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三章 旅立つ少女
新たな旅立ち
冒険者ギルドを出た私は、ミーナの家へと向かっていた。
場所は以前タック君を送って来たことがあるため問題はない。
ないのだが……、流石に模擬戦とは言え、怪我をさせた相手に手ぶらで行くのも気が引けたため、商店街で果物の詰め合わせが入ったカゴを買って向かうことにした。
「あの……、ミーナ……?」
恐る恐るミーナの家のドアをノックする。
もし、出てこなかったらどうしようという一抹の不安を感じつつも、玄関の前で待っていると、そのドアが開いた。
「あ……、カナ。いや~……、見事に負けちゃったよ……」
そこには意識を取り戻したミーナがお腹を擦りながら苦笑していた。
かなり強力な一撃がお腹に当たったためもしかしたらかなりの深手を負わせてしまったのではないかと危惧していたが、どうやら無事なようだ。
「ミーナ……、ごめんね……。お腹大丈夫……?」
「大丈夫だよ。バッシュにとびきりの治癒魔法で癒やしてもらったから。それより、冒険者ランクがCに上がったんでしょ?おめでとう」
ミーナは嬉しいような寂しいような、そんな複雑な笑みを浮かべて私のCランク昇進を祝ってくれた。
「ミーナ……、ありがとう……。それでね……、私ランザ大陸へ行こうと思う……」
「……そっか。ボクは妹や弟がいるからここでお別れだね」
私の言葉を聞いてミーナは少し寂しげな笑みを浮かべていた……。
ミーナには妹や弟がいる……。その子らを置いてはやはり遠くへは行けないのだろう……。
「またリーツェに来ることがあればその時は必ずミーナに会いに行くよ」
「うん、分かった。待ってるね……」
「それじゃあ……、またね。あとこれ、みんなで食べて……」
私は手に持っていた果物の詰め合わせが詰まったカゴをミーナへと手渡す。
「ありがとう、カナ。もし、またリーツェに来ることがあったら必ず顔を見せてねっ!」
「うん!必ず顔を見せるよっ!」
私は力強く頷くと、ミーナの家を後にして今度は宿屋へと戻った。
◆◆◆
「カナ、挨拶は済んだのか……?」
宿屋に戻ると、ベッドの上に座っているバッシュの姿があった。
もうある程度荷物が片付いているのか、バッシュの周りには何も置かれては居ない。
「うん……、ミシェルさんとミーナにお別れの挨拶をしてきたよ」
「そうか……。それで、いつ頃この街を出るんだ……?」
「もうすぐ船が出るって言ってたから今日にでも出ようと思う」
私はそう言いながら荷物を片付けていく。
この街に来て一ヶ月と少し……。
色んな思い出が出来た……。
ミーナとの出会い、三人で行った地下下水道のスライム退治……。
そして、ミーナとの戦い……。
ここでの思い出も一緒に詰め込むように荷物を魔法のポーチへと仕舞っていく……。
「分かった……。では行こうか……」
すべての荷物をしまい終えた私達は宿屋を後にした……。
◆◆◆
宿屋を出た後、港へと行くと船に乗ろうとする多くの人で混雑していた。
私達はどうにかランザ大陸のサーミラという街に行く船の切符を買うと、港に溢れている人の壁をかき分けどうにか船に乗り込む。
私の乗った船は大型の木造の帆船で、出港に向けて、大小様々な荷物が積み込まれ、そして、乗客と思われる多くの人達も船へと乗り込んでいく。
「え~っと……、私の部屋は……」
船の中に入ると、買った切符に書かれている部屋番号を探しながら歩く。
私が買ったのは一等船室の304という部屋だ。
「304……、304……。あ、ここだ……」
目的の部屋へと辿り着き、ドアを開けると中はかなり広い。
窓際の部屋で、外を見るとリーツェの港が見える。
さらに、ベッドとお風呂が付いた上等の部屋で、その分値段も高く8万エントくらいした。
それはいいのだが……。
「ほお~……、ここが俺達の部屋か」
なぜか今回もバッシュも一緒……。
「……なんでバッシュも一緒の部屋なの?」
「別にいいじゃねえか。旅は道連れってやつさ」
私がため息を付きながらバッシュの顔を見ると、彼はにこやかな笑みを浮かべていた。
---
船に乗り込んでどのくらい経っただろう……。
何かの気配を感じて窓から外を見ると、多くの人が見送りに来ている中、ミーナとタック君の姿を見つけた。
タック君は泣きながら何かを言っているようだが、ここからでは聞こえない……。
ミーナは少し寂しそうな笑みで手を振ってくれている。
