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校長室からレスリング場前へ
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校内放送で呼ばれた孝太はすっ飛んで教員室に向かった。
そこで告げられたのは“校長先生がお呼びです。校長室へ向かってください”という言葉だった。
孝太の心臓が強く跳ねた。
こ、校長室っ? 何か失敗しただろうか?
教育実習中の自分の行動をあれこれ思い返しながら、校長室へ急ぐ。
緊張と不安が入り混じり、背筋が自然と伸びる。
汗ばんだ掌をズボンでぬぐい、スーツの襟を正すと、まるで大舞台に上がる直前のような面持ちで校長室へと向かった。
重厚な扉の前で一礼し、ノックをする。
「失礼します」
扉を開けると、柔らかな逆光の中、校長がデスクの向こうで穏やかにほほ笑んでいた。
「おお、君が高原君、忙しい時に呼びつけてすまないね、、、」
柔らかな声に、緊張で張り詰めていた孝太の肩が少しだけ緩む。
「失礼します」
少しこわばった笑顔で椅子に腰を下ろすと、校長はゆっくりと手を組み、優しい目を向けた。
「君の授業、何度かこっそりと見させてもらったよ。生徒たちも楽しそうにしていたじゃないか」
「えっ……見てくださってたんですか?」
孝太の目が少し丸くなる。
「もちろんだ。授業の最初は少し緊張していたようだけれど、最近は、君自身も楽しんでいるのが伝わってくる。ああいう姿はね、見ていて気持ちがいいんだよ。私も新米教師の頃の自分を思い出して、身が引き締まる思いだったよ」
孝太の頬が少し赤くなった。
「ありがとうございます。最初は本当に緊張してばかりで、生徒たちの前に立つだけで心臓がバクバクしてました。でも、みんなが真剣に話を聞いてくれたり、笑ってくれたりして、だんだん、自分も楽しくなってきました」
校長の前で、顔を引き締めようとしても、生徒達を思い出すと思わず笑みが漏れてしまう。
それを校長は微笑ましく見る。
「この数週間、あっという間でした。正直、このままずっと、この学校にいたいくらいです」
その言葉に、校長はふっと目を細め、優しくうなずいた。
「教育実習というのは、あっという間なんだよ。だけどね、その短い時間の中で、君のように“もっといたい”と感じられることは、とても大切なことなんだ」
「……はい」
孝太の声には、寂しさと達成感が混じっていた。
「生徒たちが、まだ先生じゃないのに僕のことを“先生”って呼んでくれることがあって、無邪気なその言葉を聞くとなんだか胸が熱くなるんです」
孝太は少し照れたように笑った。
その笑顔には、若々しい瑞々しさと、ほんの少しの誇りが滲んでいた。
校長はしばし黙って孝太を見つめ、穏やかな声で言った。
「実習は今週で終わりだね」
その一言に、孝太の笑顔がふっと曇った。
「はい。本当に、あっという間です。もう終わってしまうなんて、正直、寂しいです」
「君のように素直にそう言えるのは、素晴らしいことだよ」
校長の言葉に、孝太は照れて、小さくうなずいた。
孝太の表情には、名残惜しさと充実感が入り混じっていた。
校長はそっと机の上の予定表に目を落とした。
「ところで、君の実習は今週で終わりだけれど、来週、高校三年生は修学旅行があるんだ。君も知っているね?」
「はい、ちらっと聞きました。みんな楽しみにしているみたいですね」
「ああ、そうだろう。高校生活最後の一大イベントだからね」
校長は少し身を乗り出し、いたずらっぽく目を細めた。
「実は、三年生は、皆元気だろ?何年かに一度、宿舎を抜け出す者もいるんだ。だから、引率の人員は充分ってことはなくてね。どうだろう、特例で、、、君も参加してみないか?」
願ってもない校長の言葉に、孝太の心臓が飛び上がる。
「ええっ! ぼ、僕も参加させていただけるんですか!?」
孝太は思わず身を乗り出した。
