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武田家
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1564年 3月 甲斐国躑躅ヶ崎館
のどかな雰囲気の中、武田信玄は釈然としない表情
をしていた。
それもそのはず、なんせ凡愚で取るに足らない存在
だった氏真が混乱を極めていた遠江、駿河を見事に
まとめあげ、先代の義元にも劣らない器量の持ち主
であることがわかったからだ。
さらに、忍び達の報告では商人達から徴収した銭を
使って兵を雇い、重臣の岡部や朝比奈に調練させて
いるそうだ。
確かに、武田の兵に脆弱な今川の兵が勝つのは不可能
と言っても過言ではなかった。しかし、氏真は兵を
調練することによって武田の兵に勝とうとしていた。
脆弱な兵をいくら鍛えたところで、所詮寄せ集めの
兵達と大差あるまいと、高を括っていたが真篠砦の
兵達が負けたのだ。しかも、死者の数が今川が30程
に対してこちらはその4倍なのだ。帰ってきた兵達に
何が起こったのか、聞いてみたが皆一様に口を閉ざしていた。
後から、聞いた話だが氏真が自ら太刀を振るって戦っていたそうだ。武芸に関心を示さず、和歌や蹴鞠と
言った公家の真似事に夢中になっていた氏真とは、
思えないような所業だった。
信玄は、頭の中でここ3年の間に集めた情報を元に
今川家が今後何をしようとしているのか考えている
と、小姓が「真田弾正忠様がまいられました。」と、
知らせてきたので「通せ...」と言った。
「殿、真田弾正忠にござる。」
「入れ...」
(襖が、開く音)
「何か、今川に動きが?」
真田幸隆は、自分が呼ばれた理由がわかっている
ようだった。
「いや、相変わらず静観の構えだ。」
「そうですか...、今川氏真なる人物自ら太刀を
振るって戦う猪武者かと思いきや、存外辛抱強い
ですな。」
幸隆も、氏真を注視しているのか、氏真のことを
よく調べていた。
「幸隆、これ以上氏真の元今川家が一つにまとまって
しまうと、駿河を攻める時、支障を来たしかねない。
この際、氏真に敵対している勢力を使ってできるだけ
今川家の力をそごうと思うが、どうか?」
「されば、堀越氏延、貞忠父子を使いましょう!」
「堀越か、使い物になるのか?」
「いえ、堀越に注意を惹きつけさせておき、松平家
に氏真と戦ってもらいます。」
「ほぅ、三河武士と氏真を戦わせるのか!」
「はい、例え今川の兵がどれだけ強かろうと、
ある程度の力は削げるかと...」
「面白い。幸隆、この件お主に任せた!」
「はっ、お任せください!」
四ヶ月後…
松平元康は、遠江出兵をする代わりに切り取った
分だけ松平家のものにすることを要求してきたの
だった。
信玄は、松平家の要求に一瞬顔をしかめたものの
渋々了承したのだった。
のどかな雰囲気の中、武田信玄は釈然としない表情
をしていた。
それもそのはず、なんせ凡愚で取るに足らない存在
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であることがわかったからだ。
さらに、忍び達の報告では商人達から徴収した銭を
使って兵を雇い、重臣の岡部や朝比奈に調練させて
いるそうだ。
確かに、武田の兵に脆弱な今川の兵が勝つのは不可能
と言っても過言ではなかった。しかし、氏真は兵を
調練することによって武田の兵に勝とうとしていた。
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何が起こったのか、聞いてみたが皆一様に口を閉ざしていた。
後から、聞いた話だが氏真が自ら太刀を振るって戦っていたそうだ。武芸に関心を示さず、和歌や蹴鞠と
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思えないような所業だった。
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と、小姓が「真田弾正忠様がまいられました。」と、
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「入れ...」
(襖が、開く音)
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ようだった。
「いや、相変わらず静観の構えだ。」
「そうですか...、今川氏真なる人物自ら太刀を
振るって戦う猪武者かと思いきや、存外辛抱強い
ですな。」
幸隆も、氏真を注視しているのか、氏真のことを
よく調べていた。
「幸隆、これ以上氏真の元今川家が一つにまとまって
しまうと、駿河を攻める時、支障を来たしかねない。
この際、氏真に敵対している勢力を使ってできるだけ
今川家の力をそごうと思うが、どうか?」
「されば、堀越氏延、貞忠父子を使いましょう!」
「堀越か、使い物になるのか?」
「いえ、堀越に注意を惹きつけさせておき、松平家
に氏真と戦ってもらいます。」
「ほぅ、三河武士と氏真を戦わせるのか!」
「はい、例え今川の兵がどれだけ強かろうと、
ある程度の力は削げるかと...」
「面白い。幸隆、この件お主に任せた!」
「はっ、お任せください!」
四ヶ月後…
松平元康は、遠江出兵をする代わりに切り取った
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