131 / 223
澪の章 寡黙なクラス委員長
やって来た北の大地
しおりを挟む
およそ二時間のフライトを経て——ついに、僕たちは北海道に降り立った。
飛行機を降り、空港の外へと出ると冷たい空気が肌を刺すように感じた。
瀬山市とはまるで違う……空気が澄んでいるのに、10月とは思えないほど冷たい。
「……寒い」
澪は黒髪のロングヘアを風になびかせながら小さく呟くと、僕の腕にそっとしがみついてきた。
制服越しに伝わる澪の体温は少し冷たくてでも、その冷たさが彼女の“僕を頼っている気配”のように思えた。
「澪、大丈夫?」
「うん……。でも彼方くんの腕、借りる……」
澪は僕の腕に顔を寄せる。
その仕草があまりにも可愛くて、僕は何も言えずにただ頷いた。
「着いて早々、なんでイチャついてんだよ、お前らは!」
悠人は僕たちを指さして叫ぶ。
でも澪は、僕の腕にしがみついたまま、悠人の声には反応しない。
ただ一人を除いては。
「真壁、男の嫉妬は見苦しいぞ」
「そうは言うけどよぉ高藤……、彼方が……彼方のやつが……!」
腕組みをしながらため息をつく高藤に悠人は涙目で訴えるも、高藤はそれ以降何も言うことはなかった。
「……真壁君、うるさい」
「ちくしょぉぉぉーー……!この北海道の地で絶対に彼女を作ってやるぅぅぅーーー……!」
それどころか澪の低い声と、目に見えない圧に押された悠人は、捨て台詞を残してどこかへ走り去った。
僕は悠人に苦笑しながら、澪の手をそっと握った。
彼女の指先はまだ少し冷たかったけれど、僕の体温で少しずつ温まっていく。
「……ありがと、彼方くん」
澪が小さく呟く。
その声は、冷たい空気をすり抜けて、まっすぐ僕の胸に届いた。
「みんな、真壁君のことは一先ず置いといて、バスに乗るわよ」
先生の声で僕たちはバスに乗り込むと、車内は暖房が効いていた。
外の寒さとは対照的なぬくもりに包まれる。
澪は僕の隣の席に座り、窓の外を見つめた。
「北海道っていつ頃雪が降るのかな……?」
僕はバスの窓から曇りがちな空を見て呟く。
「振り始めるのは確か11月から……。本格的に降るのは12月って言ってたと思う……」
「へえ~、知らなかったよ」
「……授業で言ってた。彼方くん、ちゃんと授業聞いてた?」
「た……たぶん……。そ、それより澪寒くない……?」
バツ悪くなった僕は作り笑いを浮かべながら一先ず話題をそらすことにした。
「……大丈夫、彼方くんが隣にいるから、寒くない」
少しの沈黙はあったものの、澪は僕の肩にそっと頭を預ける。
そのわずかな重みが、僕の心をゆっくりと落ち着かせていった。
◆◆◆
バスは空港を出発し、街の喧騒を抜けていく。
いつしか高層ビルが低くなり、窓の外に広がるのは木々と丘陵地。
そして、静かな空気に包まれた自然の中に、旭山動物園が姿を現す。
バスがゆっくりと停まり、僕たちは旭山動物園の前に降り立つと、胸が高鳴るような高揚感に包まれた。
「じゃあ、班ごとに分かれて見学ね~。時間は二時間。集合時間に遅れないようにね」
先生の声に合わせて、班ごとに動き出す生徒たち。
「よっしゃ!俺は白くてデカいやつに会いに行くぞー!ホッキョクグマだ!」
「高藤君!勝手に行動したらダメよっ!」
悠人はテンション高く、ホッキョクグマ館へ向かって走り出すも、亜希に注意され渋々止まった。
「この班のリーダーはミオっちだからね。リーダーの指示に従わないと」
「まったくだ真壁。修学旅行だからといってはしゃぎすぎだ」
亜希に続いて早乙女さんや高藤までもが声を上げる。
少なくとも、高藤が言えた義理じゃないと思うのは僕だけだろうか……?