「もちろん、あくまで“教育実習生”という立場ではあるけれどね。せっかく君がこの学校に馴染んできたところだし、生徒たちもきっと喜ぶだろう。君も、名残惜しい気持ちがあるようだから、生徒と触れ合う実にいい機会じゃないかなと思ってね。まぁ、君の教育実習実習期間が3日延びてしまうことになるけれども、、!」
孝太の目が一気に輝いた。
「行きます! ぜひ、参加させてください!」
その即答ぶりに、校長は目を細めてうなずいた。
「うん、そう言うと思ったよ。若い人がいるだけで、場の空気はずいぶん変わるものなんだ。君の明るさは、生徒たちにとっても教師にとっても貴重な存在だよ」
「ありがとうございますっ!」
孝太は胸の前で拳をぎゅっと握りしめた。
緊張と興奮とが入り混じったその姿は、どこか少年のようで、しかし一人の教師としての自覚が芽生え始めた青年の横顔でもあった。
校長はゆっくりと椅子にもたれ、柔らかな声で言った。
「残り少ない実習、最後まで全力でやりきってごらん。修学旅行は、その先にある“ご褒美”だ」
「はいっ!」
孝太は力強く返事をした。
校長室を後にした孝太は、喜びで人目がなければスキップでも始めたいくらいだった。
三年生の修学旅行であれば、晴真先輩とも一緒である。
この喜びを、晴真と共有したかった。
だが、晴真は今、部活中だ。
邪魔しては申し訳ない。
教員室に戻り、自分に与えられた席に座る。
でも、落ち着かない。
それに、今日行うべき作業は終え、やることもない。
レスリング部の面々を思い出す。
懸垂競走をやった黒崎、そして、高橋、山本、佐々木等三年から、下級生の小林達まで、レスリング部の部員達は皆、孝太に懐いてくれ、授業中に一番会話を交わしている。
少しくらいに顔を出しても、いいよな、、、
邪魔そうならすぐに帰ればいいし、、、
あわよくば、晴真が、孝太も一緒に部活をしないかと誘ってくれることを少し期待しながら孝太は立ち上がり、レスリング部の練習場のある体育館に向かう。
バスケット部のボールのバウンド音、剣道部の竹刀のぶつかる音、柔道部の投げの決まった音を聞きながら、一番奥のレスリング場へと足早に進む。
早く伝えたいっ!
心ははやる。
体育館の奥、レスリング場の扉の前に着いた孝太は、息を整え、勢いよく扉を引こうとした。
が、動かない。
あれ?
ノブをひねっても、内側から鍵がかけられているようだった。
窓もすべてカーテンが閉ざされ、内部は完全に外界から遮断されている。
その時、、、
中から、怒鳴り声が轟いた。
「テメェ、デカチンッ! もっと腰を落とせっつってんだろうがぁ!!」
「その程度で泣き入れてんじゃねぇ!!」
「声出せっ!! お前の声なんざ誰も聞きたくねぇんだよ、出せぇッ!!」
孝太の足が思わず止まった。
体育館の外の廊下にまで響くその声は、ただの熱血指導というにはあまりにも厳しすぎ、どこかねっとりとした悪意のような響きを含んでいる。
何だ?今の声は、、、
耳を澄ますと、さらに罵声が飛び交う。
「おらぁ! デカチン、四つん這いになってんじゃねえよ、、、情ねぇっ!」
「そうだそうだ、みっともねぇ。気合の声出せよっ!そんなんじゃ、聞こえねぇぞ!」
「情けないツラを晒すんじゃねえよ、デカチンっ!そんな顔しても許さねぇって言ってんだろっ!何度言っても、分かんねぇ奴だなぁ」
「おい、まだ立てないのかよ?疲れたふりして休んでんじゃねぇのか?お前の身体はその程度か?お前の筋肉は飾りか?」
怒鳴り声に混じって、何かがマットに叩きつけられるような鈍い音も響く。
孝太は眉をひそめ、扉に近づいた。
中の様子は見えない。
「立てよデカチン!! 膝ついてどうすんだよ!!」
「腰が甘ぇ! もっと沈めろって言ってんだよォ!!」
「背中で受けろって何回言わせんだ、このポンコツがぁ!」
マットを踏み鳴らす音、ぶつかる音、受け身を取る音、、、
そのすべてが連続して響き、場内がまるで小さな格闘場のようになっていた。
聞こえてくる声には、嘲笑うような、追い詰めるような響きが籠もっており、孝太の胸にざらついた違和感が残る。
これ、ちょっとイジメっぽくないか、、、、?
