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第二部.プロローグ
76.南方諸国-Southern Countries -
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これはある事件を巡る、物語の続編である。
その物語は王とある騎士による、北方諸国で起こった大掛かりな戦争の調停の途中で起こった出来事に端を発している。
王とある騎士の調停はいまだ終わらず、戦の行方を世界中の国々が固唾を飲み見守っていた。
この物語の主人公は、ある国の王や円卓の騎士達である。
物語は彼らによって紡がれ、時に彼らに関わりの深い人物もその担い手となる。
物語の続きは彼から始まる。
彼はある国の円卓の騎士のひとりである。
国の重責を担い続けて数十年、彼は生存する騎士の誰よりも長く、円卓の騎士の席にあった。
「時を止めてそこで起こるはずだった出来事を変えてしまえば、そこから始まるはずだった悲しい悲劇を、変えることができるのでしょうか?」
彼が彼の息子のひとり娘である彼女と、そのような話をしたのはいつのことだっただろうか。
高く、高く、積み上げられた古今東西の書の山に囲まれた彼女が、古い世界のある歴史を調べていた頃のことであったな、と、執務の合間に取った仮眠の間の短い過去夢から目覚めた彼は、当時のことを思い出した。
彼は息子を、彼女は父親を、ある事件で亡くした直後であった。
彼にとっても彼女にとっても、それは悲しい出来事であった。
その時は幼な子であった彼女だが、成人した今は、ひとりでこの国を旅立ち、彼の見知らぬ異国の地にいる。
彼女は探索の任にあたる、三人の騎士のうちのひとり、南方探索の騎士である。
彼女の任務とは、南方にある様々な国を巡り、たくさんの人と出会うことであった。
彼女はある年の円卓会議の直前に、南方諸国で失踪した。
その後祖国にいる彼女と親しくする誰もが、彼女の安否を心配していた。
失踪事件当時の彼女は、かつて起こった悲劇を変えることに必死であったという。
彼女が巻き込まれたのは、南方諸国での紛争であった。
彼女はこの国の誰もが知らない場所で、ひとり目を覚ました。
そこは薄暗い天幕の中のようだ。
埃まみれの天幕の中の一角に、彼女は横たえられていた。
目を覚ました彼女を覗き込んだ誰かが彼女の知らぬ言葉を叫ぶと、見知らぬ人達が集まってきて、横たわる彼女の顔を次々に覗き込んだ。
中には彼女の知る言葉を話す者もいて、彼女はようやく自分の身に起こった出来事を知ることになった。
「お祖父様…私は何てことを…」
両手で顔を覆い彼女が思わず呟いた言葉が、遠く離れた祖国で彼女の安否を心配する、彼女の祖父に届くことはなかった。
その物語は王とある騎士による、北方諸国で起こった大掛かりな戦争の調停の途中で起こった出来事に端を発している。
王とある騎士の調停はいまだ終わらず、戦の行方を世界中の国々が固唾を飲み見守っていた。
この物語の主人公は、ある国の王や円卓の騎士達である。
物語は彼らによって紡がれ、時に彼らに関わりの深い人物もその担い手となる。
物語の続きは彼から始まる。
彼はある国の円卓の騎士のひとりである。
国の重責を担い続けて数十年、彼は生存する騎士の誰よりも長く、円卓の騎士の席にあった。
「時を止めてそこで起こるはずだった出来事を変えてしまえば、そこから始まるはずだった悲しい悲劇を、変えることができるのでしょうか?」
彼が彼の息子のひとり娘である彼女と、そのような話をしたのはいつのことだっただろうか。
高く、高く、積み上げられた古今東西の書の山に囲まれた彼女が、古い世界のある歴史を調べていた頃のことであったな、と、執務の合間に取った仮眠の間の短い過去夢から目覚めた彼は、当時のことを思い出した。
彼は息子を、彼女は父親を、ある事件で亡くした直後であった。
彼にとっても彼女にとっても、それは悲しい出来事であった。
その時は幼な子であった彼女だが、成人した今は、ひとりでこの国を旅立ち、彼の見知らぬ異国の地にいる。
彼女は探索の任にあたる、三人の騎士のうちのひとり、南方探索の騎士である。
彼女の任務とは、南方にある様々な国を巡り、たくさんの人と出会うことであった。
彼女はある年の円卓会議の直前に、南方諸国で失踪した。
その後祖国にいる彼女と親しくする誰もが、彼女の安否を心配していた。
失踪事件当時の彼女は、かつて起こった悲劇を変えることに必死であったという。
彼女が巻き込まれたのは、南方諸国での紛争であった。
彼女はこの国の誰もが知らない場所で、ひとり目を覚ました。
そこは薄暗い天幕の中のようだ。
埃まみれの天幕の中の一角に、彼女は横たえられていた。
目を覚ました彼女を覗き込んだ誰かが彼女の知らぬ言葉を叫ぶと、見知らぬ人達が集まってきて、横たわる彼女の顔を次々に覗き込んだ。
中には彼女の知る言葉を話す者もいて、彼女はようやく自分の身に起こった出来事を知ることになった。
「お祖父様…私は何てことを…」
両手で顔を覆い彼女が思わず呟いた言葉が、遠く離れた祖国で彼女の安否を心配する、彼女の祖父に届くことはなかった。
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