「それで澪、どこから行く?」
「わたし……ペンギン見たい……」
澪は僕の袖をそっと引きながら、目を伏せて小さく呟いた。
ペンギンか、それもいいかもしれないな。
「そうね、それもいいかもしれないわね」
「じゃあ、まずはペンギン館に行こうか」
「その次にホッキョクグマだからな……!先に言っておくからな……!」
他の人達もそう思ったのか、まずはペンギン館を目指す。
動物園の入り口に置いてあった園内マップを頼りに歩いていくと目的の場所にたどり着く。
ペンギン館に入ると、澪は僕の袖を握ったまま、ガラス越しに泳ぐペンギンたちをじっと見つめていた。
「……泳いでる」
澪はまるで子供のように目を輝かせながらペンギンを眺めていた。
「たくさんいる……可愛いね」
水槽の中では、数羽のペンギンが水の上に浮かんでいたり、スイスイと泳いだりしている。
特に水の中を飛ぶように動くその姿は、どこか幻想的で、僕たちの時間をゆっくりと溶かしていった。
「……ねえ、彼方くん。ペンギンって、一生同じ相手と寄り添うんだって。ずっと、ずっと一緒なんだって」
僕は澪の横顔を見つめる。
彼女の瞳はペンギンよりもずっと澄んでいて、冷たい空気の中で静かに揺れていた。
「……澪も、そういうの……憧れる?」
澪は少しだけ頷いて、僕の腕に顔を寄せると、僕の心臓はドキっと跳ねた。
「わたしはずっと彼方くんと寄り添っていたい……」
「澪……」
澪の手が僕のブレザーの袖を握ると僕もまた彼女のその手をそっと握る。
澪の言葉は、水槽の奥で揺れるペンギンたちの影よりも静かに僕の胸の奥に沈んでいった。
飛行機を降り、空港の外へと出ると冷たい空気が肌を刺すように感じた。
瀬山市とはまるで違う……空気が澄んでいるのに、10月とは思えないほど冷たい。
「……寒い」
澪は黒髪のロングヘアを風になびかせながら小さく呟くと、僕の腕にそっとしがみついてきた。
制服越しに伝わる澪の体温は少し冷たくてでも、その冷たさが彼女の“僕を頼っている気配”のように思えた。
「澪、大丈夫?」
「うん……。でも彼方くんの腕、借りる……」
澪は僕の腕に顔を寄せる。
その仕草があまりにも可愛くて、僕は何も言えずにただ頷いた。
「着いて早々、なんでイチャついてんだよ、お前らは!」
悠人は僕たちを指さして叫ぶ。
でも澪は、僕の腕にしがみついたまま、悠人の声には反応しない。
ただ一人を除いては。
「真壁、男の嫉妬は見苦しいぞ」
「そうは言うけどよぉ高藤……、彼方が……彼方のやつが……!」
腕組みをしながらため息をつく高藤に悠人は涙目で訴えるも、高藤はそれ以降何も言うことはなかった。
「……真壁君、うるさい」
「ちくしょぉぉぉーー……!この北海道の地で絶対に彼女を作ってやるぅぅぅーーー……!」
それどころか澪の低い声と、目に見えない圧に押された悠人は、捨て台詞を残してどこかへ走り去った。
僕は悠人に苦笑しながら、澪の手をそっと握った。
彼女の指先はまだ少し冷たかったけれど、僕の体温で少しずつ温まっていく。
「……ありがと、彼方くん」
澪が小さく呟く。
その声は、冷たい空気をすり抜けて、まっすぐ僕の胸に届いた。
「みんな、真壁君のことは一先ず置いといて、バスに乗るわよ」
先生の声で僕たちはバスに乗り込むと、車内は暖房が効いていた。
外の寒さとは対照的なぬくもりに包まれる。
澪は僕の隣の席に座り、窓の外を見つめた。
「北海道っていつ頃雪が降るのかな……?」
僕はバスの窓から曇りがちな空を見て呟く。
「振り始めるのは確か11月から……。本格的に降るのは12月って言ってたと思う……」
「へえ~、知らなかったよ」
「……授業で言ってた。彼方くん、ちゃんと授業聞いてた?」
「た……たぶん……。そ、それより澪寒くない……?」
