羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜

さばとらのはは

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1-1.ある東の国での毛糸にまつわる事件

9.国一番の魔術師である宰相の話-1

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彼は事件について、国の宰相である彼女に相談した。
これはその記録である。

彼女はこの国の王に仕える魔術師。
誰もが彼女を叡智ある者と呼ぶ。
彼女はこの度の戦争について、王と彼の騎士のどちら側にもつかなかった。
この戦争が、予定調和であったためである。

戦争は長く続いている。
ある時大きな雷がそれを行う人々の上に落ちた。
その後世界中の北側の夜空に、虹色の大きな光があまねく照らした。
彼女はそれも予定調和だと思い、何ひとつ動くことはしなかった。

秋が終わり、冬が始まる。
彼女の叡智はできるだけたくさんの人を救うことに向けられる。
予定調和がどのようなものであれ、戦争がどのような意味を持つものであれ、彼女はたくさんの人を救わなければならない。
病で、戦で、失われた時間は大きく、失われた人も財産も途方もないものだ。
失った誰もが、損失を補填しようと必死に誰かから奪おうとする。
その際、一番の犠牲者は貧しく身を守る術を持たぬ者だ。

彼女の手元には国内外から彼女の助けを求める、たくさんの手紙が届いている。
彼女はそれに全て目を通し手紙に書かれた内容に対応できる誰かに渡すと、彼女自身の執務室を出た。
彼女を止める者はいない。
彼女の元へはたくさんの情報が入ってくる。
彼女は考える。

「私がしなければならないことは、何?」

彼女は王の宮殿から外へ出た。
戦火から遠いその場所の空は、青く晴れ渡っている。
彼女の役割は戦争を終わらせることではない。
たくさんのものが失われたこの世界の貧しさから、より多くの人々を救うことだ。
すでに救済に向けた動きは始まっている。
彼女もまた、そのために動き出す。

外へ出た彼女は、ある円卓の騎士のひとりとすれ違った。
彼は怒っていた。

「どの騎士もなぜ、王と彼の騎士が戦に加担することを止めさせないのだ!」

彼女は首を傾げた。

「予定調和よ。あれは王と彼の騎士による調停ではなくて?」

「確かにそう聞いている。
が、あの2人はどちらも長く戦を続けようとする性格ではないだろう!
何か…何か別の理由があるはずだ‼︎」

「そうかもしれないわね。
でも私は彼らを止める術を持たない。
彼らは私の意見など聞かないのだから」

「…私には探索の命が与えられているから、あの地に行くことはできぬ」

国の宰相である彼女は頷いて、ふと彼の手元を見た。

「そうね。...ところでそれは何かしら」

彼は何かを握りしめている。

「ある女性からの手紙だ。困っているらしい」

「私が預かってもよいかしら?
貴方は忙しそうだし、私が彼女とお話してみましょう」
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