実は有能?

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決戦前夜

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1566年 六月十二日

前線の城より来た急使は、息も絶え絶えに
「徳川勢、兵一万二千を率いて遠江に侵攻を
開始しました!」と、告げた。

いずれ動くだろうと思っていただけに、氏真は
さほど表情を変えずに一言「そうか...。」と、
言って使者を下がらせた。

氏真は、すぐに重臣たちを集めた。

皆、この事態を想定していたのか焦りの色は
見られなかった。

氏真は居並ぶ重臣たちを見渡し喋り出した。

「皆もすでに存じて居ろうが、家康が遠江に
侵攻を始めた...。」

氏真は、そこまで話すと一息ついて「我は、
この戦で徳川と雌雄を決したいと思うが、
そなたらの意見はどうだ?」と、重みのある声
で言った。

重臣たちは、いくらか動揺していたが氏真の覚悟
を感じ取ったのか、誰も異論は挟まなかった。

氏真は、重臣たちの引き締まった表情に内心
満足すると、戦評定を始めた。



六日後
駿府館には、八千の兵が集まっていた。

本来なら二万ほどの兵を集めることもできる
のだが武田の備えもあるのでこのような兵数
になったのだった。

しかし、氏真に焦りはなかった。
というのも、氏真は出陣前に自身が率いる
直下兵団にある工夫をしていたからだ。

その工夫とは、今川家の武威を表すために
直下兵団の一人一人に能で使われる鍾馗の
お面をつけさせたのだった。

一人一人が調練のおかげか相当な武技の
達人となっていたので鍾馗のお面をつけ
させるだけで鬼のような迫力を持っていた。

鬼鮫達の報告では、松平勢は内応した豪族達に
道案内をさせて井伊谷城を目指しているとのこと
だった。

井伊谷城城主井伊直親は、すでに籠城の準備を
始めているとの事だった。

史実では直親は、徳川家との内通を疑われて
1563年に殺されていますが、この小説の中では
殺されていません。

(井伊谷城は平時の城で、有事の際は三嶽城で
戦った。)



五日後
今川軍は掛川城に到着した。
鬼鮫達が言うには、すでに三嶽城は蟻の這い出る
隙間もないほど厳重な包囲陣が敷かれているようだ。

軍議を開くと、掛川城城主朝比奈泰朝が
「井伊家の兵力はおよそ六百足らず、ここは
急ぎ援軍に向かうべきにござる。」と言った。

しかし、それに難色を示したのが曳馬城城主
飯尾連竜であった。「何を申すか!もし、援軍が
間に合わなかったら我等は、勢いづく松平勢と
戦う事になるのだぞ。」

「では、井伊家を見捨てると言うのか!」

「そうは申しておらぬ。ただ勢いづく松平勢を
相手にすれば、こちらの被害が大きくなって
しまうと申しておるのだ!」

「では、如何すると言うのだ?」

「ここは井伊家に頑張って貰い、松平勢の勢いが
無くなった所を叩けば良い。」

「臆したか連竜!そのような弱腰では、ますます
豪族達の離反を招いてしまうぞ!」

「何が弱腰か!それがしはただ今川のためを思って
そう申しておるのだ!」

※この二人は、氏真が松平勢と雌雄を決する
という考えを持っていることを知りません。

「止めよ二人共!」

このままでは、刀を抜きかねないと思った
氏真は二人の喧嘩を止めに入ったのだ。

すると、泰朝が「殿のお考えはいかに?」
と聞いてきたのだった。

氏真は、「三嶽城の救援に行く!」と、
言った。

泰朝は、勝ち誇ったかのように嬉しそうに連竜に
顔を向けていた。

連竜は、よっぽど悔しかったのか手を思いっきり
握りしめていた。(まさか、この事が原因で氏真は
危機に陥るのだが今は知る由もなかった。)

翌日、氏真は三嶽城救援のため進軍の速度を
速めたのだった。そのおかげか四日で井伊谷城
まで後一日のところまで来れたのだった。

氏真は、井伊谷川を渡らず徳川勢が来るのを
待つことにした。

それを察したのか、徳川勢は、井伊谷城に押さえ
の兵として五百の兵を残して、一万千二百の兵を
率いて井伊谷川を挟んで今川軍と対峙したのだった。


ここに後世、遠江決戦と呼ばれる戦いが始まろう
としていた。



井伊家の被害
死者 345名 負傷者 172名

松平勢の被害
死者 174名 負傷者 248名 































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