バツ悪くなった僕は作り笑いを浮かべながら一先ず話題をそらすことにした。
「……大丈夫、彼方くんが隣にいるから、寒くない」
少しの沈黙はあったものの、澪は僕の肩にそっと頭を預ける。
そのわずかな重みが、僕の心をゆっくりと落ち着かせていった。
◆◆◆
バスは空港を出発し、街の喧騒を抜けていく。
いつしか高層ビルが低くなり、窓の外に広がるのは木々と丘陵地。
そして、静かな空気に包まれた自然の中に、旭山動物園が姿を現す。
バスがゆっくりと停まり、僕たちは旭山動物園の前に降り立つと、胸が高鳴るような高揚感に包まれた。
「じゃあ、班ごとに分かれて見学ね~。時間は二時間。集合時間に遅れないようにね」
先生の声に合わせて、班ごとに動き出す生徒たち。
「よっしゃ!俺は白くてデカいやつに会いに行くぞー!ホッキョクグマだ!」
「高藤君!勝手に行動したらダメよっ!」
悠人はテンション高く、ホッキョクグマ館へ向かって走り出すも、亜希に注意され渋々止まった。
「この班のリーダーはミオっちだからね。リーダーの指示に従わないと」
「まったくだ真壁。修学旅行だからといってはしゃぎすぎだ」
亜希に続いて早乙女さんや高藤までもが声を上げる。
少なくとも、高藤が言えた義理じゃないと思うのは僕だけだろうか……?
「それで澪、どこから行く?」
「わたし……ペンギン見たい……」
澪は僕の袖をそっと引きながら、目を伏せて小さく呟いた。
ペンギンか、それもいいかもしれないな。
「そうね、それもいいかもしれないわね」
「じゃあ、まずはペンギン館に行こうか」
「その次にホッキョクグマだからな……!先に言っておくからな……!」
他の人達もそう思ったのか、まずはペンギン館を目指す。
動物園の入り口に置いてあった園内マップを頼りに歩いていくと目的の場所にたどり着く。
ペンギン館に入ると、澪は僕の袖を握ったまま、ガラス越しに泳ぐペンギンたちをじっと見つめていた。
「……泳いでる」
澪はまるで子供のように目を輝かせながらペンギンを眺めていた。
「たくさんいる……可愛いね」
水槽の中では、数羽のペンギンが水の上に浮かんでいたり、スイスイと泳いだりしている。
特に水の中を飛ぶように動くその姿は、どこか幻想的で、僕たちの時間をゆっくりと溶かしていった。
「……ねえ、彼方くん。ペンギンって、一生同じ相手と寄り添うんだって。ずっと、ずっと一緒なんだって」
僕は澪の横顔を見つめる。
彼女の瞳はペンギンよりもずっと澄んでいて、冷たい空気の中で静かに揺れていた。
「……澪も、そういうの……憧れる?」
澪は少しだけ頷いて、僕の腕に顔を寄せると、僕の心臓はドキっと跳ねた。
「わたしはずっと彼方くんと寄り添っていたい……」
「澪……」
澪の手が僕のブレザーの袖を握ると僕もまた彼女のその手をそっと握る。
澪の言葉は、水槽の奥で揺れるペンギンたちの影よりも静かに僕の胸の奥に沈んでいった。
20
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
ルピナス
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。
そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。
物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。
※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。
※1日3話ずつ更新する予定です。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる