【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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 裏カジノの正面入口へ到着した馬車。ウィルフレッドはエスコートをしながらリリーを降ろした。

お互い仮面を被っているので表情を読めるのは口だけ。

 リリーは仲の良いカップルだと周囲にわからせる為にウィルフレッドの左手に自分の右手の指を絡め恋人繋ぎをした。そのまま彼の左腕を左手で掴み体を密着させる。

ウィルフレッドは一瞬驚いたが流石そこは騎士団の期待の星。リリーの意図を読み彼も演技を始めた。何事もない、これが通常運転だとばかりに口角を上げ堂々とカジノの中へ潜入する二人。

カジノの中は華やかだ。大きなシャンデリアが輝きを放ち、賑わう客達。リリー達はどこのテーブルへチャージしようか悩んでいる素振りを見せながらホールの奥にある扉の中へ入った。

暗い廊下が長く続いている。敵の姿はない。
まずは帳簿を見つけること。そして悪党を成敗すること。

ウィルフレッドが先頭を歩き帳簿がある部屋へと向かうと、曲がり角で人の気配がした。戦闘の始まりを察し横目でリリーを見るが、彼女は堂々とウィルフレッドの後ろで佇んでいる。

(守りきれるだろうか)

ウィルフレッドはリリーを気にかけながら、こちらへ向かってくる気配に立ち向かうべく攻撃を仕掛けた。

ガシッ!

「「・・・・・・」」

敵だと思っていた正体はエレンだった。ウィルフレッドとエレンは瞠目しお互いの正体を認知すると無言で掴み合っていた腕を離した。エレンの背後には他の騎士達三人も居た。どうやら彼等は先程たまたま合流したらしい。丁度今いる場所から一番近くにある部屋に帳簿がある。

部屋に誰も居ない事を確認し、中へ入る。
シンプルな執務室と言ったインテリアで部屋の中央に机があった。壁には何体かの甲冑が飾ってあり少々不気味な内室だ。

机の引き出しを開けると何冊かの分厚いノートがあった。全てを取り出しどれが帳簿なのか各自探る。

するとーー

ウィルフレッドの背後に展示されていた甲冑がゆっくりと動き出した。ウィルフレッドは真剣にノートの中身に集中していた為それに気付いていない。他の騎士達も気付いていない。

甲冑がウィルフレッドに襲いかけようと腕を振り上げた瞬間

ガシャンッ!

「・・・ッ!?」

リリーが甲冑の腕を蹴り上げヒールの先で敵の目元を攻撃した。相手は堪らず悲鳴を上げ床へ転がる。

何が起きたのか驚いた騎士達は状況を把握すると部屋のインテリアとなっていた甲冑へ警戒の態勢を取った。

全ての甲冑が動き出し、戦闘が始まった。
剣で攻撃をしてくる甲冑に対し騎士達は素手で応戦する。少し時間はかかったが全ての敵甲冑を倒した彼らは帳簿を見つけ外に出ようとしたその時、扉が勢いよく開いた。

「これはこれは何処ぞの虫が集っているようだ。殺虫剤を撒かねばならんなあ」

現れたのは髪を七三にわけたふくよかな男。嫌なダミ声で話した男だが、ルークが持っている帳簿を見つけ瞳を充血させた。

「虫ごときが私の邪魔をするなー!!」

ぞろぞろとふくよかな男の背後から敵が侵入してくる。多勢に無勢だが騎士達はこの状況でも諦めていない。

「お前がここの頭か」

ウィルフレッドの鋭く冷めた声が響いた。
ふくよかな男はそれを認めニヤリと厭らしく笑った。

「お前達のような虫けらに何が出来る!殺せ!殺すのだ!!」

一斉に敵の部下達が攻撃を仕掛けてきた。
何人かの騎士達は倒した甲冑から奪った剣で応戦をするが、武器を取れていない者もいる。

「こっちは丸腰だっての!」

リヒャルトは後者だった。敵から繰り出される剣での攻撃を素早い身のこなしで避けている。

だったら敵から奪えばいい。

リリーがリヒャルトと交戦していた相手を早業で倒し剣を奪うとその剣をリヒャルトに渡した。

「あ、ありが・・・とう」

あまりにも呆気なく倒れてしまった相手と平然とした態度で武器を渡してくるリリーに戸惑うリヒャルト。リリーは何事も無かったかのように壁に寄り掛かり見物の姿勢をとった。

剣を持ったリヒャルトは先程とは人が変わったように素早く動き敵を倒していく。

騎士達の動きを観察しある程度彼らの強さを知ったリリーは、仲間が倒され愕然としすっかり怯えてしまったふくよかな男を見た。

決着ついたな。

ウィルフレッドがふくよかな男の首筋に剣先を当て観念させた。

「いやーお見事!」

パチパチと場違いな拍手が響く先には騎士団団長のジョンがにこやかに人受けしそうな笑顔で部屋の出入口に佇んでいる。

「後は他の騎士達に任せて飲みに行こう!今夜は俺の奢りだから。リリーも報告兼ねるから付き合ってね」


続々と他の騎士達が集まりふくよかな男や倒れている敵を捕縛していくのを見守り、リリーはジョンと騎士五人と夜の酒場へ向かった。

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