その励ましの声というよりも、罵声とも思える声に孝太は眉を顰める。
支配的な怒声と、それに押しつぶされる誰かの苦しそうな声、、、、
そんな空気が外にまで伝わってきた。
中の様子を見ようとするが、どこにも覗ける隙間はない。
ここで、扉をドンドンとノックして中に入るのも、教育実習生として僭越な行為だ。
どうしよう、、、
イジメ?
でも、まさか、そんな、、、
すぐに孝太は首を振った。
晴真の優しく男らしい顔が頭に浮かぶ。
晴真先輩が顧問をしてる部だぞ、、、
あの侠気ある先輩が居るのにイジメなんか起こるわけないじゃないか、、、
いつも真っ直ぐで、優しく、厳しいときも仲間のことを第一に考えている晴真先輩、、、
脳裏に浮かんだその姿に、自身の疑念を打ち消す。
けれど、その“デカチン”っていう部員にずいぶんキツい指導をしているな、、、
中からまた声が上がる。
「おいデカチン、泣き言はいいんだよ!言われたことを、言われたとおりにやればいいんだっ!なぜ、そんな事が分からないっ!」
「はい、次、組み手いくぞ~!デカチン、まずは一年の相手から、、、」
「おいおいっ!顔が歪んでるぞぉ~、根性入れろっ!」
孝太は一歩だけ扉に近づいたが、それ以上踏み込むことはできなかった。
ドアに背を向け、教員室に向かう。
きっと、“デカチンくん”は、練習をサボったかなんかで、怒られているんだろう。
確かに、孝太も、素行不良の後輩に厳しい言葉を投げたことはある。
きっと、そんな叱責の場に、偶然、居合わせちゃったんだ、、、
心の中でそう繰り返しながら、孝太は教員室に向かう。
あれ、そういえば、晴真先輩の声、、、聞こえなかったな、、、
ふと、そんな疑念が過ぎる。
孝太が背にした扉の向こうで、部員たちから罵声を浴び、マットに押さえ込まれ、“デカチン”と嘲るように呼ばれているのが、自分の尊敬する“晴真先輩”であることなど、孝太はまだ知る由もなかった。
そこで告げられたのは“校長先生がお呼びです。校長室へ向かってください”という言葉だった。
孝太の心臓が強く跳ねた。
こ、校長室っ? 何か失敗しただろうか?
教育実習中の自分の行動をあれこれ思い返しながら、校長室へ急ぐ。
緊張と不安が入り混じり、背筋が自然と伸びる。
汗ばんだ掌をズボンでぬぐい、スーツの襟を正すと、まるで大舞台に上がる直前のような面持ちで校長室へと向かった。
重厚な扉の前で一礼し、ノックをする。
「失礼します」
扉を開けると、柔らかな逆光の中、校長がデスクの向こうで穏やかにほほ笑んでいた。
「おお、君が高原君、忙しい時に呼びつけてすまないね、、、」
柔らかな声に、緊張で張り詰めていた孝太の肩が少しだけ緩む。
「失礼します」
少しこわばった笑顔で椅子に腰を下ろすと、校長はゆっくりと手を組み、優しい目を向けた。
「君の授業、何度かこっそりと見させてもらったよ。生徒たちも楽しそうにしていたじゃないか」
「えっ……見てくださってたんですか?」
孝太の目が少し丸くなる。
「もちろんだ。授業の最初は少し緊張していたようだけれど、最近は、君自身も楽しんでいるのが伝わってくる。ああいう姿はね、見ていて気持ちがいいんだよ。私も新米教師の頃の自分を思い出して、身が引き締まる思いだったよ」
孝太の頬が少し赤くなった。
「ありがとうございます。最初は本当に緊張してばかりで、生徒たちの前に立つだけで心臓がバクバクしてました。でも、みんなが真剣に話を聞いてくれたり、笑ってくれたりして、だんだん、自分も楽しくなってきました」
校長の前で、顔を引き締めようとしても、生徒達を思い出すと思わず笑みが漏れてしまう。
それを校長は微笑ましく見る。
「この数週間、あっという間でした。正直、このままずっと、この学校にいたいくらいです」
その言葉に、校長はふっと目を細め、優しくうなずいた。
「教育実習というのは、あっという間なんだよ。だけどね、その短い時間の中で、君のように“もっといたい”と感じられることは、とても大切なことなんだ」
