チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

文字の大きさ
190 / 214
八章 決意する少女

ドラゴンとワイバーンの激突

しおりを挟む
 翌日、降っていた雨は夜中には止み、私は木漏れ日のさす林道を進んでいた。

 地面には昨日降った雨で水たまりができ、茂みや草には多くの水滴が残っている。


 林道は平坦な道からいつしか傾斜へと差し掛かり、森の出口が見えてきた。

 ガイラスまであともう少しだろうか……?

 そう思いながら林道をすすんでいると、不意に大きな影が差してきた。

 なんだろう……?

 空を見上げると、上空に巨大な2つのものが飛んでいる。

 それが何なのかすぐに分かった、銀色の大きな翼を持ったドラゴンと赤い飛竜ワイバーンだった……!

 このまま迂闊に森を出るとあの二匹に襲われかねない……。

 私はドラゴンとワイバーンの様子を見ていると、どこかおかしい。
 私へと気付く様子もなく二匹が争っていた。

 ドラゴンはワイバーンへと口から雷撃を放ち、対するワイバーンは口から大きな火炎弾をドラゴンへと放ちお互い激しい攻防が繰り広げられているっ!

「な……何が起こってるの……っ!?」

 理由はよく分からないけど、ここにいては危険そうだっ!

 私は急いで森の出口へと向かって走るっ!!

 すると、けたたましい声が聞こえたので上を向くと、ワイバーンに蹴られたドラゴンが物凄い速さでこちらへと落下して来ていた……っ!!

「ひ……ひいぃぃぃぃぃぃぃーーーーー…………っ!!!」

 私は火事場のなんとやらで全速力で走るっ!!

 あんなものドラゴンの下敷きになったら間違いなく死んでしまうっ!!

 ワイバーンに蹴られたドラゴンは私の僅か3メートル程後ろへと落下し、私の身体はその風圧で前へと吹き飛ばされたっ!

「ひゃあぁぁぁぁぁ……っ!?」

 吹き飛ばされた私は何度も地面を転がりながら最終的にはでんぐり返しのような体勢で止まった……。

「あたたたた……。な……何が起こってるの……?」

 起き上がって後ろを振り向くと、森の方でドラゴンとワイバーンが激戦を繰り広げていた。

 ドラゴンとワイバーンを倒せばザクスを救うための薬の材料が手に入るのだが、あの中にわざわざ突っ込んでいくほど私は無謀ではない。

 それに、吹き飛ばされて少しは離れたとはいえ、ここもまだ安全とは言い難い……。
 身の安全を確保するため私は一先ずガイラスへと向かうことにした。


 ◆◆◆


 ドラゴンとワイバーンが激戦を繰り広げていた場所から数キロ離れた頃、村へとたどり着いた。
 どうやらここがガイラスという村のようだ。

 後ろを振り向くと、この場所が山の中腹辺りにあるため、下の方でドラゴンとワイバーンが未だに激戦を繰り広げているのが見え、雷撃や火炎弾の応酬や近接戦が繰り広げられている。

 あのまま共倒れしてくれれば助かるんだけどなぁ~……。

「やれやれ……、今日も激しくやり合ってるなぁ~……。」

 下を見下ろしていると上の方から声が聞こえてきた。
 後ろを振り向くと、そこには村の人と思われる男性の姿があった。

 というか今、って言ってたけど、どう言うことだろう……?

「嬢ちゃん、あんたミンディアのほうから来たのかい?」

 下を見下ろしていた男性が今度は私の方へと視線を向けてきた。

「え……?あ、はい……、そうですけど……。」

「あんたえらい時にここに来ちまったなぁ~。何にしろ無事で良かったな」

「は……はあ……。ところで、なんでドラゴンとワイバーンが激戦を繰り広げているんですか……?それに、今って言ってましたけど、どういう事ですか……?」

「知りたいのならアタイが説明してやるぜ。」

 先程の男性の後ろにもう一人、今度は女性の姿があったのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...