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澪の章 寡黙なクラス委員長
トイレでの女子トーク
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──澪──
バスは空港で停車すると、先生が備え付けのマイクを手に取り、説明を始めた。
「これから飛行機に乗るため空港の中に入って点呼を取るけど、その前にトイレに行きたい人は行っておいて。ただしあまり遅くならないように!」
先生の説明が終わるとクラスの人達がバスを降りていく。
わたしも彼方くんとバスを降りて空港へと向かう途中トイレに行きたくなった……。
「彼方くん……わたしトイレ行ってくる……」
「あ、うん。わかった」
彼方くんに伝え、トイレに向かっていると風原さんと早乙女さんの二人と出会った。
二人ともわたしと同じトイレなのかもしれない……。
「ミオっちもトイレ?」
「うん……」
「なら柊さん早く行くわよ。じゃないと女子トイレ混みそうだし……」
(さっきのこと……見られてたかも……聞かれるかな……)
わたしはそう思いながら三人でトイレへと向かう。
トイレを済ませたわたしは鏡の前で髪を整える。
バスで寝ていたせいか、前髪が少しだけ跳ねていた。
「ミオっち、さっきバスで寝てたでしょ~? 彼方くんの胸で」
手で髪をかいていると、隣にいる早乙女さんがニヤニヤとした笑みを浮かべながら横目で見てくる。
それは風原さんも一緒で、二人の目はどこか探るようだった。
「……うん。少しだけ」
見られてた……。
ニ人ともバスではわたしと彼方くんのすぐ前の席に座ってたから当然かも……。
「“少し”って顔じゃなかったと思うけど……。すごく幸せそうだったわよ?」
風原さんが少し苦笑しながら言う。
わたしは鏡越しに自分の頬が赤くなっていくのを見て、視線を逸らした。
「……彼方くんが、寝てていいって言ってくれたから」
「ふ~ん。御堂君って、ほんと優しいよね。そう言えば亜希、御堂君って家ではどうなの?」
瀬玲奈の声は、どこか引っかかるような響きだった。
わたしはその言葉に、胸の奥が少しだけざわつくのを感じた。
「家でもそこまで変わらないわよ。あ、でも柊さんをみる目は少し違うような気はするわね」
「違うってどういう感じ?」
早乙女さんは風原さんへと身を乗り出すかのように聞くと、わたしも風原さんの言葉へと耳を傾ける。
(……その辺りわたしも気になる)
「なんて言うか……、御堂君は柊さんのすべてを受け入れるっていうか……そんな感じがするのよね」
「あ、わかるぅ~!御堂君のミオっちを見る目って包容力があるよね。ミオっちラブラブじゃん!」
二人の話を聞いてわたしの顔が赤くなるのを感じる。
「……彼方くんは……わたしにとって、特別だから」
その言葉を口にした途端、風原さんは目を丸くして、早乙女さんはふっと笑った。
「……そっか。じゃあ、ミオっちは修学旅行中は御堂君をしっかりガードしとかないとね」
「……うん。わたし、彼方くんに変な虫がつかないように……ちゃんと見てる」
鏡の中のわたしは、いつもより少しだけ強い目をしていた。
彼方くんの隣にいるのは、わたしだけ。
それだけは、誰にも譲る気なんてない。
「それにさ、ミオっちって御堂くんといるときだけちょっと柔らかくなるよね~。それで……実際どこまで関係が進んでる感じ……?」
「……それは私も気になるわね」
早乙女さんはニヤニヤとしながら顔を近付けてくると、風原さんも同じなのか、興味深そうに視線をわたしへと向けてくる。
彼方くんとの関係がどこまで進んでるのか話すのは恥ずかしいけど、その反面自慢したいというわたしもいる……。
でも……、
「……時間が無いからその話はまた今度」
「えぇ~!そりゃないでしょミオっち……!」
もうそもそも戻らないと点呼が始まる……。
クラス委員長として遅れるわけにはいかない……。
それに……今ごろ彼方くんに変な虫がついてるかもしれない……。
そう思ったわたしは足早に戻ると案の定と言うか、彼方くんに話しかけている同じクラスの女子の姿が見え、わたしの心がざわつく。
「彼方くん……!」
「澪……?」
わたしは自分でも驚くくらいの大きな声を上げると彼方くんの腕にしがみつく。
「わたしの彼方くんに何か……?」
わたしは睨むと彼女は少し戸惑いながらも口を開く。
「えっと、そろそろ点呼取るから柊さん呼んできてって言われて……、でも姿がなかったから御堂君に聞いてただけだから……」
……わたしのことを聞いてただけ?