私も手を振り返すと、出港の準備が出来たのか、船は港を離れていく。
ミーナとタック君はずっと手を振ってくれていた。
そして、船の角度が変わると、もうリーツェの港は見えなくなった。見えるのは海だけだ……。
そう言えば、ミーナとはラウルを出発した馬車の中で出会った。
とても人懐っこい性格で、すぐに仲良くなれた。
共に過ごせた時間は短かったけど、私はミーナの事もずっと忘れない……。
別れの寂しさと、新たな出会いに期待する私を乗せて、船は海を進むのだった……。
◆◆◆
サイドストーリー
―タックー―
「うぐ……!ぐす……!うぅぅ……っ!」
「ほら、タック泣かないの」
カナ姉ちゃんがリーツェを旅立っていった……。
その寂しさと悲しさで目からは涙が止まらない……。
そんな俺をミーナ姉ちゃんが優しく頭をなでてくれている。
思えばこの一ヶ月くらい、ずっとカナ姉ちゃんと過ごしていた。
最初に会ったのはビーチで遊んだときだったけど、その後カナ姉ちゃんの特訓だって言ってバッシュ兄ちゃんと一緒にカナ姉ちゃんを捕まえる鬼ごっこみたいなのをやった。
何度も静電気でビリビリさせたのは少し申し訳なかったと思うけど、それでも結構楽しかった。
その後も、目が見えないカナ姉ちゃんの手を引いて街を歩いたり、買い物をしたり、時には一緒に食事をしたこともあった。
目が見えないカナ姉ちゃんの手伝いをすると、バッシュ兄ちゃんは怒ってたけど、カナ姉ちゃんは喜んでくれていた。
その時の笑顔は今も覚えている。
俺はカナ姉ちゃんの笑顔が好きだった。
ずっとカナ姉ちゃんはリーツェにいてくれるものだと、ずっと遊んでくれるものだと勝手に思い込んでいた……。
でも、カナ姉ちゃんは俺を置いていってしまった……。
置いていかれた理由は俺が子供だから……、連れて行っても足手まといになるから……なら……、俺は……。
「ミーナ姉ちゃん……。俺……、立派な男になる……!そして冒険者になってカナ姉ちゃんを追いかけるんだ……っ!!」
「へえ~……、タックになれるのかな?」
「なる……!いや、絶対なって見せるよ……っ!!」
俺はもう泣かない……!
そして、いつか必ずカナ姉ちゃんと冒険をするんだ……っ!!
場所は以前タック君を送って来たことがあるため問題はない。
ないのだが……、流石に模擬戦とは言え、怪我をさせた相手に手ぶらで行くのも気が引けたため、商店街で果物の詰め合わせが入ったカゴを買って向かうことにした。
「あの……、ミーナ……?」
恐る恐るミーナの家のドアをノックする。
もし、出てこなかったらどうしようという一抹の不安を感じつつも、玄関の前で待っていると、そのドアが開いた。
「あ……、カナ。いや~……、見事に負けちゃったよ……」
そこには意識を取り戻したミーナがお腹を擦りながら苦笑していた。
かなり強力な一撃がお腹に当たったためもしかしたらかなりの深手を負わせてしまったのではないかと危惧していたが、どうやら無事なようだ。
「ミーナ……、ごめんね……。お腹大丈夫……?」
「大丈夫だよ。バッシュにとびきりの治癒魔法で癒やしてもらったから。それより、冒険者ランクがCに上がったんでしょ?おめでとう」
ミーナは嬉しいような寂しいような、そんな複雑な笑みを浮かべて私のCランク昇進を祝ってくれた。
「ミーナ……、ありがとう……。それでね……、私ランザ大陸へ行こうと思う……」
「……そっか。ボクは妹や弟がいるからここでお別れだね」
私の言葉を聞いてミーナは少し寂しげな笑みを浮かべていた……。
ミーナには妹や弟がいる……。その子らを置いてはやはり遠くへは行けないのだろう……。
「またリーツェに来ることがあればその時は必ずミーナに会いに行くよ」
「うん、分かった。待ってるね……」
「それじゃあ……、またね。あとこれ、みんなで食べて……」
私は手に持っていた果物の詰め合わせが詰まったカゴをミーナへと手渡す。
「ありがとう、カナ。もし、またリーツェに来ることがあったら必ず顔を見せてねっ!」
「うん!必ず顔を見せるよっ!」
私は力強く頷くと、ミーナの家を後にして今度は宿屋へと戻った。
◆◆◆
「カナ、挨拶は済んだのか……?」
宿屋に戻ると、ベッドの上に座っているバッシュの姿があった。
もうある程度荷物が片付いているのか、バッシュの周りには何も置かれては居ない。
「うん……、ミシェルさんとミーナにお別れの挨拶をしてきたよ」
「そうか……。それで、いつ頃この街を出るんだ……?」
