地獄花、あるいは曼珠沙華

syonanoka

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 夢を見ていた。父親と性行為をする夢である。家から追い出され、公園の公衆便所で夜を明かす夢である。朝目が覚めたら母親が首を吊っており、真っ暗い股から糞尿が黴びた畳に滴下している夢である。
 微睡の中寝返りを打って、目を閉じる。
 また、夢を見ていた。両親に温かく笑いかけられ、愛しているよと言われる夢である。誕生日に自分の歳と同じ数の蝋燭が立ったケーキを食べる夢である。穏やかな寝物語を聴きながら、微睡に飲み込まれていく夢である。
 目が覚めて、死にたくなった。酷い悪夢を見たと思った。前者ではなく後者の夢のことを言っている。夢から覚めて、現実を見て、夢景色に付随するえもいわれぬ多幸感から突き放されるとき、この地獄で息をしていることを、ことさら鮮明に自覚する。なんで夢っていうのは一回の睡眠でいくつも見るんだろうか。一つ目の夢だけならば、ただの自分の過去であるからして、こんなにダメージを負ったりなんかしなかったのに。
 夢というものは起きている間の経験や記憶の整理だなんだという論もあるけれど、俺はあんな型通りの幸せなど一切経験したことがない。
 悪夢を見た際の解決法は至極単純明快である。ガラス瓶に入った糖衣錠を枕元に置いてあった飲みかけの缶チューハイでじゃらじゃらと喉の奥に流し込む。空腹時だから、三十分もすればこの不快感はまっさらに消えて多幸感に包まれているはずだ。時刻は十六時四三分。昨日寝たのは確か二時ごろだったはずだから、久しぶりに随分眠ることができた。訳のわからない東北訛りのような名前の錠剤もたまには役に立つらしい。いや、昨日はサイレースを飲んだからこんなに爆睡していたのか。どう考えても今日の悪夢は前者のせいだろう。やはり効いても効かなくてもゴミみたいな薬だ。
 タバコを吸おうと思い立ち、レジ袋だらけのゴミ山からカートンの入った袋を探し当てる。そこらへんにいくつも転がっているライターのうちの一つで火を点け、煙を深く肺へ吸い込んだ。スマートフォンをなんとなしに見やれば、ナカノから連絡が来ている。わけのわからない不恰好な小動物?のスタンプが一つ。どうやら家に来るらしい。最初は何時ごろ行ってもいい?だった連絡も今ではスタンプ一つに短縮されている。送信時間は大体三十分前。それならじきにやってくるだろうと思い再度布団に横たわる。
 ナカノとは高校生の頃からの仲であり、家庭環境が最悪だった俺のことを家に匿ってくれたいいやつだ。倫理観は終わっているし人格は破綻しているけれど。高校を卒業してすぐに家を出てフリーターになった俺と、同じく家を出てフリーターになったナカノとはお互いの生活が似ていることからも距離が縮まり、お互いの家に入り浸って、あいつの家でゲームをやったり、あっさい音楽談義で盛り上がったり、近所の年確がゆるいコンビニで買ってきた酒で飲み明かしたり、まぁ楽しい付き合いをしていた。嘘。気の置けない男友達とくだらねぇ事をくっちゃべってダラダラ無駄な時間を過ごすそのルーティーンは、俺の生活に確かに色を付けていた。あいつと過ごす時間が一番楽しかったし、今でもそれは変わらない。
 そこに余計な感情が混ざり始めたのはいつ頃からだったか。働き始めてからみるみるうちに心身に異常をきたし適応障害から躁鬱になった俺のことを、文句を言いながらも見舞いに来てくれたやさしさをしんから嬉しく思ってしまった頃からだったか。様子のおかしい俺のことを精神科に連れて行ってくれたのも、生活保護の申請を手伝ってくれたのも、オーバードーズで死にかけたとき救急車を呼んでくれたのもナカノだった。あいつからすれば、腐れ縁の友人を高校の頃からの延長線で面倒を見てやっている、それだけだったのかもしれない。しかし人からのやさしさに飢えきっていた俺にとって、それは劇物だった。彼から惰性で雑に面倒を見てもらうたび、俺はその中からかすかな思いやりと友愛とを血眼で探し、なんとか見つけ出したその数滴を後生大事に集めて心の中の小瓶に詰める。それを夜毎眺めて、そのヘロインよりも依存性のある液体が、じわじわと染み出して心臓に根を張ることを、俺はただ見ていることしかできなかった。彼に向けていたはずの健全な友愛はその形を歪め、執着と依存になり変わった。
 思考がぼやけて、ふわふわとした甘やかな多幸感が脳膜の中に満ちる。体が軽くて、今ならなんでもできそうな心地だった。さっき飲んだ甘い錠剤が効き始めている。そう思って、部屋のゴミでもまとめてやろうかと立ち上がったとき、じゃりりと錠前に鍵が差し込まれる音がした。ナカノだ。そう思って早足で玄関口まで急ぐ。途中で酒の缶がパンパンに詰まった45ℓのゴミ袋に躓きかけたが、それも気にしなかった。ノブが捻られ、扉が開いていく。
