病弱な幼馴染を溺愛する彼に、愛想が尽きました。

小野 まい

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第51話 本当の幸せな結婚

王都の中心にそびえ立つ白亜の大聖堂。抜けるような青空に、祝福の鐘の音がどこまでも高く澄み渡って響いていた。

ステンドグラスから七色の光が差し込む控室で、エレオノーラは姿見の前に立っていた。最高級の絹とレースがふんだんに使われた純白のウェディングドレス。

王室の絢爛豪華なスタイルとは違う、清楚でありながらもエレオノーラの完璧な美貌を最大限に引き立てる洗練されたデザインだ。ヴェールの奥で、彼女の瑠璃色の瞳が嬉しさで微かに潤んでいる。


「お姉様……とっても、とってもお綺麗です……っ!」


妹のセシリアが、感動のあまりすでにハンカチで目元を拭っていた。


「ありがとう、セシリア。貴方も、今日は一段と素敵よ」

「もう、泣かせないでください。お化粧が崩れてしまいますわ」


セシリアは涙を堪えながら、エレオノーラの手に純白の百合のブーケを持たせた。



ここに至るまでの数年間、決して平坦な道ではなかった。

あの月夜の告白の後、二人はローゼンクロイツ公爵に正式に結婚の許しを乞うた。公爵は快く認めたが、誰よりも自分自身を許せなかったのがアーサーだった。


『エレオノーラ様に相応しい男になるため、私に時間をください』


そう宣言した彼は辺境の最前線へと身を投じ、数百年誰も成し得なかった黒竜討伐をはじめとする数々の死線を潜り抜け、途方もない武勲を立てた。

すべては、たった一人の愛する女性の隣に立つためだ。その常軌を逸した狂信的な愛と執念は、今や王国の伝説として語り継がれている。

コンコン、と控えめなノックの音が鳴り扉が開いた。燕尾服に身を包んだ少し白髪の混じった公爵が、優しい眼差しで娘を見つめていた。



「エレオノーラ。……行くぞ。彼が、待ち侘びている」

「はい、お父様」


エレオノーラは、父の差し出した腕に手を添えた。彼女の顔には、愛する人の元へ歩いていくという純粋で温かい喜びだけだった。



***

大聖堂の扉が開かれる。パイプオルガンの荘厳な調べが響き渡る中、エレオノーラは父と共にバージンロードへと足を踏み出した。


「おお……」

「なんて美しい……真の女神のようだ」


参列席を埋め尽くす貴族たちや友人たちから、感嘆のため息が漏れる。

その光景の中心、祭壇の前でエレオノーラを待っていたのは、漆黒の礼装に身を包んだ新郎アーサー・ロードナイトであった。

洗練された大人の男の顔立ち。数々の修羅場を潜り抜けた強者の覇気を漂わせながらも、その紫水晶の瞳はバージンロードを歩いてくるエレオノーラただ一人だけを、熱を帯びた眼差しで食い入るように見つめている。



(アーサー……)


ヴェール越しに視線が絡み合う。エレオノーラは彼が極度の緊張と感動で、組んだ手を微かに震わせていることに気づきクスッと微笑んだ。

無敵の公爵家近衛騎士団総長が、愛する女のウェディングドレス姿に見惚れてガチガチに緊張している。その不器用で真っ直ぐなところが愛しくてたまらなかった。

公爵が、エレオノーラの手をアーサーへと引き渡す。


「……私の宝だ。命に代えても守り抜けよ、アーサー」

「御意。我が命、我が魂のすべてを懸けて」


アーサーは深い敬意とともに一礼し、エレオノーラの小さな手を壊れ物を扱うようにそっと握りしめた。

司祭の厳かな声が響き、神への感謝と誓いの言葉が読み上げられる。永遠の愛を誓い合った二人のもとに、小さな足音がトテトテと近づいてきた。



「エレオノーラおばさま、アーサーおじさま。おめでとうございます!」


元気な声と共に現れたのは、エレオノーラの甥っ子であり、かつてユリウスに泥団子を投げつけたことルカだった。

少し背が伸び、立派な子供用の礼服を着込んだルカは誇らしげに胸を張り、小さなクッションに乗せられた二つの結婚指輪を運んできた。


「ありがとう、ルカ。とっても格好いいわよ」

「えへへ」


エレオノーラが屈み込んで頭を撫でると、ルカは可愛く照れ笑いした。

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