8 / 28
Side Episode 01 グレンの大冒険
第08話(過去の妄執)
しおりを挟む
「なっ!」
一難去ってまた一難。突然告げられた言葉に振り向く。
「な、何故?!……爺?!」
フラン姫が肩を掴まれ喉元に爪を突き付けられながら、目だけ動かして原因を捉えると、それは長年付き添ってくれていたジェームズだった。
「長かったですよ……ベルジュ家を滅ぼす為に、自分を殺し、忸怩たる思いで仕えていた期間は」
ジェームズが遠い目をしながら話し始める。
「ジジィ!お前、俺の嫁に!!」
「おっと、動かないでください。グレン様が動くのと、私の爪がグレン姫の喉元を切り裂くのと、どちらが早いと思いますか?あぁ、周りの方々も同様ですよ?」
ジェームズが鋭い目で周りを制す。
「私の国、モリアーティランドがフラン姫の父である国王に滅ぼされた後、身分を隠してベルジュ王国に入り込み、怨敵である国王の評価を上げるのに腐心する日々……」
「なぁ、ロンスロット。悪役ってなんでこう、いきなり身の上話を語り始めるんだ?」
「グレン様。私はランスロットです。って何度言えばわかってくれるんですか。で、身の上話の件ですが、今まで誰も聞いてくれないで苦労していたことだから、誰かに聞いてもらって承認欲求を満たしたいんじゃないですかね?」
「ふーん。承認欲求ね。俺にはそんなのないけどな」
「グレン様みたいな無頓着で向こう見ずで行き当たりばったりな猪突猛進タイプはそんな悩みを抱えません」
「……そんなに褒めるなよ」
「おい、そこ!ちゃんと話を聞かんか!!これだから最近の若いもんは……ブツブツ」
急に身の上話を始めたジェームズを無視して、俺がランスロットと話していると、ジェームズが小うるさくて頭の固いジジィのような発言をする。
「慣れない執事のような仕事を、プライドを捻じ曲げて教えを請いながら学んだり、元々身体を動かすのが得意じゃなかったが、護衛をするのには必要と、嫌々身体を鍛えたり、教育係には教養が必要と、様々な王族の立ち振る舞いを覚えさせられたり、それはもう艱難辛苦な時間であった!!」
俺たちが少し黙ると、拳を握り、ぶんぶんと振りながら熱弁する。
「なんか嫌々そうに言ってますが、ずいぶんと丁寧に教育を受けていたみたいですね」
「俺はそれが嫌で飛び出したけどな」
またすぐに突っ込みを入れ始めるランスロットとそれに答える俺。
「王族って言うのはそれはそれで大変なんスね。自分は生まれた時から食べるのに必死だったっス」
ジェームズの話を真面目に聞いていたコジューローも話に加わる。
「これがまた、めんどくせーのよ。しきたりっつーのは」
「グレン様のは、ただの我儘でしたけどね」
昔を思い出し苦虫を噛み潰したような顔をする俺と、同じように昔を思い出しヤレヤレといった仕草をするランスロット。
「おい!だから儂の話を聞かんか!!姫の命を握られているのを少しは自覚せんか!!」
注意されていたにもかかわらず、再度、内輪話を始めた俺らにジェームズが怒りを顕にする。
「だってさぁ……」
「ねぇ……?」
俺とランスロットはジェームズに憐みの目を向ける。
「えぇぃ!兎に角、その後はフラン姫を一流の姫に育てるために、学術、武術、教養をわかりやすいように丁寧に教え!少しずつ成長する姿に喜びを感じ!まるで我が娘かの様に慈しみながら育て!今回のような危機には自らが盾となり、姫を守ることを我が使命としたのだ!!」
「ふつーに良い関係じゃねぇの?」
「従者の鑑っスね」
恨みつらみのように語っているが、面倒見の良い従者としか思えない。オサムネとコジューローも同意見の様だ。
「そして復讐も忘れ、フラン姫を一流の姫に育て上げ、そして幸せな婚姻を結ばせる!私のその使命を邪魔はさせん!!」
指名に燃えてこぶしを突き上げるジェームズ。
「邪魔してないじゃん」
「もうベルジュ王国を滅ぼす為の復讐も忘れてって自分で言っちゃってますよ……」
もうね、何をしたいんだろうこのジジィは……