「……はい」
孝太の声には、寂しさと達成感が混じっていた。
「生徒たちが、まだ先生じゃないのに僕のことを“先生”って呼んでくれることがあって、無邪気なその言葉を聞くとなんだか胸が熱くなるんです」
孝太は少し照れたように笑った。
その笑顔には、若々しい瑞々しさと、ほんの少しの誇りが滲んでいた。
校長はしばし黙って孝太を見つめ、穏やかな声で言った。
「実習は今週で終わりだね」
その一言に、孝太の笑顔がふっと曇った。
「はい。本当に、あっという間です。もう終わってしまうなんて、正直、寂しいです」
「君のように素直にそう言えるのは、素晴らしいことだよ」
校長の言葉に、孝太は照れて、小さくうなずいた。
孝太の表情には、名残惜しさと充実感が入り混じっていた。
校長はそっと机の上の予定表に目を落とした。
「ところで、君の実習は今週で終わりだけれど、来週、高校三年生は修学旅行があるんだ。君も知っているね?」
「はい、ちらっと聞きました。みんな楽しみにしているみたいですね」
「ああ、そうだろう。高校生活最後の一大イベントだからね」
校長は少し身を乗り出し、いたずらっぽく目を細めた。
「実は、三年生は、皆元気だろ?何年かに一度、宿舎を抜け出す者もいるんだ。だから、引率の人員は充分ってことはなくてね。どうだろう、特例で、、、君も参加してみないか?」
願ってもない校長の言葉に、孝太の心臓が飛び上がる。
「ええっ! ぼ、僕も参加させていただけるんですか!?」
孝太は思わず身を乗り出した。
「もちろん、あくまで“教育実習生”という立場ではあるけれどね。せっかく君がこの学校に馴染んできたところだし、生徒たちもきっと喜ぶだろう。君も、名残惜しい気持ちがあるようだから、生徒と触れ合う実にいい機会じゃないかなと思ってね。まぁ、君の教育実習実習期間が3日延びてしまうことになるけれども、、!」
孝太の目が一気に輝いた。
「行きます! ぜひ、参加させてください!」
その即答ぶりに、校長は目を細めてうなずいた。
「うん、そう言うと思ったよ。若い人がいるだけで、場の空気はずいぶん変わるものなんだ。君の明るさは、生徒たちにとっても教師にとっても貴重な存在だよ」
「ありがとうございますっ!」
孝太は胸の前で拳をぎゅっと握りしめた。
緊張と興奮とが入り混じったその姿は、どこか少年のようで、しかし一人の教師としての自覚が芽生え始めた青年の横顔でもあった。
校長はゆっくりと椅子にもたれ、柔らかな声で言った。
「残り少ない実習、最後まで全力でやりきってごらん。修学旅行は、その先にある“ご褒美”だ」
「はいっ!」
孝太は力強く返事をした。
校長室を後にした孝太は、喜びで人目がなければスキップでも始めたいくらいだった。
三年生の修学旅行であれば、晴真先輩とも一緒である。
この喜びを、晴真と共有したかった。
だが、晴真は今、部活中だ。
邪魔しては申し訳ない。
教員室に戻り、自分に与えられた席に座る。
でも、落ち着かない。
それに、今日行うべき作業は終え、やることもない。
レスリング部の面々を思い出す。
懸垂競走をやった黒崎、そして、高橋、山本、佐々木等三年から、下級生の小林達まで、レスリング部の部員達は皆、孝太に懐いてくれ、授業中に一番会話を交わしている。
少しくらいに顔を出しても、いいよな、、、
邪魔そうならすぐに帰ればいいし、、、
あわよくば、晴真が、孝太も一緒に部活をしないかと誘ってくれることを少し期待しながら孝太は立ち上がり、レスリング部の練習場のある体育館に向かう。
バスケット部のボールのバウンド音、剣道部の竹刀のぶつかる音、柔道部の投げの決まった音を聞きながら、一番奥のレスリング場へと足早に進む。
早く伝えたいっ!
心ははやる。
体育館の奥、レスリング場の扉の前に着いた孝太は、息を整え、勢いよく扉を引こうとした。
が、動かない。
あれ?