それ聞いた途端、恥ずかしさと申し訳なさで顔が赤くなる……。
「ごめんなさい、わたし……」
「いいのいいの、柊さんが御堂君とラブラブなのクラスで知らない人いないから。それじゃあね」
彼女の言葉にわたしと彼方くんは顔を赤くしながらお互いの顔を見つめあう。
彼女はそれだけを言うと苦笑しながらわたし達の前から去っていった。
「と……とりあえず澪行こうか……」
「う……うん……」
彼方くんの手に導かれながら、わたしは静かに歩き出す。
その手のぬくもりが、少しだけ心を落ち着かせてくれた。
バスは空港で停車すると、先生が備え付けのマイクを手に取り、説明を始めた。
「これから飛行機に乗るため空港の中に入って点呼を取るけど、その前にトイレに行きたい人は行っておいて。ただしあまり遅くならないように!」
先生の説明が終わるとクラスの人達がバスを降りていく。
わたしも彼方くんとバスを降りて空港へと向かう途中トイレに行きたくなった……。
「彼方くん……わたしトイレ行ってくる……」
「あ、うん。わかった」
彼方くんに伝え、トイレに向かっていると風原さんと早乙女さんの二人と出会った。
二人ともわたしと同じトイレなのかもしれない……。
「ミオっちもトイレ?」
「うん……」
「なら柊さん早く行くわよ。じゃないと女子トイレ混みそうだし……」
(さっきのこと……見られてたかも……聞かれるかな……)
わたしはそう思いながら三人でトイレへと向かう。
トイレを済ませたわたしは鏡の前で髪を整える。
バスで寝ていたせいか、前髪が少しだけ跳ねていた。
「ミオっち、さっきバスで寝てたでしょ~? 彼方くんの胸で」
手で髪をかいていると、隣にいる早乙女さんがニヤニヤとした笑みを浮かべながら横目で見てくる。
それは風原さんも一緒で、二人の目はどこか探るようだった。
「……うん。少しだけ」
見られてた……。
ニ人ともバスではわたしと彼方くんのすぐ前の席に座ってたから当然かも……。
「“少し”って顔じゃなかったと思うけど……。すごく幸せそうだったわよ?」
風原さんが少し苦笑しながら言う。
わたしは鏡越しに自分の頬が赤くなっていくのを見て、視線を逸らした。
「……彼方くんが、寝てていいって言ってくれたから」
「ふ~ん。御堂君って、ほんと優しいよね。そう言えば亜希、御堂君って家ではどうなの?」
瀬玲奈の声は、どこか引っかかるような響きだった。
わたしはその言葉に、胸の奥が少しだけざわつくのを感じた。
「家でもそこまで変わらないわよ。あ、でも柊さんをみる目は少し違うような気はするわね」
「違うってどういう感じ?」
早乙女さんは風原さんへと身を乗り出すかのように聞くと、わたしも風原さんの言葉へと耳を傾ける。
(……その辺りわたしも気になる)
「なんて言うか……、御堂君は柊さんのすべてを受け入れるっていうか……そんな感じがするのよね」
「あ、わかるぅ~!御堂君のミオっちを見る目って包容力があるよね。ミオっちラブラブじゃん!」
二人の話を聞いてわたしの顔が赤くなるのを感じる。
「……彼方くんは……わたしにとって、特別だから」
その言葉を口にした途端、風原さんは目を丸くして、早乙女さんはふっと笑った。
「……そっか。じゃあ、ミオっちは修学旅行中は御堂君をしっかりガードしとかないとね」
「……うん。わたし、彼方くんに変な虫がつかないように……ちゃんと見てる」
鏡の中のわたしは、いつもより少しだけ強い目をしていた。
彼方くんの隣にいるのは、わたしだけ。
それだけは、誰にも譲る気なんてない。
「それにさ、ミオっちって御堂くんといるときだけちょっと柔らかくなるよね~。それで……実際どこまで関係が進んでる感じ……?」
「……それは私も気になるわね」
早乙女さんはニヤニヤとしながら顔を近付けてくると、風原さんも同じなのか、興味深そうに視線をわたしへと向けてくる。
彼方くんとの関係がどこまで進んでるのか話すのは恥ずかしいけど、その反面自慢したいというわたしもいる……。
でも……、
「……時間が無いからその話はまた今度」
「えぇ~!そりゃないでしょミオっち……!」
もうそもそも戻らないと点呼が始まる……。
クラス委員長として遅れるわけにはいかない……。
それに……今ごろ彼方くんに変な虫がついてるかもしれない……。
そう思ったわたしは足早に戻ると案の定と言うか、彼方くんに話しかけている同じクラスの女子の姿が見え、わたしの心がざわつく。
「彼方くん……!」
「澪……?」
わたしは自分でも驚くくらいの大きな声を上げると彼方くんの腕にしがみつく。
「わたしの彼方くんに何か……?」
わたしは睨むと彼女は少し戸惑いながらも口を開く。
「えっと、そろそろ点呼取るから柊さん呼んできてって言われて……、でも姿がなかったから御堂君に聞いてただけだから……」
……わたしのことを聞いてただけ?
それ聞いた途端、恥ずかしさと申し訳なさで顔が赤くなる……。
「ごめんなさい、わたし……」
「いいのいいの、柊さんが御堂君とラブラブなのクラスで知らない人いないから。それじゃあね」
彼女の言葉にわたしと彼方くんは顔を赤くしながらお互いの顔を見つめあう。
彼女はそれだけを言うと苦笑しながらわたし達の前から去っていった。
「と……とりあえず澪行こうか……」
「う……うん……」
彼方くんの手に導かれながら、わたしは静かに歩き出す。
その手のぬくもりが、少しだけ心を落ち着かせてくれた。
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