「もう後戻りは出来んのだ!ベルジュ王国の近隣を支配する同族のゴーマンに。情報を与えるために、賄賂をもらう兵士を見て見ぬ振りをしたり!ゴーマンの危機感を煽る為に近くに住んでいた呪怨の住処を教えたり!攻め込む理由を与えるために食料の採取率を上げる試みをしたり!復讐のために数々の罪を犯してきたのだ!!今さらこの罪は償えんのだ!!」
眉間にしわを寄せながら悔恨の表情で独白するジェームズ。
「ん?それって悪い事なのか?」
「いや、所詮情報なんて漏れるものだから、兵士一人ひとりのモチベーションを上げるために、あまり口うるさいことを言わないのは得策ですし、いきなり呪怨が襲ってきた時に壊滅しない為に、隣国にも警戒してもらうのは得策ですし、食料の採取率を上げるのもただの得策です」
「だよなぁ」
ジェームズが数々の罪を暴露するが……なんだかなぁ……
「爺!やめてっ!爺は、いつも私の事を気にかけて成長を喜んでくれた、かけがいのない大事な存在なのっ!!」
「フラン姫。私はただの復讐鬼!ベルジュ王国を滅亡へと追いやった許しようのない罪人なのです!だから、最後に貴方の命を奪って終わりにしたいと思うのです」
「爺……そんなに思い詰めてたのね……でも、爺はもう寄る年波で爪はボロボロになってしまって、葉っぱすら切れないって嘆いていなかったっけ?」
「……」
「……」
「……」
「……てへっ☆」
「だらっしゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
テヘペロしたジェームズの顔面に俺の蹴りがめり込むと、弧を描きながら藪の中に吹っ飛んでいくのだった……
「結局アイツ何がしたかったんだ?」
「……話を聞いてもらいたかったんじゃないですか?」
「はた迷惑な奴っスね」
「爺……」
一難去ったまた一難が、難でも何でも無かったのだった。
「難でも何でも無かったのだった!!」
「はいはい……」
「……韻を踏むたびにドヤ顔しないで下さい」
俺の会心の笑みはフラン姫とランスロットにスルーされたのだった。
一難去ってまた一難。突然告げられた言葉に振り向く。
「な、何故?!……爺?!」
フラン姫が肩を掴まれ喉元に爪を突き付けられながら、目だけ動かして原因を捉えると、それは長年付き添ってくれていたジェームズだった。
「長かったですよ……ベルジュ家を滅ぼす為に、自分を殺し、忸怩たる思いで仕えていた期間は」
ジェームズが遠い目をしながら話し始める。
「ジジィ!お前、俺の嫁に!!」
「おっと、動かないでください。グレン様が動くのと、私の爪がグレン姫の喉元を切り裂くのと、どちらが早いと思いますか?あぁ、周りの方々も同様ですよ?」
ジェームズが鋭い目で周りを制す。
「私の国、モリアーティランドがフラン姫の父である国王に滅ぼされた後、身分を隠してベルジュ王国に入り込み、怨敵である国王の評価を上げるのに腐心する日々……」
「なぁ、ロンスロット。悪役ってなんでこう、いきなり身の上話を語り始めるんだ?」
「グレン様。私はランスロットです。って何度言えばわかってくれるんですか。で、身の上話の件ですが、今まで誰も聞いてくれないで苦労していたことだから、誰かに聞いてもらって承認欲求を満たしたいんじゃないですかね?」
「ふーん。承認欲求ね。俺にはそんなのないけどな」
「グレン様みたいな無頓着で向こう見ずで行き当たりばったりな猪突猛進タイプはそんな悩みを抱えません」
「……そんなに褒めるなよ」
「おい、そこ!ちゃんと話を聞かんか!!これだから最近の若いもんは……ブツブツ」
急に身の上話を始めたジェームズを無視して、俺がランスロットと話していると、ジェームズが小うるさくて頭の固いジジィのような発言をする。
「慣れない執事のような仕事を、プライドを捻じ曲げて教えを請いながら学んだり、元々身体を動かすのが得意じゃなかったが、護衛をするのには必要と、嫌々身体を鍛えたり、教育係には教養が必要と、様々な王族の立ち振る舞いを覚えさせられたり、それはもう艱難辛苦な時間であった!!」
