27 / 31
27話 大切にしてくれる彼氏(3)
しおりを挟む
「ああ。祖母はもういないから、仏壇にチョコミントアイスを供えることしかできない。
その償いもあって、この家を継ごうと覚悟したんだ」
「聖さんは、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きなんですね」
「俺にとってもこの家は思い出の場所だから。
祖父母のためにも、悪い噂が立たないように気をつけないといけない」
和男さんから古びたちゃぶ台の話を聞いた時、この家には沢山の思い出が詰まっていると気づいた。
御神木を分けてもらえた聖さんの祖父母は、村の人たちに愛されていたんだろう。
背負っているものは、家族だけではない。
限界集落に住む人たちの想いも背負っているような気がした。
聖さんは、私が想像していたよりもずっと大きなものを背負って暮らしていたんだ。
牡丹さんに伝えて欲しいと頼まれていたことを言うのが心苦しくなる。
でも、今日こそ伝えると決めたから話そう。
「あの、聖さん……。
月曜日に牡丹さんが会社に来た時、伝えて欲しいと頼まれたことがあるんです。
今日まで言えなくてすみませんでした」
「最近、ゆっくり話せなかったから気にするな。
牡丹さんが俺にしたかった話ってなんだ?」
俯いて膝に両手を置き、パジャマをぎゅっと握った。
「聖さんの土地を買い取って、果樹園を作りたいそうです」
「どういうことだ……?」
「牡丹さんの会社が土地を買い取ることによって、きちんと管理していけるからだそうです。
一人暮らしではいつ、どうなるか分からないからって……」
「なるほどな。牡丹さんの言うことは納得できる。
俺と蒔菜が住んでいても、高齢者になったら土地をどうするかという問題はやってくるだろうからな」
大事なことをさらっと言っている。
聖さんの考える未来に私がいることを……。
「しかし、それは数十年後のことだ。
その時に限界集落がどうなっているか分からない」
「確かにそうですね」
気づいてないふりをして聖さんのことを見る。
「だから、俺は今できることを精一杯やる。
祖母から頼まれた家と土地を守るために。
……っということで、牡丹さんの意見は却下だな」
あっさりと答えを返されて、ここ数日悩む必要があったのかと思ってしまう。
決断力があるところも尊敬する。
「よかった……。
この話をしたら、聖さんが困ってしまうかなって心配で言えなかったんですよ」
「ひとりだったら困っていただろうな」
聖さんは、私の顔を下から覗いてきて、目を細めて優しい笑みを浮かべた。
かっこいい顔で見つめられてドキドキしてしまう。
目を合わせているのが恥ずかしくなって、斜め下に視線を移して話を続ける。
「あと、牡丹さんに引っ越すように言われました。
村長も私が限界集落から出ていくことを賛成しているみたいで……」
「そうか……。蒔菜はどうしたいんだ?」
「私の答えは決まっていますよ。
もう二度と引っ越せと言われないようにするだけです」
「自信満々な顔をしているな。
何か策があるのか?」
「はい。上手くいくか分かりませんけど、ひとつ考えがあります。
婚約と土地の件で聖さんを困らせたことも許せないので、仕返しをしようと思ってます」
笑顔で答えると、聖さんが目を丸くしてぽかんと口を開ける。
そして、数秒だけ静かな時間が流れてからニッと笑った。
「相変わらず、蒔菜の行動力はすごいな。……協力するぞ」
「黙っているだけでは何も変わらないって学びましたから。
牡丹さんは日曜日にうちに来ます。
その時が来るまで、聖さんに手伝ってもらいたいことがあるんです」
その償いもあって、この家を継ごうと覚悟したんだ」
「聖さんは、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きなんですね」
「俺にとってもこの家は思い出の場所だから。
祖父母のためにも、悪い噂が立たないように気をつけないといけない」
和男さんから古びたちゃぶ台の話を聞いた時、この家には沢山の思い出が詰まっていると気づいた。
御神木を分けてもらえた聖さんの祖父母は、村の人たちに愛されていたんだろう。
背負っているものは、家族だけではない。
限界集落に住む人たちの想いも背負っているような気がした。
聖さんは、私が想像していたよりもずっと大きなものを背負って暮らしていたんだ。
牡丹さんに伝えて欲しいと頼まれていたことを言うのが心苦しくなる。
でも、今日こそ伝えると決めたから話そう。
「あの、聖さん……。
