罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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澪の章 寡黙なクラス委員長

新婚旅行?いえ、修学旅行です

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 ──彼方──


 飛行機に乗り込んだ僕は、青葉ケ丘学園の生徒や一般客で賑わう機内で、澪の隣の席に座っていた。

 偶然というかなんというか……僕にすれば嬉しい限りだ。

「そう言えば澪って飛行機に乗ったことあるの?」

「ない……、彼方くんは……?」

「僕もないよ。だからこれが初めての飛行機だよ」

「初めて……お互い初めての飛行機……」

 澪は顔を赤くしながら僕を見つめると、なぜか僕まで顔が赤くなる……。

「で……でも、澪の席は折角窓際なのに飛行機の翼があるから外の景色があまり見えないかもしれないね……」

「大丈夫……、わたしは彼方くんの顔を眺めてるから……」

 澪は僕の顔をじっと見つめてくる……。

 ……そんなに見つめられたら北海道に着く頃には僕の顔に穴が開いていそうな気がする。

「そ……そんなに見られたら恥ずかしいよ……」

 そう言いながらも僕もまた澪の顔を見つめると、周りの喧騒が遠くに感じる……。

「コラそこっ!なに飛行機に乗った途端に見つめ合っているんだよっ!」

 通路を挟んだ隣の席に座る悠人が、呆れたような声で僕たちに突っ込んできた。

「いや、別に見つめ合ってたわけじゃ……」

「いやいや、完全に見つめ合ってただろ。俺からしたら、もう“新婚旅行”にしか見えなかったぞ」

「そ、そんなことないって……!」

 僕は慌てて否定するけれど、澪は顔を赤くしながら上の空で何処かを見つめていた。

「……新婚旅行、いいかも」

 小さく呟いたその声が、僕の耳にしっかり届いた。

「澪っ!?」

「だって、彼方くんと一緒に飛行機に乗って、隣に座って……。それだけで、わたし……すごく幸せだから……」

 澪はそっと僕の袖を掴んだ。

 その指先が、ほんの少しだけ震えていて、僕は彼女の不安を感じた。

「……澪、緊張してる?」

「うん……。飛行機、初めてだから……。でも、彼方くんが隣にいてくれるから……大丈夫」

 その言葉に、僕の胸の奥がじんわりと熱くなる。

「じゃあ、手……握っててもいい?」

「……うん」

 僕たちは、そっと手を繋いだ。  
 澪の手は少し冷たくて、でもすぐに僕の体温で温まっていく。

「やっぱり新婚旅行じゃねえかよっ!」

 再び悠人のツッコミが入る。

 なんというか……騒がしいやつだな……。

「こら、真壁君。あまり騒ぐと他の人に迷惑だから静かに!」

「少しは大人しくしていろ、真壁」

 そんな悠人を、担任の渡辺先生が注意すると高藤が注意する。

「これが大人しくできる状況かっ!俺の両隣は高藤と先生なのに、なんで彼方は彼女と隣同士なんだよっ!」

 悠人の座る真ん中の列の席は座席が三つあり、確かに悠人は高藤と先生に挟まれて座っている。

「僕に言われても……」

 でも、これは僕が決めたことじゃないのでこっちに言われても困る……。

「おい彼方!そこを代われ!今すぐだっ!」

 悠人は立ち上がると僕へと詰め寄ろうとする、しかし……。

「真壁君……うるさい……!」

「す……すみませんでした……」

 澪に睨まれ席に戻る悠人。

「はははは……!真壁、柊の逆鱗に触れてしまったようだな……!」

「なんだよ彼方……!お前の彼女めちゃくちゃ怖えじゃねえかよ……!なんだよ今の圧は……!」

「真壁君がわたしと彼方くんの邪魔をするのが悪い……」

「ちくしょう……!せめて隣が女子ならよかったのに……!」

「はいはい、真壁君の隣には先生がいますからねぇ~」

 喚く悠人の頭を優しく撫でる。

(悠人……先生とは言え、大人の女性に頭を撫でてもらえるそれはそれで羨ましいと思うよ……)

 でも、それを口にすれば澪から怒られそうなので黙っておく。

「俺は先生じゃなくて女子が隣にいて欲しいんだよ……!」

「ん~……?真壁くん、文句があるのなら降りてもいいのよ~……?」

「す……すみませんでした……!」

 今度は先生に睨まれてやっと大人しくなる悠人……。

(悠人はバカだなぁ……)

 窓の外では、エンジンの低い唸りとともに、飛行機がゆっくりと滑走路を進み始めていた。
 澪の手のぬくもりを感じながら僕たちの修学旅行は静かに始まった。
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