「やっほ、ってお前。わざわざ出迎えにきたわけ? またラリってんだろ」
「アハ、分かる? 待ってたよ」
「ハイハイ。飯買ってきたけど食うか?」
 靴を脱いで廊下に足を踏み入れながら右手に提げていたレジ袋を掲げて見せるナカノ。せっかく買ってきてくれたんだから、とも思ったが、あいにくコデインのせいで食欲が消え失せている。
「すまん、いらん」
「あ、そ。じゃ俺だけ食うわ」
 1Kの1の部分に到着したナカノがこれ見よがしに眉を顰める。この部屋の惨状を見てのことだろう。
「相変わらずきったねぇな、お前の部屋」
「今片付けようと思ったところで来たんだから仕方ないだろ」
 わずかな生活スペースを押し広げ、座卓の前にクッションを置いてやる。灰皿代わりの菓子缶の蓋を布団横から卓上に移し、布団の上に座って壁にもたれる。机の上に広げられた弁当とホットスナック、割り箸をパキリと割ってその歪さに舌打ちしてから食事を始めたナカノのことをぼうっと見つめる。
 こう見ると、やはりこいつは綺麗な顔をしている。くっきりとした二重が刻まれている切れ長の瞳、スッと綺麗に通った鼻筋と薄い唇は黄金比と言っていい位置に配置されていて、もはや嫌味なくらいに。こいつが女に困ったところを見たところがない。今も適当な彼女かセフレがいるんだろう。付き合ってるという話は聞かないし、後者か。
「酒飲む? この前俺が買ってきたやつまだ余ってんの?」
「ある」
 箸を止めたナカノがこちらに問いかけてくるのに頷いて、冷蔵庫から冷えた缶チューハイを持ってくる。鈍い音を立ててテーブルにそれを置き、プルタブを起こせば、彼も同じようにした。缶を持ち上げ、適当な乾杯の音頭をとる。
「希死念慮は高く、自己肯定感は低く、乾杯!」
「ガハ! 乾杯」 
 小さく吹き出したナカノを横目に、思い切り酒を煽る。食道を通っていく冷えた炭酸が、胃の中に落ちていく感触がした。カッと胃臓が熱を持ち、今更この酒が九パーセントだったことを思い出した。まあどうでもいい。コスパが良くてよろしいことで。
「工場のさぁ」
「ん」
 バイトの話らしい、唐突に喋り出した彼に相槌を打つ。
「パートリーダーのババァがいんだけど。前からなにかといちゃもん付けてきて死ねやとは思ってたんだけど」
「はぁ」
「この前なんか仕事終わりに呼び出されて告白されたんだよな。だからバイト辞めた」
「え? 祝ニートじゃん。華々しいナカノ君の人生にも一度かんぱーい」
「ふざけんなバカ死ね」
 小学生レベルの語彙で罵倒が飛んでくる。ハー、そのババァとやらが何歳かは知らんが、モテるっていうのも面倒なもんなんだな。どうも、うつくしさの弊害で苦労をしているナカノを見ているとなんだか胸のすくような気持ちになる。早くお前もここまで落ちてきてくれ。本当に。こいつは俺と違って実家が太いんだから働かなくたって生きていける。二十四を過ぎても未だ多額の仕送りをもらっているこいつが純粋に恨めしい。金銭的な不安はにんげんをどこまでも駄目にする。それがないからこいつは健常者なのか、それとも今までの環境の問題なのか。
「大人になってまで好きな子にちょっかいかける奴とかいたんだな。天然記念物じゃん」
「お前はあのクソババァに会ったことねぇからそんなこと言ってられんだよ。実際されたら地獄だぞ、あれ。」
「お疲れ様でーす」
「ゴミがよ」
「うっせぇボンボンニート」
「ユイカワクン、その哀れなニートにおタバコ恵んでくれよ、買って来んの忘れた」
「そこらへんにあるから一箱やるよ。倍で返せな」
 おー、と適当に返事をして食事を終えたナカノが立ち上がる。百八十を超えた長身の成人男性が身をかがめてゴミを漁っているのはなかなか壮観な光景だ。
 自分はといえば、白い糖衣錠の多幸感がゆっくりと薄れていっているのを感じていた。とっくにバカみたいな耐性がついているから、一瓶では二時間も持たない。確か紫の箱をアマゾンでまとめ買いしていたはず。ダンボールの山の方に目をやれば、ちょうど一番手前に目当ての箱があることに気がつき、四つん這いの格好で手を伸ばし一箱手に取る。
 その様子を横目で見ていた中のが不意に口を開いた。
「あのさあ」
 二人の間にポトンと言葉が落ちる。ゴミとゴミでないものでできた山から煙草の箱を抜き出し、その中の一本に火をつけようとしながらの一言。彼の足元に置かれた灰とヤニで汚れたマグカップは、もはや本来の役目を奪われ、第二の灰皿と化している。
「何?」
 俺は薬のシートから謎の白い粒を取り出す作業に勤しんでいたので、彼の方を見ないまま答えた。
