罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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亜希の章 ツンデレな同居人

僕の部屋での試験勉強

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 学園祭が終わり、9月の終わりが近づいていた。  
 夕方の風が少しだけ涼しくなってきた頃、僕は自分の部屋で亜希と一緒に中間試験の勉強をしていた。

「彼方、英語の長文、また途中で寝てたでしょ」

「いや……ちょっと目を閉じただけで……」

「はいはい、じゃあ罰として次の問題、間違えたら……耳を触るからね」

「えっ!? そんな罰ある!?」

「あるのよ。私が決めたから」

 横暴だとは思うけど、こっちは教えと貰っている身……あまりのことは言えないのが現状……。

 僕は問題文を睨みながら、亜希の視線が気になって仕方がなかった。
 亜希は僕のすぐ隣で、膝を抱えてノートをめくっていた。
 その距離が、近い。いや、近すぎる。

「……彼方、集中してる?」

「してる……つもり……」

「じゃあ、次の問題。これ、訳してみて」

 亜希が指差した英文は、やけにロマンチックな内容だった。
 “Even if we are apart, I will always be thinking of you.”  
 ……なんでこんな文章選んだんだろう。

「……えっと、“離れていても、君のことをずっと考えてる”……だと思う」  

 訳しながら、なんだか自分の気持ちを言ってるみたいで、顔が熱くなる。

「正解。……でも、彼方は離れてても私のこと考えてくれる?」

「えっ……!? そ、それは……もちろん……」

 亜希はくすっと笑って、僕の耳に指を伸ばした。

「じゃあ、罰ゲームはなしね。今のは正解だったから」

「……なんだよ、触る気満々だったくせに」

「だって、彼方の耳、赤くなってて可愛いんだもん」

 僕は思わず顔を伏せた。  
 勉強どころじゃない。心臓の音がうるさすぎる。

「……ねえ彼方」

「ん……?」

「私の事……好き?」

「も……勿論だよ……!」

「じゃあ……その証拠……見せて……」

 亜希は目を閉じるとまるで誘うように唇を僕へ突き出す。

 ゴクリと喉が鳴る。  
 僕はそっと顔を近づけて、亜希の唇に触れた。

 唇が触れた瞬間、時間が止まったような気がした。  
 亜希の呼吸が、僕の頬にかかる。  
 目を閉じた彼女の表情は、どこか恥ずかしそうで、でも嬉しそうで……。

 僕はそっと唇を離すと、彼女の目を見つめた。

「……これで、証拠になったかな」  

 僕がそう言うと、亜希は小さく笑って頷いた。

「……うん。十分すぎるくらい」

 亜希は小さく笑って、僕の肩に頭を預けた。  
 その重みが、今日一日のすべてを包み込んでくれるような気がした。

「……彼方、私ね。勉強も大事だけど、こうして一緒にいられる時間のほうが、もっと大事な気がするの」

「……僕も、そう思う」

 部屋の中は静かで、ページをめくる音だけが響いていた。  
 でも、心の中では何かが確かに進んでいた。

 それは、英語の長文よりもずっと大切な“答え”だった。

「……ねえ彼方」

「ん?」

「ねえ……今日、泊まっていってもいい?」  

 亜希は少しだけ目を伏せながら、僕の顔を見た。

 その言葉に僕は一瞬息を呑むもすぐ思い出す。
 泊まるも何も、亜希の部屋は僕の部屋の二つ隣にある。

「……いいけど、亜希自分の部屋があるのでは?」

「そうね。でも……今日は、こっちの部屋で寝たいなって思って」

「え……ここで?」

「うん。だって、彼方の隣が一番落ち着くんだもん」

 亜希はそう言って、僕のベッドにそっと腰を下ろした。
 部屋着のまま、膝を抱えて座るその姿が、なんだか少しだけ大人びて見えた。

「……じゃあ、もう少しだけ勉強しよっか。あと一問だけ」

「うん。彼方が間違えたら、今度こそ耳、触るからね」

「……それ、罰じゃなくてご褒美になってる気がするんだけど」

「ふふっ、じゃあ……ご褒美にしてあげる」

 僕は笑いながら、最後の問題に目を向けた。  
 でも、視界の端で揺れる亜希の笑顔が、どうしても気になってしまう。


 問題を解き終えると、亜希が僕の肩に頭を預けてきた。

「彼方、キス……しよっか……」

「うん……」

 僕は頷いて、彼女の髪をそっと撫でると亜希とキスを交わす。
 
「ん……」

 亜希の吐息に、僕は思わずドキッとしながらも彼女のそっと彼女の手を握ると、求めるように何度もキスを交わしたあと僕たちは抱き合ったまま眠りへと落ちていった……。
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