チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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八章 決意する少女

マッドサイエンティスト、ザイン

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 スケルトンナイトを倒した後、進むと下へと続く階段が見えてきた。

 階段を降りると、すぐ目の前には木の扉があり、その扉の先から物凄い邪悪な気配を感じる。

『どうやらこの先にザインがおるようじゃの』

「アレク、分かるの?」

『こんな死体だらけの所でこんな気配を出せるのは生きておる者しかおるまいて。さらにこんな奥にいるのはザインの他にはおらんじゃろう』

「……確かに」

 私達は扉を開けて中に入ると、そこは明かりが灯されており、様々な器具が所狭した置かれていた。

 周囲に置かれているのは何かの大きなタンクのようなものに、太いホースのようなケーブルのような黒くて太い何かが地面を這っている。

 それらのホースのようなものはタンクに繋がれ奥へと続いているようだ。
 その光景は地下墓地と言うよりも、どこかの実験室にも似ている。

『なんじゃ、このおびただしい数の魔力タンクと魔導ケーブルは……?』

「魔力タンクと魔導ケーブル……?」

 私はアレクさんに尋ねた。
 フィーリエもまた頭にハテナマークを浮かべている様子だった。

『魔力タンクは文字通り魔力を貯蔵するタンクじゃ。魔導ケーブルはタンクに溜めた魔力を送ったりするものなのじゃが、ザインめこのようなもので何をしようとしているのじゃ……!』

 アレクさんの話を聞くとなんだか嫌な予感しかしない。
 私達は地面を這うケーブルに沿うように奥へと進んでいった。


 ◆◆◆


『なんじゃこれは……っ!?』

 ケーブルに沿って進んでいくと、そこは大広間となっていた。

 天井の高さも高くなっており、7メートルはありそうだ。

 そして奥、魔導ケーブルが続く先へと目をやると高さ3メートルほどだろうか、大きな窓半円状のドームみたいなものが見える。

 そのドームは時折赤い光を発しており、それがただの置物ではないことだけは私にも分かる。

「誰ですか?私の研究室に無断で入り込んだ不届きな者は?」

 そのドームに気を取られていると不意に声をかけられた!

 声のする方へと振り向くと、そこには一人のエルフの姿があった。
 そのエルフは白衣のようなものに見を包み、メガネを掛けていた。

『ザイン……!貴様ここで何をしておるっ!それに向こうにあった魔力タンクやこの魔導ケーブルはなんじゃっ!?貴様は一体ここで何をする気じゃっ!?』

 ザイン……!
 たしかに今アレクさんはあのエルフに対してザインと言った。

 どうやらあのエルフがザインという死霊使いネクロマンサーのようだ。

 アレクさんはザインに対してかなり剣幕を立てている。
 あの口ぶりからして二人は面識があるのかもしれない。

「これはこれは我が師アレク先生ではありませんか。リッチにして差し上げてから、急にいなくなったので心配していたのですよ」

『黙れっ!誰もそんな事を頼んでおらぬわっ!!それに貴様なぞ儂の弟子でも何でもないっ!この腐れ外道めっ!!』

「アレクさん、あのザインって何者なんですか……?」

『ザインは元々儂の弟子じゃったのだが、何を思うたのか死霊魔術ネクロマンシーに興味を持ちだしたのじゃ。それだけなら良いのじゃが、その研究と称してなんの罪のない人々を虐殺してはネクロマンシーの実験をしておった外道中の外道じゃっ!!』

「「な……っ!」」

 私とフィーリエは絶句した……!

「それにしても、上の階にスケルトンナイトを配置して置いたのですが、アレク先生達がここに居るということは倒されたということなのでしょうね。ま、所詮その程度だってことだったのでしょう」

「そのスケルトンナイトってジェストって人じゃ……」

「ジェストですか?そう言えば実験のために以前魂を鎧に移して、リビングアーマーにした人間がそんな名前だったような気がしますね。あなたのお知り合いですか?ま、魂を移した鎧の方には興味はありませんが、残った身体はこの私が有効利用させてもらいました。もっとも、倒されたのなら所詮は魂を抜かれたガラクタだったということでしょう」

 やっぱりあれはジェストさんの身体だったんだ……。
 それを……まるで物のように……!

 私の中に怒りの感情が沸々と湧き上がってくる……っ!

『ザインっ!儂の質問に答えろっ!ここで何をしておるっ!!』

「何ってここで研究をしているのですよ。私の最高傑作の研究を」

『最高傑作じゃと……っ!?』

「そうです!私の最高傑作、ここにある死体で作ったゴーレムですよ!そして完成の暁にはサンドラを襲い、そこに住む人々の死体を使ってアンデットのゴーレムを量産するのですよっ!!」

『なんじゃとっ!?貴様街の人々を虐殺するつもりかっ!?』

「勿論です。サンドラに住む人々には私の研究のための尊い犠牲となってもらうのですっ!」

狂ってる……、この人本当に狂ってる……っ!

『そんな事この儂が許さぬっ!大方あのドームの中にゴーレムが入っているのじゃろっ!なら動き出す前に儂が破壊するまでじゃっ!!』

「そうなんですよ。あのゴーレムはまだ完成していないのですよ。ですが……、アレク先生が来てくれた事でようやく完成します」

『どういうことじゃ……。まさか……っ!?』

「ええ!そのまさかですよっ!!」

 ザインがパチンと指を鳴らすと、ドームのような物から物凄い勢いで触手のような物が現れた!
 その触手はアレクさんの身体へと絡みつく。

『ぬおっ!?』

「アレクさんっ!?」
「アレクっ!?」

 私は剣を抜きその触手を斬ろうとするが、思いのほか早く、アレクさんはドームの中へと引摺り込まれてしまった……!

「くくくく……、ふははははは………っ!!これでようやく完成するっ!私の最高傑作がっ!立て!ブラッディ・ゴーレムっ!手始めにこの女二人を始末しろっ!!」

 ザインの叫びとともにドームにヒビが入り、音を立てて崩れさる。
 そしてその中から一体の巨大な影が現れたのだった……っ!!
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