「いつお前って間違ったんだと思う」
 その声の調子が案外軽かったので、俺の視線が手元から離れることはなかった。ラムネ味のゼリー飲料で手のひらに乗った粒を流し込む。幻覚にバフがかかるお薬飲めたねである。手の届くところにあったスマートフォンで時刻を確認した。十八時三二分。スクリーンショットをして保存。
「……いつ? それ最初の間違いの話?」
「そう。生まれた時点ではお前も別にこんなアル中薬中精神疾患ハッピーセットのキチガイじゃなかったわけだろ」
「ひどい言い分だな」
 まあ、たしかにナカノが言いたいことも分かる。俺がこんなゴミ部屋暮らしの社会不適合者になるにはどこかで間違いを犯しているはずだ、と。
 少し過去に思考を飛ばす。物心ついた頃から母親に怒鳴り散らし暴力を振るう父親と、お前のせいで私が怒られたでしょうと責めてくる母親に挟まれた一人っ子の俺は当然ながら歪んで育った。
 どの季節だってつんつるてんのよれた長袖とサイズの合わない上履きを踵を潰して履いているボサボサ頭で傷だらけの俺は、当然小学校のクラスでも浮いていた。体育はよく休んで、水泳の授業では監視室の屋根の下でプールサイドの陽炎と楽しそうにはしゃぐ同級生らを眺めながら、脳みそを茹らせていた。顔なんかの見える場所に傷ができると学校を休まされるので、コミュニティにうまく所属することもできず。まぁ馴染む努力なんてものははなからしていなかったけれど。その結果、男児からは程度の低い悪口、女児からは腫れ物に触るような扱いを受けていた。教師は見て見ぬ振りをしたし、数度家に訪れた児相の職員はなんの役にも立ちやしなかった。
 それでも俺は父親の、パパのことが好きだった。パパはその大きな足や骨ばった手やトイレの便器、火のついたタバコなんかで俺のことを愛してくれた。胸ぐらを掴んで殴られるときが一番幸せだった。パパが俺のことを見てくれるから。パパの顔を近くで見られるから。唾を飛ばしながら投げつけられる罵声は祝福のファンファーレだった。痛みもなにも気にならなかった。それが当たり前で、正しいことだと思っていた。
 ママはパパのことが好きで結婚したはずなのに、どうして顔に強く手が触れただけで泣いてるんだろう。せっかくパパと触れ合っているのに。どうして話しかけてもらえているのに泣いてるんだろう。ただそれだけが疑問だった。
 中学生になった頃には、自分が虐待を受けていることには気が付いていた。それでも父親に対する合理化に似たどろついた愛情は消えなかった。あの日、一緒に風呂に入ろうと誘ってくれて、お前は母さんに似てるなと言われて、口の中に石鹸臭い陰茎を押し込まれたあと、口内にぶちまけられた、腐った魚のにおいがする生臭い白い液体を、世界中のどんなものより綺麗で大切だと思った。素直に飲み込んだ俺のことをパパは撫でてくれて。そのときの脳味噌に幸せがブワとぶちまけられる感覚を今でも強く覚えている。
 高校に上がると、俺は父親のことが少し嫌いになった。母親が仕事に出かけた後、寝室に呼ばれて裸に剥かれ、強引に肛門へ勃起した陰茎をぶち込まれるのも、働いて家に全部金を入れろと言われるのも、あれだけ好きだった打擲も暴言も、幼い頃は極彩色に輝き光っていたなにもかもが、ひどくくすんで見えるようになった。
 ある朝、押し入れの中で目を覚まし、リビングに向かおうとしたとき。目の前に背が伸びたママがいた。ママはキィキィと音を立てながら規則的に揺れていた。つまり、寝室と居間の間の桟を使って首を吊っていた。なにがきっかけだったのかは分からない。きっかけになりそうなものなどそこらじゅうに転がっていた。目の前に死んだにんげんがいるとき、警察と救急のどちらに電話をかければいいのか分からなくて、俺は数分そこで硬直していた。股から糞尿を垂れ流し、どす黒くなった肌、飛び出た眼球、唇の間からだらりと舌を垂らしているママは、ママとは全く違う化け物みたいに見えた。窓から差し込む透明であたたかな日差しがママの死体をあたためていた。春の日のことだった。
 ナカノと出会ったのは母が死んだ頃だ。たまたま隣の席になって、聞いている音楽が一緒だったことがきっかけで話すようになり、意気投合して。その頃はまだまともだったと思う。いや、たまにPTSDでフラッシュバックやパニック発作なんかを起こしていたから、健康ではなかったか。
 ただでさえ不安定な状態だったのに、高校を卒業した後家を追い出され、今までの環境から急に解放されたのが悪かった。新しい環境に、独りで暮らすということに適応できず、あとは急転直下。今に至るわけである。
 そう思うと、俺はあの家に生まれた時点で、もう歪んで育つ定めだったのだと思う。強いて言うなら、家を出たことが契機か?
「高校卒業して、一人暮らし始めたときじゃねぇかな」
「ふーん。あの家族から逃げられたのに?」
 逃げられた。ナカノの言葉が頭蓋の中で反響する。違う。追い出されたんだよ。お前には教えていなかったけれど、俺はもういらないって捨てられたんだ。パパにとってもママにとってもずっと俺はお荷物で。あのあと父がどうなったかは知らない。今でもあの家で一人で暮らしているんだろうか。
 ぐらぐらと情緒が揺れている。神経が鋭敏になり、鈍麻し、目を瞑ると回廊が見える。DXMが効き始めた。
「俺が逃げたんじゃないの。父さんと母さんが逃げたんだよ」
「そ。お前はそう思ってんのね」
 缶チューハイを一口飲んだ後、落とされた言葉は存外乾き切っていた。そちらを向けばナカノの姿や机、缶チューハイや周囲のゴミなんかが二重に見える。
「そう思ってるっていうか、そうなんだよ」
 自分の発した言葉の輪郭が歪む。頭の中に繊毛が生えている。噛み締める奥歯がすり減っていく音がする。じわじわと全身を食む快感とも不快感とも言えない絶妙な浮遊感に体を委ねる。
「歪んでんなぁ、認知。俺はむしろお前が家を出たのはいいことだと思うけどね」
 いいことなものか。唯一の肉親から見捨てられることの、その庇護から離れることの、なにが。家族といういっしょうものの共同体から弾き出されることのどこがいいことにあたるのか、俺には全くわからなかった。現にそのせいで精神を壊している。
「俺はそこからジェットコースターみたいに人生駄目になったのに?」
「ジェットコースターをカタカタ登らせたのはお前の父さんと母さんだろ」
「……」
 言わんとすることが分からない、そういうフリをして視線を逸らす。でも、だって、パパとママと一緒にいればずっとジェットコースターは登り続けてたわけじゃないか。そうやって合理化して目を逸らす。
 視界に映った煙草の先端に灯る朱色が鮮明に輝いていた。あれが俺を焼いてくれれば。お前のこぶしが今この瞬間俺の頬に強く触れれば。その手が俺の首に癒着すれば。そんなことを考えて、パパに与えられたアドレナリンを思い出す。誰かが俺のことを殴って蹴って殺して滅茶苦茶にしてくれれば、俺はなにも考えなくて済むのに。俺はなににも気付かずに済む。
「あ、図星?」
 その言葉が鼓膜に染みる前に、わざと顔から表情をこそげ落として、片眉を上げて少し皮肉げに笑うナカノの目の下に浮かぶ涙袋を見つめた。目を合わせているように見えるように、俺が逃げているように見えないように。そうやって意識して。しかしそれに少しも怯む様子を見せず、アイツは言葉を続ける。薄笑いに乗せられたぬるい憐れみが網膜に刺さる。
「お前の親がしてたのはただの虐待だろ。そこにゃなんの熱もねぇよ。火傷するくらいの熱も安心するあったかさも」
「違う」
 反射的に声が出た。自分の目尻が痙攣しているのが分かる。握り締めた片手、手のひらに刺さる爪が痛い。
 痛覚を刺激するものは愛のかけらだ。動かすたびに軋む体がそれを担保してくれる。神経の端っこをすりおろす言葉はやさしさだ。眠る前に思い出すと嫌な音を立てる自我がその証拠である。俺はそう教えられた。俺はそう学んできた。パパとママは正しくて、世界の方が歪んでいる。そうじゃなかったら、俺がまるで不幸なにんげんみたいじゃないか。こんなにもしあわせなのに、そんなのおかしい。
「父さんは、母さんは、俺のこと愛してた」
「そういう話してんじゃねぇよ。俺は解釈の話じゃなくて事実の話をしてんの」
「だから、事実を言ってんだろ」
 だから、の後に吸った空気が食道を鋭く突き刺して、続きの子音が不恰好に掠れる。
「ユイカワのこたぁ嫌いじゃねぇけどさ。そういう人生の不条理を、丁寧に剥製にして飾って、うっとり見入ってるみたいなところは気色悪いぜ」
