チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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五章 探し求める少女

カナ、拐われる

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 翌朝……、私とザクスは冒険者ギルドへとやって来ていた。
 朝ということもあり、冒険者ギルドのホールは多くの冒険者達で、賑わっている。

「それでねカナ。タックにカナが来たって話したら会わせろってうるさいんだよ……」

 そして、私とザクスは今ミーナと食事をしている。
 ミーナのほうが先に来ていたみたいで、同じ席に招かれたからだ。

「タックと言うのはミーナの弟か何かか……?」

 そういえばザクスとミーナは直接会うの初めてだっけ……?

「そうだよ。タックはボクの弟で、カナのことが大好きなんだって」

「ほぉ~、カナは意外とモテモテなんだな」

「はいはい……」

 変に茶化してくるザクスを、私は手をヒラヒラとと振って軽くあしらう。

 いや、タック君はまだ10歳くらいだよ……?
 それに好きって言ってもミーナが好きって言ってるのと同じだと思うよ?

「そんな事より、今日はクエスト受けるんだろ?何にするんだ?」

 ザクスは後ろにある依頼書が貼られている掲示板を親指で指差す。
 流石にここからでは掲示板自体は見えるが、書いてある内容までは分からないので後で見てみよう……。


 食事を済ませたあと、私達は掲示板の前へとやって来る。
 貼ってあるものは大きく分けて討伐依頼、指定品の収集依頼、護衛依頼の3種類……。

 どれにしようか……。

「これとかはどうだ?」

「これ本当に受けるの……?」

 ザクスが商人の護衛依頼と書かれた依頼書を指差す。

 商人の護衛依頼

依頼内容 リーツェからベーテまでの護衛
依頼主  ハンス
報酬   20万エント
特記事項 冒険者ランクB以上

 と書かれていた。

「商人の護衛……か。」

 依頼書には、リーツェからベーテまでの護衛と書かれている。

「護衛任務って大丈夫かなぁ~……。私、護衛とかしたこと無いよ……?それにベーテってどこ……?」

「ベーテはここから更に南に行った小さな町だ。俺達なら余裕だろ……?それとも、カナは昨日俺とヤッたから動きが鈍いか?」

「な……っ!?」

 私の顔が一気に赤くなる……!

 こいつはとんでもないことをサラリと……!
 本当にこの男はデリカシーがない……っ!

「へぇ~……。昨日あれからザクスとヤッたんだ……。カナどうだった?ちゃんと気持ちよくしてもらえた……?」

「ん……?んん~……?えっと……、そ……そうだねぇ~……。」

 ミーナがニヤニヤしながら耳打ちしてくるが、私は適当に誤魔化しておく事にした……。
 実際にはかなり気持ちよかった……。

 何と言うか……、私のとジャストフィットだったと言うか……。
 思いだしたら変な気分になってしまいそうだから止めておこう。

「そ……それよりこれ受けてくるね……!」

 私は掲示板から商人の護衛の依頼書を剥ぎ取ると、追求から逃げるように受付に持って行く。

 受付のスタッフの話では、依頼主との打ち合わせが必要なようだ。

「それじゃあザクス、ミーナ、私打ち合わせに行ってくるね。」

 私はザクスとミーナに先方との打ち合わせがあることを伝え、一人でその依頼主がいると言う気がリーツェの南門へと向かう。

 受付のスタッフの話では、ラウル方面から入ってくるのが北門、ベーテへ行くのが南門らしい。

 あとは東門もあるようだが、そこに用はない。


 ◆◆◆


 南門へと到着すると、商人のものだろうか、一台の馬車と、商人と思われる2,3人の人が見える。

「すみません、護衛依頼を受けた者なんですが、ハンスさんはいますか……?」

 私はその商人と思われる人達に声を掛ける。

「おお、あなたが……。屈強な男性かと思いきや、このような可愛らしいお嬢さんが受けてくれるとは嬉しい限りです」

 そのうちの一人が前へと歩み出てきた。
 その男性はモノクルを掛け、少し怪しげな笑みを浮かべていた。

 どうやらこの人がハンスという人らしい。
 あとに思えば、この依頼は受けるべきではなかった……。

「あの、打ち合わせの方をお願いします。」

「その前に冒険者ランクの提示をお願いできますかな?」

 私はハンスさんに言われ、冒険者カードを手渡す。

「カナさんですか……、おお、Aランク。これは心強い……!」

「では、打ち合わせをさせて頂きます……。スリープ……!」

 ハンスさんの魔法を受け、私は猛烈な眠気に襲われ、そして深い眠りへと落ちたのだった……。


 ◆◆◆


「……うまく行きましたね、親分」

「全くだ。護衛依頼と偽って、ノコノコとやって来た冒険者を捉え、奴隷市場に売り飛ばす……。我ながらうまい商売だ。おい、この小娘をさっさと馬車に乗せろ!」

 カナが眠りに落ちたのを確認すると、馬車からも数人の男達が出てくると、眠っているカナを馬車へと積み込む。

「丁重に扱えよ?その小娘も大事な商品なんだからな。胸は小さいようだが、それなりに金にはなるだろ」

「女を乗せました」

「よし、ではさっさとリーツェを出るぞ!小娘の仲間が探しに来たら面倒だからな……!」

 カナを乗せた馬車はリーツェを出ると、どこかへと去っていったのだった……。


 ◆◆◆


~サイドストーリー~

 ーザクスー

 冒険者ギルドで俺とミーナは不安を募らせていた……。
 カナが帰ってこないのだ……。

 遅い……、カナが依頼人の打ち合わせに行くといってからかなり時間が経つ……。
 ミーナも不安げな様子で冒険者ギルドの入口を見つめている……。

 時折ここへ入ってくる人が来ると、カナかと思い入口へと視線を向けるも、人違いだと気付き俺とミーナの間に思い沈黙が流れる……。
 何かあったのだろうか……?

「ミーナ……、カナの様子を見てくる……!」

 居ても立っても居られなくなった俺は、席を立つ。

「ボクも行くよ……っ!」

 ミーナもまた席を立ち上がる。

 彼女もまたカナが心配でたまらないようだ……。
 受付に問うと、カナは南門へと向かったらしいく、俺達は南門へと向かった……!


 南門へとたどり着くと馬車どころか商人らしき者の姿がない……。

 カナはどこに……?
 周囲を見渡すと地面に何かが落ちている事に気がついた。

(これは……?)

 拾い上げてみると、それは魔法のポーチだった……!

 まさか……!

 俺は慌てて中身を確認する……!
 すると、中からカナの部屋着やアラクネの糸袋、他にもカナの持ち物が入っていた……!

「ミーナ大変だ……!カナが……拐われたかもしれん……っ!」

「……っ!?」

 ミーナはショックのあまり、動揺を隠せずにいた……。

 もしかすると、護衛依頼というのは偽りのもので、依頼主は人拐いだったようだ……!

 なぜ俺もついて行かなかったのか……!
 今になって己の不甲斐なさを後悔する……っ!!
 俺は好きな女カナ一人も守れないのか……っ!!

「く……!くっそーーーーー………っ!!!」

 俺は自分の不甲斐なさと人拐いへの怒りでただ叫び声を上げることしか出来なかった……。
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