ノブをひねっても、内側から鍵がかけられているようだった。
窓もすべてカーテンが閉ざされ、内部は完全に外界から遮断されている。
その時、、、
中から、怒鳴り声が轟いた。
「テメェ、デカチンッ! もっと腰を落とせっつってんだろうがぁ!!」
「その程度で泣き入れてんじゃねぇ!!」
「声出せっ!! お前の声なんざ誰も聞きたくねぇんだよ、出せぇッ!!」
孝太の足が思わず止まった。
体育館の外の廊下にまで響くその声は、ただの熱血指導というにはあまりにも厳しすぎ、どこかねっとりとした悪意のような響きを含んでいる。
何だ?今の声は、、、
耳を澄ますと、さらに罵声が飛び交う。
「おらぁ! デカチン、四つん這いになってんじゃねえよ、、、情ねぇっ!」
「そうだそうだ、みっともねぇ。気合の声出せよっ!そんなんじゃ、聞こえねぇぞ!」
「情けないツラを晒すんじゃねえよ、デカチンっ!そんな顔しても許さねぇって言ってんだろっ!何度言っても、分かんねぇ奴だなぁ」
「おい、まだ立てないのかよ?疲れたふりして休んでんじゃねぇのか?お前の身体はその程度か?お前の筋肉は飾りか?」
怒鳴り声に混じって、何かがマットに叩きつけられるような鈍い音も響く。
孝太は眉をひそめ、扉に近づいた。
中の様子は見えない。
「立てよデカチン!! 膝ついてどうすんだよ!!」
「腰が甘ぇ! もっと沈めろって言ってんだよォ!!」
「背中で受けろって何回言わせんだ、このポンコツがぁ!」
マットを踏み鳴らす音、ぶつかる音、受け身を取る音、、、
そのすべてが連続して響き、場内がまるで小さな格闘場のようになっていた。
聞こえてくる声には、嘲笑うような、追い詰めるような響きが籠もっており、孝太の胸にざらついた違和感が残る。
これ、ちょっとイジメっぽくないか、、、、?
その励ましの声というよりも、罵声とも思える声に孝太は眉を顰める。
支配的な怒声と、それに押しつぶされる誰かの苦しそうな声、、、、
そんな空気が外にまで伝わってきた。
中の様子を見ようとするが、どこにも覗ける隙間はない。
ここで、扉をドンドンとノックして中に入るのも、教育実習生として僭越な行為だ。
どうしよう、、、
イジメ?
でも、まさか、そんな、、、
すぐに孝太は首を振った。
晴真の優しく男らしい顔が頭に浮かぶ。
晴真先輩が顧問をしてる部だぞ、、、
あの侠気ある先輩が居るのにイジメなんか起こるわけないじゃないか、、、
いつも真っ直ぐで、優しく、厳しいときも仲間のことを第一に考えている晴真先輩、、、
脳裏に浮かんだその姿に、自身の疑念を打ち消す。
けれど、その“デカチン”っていう部員にずいぶんキツい指導をしているな、、、
中からまた声が上がる。
「おいデカチン、泣き言はいいんだよ!言われたことを、言われたとおりにやればいいんだっ!なぜ、そんな事が分からないっ!」
「はい、次、組み手いくぞ~!デカチン、まずは一年の相手から、、、」
「おいおいっ!顔が歪んでるぞぉ~、根性入れろっ!」
孝太は一歩だけ扉に近づいたが、それ以上踏み込むことはできなかった。
ドアに背を向け、教員室に向かう。
きっと、“デカチンくん”は、練習をサボったかなんかで、怒られているんだろう。
確かに、孝太も、素行不良の後輩に厳しい言葉を投げたことはある。
きっと、そんな叱責の場に、偶然、居合わせちゃったんだ、、、
心の中でそう繰り返しながら、孝太は教員室に向かう。
あれ、そういえば、晴真先輩の声、、、聞こえなかったな、、、
ふと、そんな疑念が過ぎる。
孝太が背にした扉の向こうで、部員たちから罵声を浴び、マットに押さえ込まれ、“デカチン”と嘲るように呼ばれているのが、自分の尊敬する“晴真先輩”であることなど、孝太はまだ知る由もなかった。
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