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第60話 自己保身の論理
「あんたのせいよ! オスカー! あんたがこの屋敷に忍び込めなんて言うから、こんな目に遭ったのよ! 私を見殺しにして、蓋まで閉めやがって! 最低の男!」
マリアは完全に自己保身と復讐心に駆られていた。自分だけが悪者になり、罪を被るのだけは御免だった。
「私は命令されただけ! 被害者よ!」
そうアピールすることで、少しでも罰を軽くしようという浅はかな計算がそこにはあった。
「ふ、ふざけるな、この阿婆擦れ! お前が勝手に離れに行って盗みに入ったんだろうが!」
「嘘よ! あんたが指示したんでしょ! 『エリザの宝石を盗んでこい』って!」
「お、お前えぇぇぇ!! いい加減なことを言うなあぁぁぁ!!」
オスカーは声を荒げ、息もつかせぬ勢いで怒り狂いながら目の前の全てを否定しようとする。
だが、騒ぎ立てるオスカーを横目にマリアは泥まみれの顔を歪め、さらに爆弾を投下した。
「それに! あんた、私に言ったじゃない! 『レオナルドを誘惑しろ』って! 『お前がレオナルドをベッドに引きずり込めば、エリザが絶望して自分のところに戻ってくる』って、そう言ったわよね!!」
その言葉が響き渡った瞬間、周囲の空気がさらに一段階ほど凍りついた。
使用人たちは信じられないものを見る目でオスカーを見下ろし、エリザはあまりの低劣さに顔を背けた。
「で、でたらめだ! マリア、お前はもう黙れ! これ以上、虚言を口にするな!」
オスカーは顔を真っ赤にして叫び、立ち上がってマリアの口を塞ごうとした。
自分の男としてのプライド、そして裏で引いていたつもりの姑息な策略が、よりにもよって大勢の面前で最も無様な形で暴露されたのだ。
「触らないでよ! 本当のことじゃない! 私は『あんたの命令で』、わざわざあの男に色目を使ったのに……!」
「そ、そうだ!? 貴様、マリアの色気に完全にやられてたんだろう!? マリアから聞いたぞ! この、スケベな間男め!」
「……通りで」
マリアとオスカーの喚き声を遮るように、低く呆れ果てたような声が降ってきた。レオナルドだった。
彼は腕を組んで泥の上で喚き合う愚か者同士を、汚物を見るような目で見下ろしていた。
「最近、『不快な羽虫』が私の周りをうろうろと飛び回っていると思ったが……。あれは、殿下が放った羽虫だったというわけか」
「は、羽虫……っ!?」
「レオナルド様ぁ……!?」
オスカーとマリアが同時に声を上げる。
マリアは自分の魅力的な誘惑が、レオナルドにとってただの不快な羽虫程度の認識だったことに、再びショックを受けているようだった。
「オスカー殿下」
レオナルドは距離を縮め、圧倒的な威圧感でオスカーを見据えた。
「殿下の浅知恵には、怒りを通り越して同情すら覚える。私とエリザの絆を、そのような『下劣な色仕掛け』で壊せると思ったのか? ……エリザへの侮辱も甚だしい」
レオナルドは剣の柄に手をかけ、冷徹な視線でオスカーに運命を告げた。
「殿下の罪は、もはや家庭内の問題で済まされるものではない。王家の名誉を泥で汚し、侯爵家の資産を横領し、あろうことか実の息子で未来の当主であるノアを監禁するという行為に及んだ。……この件はすべて、王家と法の裁きに委ねる。言い逃れができるとは思わないことだ」
法による裁き。それは王籍を剥奪され、平民として牢獄に繋がれる未来を意味していた。
オスカーは崩れ落ち、頭を抱えた。もはや彼を庇う者は、この世界に一人として存在しなかった。
その後、レインバーグ侯爵邸の離れは、急ごしらえの野戦病院のような慌ただしさに包まれた。
すぐに屋敷のお抱え医師が呼ばれ、二部屋に分かれて治療が開始された。
マリアは完全に自己保身と復讐心に駆られていた。自分だけが悪者になり、罪を被るのだけは御免だった。
「私は命令されただけ! 被害者よ!」
そうアピールすることで、少しでも罰を軽くしようという浅はかな計算がそこにはあった。
「ふ、ふざけるな、この阿婆擦れ! お前が勝手に離れに行って盗みに入ったんだろうが!」
「嘘よ! あんたが指示したんでしょ! 『エリザの宝石を盗んでこい』って!」
「お、お前えぇぇぇ!! いい加減なことを言うなあぁぁぁ!!」
オスカーは声を荒げ、息もつかせぬ勢いで怒り狂いながら目の前の全てを否定しようとする。
だが、騒ぎ立てるオスカーを横目にマリアは泥まみれの顔を歪め、さらに爆弾を投下した。
「それに! あんた、私に言ったじゃない! 『レオナルドを誘惑しろ』って! 『お前がレオナルドをベッドに引きずり込めば、エリザが絶望して自分のところに戻ってくる』って、そう言ったわよね!!」
その言葉が響き渡った瞬間、周囲の空気がさらに一段階ほど凍りついた。
使用人たちは信じられないものを見る目でオスカーを見下ろし、エリザはあまりの低劣さに顔を背けた。
「で、でたらめだ! マリア、お前はもう黙れ! これ以上、虚言を口にするな!」
オスカーは顔を真っ赤にして叫び、立ち上がってマリアの口を塞ごうとした。
自分の男としてのプライド、そして裏で引いていたつもりの姑息な策略が、よりにもよって大勢の面前で最も無様な形で暴露されたのだ。
「触らないでよ! 本当のことじゃない! 私は『あんたの命令で』、わざわざあの男に色目を使ったのに……!」
「そ、そうだ!? 貴様、マリアの色気に完全にやられてたんだろう!? マリアから聞いたぞ! この、スケベな間男め!」
「……通りで」
マリアとオスカーの喚き声を遮るように、低く呆れ果てたような声が降ってきた。レオナルドだった。
彼は腕を組んで泥の上で喚き合う愚か者同士を、汚物を見るような目で見下ろしていた。
「最近、『不快な羽虫』が私の周りをうろうろと飛び回っていると思ったが……。あれは、殿下が放った羽虫だったというわけか」
「は、羽虫……っ!?」
「レオナルド様ぁ……!?」
オスカーとマリアが同時に声を上げる。
マリアは自分の魅力的な誘惑が、レオナルドにとってただの不快な羽虫程度の認識だったことに、再びショックを受けているようだった。
「オスカー殿下」
レオナルドは距離を縮め、圧倒的な威圧感でオスカーを見据えた。
「殿下の浅知恵には、怒りを通り越して同情すら覚える。私とエリザの絆を、そのような『下劣な色仕掛け』で壊せると思ったのか? ……エリザへの侮辱も甚だしい」
レオナルドは剣の柄に手をかけ、冷徹な視線でオスカーに運命を告げた。
「殿下の罪は、もはや家庭内の問題で済まされるものではない。王家の名誉を泥で汚し、侯爵家の資産を横領し、あろうことか実の息子で未来の当主であるノアを監禁するという行為に及んだ。……この件はすべて、王家と法の裁きに委ねる。言い逃れができるとは思わないことだ」
法による裁き。それは王籍を剥奪され、平民として牢獄に繋がれる未来を意味していた。
オスカーは崩れ落ち、頭を抱えた。もはや彼を庇う者は、この世界に一人として存在しなかった。
その後、レインバーグ侯爵邸の離れは、急ごしらえの野戦病院のような慌ただしさに包まれた。
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