「もうすぐ船が出るって言ってたから今日にでも出ようと思う」
私はそう言いながら荷物を片付けていく。
この街に来て一ヶ月と少し……。
色んな思い出が出来た……。
ミーナとの出会い、三人で行った地下下水道のスライム退治……。
そして、ミーナとの戦い……。
ここでの思い出も一緒に詰め込むように荷物を魔法のポーチへと仕舞っていく……。
「分かった……。では行こうか……」
すべての荷物をしまい終えた私達は宿屋を後にした……。
◆◆◆
宿屋を出た後、港へと行くと船に乗ろうとする多くの人で混雑していた。
私達はどうにかランザ大陸のサーミラという街に行く船の切符を買うと、港に溢れている人の壁をかき分けどうにか船に乗り込む。
私の乗った船は大型の木造の帆船で、出港に向けて、大小様々な荷物が積み込まれ、そして、乗客と思われる多くの人達も船へと乗り込んでいく。
「え~っと……、私の部屋は……」
船の中に入ると、買った切符に書かれている部屋番号を探しながら歩く。
私が買ったのは一等船室の304という部屋だ。
「304……、304……。あ、ここだ……」
目的の部屋へと辿り着き、ドアを開けると中はかなり広い。
窓際の部屋で、外を見るとリーツェの港が見える。
さらに、ベッドとお風呂が付いた上等の部屋で、その分値段も高く8万エントくらいした。
それはいいのだが……。
「ほお~……、ここが俺達の部屋か」
なぜか今回もバッシュも一緒……。
「……なんでバッシュも一緒の部屋なの?」
「別にいいじゃねえか。旅は道連れってやつさ」
私がため息を付きながらバッシュの顔を見ると、彼はにこやかな笑みを浮かべていた。
---
船に乗り込んでどのくらい経っただろう……。
何かの気配を感じて窓から外を見ると、多くの人が見送りに来ている中、ミーナとタック君の姿を見つけた。
タック君は泣きながら何かを言っているようだが、ここからでは聞こえない……。
ミーナは少し寂しそうな笑みで手を振ってくれている。
私も手を振り返すと、出港の準備が出来たのか、船は港を離れていく。
ミーナとタック君はずっと手を振ってくれていた。
そして、船の角度が変わると、もうリーツェの港は見えなくなった。見えるのは海だけだ……。
そう言えば、ミーナとはラウルを出発した馬車の中で出会った。
とても人懐っこい性格で、すぐに仲良くなれた。
共に過ごせた時間は短かったけど、私はミーナの事もずっと忘れない……。
別れの寂しさと、新たな出会いに期待する私を乗せて、船は海を進むのだった……。
◆◆◆
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―タックー―
「うぐ……!ぐす……!うぅぅ……っ!」
「ほら、タック泣かないの」
カナ姉ちゃんがリーツェを旅立っていった……。
その寂しさと悲しさで目からは涙が止まらない……。
そんな俺をミーナ姉ちゃんが優しく頭をなでてくれている。
思えばこの一ヶ月くらい、ずっとカナ姉ちゃんと過ごしていた。
最初に会ったのはビーチで遊んだときだったけど、その後カナ姉ちゃんの特訓だって言ってバッシュ兄ちゃんと一緒にカナ姉ちゃんを捕まえる鬼ごっこみたいなのをやった。
何度も静電気でビリビリさせたのは少し申し訳なかったと思うけど、それでも結構楽しかった。
その後も、目が見えないカナ姉ちゃんの手を引いて街を歩いたり、買い物をしたり、時には一緒に食事をしたこともあった。
目が見えないカナ姉ちゃんの手伝いをすると、バッシュ兄ちゃんは怒ってたけど、カナ姉ちゃんは喜んでくれていた。
その時の笑顔は今も覚えている。
俺はカナ姉ちゃんの笑顔が好きだった。
ずっとカナ姉ちゃんはリーツェにいてくれるものだと、ずっと遊んでくれるものだと勝手に思い込んでいた……。
でも、カナ姉ちゃんは俺を置いていってしまった……。
置いていかれた理由は俺が子供だから……、連れて行っても足手まといになるから……なら……、俺は……。
「ミーナ姉ちゃん……。俺……、立派な男になる……!そして冒険者になってカナ姉ちゃんを追いかけるんだ……っ!!」
「へえ~……、タックになれるのかな?」
「なる……!いや、絶対なって見せるよ……っ!!」
俺はもう泣かない……!
そして、いつか必ずカナ姉ちゃんと冒険をするんだ……っ!!
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