月曜日に牡丹さんが会社に来た時、伝えて欲しいと頼まれたことがあるんです。
今日まで言えなくてすみませんでした」
「最近、ゆっくり話せなかったから気にするな。
牡丹さんが俺にしたかった話ってなんだ?」
俯いて膝に両手を置き、パジャマをぎゅっと握った。
「聖さんの土地を買い取って、果樹園を作りたいそうです」
「どういうことだ……?」
「牡丹さんの会社が土地を買い取ることによって、きちんと管理していけるからだそうです。
一人暮らしではいつ、どうなるか分からないからって……」
「なるほどな。牡丹さんの言うことは納得できる。
俺と蒔菜が住んでいても、高齢者になったら土地をどうするかという問題はやってくるだろうからな」
大事なことをさらっと言っている。
聖さんの考える未来に私がいることを……。
「しかし、それは数十年後のことだ。
その時に限界集落がどうなっているか分からない」
「確かにそうですね」
気づいてないふりをして聖さんのことを見る。
「だから、俺は今できることを精一杯やる。
祖母から頼まれた家と土地を守るために。
……っということで、牡丹さんの意見は却下だな」
あっさりと答えを返されて、ここ数日悩む必要があったのかと思ってしまう。
決断力があるところも尊敬する。
「よかった……。
この話をしたら、聖さんが困ってしまうかなって心配で言えなかったんですよ」
「ひとりだったら困っていただろうな」
聖さんは、私の顔を下から覗いてきて、目を細めて優しい笑みを浮かべた。
かっこいい顔で見つめられてドキドキしてしまう。
目を合わせているのが恥ずかしくなって、斜め下に視線を移して話を続ける。
「あと、牡丹さんに引っ越すように言われました。
村長も私が限界集落から出ていくことを賛成しているみたいで……」
「そうか……。蒔菜はどうしたいんだ?」
「私の答えは決まっていますよ。
もう二度と引っ越せと言われないようにするだけです」
「自信満々な顔をしているな。
何か策があるのか?」
「はい。上手くいくか分かりませんけど、ひとつ考えがあります。
婚約と土地の件で聖さんを困らせたことも許せないので、仕返しをしようと思ってます」
笑顔で答えると、聖さんが目を丸くしてぽかんと口を開ける。
そして、数秒だけ静かな時間が流れてからニッと笑った。
「相変わらず、蒔菜の行動力はすごいな。……協力するぞ」
「黙っているだけでは何も変わらないって学びましたから。
牡丹さんは日曜日にうちに来ます。
その時が来るまで、聖さんに手伝ってもらいたいことがあるんです」
0
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました
菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」
クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。
だが、みんなは彼と楽しそうに話している。
いや、この人、誰なんですか――っ!?
スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。
「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」
「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」
「同窓会なのに……?」
紅玉楽師は後宮の音を聞く 〜生き残りたい私の脱走計画〜
高里まつり
キャラ文芸
【耳のいい隠れ長公主】✕【したたかな美貌の文官】コンビが挑む後宮の陰謀!
片目が紅い娘・曄琳(イェリン)は訳あって後宮から逃走した妃の娘ーー先帝の血を引く、隠れ長公主。
貧民街で隠れて生活していたのに、ひょんなことから宮廷に舞い戻ってしまった曄琳は、生まれを秘匿し、楽師としてあらゆる音を聞き分けるという特技を活かしながら、宮廷からの脱走を目論んでいた。
しかしある日、後宮で起きた幽鬼騒動の解決に駆り出された先で、運命を狂わされてしまう。
利用できるものは利用します精神の美形の文官・暁明(シャオメイ)と、出生の秘密をなんとか隠して外に出たい曄琳。
二人が後宮での事件を追う中で、母や貴妃の死、過去の出来事が少しずつ絡んで、宮廷の陰謀に巻き込まれていく。契約じみた曄琳と暁明の関係も少しずつ、少しずつ、形を変えていきーー?
曄琳の運命やいかに!
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる