チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

文字の大きさ
64 / 214
三章 旅立つ少女

リーツェでの初仕事

しおりを挟む
「ミーナ、君に仕事を頼みたいんだが、いいかい?」

 冒険者ギルドで食事を済ませると、ミシェルさんがミーナに1枚の依頼書を見せている。

「なにこれ……?うぇぇ……っ!?これボクがするの……っ!?」

 依頼書を見てミーナは心底嫌そうな顔をしている。一体何が書かれているのだろう……?

「今のところ、他に頼める奴が居なくてね……。一人で行けとは言わない。メンバーはあんたに任せるよ」

「カナ……っ!これ一緒にやろうっ!!」

 ミシェルさんの話が終わると同時にミーナが私の所へとやって来て、依頼書を見せてくる。
 依頼書には……。

 地下下水道のスライム駆除

 報酬金 6万エント
 依頼主 リーツェの街

 と書かれていた。

「スライム駆除……?」

「そう……!スライムだよ!スライム……っ!ボク、スライムだけは苦手なんだよ……っ!!」

 スライムと聞いて真っ先に思い付くのは、某RPGゲームに出てくるザコキャラだ。

「スライムってえのは、水辺とかに住む、ゲル状の魔物だ。物理攻撃が効かないどころか、変に斬ると分裂してしまうという厄介な奴さ」

 バッシュさんが、スライムについての補足説明をしてくれる。
 なるほど、某ゲームのとは全く違う訳か……。

「弱点はないんですか……?」

「あるぜ。スライムは魔法に弱い。特に炎系の魔法にな」

「ボクは魔法とか使えないからどう頑張ってもスライムには勝てないだよ……っ!お願い……!手伝って……っ!!」

ミーナは手を合わせて、真剣に頼み込んでくる。
まあ、一応パーティを組んだわけだし、無下にも出来ないか……。

「いいけど、私もあまり魔法は得意じゃないよ……?何と言うか……、魔力容量……?が低いのかも……」

「なら、俺も同行しよう」

「いいの……?バッシュ……」

「ああ、構わんさ。ランザも急ぐ旅じゃない。それに、旅をするにも金がかかる。金を稼ぐためにも冒険者をやってるのさ」

 バッシュさんはニヤリと笑いながら、指でお金のマークを示していた。

 バッシュさんの言うことも、確かに分からなくはない……。
 無いのだが……、僧侶の言うことだろうかと思わなくもない……。

「ありがとう~……っ!カナ!バッシュ……っ!!という訳でミシェルさん、この依頼ボク達三人で行ってくるねっ!」

「いいけど、そっちの二人の冒険者ランクはどのくらいなんだ……?あまり低い奴を行かせる訳には行かないからね」

「私はDランクです」

「俺はAだ」

 私とバッシュさんはミシェルさんに冒険者カードを見せる。

 というか……。

「バッシュさんAランクなんですか……っ!?」

「ああ、そうさ。別に見せびらかすものでもないからな」

 バッシュさんには悪いけど、僧侶をしながらと言っていたので、私と一緒くらいかと思った……。

「なるほどね。カナのDランクというのが少し気にかかるが、CランクのミーナとAランクのバッシュがいれば大丈夫だろう……。それじゃあ、任せたよ」

 私達は依頼を引き受けると、冒険者ギルドを後にした……。


 ◆◆◆


「ミーナ、下水道ってのはどこから入るんだ……?」

 冒険者ギルドを出た後、バッシュさんがミーナに歩きながら尋ねる。

「下水道へは中央通りから入るんだよ。そこに下水の本管が通ってるよ。スライムはそこにいるんだ」

「なんで、下水にスライムがいるの……?」

「スライムは下水から流れ込んでくるゴミを消化してくれているんだが、放って置くと増えすぎて下水が詰まっちまうんだ。俺もしたことあるが、中々面倒な仕事だ……」

 私の質問に、バッシュさんが苦笑しながら説明してくれた。
 つまり、スライムは管理が必要らしい……。

「ん……?でも、ラウルではそんな仕事したこと無かったような……?」

「それは単純にカナのランクが低くて回ってこなかったんだろ……」

 なるほど、ということは今まではラウルでも別の冒険者の人達が引き受けていたという事なのだろう……。

「二人とも、もうすぐ中央通りに着くよ」

「ミーナ、待ってくれ。その前にマジックショップに寄ってくれ」

「バッシュさん、どうしたんですか?」

「スライムを倒しに行くのなら炎の魔法が必要だ。俺は僧侶だから、光魔法や神聖魔法なら使えるが、炎は無理だ。ミーナに至っては魔法自体使えない。カナはファイヤーバレットくらいは使えるだろ……?」

「はい、それくらいなら使えます。でも、魔力容量が低いのか、威力が弱くて……」

「人間は魔力が低いからな……。異世界から来たというカナは特に低いんだろう。だから、マジックショップで魔力の底上げをするアイテムを買いに行くんだ。俺の魔法や魔銃でも倒せるが、一人では流石にキツイからな」

「それなら、マジックショップは中央通りの近くにあるから、先にそっちに寄ろう」

 私達は一先ずマジックショップへと目指す事となった。


 ◆◆◆


「いらっしゃいませ」

 マジックショップへとたどり着くと。年老いたお婆さんではなく、若い女性がカウンターに座っている。

 私のイメージでは、魔法おババみたいなのがいて、「イィ~ヒッヒッヒ……!よく来たねぇ、今日は何の用だい……?」と、そんなイメージあったのだが全く違っていた……。

 店内を見渡すと色んな物がうられている。
 宝石や装飾品を始め、何かの目玉やらコウモリの羽のようなもの、さらには瓶詰めの何かの虫まで売られている。

 宝石や装飾品ならまだいいけど、目玉とか虫とかはっきり言って気色悪い……。

「今日は何をお求めですか?」

「ああ、魔道士の腕輪を2つ欲しいんだが……」

「こちらですね。2つで4万エントになります」

 店員さんが2つの腕輪を取り出すと、バッシュさんは代金を支払らい、その2つの腕輪を私へと手渡した。

「バッシュさん……?」

 その腕輪は縦の幅が広く、綺麗な銀色をしており、真ん中になにかの大きな赤い宝石のようなものが埋め込まれている。
 そして、上下の縁や宝石の周りには青い色の美しい装飾がほどこされている。

「カナ、それを両腕に着ければ魔法の威力が上がる」

「あの……、お金……」

 私が財布からお金を取り出そうとすると、バッシュさんから止められた。

「気にするな、昨日と今日カナに迷惑をかけたからな。そのお詫びと思ってくれ」

「バッシュさん……、ありがとうございます……」

 男性から何か身に付ける物をプレゼントされるなんて初めての経験だ……。

 私は少し照れながら魔道士の腕輪を腕へと着けた。

 厳密に言えば今身に着けている装備は、グレンさんやアルトさんから貰ったと言えばそうなるのだが、どちらかと言えばあれは餞別や、ディンさん達のパーティ全員から貰ったということになるのだろうから、ノーカンのような気もする……。

「それじゃあ、改めてスライムを倒しに行くよ……!」

 こうして私達はスライムを倒しに下水道へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...