チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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三章 旅立つ少女

リーツェの森

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 野盗の襲撃を退け、馬車が山道を抜けると、右側に海が見えてきた。
 見えてきたと言っても、街道からはかなりの距離があり、すぐに行けるという訳では無い。

 その海に乗客の子供は初めて海を見るのか、かなりはしゃいでいた。
 馬車の御者越しに前を見ると、遠くに街が見えてくる。

 ラウル同様に周囲を防護壁で覆われ、街の直ぐ側には船"らしきもの"が見える。

 「らしきもの」と言うのは街からは遠くてハッキリとは見えないからだ。

「カナ、見て!リーツェが見えてきたよっ!」

 街が見えてきたことで、子供のようにはしゃぐミーナ。
 先程、野盗を瞬時に倒していたのと同一人物とはなかなか思えない。

 馬車は街道を通り、日が傾きだした頃、森の中へと入っていく。
 ミーナの話では、ラウル同様リーツェの近くにも森があるらしい。

 森の中は馬車が通れるように林道が整備されており、その脇にホーンラビット達の姿が見える。
 どうやら、この辺りにもホーンラビットが生息しているようだ。

「夜になる前にリーツェに着けてホッとしますなぁ……」

「そうですね、野盗が出た時はどうなるかと思いましたが、無事につけて良かったです……」

 馬車の中で人々の話し声が聞こえてくる。
 夜になると何かあるのだろうか……?

 思い付く限りでは門が閉められることくらいだけど……。

「ミーナ、夜になると何かあるの……?」

「夜になると、この辺りの魔物が活発化するんだよ」

 なるほど、魔物が活発になるのか……。
 だから、夜になる前に着きたいという事らしい。

「ミーナ、この辺りにはどんな魔物が出るんだ?」

「この辺りにはオウルベアが出るんだよ」

「オウルベア……?」

 聞いたことのない魔物の名前だ。

 名前からしてフクロウとクマを合わせた感じだろうか……?
 たぶんオーガグリズリー同様、獰猛な猛獣なんだろうなぁ~……。

「オウルベアは熊の体にフクロウの頭を乗せたような魔物で、かなり凶暴な性格なんだ。おまけに暗いところでも凄く目が利くんだよ。その強さはオーガグリズリーに勝るとも劣らないよ」

 えぇ~……、あれより強いのか……。
 オーガグリズリーとは戦ったことはあるけど、ミリアさんの援護があって運良く勝てた訳だし、オウルベアはそれ以上となると、出来れば出会したくはない……。

「それは、リーツェの辺りに住む街の人や冒険者は大変だろ……」

 ミーナの話にバッシュさんは腕組みをしながら聞いていた。

「そうなんだよね……、オウルベアの討伐依頼は毎日のように出るし、冒険者ランクCになる為にはオウルベアを倒さないといけないしで大変だったよ……」

 ん……?"大変だった"……?

 え……?と言うことはミーナはオウルベアを倒した事があるたいうことなのかな……?

「え……?それはつまり、ミーナはオウルベアを倒したことがあるってこと……?」

「うん……?あるよ。一人で倒すのは無理だからね、他の人と協力して倒したよ」

「ということは……ミーナはCランク……?」

「そうだよ?あれ、言ってなかったっけ?」

 うん、聞いてない……。
 なるほど、だからあれ程強いのか……。

「そういうカナは?」

「私は……まだD……」

「そうなんだね。もし、リーツェにいる間にCランクに上げる事があったらボクも手伝うよ」

 ミーナは屈託のない笑顔で「にしし」と笑っていた。
 この笑顔を見るだけでミーナは人当たりのいい人だと言うことが分かる。

「冒険者ランクか……、一応俺も冒険者だぜ」

「え……っ!?」
「え……っ!?」

 突然のバッシュさんの発言に私とミーナの声が被る。

「驚くことは無いだろ……。俺だってランザに向けて旅をしているんだ。それに、冒険者として旅をしたほうが色々と面倒事が省けるからな」

「面倒事って、例えばどんなのですか?」

「そうだな……、まずは冒険者カードで身分証明がしやすくなる。僧侶だって言っても僧侶の身分証なんて無いからな。それに、冒険者だったら武器を持っていてもそこまで不審がられない」

 なるほど……。

 ラウルでもそうだったけど、街に出入りするのに身分の証明が求められる事がある。
 大きな街ほど、そのようなセキュリティがしっかりとされているのかも知れない。

 そういう意味では冒険者カードは身分を証明するのに最適だと言える。
 あと、武器も冒険者なら持っていても不思議では無い。

 逆に冒険者でもない人が武器を持っていたら怪しまれてしまうだろう……。

「お……おい……っ!あれ見ろよ……!誰かがオウルベアに襲われてるぞ……っ!!」

 突然馬車の乗客が騒ぎ出す。
 そのうちの1人が指を指す方向を見ると、1人の冒険者と1匹の熊のような猛獣の姿があった。

 その猛獣は馬車からはかなり距離があるものの、2本の太い脚で立ち、背中をこちらに向けてはいるが茶色い毛並みの熊の巨体にフクロウような頭が付いているのを見て取れる。

(あれが……オウルベア……?)

 よく見ると、その冒険者は完全に腰を抜かしており、そんな冒険者にオウルベアは今にも襲いかかろうとしていた……っ!

「いけない……っ!!」

 気が付いた時には私は馬車を飛び降り、オウルベアへと駆け出していた!

 私は剣を抜き、盾を構えるとオウルベアとの距離を縮めていく。

 そんな私に気が付いたのか、オウルベアはこちらを向くと、オウルベアは熊のようなフクロウのような明らかに敵意のある鳴き声を上げ、両手を広げて威嚇のホーズを取ってきたのだった……!
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