俺たちが少し黙ると、拳を握り、ぶんぶんと振りながら熱弁する。
「なんか嫌々そうに言ってますが、ずいぶんと丁寧に教育を受けていたみたいですね」
「俺はそれが嫌で飛び出したけどな」
またすぐに突っ込みを入れ始めるランスロットとそれに答える俺。
「王族って言うのはそれはそれで大変なんスね。自分は生まれた時から食べるのに必死だったっス」
ジェームズの話を真面目に聞いていたコジューローも話に加わる。
「これがまた、めんどくせーのよ。しきたりっつーのは」
「グレン様のは、ただの我儘でしたけどね」
昔を思い出し苦虫を噛み潰したような顔をする俺と、同じように昔を思い出しヤレヤレといった仕草をするランスロット。
「おい!だから儂の話を聞かんか!!姫の命を握られているのを少しは自覚せんか!!」
注意されていたにもかかわらず、再度、内輪話を始めた俺らにジェームズが怒りを顕にする。
「だってさぁ……」
「ねぇ……?」
俺とランスロットはジェームズに憐みの目を向ける。
「えぇぃ!兎に角、その後はフラン姫を一流の姫に育てるために、学術、武術、教養をわかりやすいように丁寧に教え!少しずつ成長する姿に喜びを感じ!まるで我が娘かの様に慈しみながら育て!今回のような危機には自らが盾となり、姫を守ることを我が使命としたのだ!!」
「ふつーに良い関係じゃねぇの?」
「従者の鑑っスね」
恨みつらみのように語っているが、面倒見の良い従者としか思えない。オサムネとコジューローも同意見の様だ。
「そして復讐も忘れ、フラン姫を一流の姫に育て上げ、そして幸せな婚姻を結ばせる!私のその使命を邪魔はさせん!!」
指名に燃えてこぶしを突き上げるジェームズ。
「邪魔してないじゃん」
「もうベルジュ王国を滅ぼす為の復讐も忘れてって自分で言っちゃってますよ……」
もうね、何をしたいんだろうこのジジィは……
「もう後戻りは出来んのだ!ベルジュ王国の近隣を支配する同族のゴーマンに。情報を与えるために、賄賂をもらう兵士を見て見ぬ振りをしたり!ゴーマンの危機感を煽る為に近くに住んでいた呪怨の住処を教えたり!攻め込む理由を与えるために食料の採取率を上げる試みをしたり!復讐のために数々の罪を犯してきたのだ!!今さらこの罪は償えんのだ!!」
眉間にしわを寄せながら悔恨の表情で独白するジェームズ。
「ん?それって悪い事なのか?」
「いや、所詮情報なんて漏れるものだから、兵士一人ひとりのモチベーションを上げるために、あまり口うるさいことを言わないのは得策ですし、いきなり呪怨が襲ってきた時に壊滅しない為に、隣国にも警戒してもらうのは得策ですし、食料の採取率を上げるのもただの得策です」
「だよなぁ」
ジェームズが数々の罪を暴露するが……なんだかなぁ……
「爺!やめてっ!爺は、いつも私の事を気にかけて成長を喜んでくれた、かけがいのない大事な存在なのっ!!」
「フラン姫。私はただの復讐鬼!ベルジュ王国を滅亡へと追いやった許しようのない罪人なのです!だから、最後に貴方の命を奪って終わりにしたいと思うのです」
「爺……そんなに思い詰めてたのね……でも、爺はもう寄る年波で爪はボロボロになってしまって、葉っぱすら切れないって嘆いていなかったっけ?」
「……」
「……」
「……」
「……てへっ☆」
「だらっしゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
テヘペロしたジェームズの顔面に俺の蹴りがめり込むと、弧を描きながら藪の中に吹っ飛んでいくのだった……
「結局アイツ何がしたかったんだ?」
「……話を聞いてもらいたかったんじゃないですか?」
「はた迷惑な奴っスね」
「爺……」
一難去ったまた一難が、難でも何でも無かったのだった。
「難でも何でも無かったのだった!!」
「はいはい……」
「……韻を踏むたびにドヤ顔しないで下さい」
俺の会心の笑みはフラン姫とランスロットにスルーされたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる