罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

黒髪の天使降臨!

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 学園祭が始まるや否や僕の前に……いや、正確には2年B組の前に長蛇の列が出来上がっていた!

「ちょ……!焼きそば作るの間に合わない……!」

「誰か休憩中の人呼んできて……!」

 そのため焼きそばを作るのが間に合わず、まさに調理場は戦場と化していた。

「焼きそばを2つ……いや、3つくれ……!」

「こっちは5つだ……!」

 その原因は高藤の流したSNSで、それをを見てやってきたのか、学園中の男子が集まってきたいるんじゃないかというほど群がり焼きそばをいくつも注文していく。

「握手……!握手お願いします……!」

 僕は引きつった笑みを浮かべながら、差し出された手を機械的に握る。
 ……もう、感情なんて残ってない。

 そのお目当ては女装した僕との握手であり、高藤の話によれば、焼きそばを1個買うごとに一分間僕と握手ができる……らしい。

 つまり多く買えばその分僕と長く握手が出来るわけで……それを目当てに男子が群がっていた。

 中には握手したまま反対側の手で僕の手を撫で回したり、「この手はもう洗わないっ!」と豪語するものまでいた。

 流石に手を撫で回された時は顔が強張ったけど、少なくとも手は洗おうよ……。

 そう思いながらスキップしながら去りゆく男子を眺める。

「あ……あの……握手お願いできますか……?」

 しかし、中にはなぜか女性との姿もありむさ苦しい男子の手ばかり握らされていた僕にとって、女性との握手に心を癒される。

「ははははは……!好調ではないかっ!なあ、我が同士よ……!」

 高藤は僕の横に立つと高笑いを上げ僕を見つめる。

(何が同士だよ……!)

 僕は高藤をキッと睨みつける。

「そう睨みたけるな、今やお前の人気は学園中に広まっているぞ?」

 高藤はそう言い自身のスマホを僕へと見せると思わず絶句した……!

 そこには『2年B組に黒髪の天使現る!』とか、『焼きそばを買うとあの子と握手が出来る!』とか、『あの照れた顔が堪らん……!』など、高藤の投稿したSNSに多くのコメントが書き込まれていた。

 しかも、よく見れば今日が土曜ということもあってか、オタクっぽい男性や私服なのでよくはわからないけど、付属中学の男子とも言われ男子の姿まであった……!

 しかも、その付属中学の男子から「好きです!付き合ってください!」とまで言われる始末!

(高藤!どうしてくれるんだよこの状況……!)

 僕は心の中で高藤へと悪態を付きながら握手を続けた……。


 ◆◆◆


 あれからどのくらい握手をさせられただろう……、正午を過ぎた頃、焼きそばの材料が無くなったとかで休憩へと入り僕はひとまず解放された……。

 でも、材料をクラスの人達が買いに行っているため補充が行われればまた握手会が開催されるんだよね……。

「はぁ~……、疲れた……本当に疲れた……」

 僕は教室の外に設置されている順番待ちの人たちのために設けられている椅子に座ると、深い……本当に深~いため息をついた……。

「あれ……?焼きそば終わっちゃったのかな……?」

 不意に聞こえてきた声に僕は顔を上げると由奈ちゃんの姿があった。
 ……なんでこのタイミングで……!

「由奈ちゃん……?」

「え……?その声……お兄ちゃん……っ!?そんな格好で何してるの……っ!?」

 僕はつい声を出すと、由奈ちゃんは目を丸くして驚いたように口に手を当てていた。

「いや……これには色々と深い訳があって……」

 疲れ切った僕は苦笑すら出ない……。

「ちょっと待って……もしかしてお兄ちゃんが2年B組の黒髪の天使……っ!?」

 由奈ちゃんは自身のスマホに映っている動画を僕へと見せると僕は固まった……。

 なんとそこには多くの男性と握手をしているの僕の姿が映っていた……!

 何ていうか……第三者視点から見せられるとまた別のダメージが……。

「ねえお兄ちゃん!一緒に写真撮ろうよっ!」

 由奈ちゃんは僕の腕へと抱きつくとスマホのカメラで僕とのツーショットを撮る。

(もう好きにして……)

 もう抵抗する気力もないよ……。

 と、そこへ高藤が姿を現した。

「御堂、こんなところにいたのか……。もうすぐ焼きそばの補充が届くそうだ……ん……?ほう、これはこれで、実に良い。まるで“黒髪の天使とその妹”の休日風景だな」

 高藤は僕と由奈ちゃんのツーショットを見て、目を細めながらニヤリと笑った。

「違うから!少なくとも僕は天使じゃないから!」

 僕は即座にツッコミを入れるが、高藤は全く動じない。

「まあまあ、落ち着け御堂。今日はよく働いた。握手会を乗り越えたお前に、俺からの褒美だ」

「褒美……?」

「そうだ。この後お前には自由時間を与えてやる。好きに回ってこい。せっかくだし、その子と一緒にでもな」」

「え……!?」

 由奈ちゃんが僕の腕をぎゅっと掴む。

「いいの!? お兄ちゃんと一緒に回っても!」

「もちろんだ、お前のおかげで俺は十分楽しませてもらった。その礼だ」

 高藤はそう言って僕の肩をぽんと叩くが、僕は何とも釈然としない気持ちになる……。

「……本当にいいんだね?」

「もちろんだ握手係は、柊に任せてある。彼女なら問題ない。むしろ、男子の反応が楽しみだな……ふふふ……」

「えっ……柊さんが!?」

 高藤の言葉に僕は驚くと、奴は満足げに頷いた。

「柊はああ見えて意外と男子に人気だ。握手係としては理想的だろう?……さて、俺は焼きそばの補充を迎えに行く。お前はその子と楽しんでこい」

 そう言い残して、高藤は颯爽とどこかへと歩き去っていった。

「……お兄ちゃん」

 由奈ちゃんが僕の袖を引っ張る。

「由奈ちゃん……?」

「せっかくだし……一緒に回ろ? あたし、ずっとお兄ちゃんと回りたかったんだ」

「……うん。じゃあ、行こうか」

 僕は立ち上がると、由奈ちゃんと並んで歩き出す。

 文化祭の喧騒の中、僕と由奈ちゃんとの時間が始まった。
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