罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長

喪失する自信とミスコンの敗北

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 ──柚葉──


 学園祭が始まり、私は新聞部の部員に案内されて体育館へと向かった。
 そこで総合司会を務めるという新聞部部長の話を聞かされる。

「え~、この度は私ども新聞部と写真部によるミスコンに参加していただきありがとうございます。皆様には急な話ということもあり、一番から順番に自己紹介とあとは趣味または特技を言っていただければと思います。今から番号札と、名前が書かれたプレートをお渡ししますので、この2つを制服と後ほど着替えていただく体操着の胸元に付けてください」

 私は言われたとおり胸元に番号の書かれたハート型の札と、名前の札をつける。

(……御堂を誰にも渡したくない。なら、私が勝つしかない)

 私は、胸元の札を握りしめた。

 しかし、自分のその気持ちとは裏腹に、制服の胸元に札をつけた瞬間、緊張から足が震えてくる。  
 体育館のステージはまだ照明が落ちていて、観客席もざわついているだけだったけれど、それでも空気が違う。
 制服のボタンの下で、心臓が小さく跳ねるたびに、息が浅くなっていく。

「如月さん、こちらへどうぞ~」

 新聞部の女子が笑顔で手招きする。私は無言で頷き、ステージ袖の待機列に並ぶ。
 前に並ぶ風原さんが、面倒くそうな感じで首を鳴らす。
 彼女はこういう場に強そうで、羨ましいくらいに堂々としていた。

 その隣では柊さんが静かに、そして無表情に目を閉じる。
 その姿は完全に落ち着き払っているように見えた。
  
 早乙女さんは手鏡を見ながら髪を整えていて、余裕の笑みを浮かべている。

 私は……どう見えているんだろう。
 観客席に、御堂はいるのだろうか。

 特別審査委員長とかいう肩書になっていたからどこかにいるはずだ。

 見られたくない……でも、見てほしい。  
 そんな矛盾した気持ちが、制服の中で渦巻いていた。

『皆様お待たせ致しました!いよいよ第一回、青葉ケ丘学園ミス・コンテストを開始します!では一番、風原亜希さんステージの前へどうぞ!』

 マイクを使ってしゃべる司会である新聞部部長の声が響くと、風原さんは軽快な音楽に合わせてステージへと踏み出す。

 照明が風原さんを照らし、観客席がざわつく。  
 その中の最前列に、御堂の姿が見えた。

『では、風原さん。自己紹介をお願いします』

「はい……風原亜希、二年B組です」

『ありがとうございます。では、趣味や特技などを教えてください!』

「特技は……料理です」

 風原さんが特技を答えると、会場からは男子生徒を中心とした感嘆の声があふれる。
 私は風原さんを見ると少しだけ顔を伏せた。

 私は……風原さんのように料理は出来ない……。
 御堂も……彼女のように料理が出来る女の子のほうが好みなんだろうか……?

『二番、柊澪さんステージの前へどうぞ!』

「……はい」

 柊さんは返事をするとステージへと向かう。
 同性から見ても彼女はスタイルもよく、胸もある。

 一方の私は背が低く胸はそれなりにあるとは思えけど、柊さんには劣る。

「柊澪、2年B組です……。趣味は読書……」

 柊さんは淡々と話し終えると軽く一礼をする。

『三番、早乙女瀬玲奈さんステージの前へどうぞ!』

「は~い!」

 早乙女さんは元気よく答えるとステージの前へと向かっていく。

「三番!2年B組の早乙女瀬玲奈ですっ!趣味は……ゲームかな?最近ゲームのし過ぎで成績が下がったことを親に怒られました、テヘ♡」

 早乙女さんは明るく、そして可愛く自己紹介をすると多くの男子生徒たちから笑みと歓声が上がる。

 御堂も早乙女さんのような明るくて元気な女の子に興味を持つのだろうか……?
 その時私の頭に姫野が言っていた言葉を思い出す。

『御堂くんのクラスに彼のことを狙ってる女の子がいる』

 確か御堂は2年B組、あの三人も御堂と同じクラス。
 もしかしたら御堂を狙ってる女の子って……彼女たちなんじゃ……。

 そう思うと胸の奥が締め付けられる。

(イヤだ……!御堂を取られたくない……!)

 私は……ミスコンに優勝したら御堂に告白するんだ……!

 他の人達の自己紹介が進んでいく中、私はその決意を胸にステージへと目をやるといよいよ私の番がやってきた。

『では次に如月・ミレイ・柚葉さんステージへどうぞ!』

 私は緊張しながらステージの前に進む。

『3年D組、如月・ミレイ・柚葉です!趣味は……』

 趣味を言おうとした瞬間、頭が真っ白になった。
 今さら、自分には語れる趣味がないことに気づいてしまった。

 言葉が出てこない、私には……何もない。  

 風原さんのように料理はできない。
 柊さんのような読書もしない。
 早乙女さんのような飛び抜けた明るさもない……。

 一応ゲームはするけど、趣味と言える程度なのかどうかも分からない。

 “生徒会長”という肩書きだけが、私を形作っている。  
それ以外の“私”が、何も見つからない——。

 私が何も言わないことに会場がざわめく。

「趣味は……ありません」

 私が答えると会場からはどよめきと落胆の声が聞こえてくる。
 御堂も……他の人達と同じ気持ちなんだろうか……?

 そう思うとステージの上に立っているのが怖くなった。


 その後も体操着に着替えてそれぞれ自由にポーズや特技を披露するも、私は何もできずただポツンと立つだけだった。

 会場にいる人たちの私を見る目が興味を失っていくのがわかる。
 私は泣き出しそうになるも、必死にそれをこらえる。

 そして全てが終わりいよいよ結果発表が行われる。

『第一回、青葉ケ丘学園ミス・コンテスト……優勝者は……早乙女瀬玲奈さんですっ!』

「いえ~いっ!みんなありがとうっ!」

 早乙女さんの名前が呼ばれると会場からは拍手と歓声が沸き上がる。
 彼女は満面の笑みで手を振り、歓声に応える。
 その姿はまるでこの舞台の主役だった。

 私の結果は……最下位だった。

『では優勝者の早乙女さんには特別審査委員長の御堂彼方さんからトロフィーが贈られます!』

 早乙女さんに御堂からトロフィーが贈られる、その時にもしかしたら彼女は御堂に告白するのかもしれない……。

 そう思った私は体育館を飛び出し、体育館裏で涙を流す。

「御堂……ミレイは……、ミレイは……優勝できなかった……。御堂に好きって言えなかった……」

 こらえていた涙が、堰を切ったように溢れ出した。

「先輩……」

 と、その時声が聞こえてきた。
 私が想いを寄せていた人の声、好きだと伝えたかった人の声……。

 私の後ろに……ここにいるはずのない御堂彼方が立っていた。
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