「そんなこと」
 してねぇよ。そう言いかけて、喉がひくりと痙攣する。俺がしてることは、合理化で、停滞で、自己陶酔だと? きちんと反論をしたいのに、頭の中で言葉が構築できない。パズルのピースが見つからない。思考が渦を巻き、その中で言葉になり損なったなにかが旋回していた。
「してるだろ、そんなこと」
 コップの中に落とされた煙草の火が消える小さな音が、まるで悲鳴みたいに鼓膜を擦る。ナカノの人差し指がコンコンと机を打った。彼が言葉を考えるときの仕草に神経の先端が揺らぐ。ビリビリと脳の端が痺れている。その振動が鬱陶しくて目を瞑る。回廊が視界に構築された。体がガタガタ震えていて、振戦する指先に当たったライターが小さな音を立てる。
「いい加減お前も理解してるだろ。子供の頃のお前はただの被虐待児だったって。お前がふるわれてきた暴力のことは愛なんて呼ばないって」
 視界が揺らぐ。閉眼幻覚。立体駐車場の中を運搬されている。ナカノの言葉がスパークとしてパチパチと散って、それが線香花火みたいだと思った。
 お前がずっとしあわせのかけらだと思って後生大事に抱えてきたものは、ただの冷たいゴミだってことを認めろ。誰かが俺の頭の中で喋る。そんなことないと思って、思って。
 いつまで続けるんだよ。と、小学生の俺が言った。冬の公園、誰にも見つからないように、電気の切れた公衆便所の便座の上でアンモニア臭が体に染み付くまで何時間も座り続けて夜を明かした俺が。家の居間、骨のない腹の部分を大きな足で思い切り蹴り飛ばされて、ベランダと部屋とを隔てるガラス戸にしたたか頭をぶつけて嘔吐し、吐物の中で横たわり死がこちらを見つめているのを知覚した俺が。トイレの中、髪を掴まれ無理やり便座の中に顔を沈められ、自分の口から漏れた呼気があぶくになって弾ける音を聞いていた俺が。テレビの前、機嫌良く酒を飲んでいたパパに、火の点いた煙草を腕に押し付け灰皿代わりにされた俺が。頭の中で何重にも増幅された声が反響する。強制的に過去へ引き戻される。
 過去から逃れたくて瞼を開く。カーテンの締め切られた薄暗い部屋、目の前に、ママがいる。キィキィ、ポタポタと幻聴が聞こえる。
「っ、ぁ」
 小さく漏れた声が畳の上に落下する。首の伸びた、身体が弛緩したママが、天井からぶら下がっていた。ドッと心臓が嫌にはねる。不規則になった呼吸、走り始める心拍、背筋を伝う冷や汗。思わず後ずさって、ゴミの山に背中が触れて、それがあの家と同じで。
「ッひ、ハ、ぁ゛、あ、ア」
「ユイカワ?」
 過呼吸を起こしかけている俺に、幻覚のママの向こうにいるナカノが声をかける。それを知覚しているのに、ここはあの家じゃないと分かっているのに、あの日のことが鮮明に脳に流れ込んできて。
 俺はママの死体を見つけた後、しばらく迷ったのち救急に電話をかけた。お母様のことはそのままにしておいてくださいと、救急車がすぐに行くから大丈夫ですよと言われて、どうやって電話を切ったのか覚えていない。気付いたら通話は終わっていて、俺はママと二人ぼっちになった。
 目の前のママのどろりと濁った瞳が、こちらを凝視している。俺のことを見ている。糾弾している。お前が生まれたから私は不幸になったのよ。どうしてそんなことも分からないの。頭も悪くて不細工で、どうしようもないね、お前は。お前はママのことを愛してるでしょ。そうだよね、そうだよね、愛してるもんね? 気持ち悪い、なんでお前のこと産んじゃったんだろう。なんでいうことが聞けないかなぁ。そんなにママのことが嫌い? こっち見てんじゃねぇよ、気色悪い。どれだけ苦労して私がお前のことを育ててやってると思ってるの? お礼の一つでも言ったらどう? 私のこと奴隷かなんかだと思ってんだろ、なぁ。なぁ?
