていた男を横へと蹴り飛ばしたのだろう、私に痴漢をしていた男たちへと不敵な笑みを浮かべていた。

「カナちゃん大丈夫っ!?」

「ファナさん……、ファナさん……っ!!うう……!ぐす……っ!ひっく……っ!!」

 その後すぐにファナさんが駆けつけてくれ、私を掴んでいた男達の力が抜けると、その隙に逃げ出した私は、思わずファナさんにしがみついて涙を流しながら嗚咽を漏らしていた。

 怖かった……!本当に怖かった……っ!!

「カナちゃんごめんね、気がつくの遅れて……。あんた達っ!痴漢なんて最低だよっ!?」

「いちちち……!おい!ザクスお前何しやがる!」

「それはこっちのセリフだ。ここはそう言う店じゃない。お前達のせいで冒険者全体がそういう目で見られるのはゴメンだ。飲むのは自由だが、そういう事をしたいのならスケベ通りにでも行け」

「ち……、ただの冗談じゃねえか」

 ファナさんとザクスと呼ばれた男性の言葉に対し、二人の男性冒険者達は悪びれる様子はなかった。

 ファナさんの言うようにこの人たちは本当に最低だ……っ!

「冗談でカナちゃんを泣かせてもらっては困るんだがな……っ!!」

 気が付くとファナさんの後ろにはグレンさんの姿もあり、グレンさんは激怒しながら指をボキボキと鳴らしていた。

「や……やだなあ……、グレンさん。ただの冗談じゃねえか……」

 私に痴漢をしていた冒険者二人は明らかに顔が青ざめていた。

「貴様らっ!覚悟しやがれっ!!」

「「ひ……ひいぃぃぃぃぃぃ…………っ!!!」」

 私を痴漢していた冒険者二人とそれを傍観していた残り二人の冒険者はグレンさんにボコボコに殴られ、冒険者ギルドを追い出されていた。

「グレンさん……、グレンさん……っ!うああぁぁぁぁぁーーー……!私……私怖かった……!怖かったです……っ!!ああぁぁぁぁぁーーーー……っ!」

 私のグレンさんにしがみつくと、目からせきを切ったかのように涙があふれ、グレンさんの服を涙で濡らしていく。

 そんな私をグレンさんは優しく抱きしめ、頭を撫でてくれていた。

「カナちゃん、もう大丈夫だ。怖い思いをさせて済まなかったな」

「うぅ……!ぐす……っ!ひっく……!ああぁぁぁぁ…………っ!!」

「だがな、カナちゃん。冒険者になるという事は、さっきみたいに男に襲われるという危険もまた付き纏うんだ」

「うう……、ぐす……、ひっく……!はい……」

「それに、ここでもさっき見たいな質の悪い酔っぱらいもいる。ここでなら俺や他の皆が守ってくれるだろうが、冒険者となったらそうはいかない。自分の身を守るにはカナちゃん自身が強くならないといけない。」

「はい……、ぐす……。ううぅぅぅ……」

「まずはその練習だ。変にナンパしてきたり身体を触ろうとしてくる奴がいたら遠慮はいらない、全力でぶん殴れ!あとの責任は俺が持つ!」

「……はいっ!」

 自分の身は自分で守らないといけない……。
 私は涙を拭うとグレンさんの言葉に力強く頷いた!

「それじゃ、俺はこれで失礼する」

「あの……っ!助けてくれて本当にありがとうございましたっ!」

 そして、私は助けてくれた銀髪の冒険者の男性へと頭を下げてお礼の言葉を述べたのだった。


 ◆◆◆


 そして翌日……。

「この昨日はよくも私の身体を好き勝手に触ってくれたな……っ!!」

 昨日の痴漢をしてきた男性冒険者の一人が性懲りもなく冒険者ギルドへとやってきたのを見つけた私は、全力で走るとその男の股間を全力で蹴り上げたっ!

 その後、男性冒険者は股間を押さえて悶絶していたが、そんな事は知ったことでは無いと言わんばかりに何事もなかったかのように私はホールの仕事に就いたのだった。
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