邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

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旋風

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グラウンドの空気が変わっていっている、、、?

高尾は不思議に感じる。

それは、雰囲気だけではない。

自分を包む空気の質までもが変わっていっているように感じる。

その感覚は、試合が進むにつれて強くなる。

この学園に訪れてから何度か感じた違和感のようなものが腹の底に湧く。

目の前で繰り広げられる光景、、、

試合が進むにつれ、相手チームも、そして自分の味方であるはずの生徒たちも、ボールに当たれば次々と自ら進んで脱衣を始める。

見事な統率感、、、

グラウンドの白線の外には脱ぎ捨てられた制服やシャツが散乱し、若く筋張った剥き出しの肉体が埋め尽くしていく。

そして、体育科の生徒らしく動きは俊敏であり、球をキャッチし、投げ返す動きも見事だ。

だが、高尾はそこに何らかの大きな意志、、、一人一人の生徒を超えた意志に包まれているような不思議な感覚に捉えられる。

一つ一つの生徒の行動は自然だ。

ボールを果敢に奪おうとする生徒達、、、

攻守が次々入れ替わる試合展開、、、

だが、高尾との“親睦”と表現された割に、投げられるボールは鋭く、生徒達の動きも機敏だ。

が、なぜか鋭いボールの一投毎に空気に痺れるような波動が生まれるように思える。

そして、当てられ陣地の外に出て相手チームを狙う生徒達も、中で鋭いボールを躱し、キャッチしようとする生徒もまるで神事に臨むような神妙な顔付きをしている。

試合が進むにつれ、高尾を妙な居心地悪さが襲う。

だが、その居心地の悪さを確認しようとしても、俊敏な生徒達がボールを素早く放ち、立ち止まり考えをまとめる暇はない。

ボールが当たり外へ出る生徒、ボールを当て自陣に戻る生徒、、、

そして、自分が標的にされるのを覚悟していたが、そんなことはなく、ボールは高尾を狙わず、確かに一番当てやすい生徒に向かって投げられ、高尾は自陣地内を走り回るだけ、、、

いつの間にか、体操着を纏っているのは、高尾と宍倉のみになっている。

下着一枚で鍛えられた身体を晒す生徒達、、、

そして、黙々とドッヂボールに勤しむ、、、

その異常な光景、、、

高尾は、幻惑される。

そのドッヂボールコートは、スポーツというよりは、何らかの秘儀的な儀式の様相を呈しているような不思議な感覚が高尾を襲う。

何を、何を考えているんだ、コイツらは、、、

高尾の内に疑問が湧く。

ただのドッヂボールの試合だ、、、

だが、、、

いわゆる体育会の統率とは異なる。

なにか不思議な意志に纏まるクラスの生徒達、、、

ボールが鋭く投げられる。

裸の生徒達とともに高尾はコート内を素早く動く。

汗が流れ落ちる。

ボールは高尾に狙いを絞ったのか、高尾の近くを通り過ぎることが多くなる。

え?

ピチッ

小さく鋭い痛み、、、

見ると、高尾の太く鋼鉄の筋を束ねたような肘に赤い線が走っている。

そこから小さな血の玉が滲み始める。

鎌鼬かまいたち

ズシュッ!

戸惑っている暇はない。

風を切る音を立てボールが向かってくる。

高尾は身を仰け反らせて鋭いボールを交わす。

高尾のずば抜けた動体視力と身体能力がなければ直撃していただろう。

高尾は気付かない。

高尾が上半身に纏った薄手のスポーツシャツの背中に一筋の裂け目が出来、彼の鍛えられた背中が覗いていることを、、、

そして、高尾を襲う相手チームの手に渡ったボールは的確に高尾チームの生徒を狙っていく。

一人、また、一人、、、

自陣の仲間が減っていき、自ずと高尾は広範囲を走り、ボールを避けなくてはならなくなる。

ボールを取りに走ろうとしても、生徒がその導線におり、ボールの前に行けない。

見回せば高尾の陣地の周りを等間隔で相手チームの生徒が並び囲んでいる。

相手陣地の奥には、生徒の中で一人、体操着を着ている宍倉がまるでキングのように立ち、薄ら笑いを浮かべ、優雅に立つ。

等間隔の相手チームが的確に投げる球。

鋭くしなりながら選手を狙うこともあれば、時に嬲るような高く空中に弧を描くパスが続く。

飛びついても取れない宙を舞うパスの連続に集中が途切れそうになると、いきなり豪速球がコートの中を走る。

高尾はボールを避けて走るしかない。

汗が流れる。

そして、幾度が走る鋭い痛み、、、

腕、両脚に赤い筋が増える。

まさか、本当に鎌鼬かまいたちが、旋風つむじかぜが生じている?

訝しく思うが、その思考を断ち切るように次から次へと剛球が放たれる。

高尾は必死に身を翻す。

確かに、空気がおかしい。

高尾の周囲は澱むように、だが、その向こうで密度を増した旋風が起こり、まるで高尾の動きを縛り付けるように四方から圧をかけてくるように思える。

自軍の生徒達が次々球に当たり、自陣地内には高尾だけになる。

彼を守る駒、、、ボーンも、ナイトも、ビショップも失い孤立したキングのように。

「先生、そろそろ終わりにしましょうか、、、」

コートの最奥から、鈴の音のように透き通った声が響いた。

宍倉が、ゆっくりとボールを手に、前へ出てきた。

彼が高尾を見据え、高尾の周囲の空気が変わる。

まるで周囲の空気が気流と化し、その球体へと吸い込まれていくように思える。

挑むような顔つきで、ゆっくりとボールを掴み、身体をしならせ、宍倉がボールを投げる。

宍倉の手から放たれたボールは、直線を通り越して不気味な曲線を描き、高尾の死角へと潜り込んだ。

高尾の研ぎ澄まされたアスリートとしての勘か?

高尾は急なカーブを描き向かってくるボールの方へ身体を向け、しっかりとキャッチをする。

しかし、受け止めた瞬間に高尾の顔が歪む。

ヴゥゥゥゥゥゥゥ~~ン、、、

「っ、これは!?」

手の中にあるはずのボールが、意志を持っているかのように激しく振動する。

まるでボールが風を纏い、高速で回転し続けるよう。

振動がボールを抱えた腕を、ボールに密着した腹を、嫌らしく、執拗に抉り取ろうとするように嫌な蠕動を続けて回転する。

まるで、見えない無数の指先が高尾の肌を愛撫し、同時に削り取っているかのような、身の毛もよだつ感触。

「ふふ」

宍倉は、裸の生徒たちの群れの中で、一人だけ着崩れぬ制服を纏ったまま、獲物の反応を愉しむように目を細めた。

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