 ママの声が聞こえる。薄く開いた唇、から、その奥の真っ暗な闇から、ママの声が。息が吸えない。苦しい。謝らなくちゃいけない。愛してるんです。ママのこと、俺はちゃんと。愛していたんです。だから許して。お願いです、ごめんなさい、ごめんなさい。
「ハ、ッヒュ、カ、っはァ、ヒ、ひ」
「ユイカワ、おい」
 ママの死体をすり抜けて、ナカノがこちらに歩いてくる。ママがいなくなっちゃう。ちゃんとごめんなさいができてないのに。きちんと謝れない子は好きだって思ってもらえないのに。
「ゆっくりでいいから、一緒に息吐いて」
 手が、こちらに近づいてくる、その動きが鮮明に、引き伸ばされたみたいに見えて。
「ぁ、あ゛、あ、ヒッ、ご、ハ、ごめんなさっ」
 反射的に腹を庇うように蹲る。吐いたら怒られるから。パパの手は俺のことを殴らなかった。俺の背中を優しくさすって、その手のひらがどうしようもなくあたたかくて、泣きたくなる。
「リズムに合わせて吐いて、止めて、少しだけ吸う。できる?」
 とんとんとやわく俺の背中を叩く手のひら。声が、パパのものと、ナカノのものと、二重になって聞こえる。そうだ、パパは、こんなこと、しない。
「っふ、で、ハ、ッキュ、ひ、でき」
「よし、できるな。大丈夫。五回分吐いて、三回分止めて、一回分吸う。一緒にやろうか」
 それになんとか頷き、生理的な涙か心理的な涙かわからないものが畳にぼたぼたと落ちていくのを見ていた。背中を叩く手のひらは一定のリズムを保っている。
「吐いてー…………、止めて……、吸って。吐いて…………、止めて……」
「ッハー……、ひ、はー、……、カヒュ、ぁ、ハ、ふーー……、」
 ナカノが合図するのに合わせて、二十回ばかりゆっくりと呼吸をすれば、過呼吸は徐々に治った。頭の中でママの声は聞こえるが、それが幻聴だということもきちんと理解ができる。恐る恐る顔を上げるも、そこに幻覚のママはいなかった。瞳に憂慮を滲ませたナカノがいるだけだった。
「大丈夫か? 急にバッド入ったな」
「す、まん、だいじょうぶ。ありがとう」
「いや、フラッシュバックさせるようなこと言ったの俺だし。悪かった」
 きちんと顔をあげて返答をした俺の様子を確認し、ようやく気を抜くことができたらしいナカノが畳に腰を下ろす。俺はといえばぐわぐわと揺れる知覚と小さく聞こえる幻聴と目を瞑れば異世界に連れて行かれる幻覚とに脳みそを甘くしゃぶられていた。
 いくら薬を飲んでいるからバッドに入りやすくなっているといえど、自分がここまであの話題に動揺するとは思っていなかった。もう過去のことだと思っていたから。確かにフラッシュバックのトリガーの権化みたいな会話はしてたけどさ。
「いや、なんか俺も過敏になってたんだと思う。薬飲んでるし」
 自分の呂律があまりうまく回っていなくて、DXMのピークを感じる。目を開けていてもざらついた粒のようなものがあたりに充満していて、それがふわふわと動いて幾何学模様を構築するのが見えている。さっきのバッドで冷え切った脳味噌を化学合成物による多幸感がぬるめた。
「あ゛ー、しあわせかも」
「左様で。よかったな」
 少し呆れたような声がこちらへポイと投げてよこされる。これがあるからどんなにバッドになってもオーバードーズがやめられないのだ。毎回、ナカノはなんだかんだ言いながら俺の面倒を見てくれる。薬による多幸感や幻覚は俺にとって主目的に付随する副産物でしかなかった。俺が滅茶苦茶になっていれば、ナカノは俺のそばにいてやさしくしてくれる。ODでラリっていれば、多少の接触が許される。目的はそれで、手段がオーバードーズや過量飲酒。言葉にしてもしなくても最悪だとは分かっているけれど、どうしてもそれがやめられない。生まれて初めて触れた純粋なやさしさや思いやりから、ぬくもりから離れられない。俺は薬中アル中なんかじゃなくて、ナカノのやさしさで中毒患者になっている。
「ナカノはさぁ、なんで俺の面倒見てくれんの」
「は? 友達だからだろ」
 間髪入れずに帰ってきた答えにだらしなく唇が緩む。それと同時に、この友達っていうのはどこまでを許される関係なんだろうと思う。他人よりは上。知り合いよりは上。じゃあ恋人よりは下? 家族よりは? 俺と誰かを天秤にかけたとき、ナカノの頭の中でその天秤が誰かの方へ傾くことを傲慢にも恐れていた。いちばんの大切にしてほしかった。そんなの無理だってことは分かり切ってるけど。
「そっか。いつもありがとな」
「急になんだよ」
 首を傾げるナカノを紗のヴェールみたいな幻覚が包んでいる。からして、彼の表情ははっきりと読み取れなかった。
「お前さ。俺とお前の彼女が海で溺れてたら、どっちを先に助ける?」
「なんだそれ」
 ケラケラと笑うナカノに内心肝を冷やす。こんなこと聞くつもりじゃなかった。脳と声帯が勝手に接続されているみたいに、気付いたときにはするりと問いが発せられていた。
「そーだな、近い方じゃね?」
「俺が近かったら彼女のこと後回しにするわけ? 死んじまうかもしれないのに」
「助かる可能性が高い方を先に助けたほうがいいだろ」
 つまり、俺が遠かったら俺のことを後回しにするわけである。論理は通っている。でもそういうことが聞きたいわけじゃなかった。
「じゃあ、同じくらいの距離で溺れてたら?」
「うーん……、お前じゃね?」
 その答えにカッと内臓が熱くなる。そっか、俺は彼女よりは上なわけね。幼稚な試し行為の結果に浅ましくも一喜一憂した。
「彼女じゃねぇのかよ」
「彼女はいくらでも作れるけどお前は替えがきかんだろ」
「爆モテ男は言うことがちげえな。ふーん、俺のこと、替えがきかないって思ってんのね」
「ハハ、なんだよ、気色悪いな」
 ニヤつく俺を見て、ナカノが乾いた笑い声を上げる。その声音に親愛が、友愛が滲んでいて少し死にたくなった。たとえば俺の感情を、執着を、依存をぶちまけても、ナカノは今のようなあたたかい友愛を向けてくれるのだろうか。架空の告白を想像する。そもそも俺のこの感情は恋慕にあたるのだろうか。愛情は確かにある。しかしそこにはどろついた執着と、どうしようもない依存が付随する。恋愛的に好き、という言葉の健全さをおじゃんにしてしまうほどの執着と依存の煮凝りが、自分の感情を明確に一つの言葉として表すことを妨げていた。
 いちばんになりたい。結局それなのだ。俺はお前のいちばんになりたくて。一緒に溺れているのが親だろうと恋人だろうと誰だろうと、俺のことを選んで助けてほしかった。枯渇している愛情を、お前の手ずから注がれたい。そういう幼稚な欲求。幼子の傲慢な我儘。どうやら俺は健全な情緒とやらを育めなかったようで、二十四になっても未だガキみたいなことを考えている。
 ナカノのいちばんになりたい。この感情を愛慕と呼んでいいのなら、俺は彼のことが好きなことになる。
 俺には恋愛的な好意というものがよく分からない。それは友情の延長線上にあるもので、友愛と恋愛感情の境ははっきりとしていない、と思う。仮に明確な境を立てるとしたら、性愛が含まれているか否か? 俺、ナカノとセックスしたい、のか? それを想像して、少なくともできるな、とは思う。
「ナカノってさ、俺とセックスできる?」
「マジで急になんだよ。怖」
「いや、ぼーっと考えてたんだけどさ」
「ぼーっと考えた結果がそれかよ、すっげぇな」
 で、どう? と再度尋ねる。
「うーーん…………、しようと、思えば?」
「お前バイだっけ?」
「ちげぇけど。多分ギリいける」
 少なくともギリ俺には勃つわけね、と思って。……あれ、親友ってそんな感じだったか?
「わけわからんこと急に聞いてきたお前は?」
「多分できる」
「アハ、多分できるんかい」
 ゲラゲラ笑うナカノに釣られて思わず笑いが込み上げる。俺が持ち掛けたとはいえ友人同士でこんな話をしている現状が変にツボに入ってしまって、ひとしきり笑い、ハー、と息を吐いたところで。ナカノが半笑いで口をひらく。
「え、俺たちセックスできる、ってコト……?」
「キモいちいかわやめい。まぁ理論上はそうだな」
 また込み上げてきたのかヒィヒィ笑って苦しそうにしているナカノを見る。あれ、案外いける、のか? DXMで脳がふわふわしていて、まともな思考ができていないのは分かる。でも、思ったときには言葉がまろび出ていた。
「俺さぁ。お前のこと、好きなのかもしれないんだよね」
 瞬時、静寂が部屋の中を支配する。ナカノのまっすぐな視線が眼球に突き刺さった。あ、まずった。
「は? 好きなのかもってなに」
「俺、多分、恋愛的な意味でお前のことが好きで」
 うまく言葉がまとまらない。ナカノは真顔でこちらを見ていて、サッと頭から血の気が引く感覚がする。なんで言ってしまったのか、今更後悔しても遅い。この心地いい関係が崩れてしまう、穴あきのジェンガから一本が抜き取られていくような錯覚。
「多分ってなんだよ」
「自分でも、その、よく分かってないんだけど」
 下に落ちかけた視線を、ナカノから投げかけられた、ちゃんとこっち向けよ、の一言が阻んだ。思考が空回りしている。嫌な動悸がして、冷や汗が額をつたっていく。それでも、しっかりと彼の目を見つめて。
「俺、ナカノのことが、好きだ」
 二人の間に俺の言葉が落下する。十数秒の沈黙。断頭台に上がる死刑囚の心地。ナカノは黙って俺を見つめていた。いつもみたいに笑い飛ばすこともなく、呆れることもなく。ただ、まっすぐな瞳が俺を射抜く。
「本気で俺のこと好きなん? お前が? 俺を?」
「……そ、うだよ」
 自分の声がみっともなく震えているのが分かる。ギロチンの刃が、空中で静止している。その綱を握っているのはナカノだ。
「ふぅん、ラリってるにんげんの戯言じゃないってことね」
 ナカノはそう言ってから、煙草を取り出した。ライターの火が小さく揺れて、煙がゆるくたなびく。そして、俺のことをしかと見つめて。
「俺、お前のこと大事だよ。友達としてはかなり好きだし。でも、これが恋愛的な好きなのかって聞かれたら、正直よくわからん」
 ごめん、と思わず謝りかけた俺のことを、手だけでナカノが制止した。だくだくと心臓が脈打つ音が頭蓋の中で反響してうるさい。きつく握った両手、手のひらにはきっと爪の跡がついている。今すぐここから逃げ出したくなるような居心地の悪さと薄らかな恐怖がこの空間を満たしていた。ナカノは煙草の灰を落としながら、ゆっくりと口を開く。
「お前はなんで俺のこと好きだと思ったわけ?」
「ナカノの。いちばんに、なりたいと思ったから」
 引き攣った声帯から掠れた声が漏れる。自分を開示する行為には、いつだって緊張が伴う。それが自己の核に近いものであればあるほど、否定されることを恐ろしく思う。ナカノが言葉を紡ぐその数秒が、何十秒にも、何十分にも、何時間にも感じられた。噛み締めた奥歯がきし、と小さく音を立てた。目前の彼の唇が開く。
「それは、肯定を、人格に対する無条件の担保を求めてるのとは違うの」
 そう言われて言葉に詰まる。俺のこの感情はナカノが与えてくれるやさしさへの依存であり、無条件に受け入れて自分のことを大切にしてくれる人が、その保証がほしいだけなのかもしれない。俺はきっと今でも、パパとママの代わりを探している。
 返答に時間が空いたのを見て、ナカノの表情に仕方のない子どもを見るようなやわいいろが浮かぶ。ゆるく眉尻が下がった、小さな慈悲。
「……試してみる?」
 思考が一瞬停止する。
「試す?」
「お前が本当に俺を好きなのか、俺が本当にお前を恋愛的に見れないのか。どっちもよくわかんねぇなら、試してみりゃいいじゃん」
「それって、どういう」
「付き合うとかじゃねえよ。ただ、ちょっとだけ境界を曖昧にしてみるってだけ。手を繋いだり、抱きしめたり、そういうの。んで、どっちかが嫌になったらやめる」
 ナカノは飄々とした顔でそう言った。俺の期待を見透かした上で、それを飼いならすような提案。
「俺のことからかってんの?」
「バカ、からかってねえよ。お前が苦しそうだから、ちょっとくらい楽にしてやってもいいかなって思っただけ」
 ナカノは煙を吐き出しながら、俺の頭を乱暴に撫でる。俺の望んだやさしさがそこにあるのに、産毛の生えた蛾を飲み込んだみたいな、得体の知れない胸を掻きむしりたくなるような違和感が残る。それでも。愛情がそこにかすかにでもあるのなら、手を伸ばさずにはいられなかった。
「……じゃあ、試してみたい」
「おっけ」
 ナカノが軽く笑う。不意に伸ばされた指先が、小さな温度が俺の手に触れる。反射的にびくと震えた手を宥めるみたいに指を絡めて繋がれた手は、えもいわれぬ高揚と安心をもたらした。
「嫌な感じするか?」
「いんにゃ、別に」
 そう言ってへらと笑うナカノにほっと心が温まるような心地がした。五指ににきゅうとゆるく力をこめる。
 これはきっと間違いなんだろう。俺は承認欲求と愛情の飢渇と自己否定の恐怖とをナカノという麻酔で誤魔化そうとしているわけだから。ナカノは、お釈迦さまが垂らす蜘蛛の糸ではなくて、地獄の中に差し込む一条の光だった。俺のことを真の意味で救ってくれるものではない。この関係がただしくないことは分かっている。それでも、俺は彼と共にいられるのなら過ちを犯したかった。一人でいく天国より、彼と一緒にいる地獄を選んだ。二人の関係を間違いでかがり縫いにして、小さな過ちたちを集めて、その集積をいつか、愛と呼びたい。
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