千姫物語~大坂の陣篇~

翔子

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第八章 和議交渉

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大坂城・奥向・千姫の御殿 ───────

 所変わって千姫はというと、刑部卿局から豊臣軍優勢の報告を受けていた、

『左様か、こちらが有利か……』

「真田勢は勇猛無類にて、前田利光(後の利常)軍、松平忠直軍を撤退させるまでに至ったそうにございます」

『は? ……今なんと申した? 利光殿と、忠直殿……?』

 この二人は、千姫の妹・珠姫と勝姫の夫である。千姫は刑部卿に向かって声を荒らげた、

『お二人はご無事なのであろうな? よもや……お亡くなりに……?』

「姫様、敵方の事を案じてはなりませぬ。貴方様は総大将の妻なのでございますよ?」

 刑部卿は厳しく千姫を諫めた。しかし、主の問いに答えぬ訳にも行かず、ひっそりと言葉を添えた、

「大将のお二方には、傷一つ負っていないとの報せにございました」

『そうか……』

 珠姫とは十三年前、勝姫とは十一年前に別れたきりだった。二人とは三つと二つの頃に会って以来だった故、今の顔も声も知る由もないが、妹たちが悲しむ顔を想像すると耐えられない思いであった。

 刑部卿は続けて、淀殿が鎧を着込んで兵たちの前に顔を出した事を報告した。すると、千姫は目を丸くして思わず飲もうとしていたお茶を零しそうになった、

『義母上様が兵たちの前へ?』

「お殿様の名代としてご牢人衆を激励されたとの事にございます」

『何故、義母上様が? 秀頼様が兵の前に現れれば、士気が高まるというものなのではないのか?』

 千姫が訊ねると刑部卿はしばらく考えてから話した、

「察するに御袋様は、お殿様のお命に危害が及ぶのをお感じになられたからでは無いかと存じます」

『何故そう思うのじゃ?』

 千姫は不思議に思った。兵たちの前に現れるのに命の危機を感じるのか? と。刑部卿は膝を進めて、声を密かにして説明をした、

「姫様、信じられぬかもしれませぬが、戦という物は、必ず裏切りが飛び交うものなのでございます。事実、ご牢人衆のお一人が大御所様と通じている事が明るみになり、切腹に追い込まれたと聞き及びまする」

『そんな……』

 千姫は衝撃を受け、言葉が詰まってしまった。

 戦が始まって後、千姫は数々の書物を読み漁った。特に史書を多く読み、南北朝時代を記した【太平記】や太閤殿下の活躍を記した【天正記】等、多岐に渡る。
 刑部卿が言った様に『裏切り』や『謀反』を起こす者も書物の中でたくさん出て来た。それが現実の事であると知り、胸が痛む思いだった。

 夜も深くなり、いざという時に逃げられる様に小袖のまま寝床に入ろうとすると、矢庭にときの声が響き渡った。
 雄叫びにも似たその鬨の声は、余りに突然で、大坂城内の人々を驚かせた。一時、牢人衆が放つ勝ち鬨だと思い込んでいた家臣団だったが、それにしては城内からやけに遠い所から聞こえて来る。

 鬨の声は夜中まで続いた。眠ろうとした千姫は起き上がり、添い寝役をしていたお千代保と共に夜着に打掛を羽織って、縁側に出てみた。するとそこには刑部卿がおり、声を掛けた、

『刑部、あれは、お祖父様の軍か……?』

「左様でございます……。夜討ちかと思わせ、我々に眠らせぬ策でございましょう……」

 千姫は恐怖から身体中を震わせ、思わず打掛を握り締め身体に巻き付けた。恐怖に震える千姫を元気付けさせるように、お千代保は笑顔を見せて冗談を漏らした、

「それにしても、こんなに大声で鬨の声を上げたら、兵たちは声が枯れて枯れて仕様が無いでしょうね~! きっとお茶が底をついてめっぽう大変にございましょう~ははは……」

 しかし、刑部卿は怖い顔をしてお千代保を諫めた、

「馬鹿を申すでない!」

「ひっ!! も、申し訳ございません……」

 刑部卿に叱られると、お千代保は深々と頭を下げて謝罪した。刑部卿は夜空を睨み付けながら少し意味深な事を言った、

「慣れたらあちらの思う壺なのじゃ……」

 刑部卿の不安が現実のものとなったのか、翌日からは勝ち鬨と共に、夜から明け方まで鉄砲射撃が放たれ始めた。威嚇射撃は無弾ではあったが、響き渡る銃声は人々の神経を逆撫でさせた。
 そして、恐れていた事に、当初は警戒心を抱いていた多くの牢人衆や【五人衆】は、怯むどころか、徳川方が夜討ちを掛けない事を嘲笑するまでに、慣れてしまった。


大坂城・表・大広間 ───────

 一方、この人だけは違っていた。

「その方ら! 一体何をしておる!! 事によれば、徳川の軍勢が淀川を堰き止め、西へ流しておると言うではないか!! このままでは東の軍勢が一気に攻め寄って参るっ! あぁあ!」

 淀殿は、上段之間から平伏す治長に訴え掛けていた。もはや今までの気位の高い淀殿はそこには無く、打掛をだらしなく肩に掛けたまま右往左往し、悶え苦しむ一人の女人だった。

「御袋様、落ち着き下さいませ。只今【五人衆】は夜討ちをこちら側から仕掛ける手筈でございます。一歩たりとも徳川勢の侵入を許す事はありませぬ!」

「この音が気に食わぬ……気に食わぬのじゃぁああ!!」

「母上……」

 淀殿はその場でしゃがみ込み、両手で耳を覆った。傍で心配そうに見つめていた秀頼が声を掛けながら、ずり落ちた打掛を直そうとすると、俄かに振り返り、目を血走らせた淀殿が秀頼の両腕を掴み、訴えた、

「秀頼! 言うまでも無いが、和議を取り決めてはならぬぞ!! 私を、あの汚らわしい江戸へ人質に送るなぞ、あってはならぬ事じゃ!」

 鬨の声が聞こえ始めた翌日から、和睦の交渉を促す矢文が、徳川から届けられた。しかし、その内容はどれもこれも徳川方に有利な事ばかりで、豊臣にとっては最悪の条件ばかりであった。

 淀殿は、度重なる鬨の声と射撃に恐怖を覚え、何も事を起こさぬ牢人衆に辟易としていた。この頃から、豊臣家の間で思わぬ内部分裂が始まっていたのだった。

 そして、その翌日……。

───────────────────────

 澄み切った寒空が広がる十二月十六日。徳川の陣営から最新鋭のカルバリン砲やその他の大筒おおづつ、およそ百門が大坂城目掛けて一斉に放たれた。

 やぐらや陣屋が悉く爆撃を食らい、武器と兵糧が打ち砕かれた。更にその返り弾が兵たちに当たり、正に混沌と化していた。
 砲弾は続々と発射され、空気を割く爆音が響く中、天守閣と御殿に数発が命中した。

「きゃーー!!!」

 突然の地鳴りと屋根瓦が崩落して行く中、千姫付きの侍女達が叫び声を上げた。千姫の部屋近くに砲弾が落ちたのだ。

『何事じゃ!?』

「姫様、今すぐお逃げ下さい!!!」

 刑部卿局とお千代保は、千姫を覆い被さる様に抱きかかえた。一行は、御殿から地下蔵へ続く道を下り、辛うじて逃げ果せる事が出来た。


大坂城・地下蔵 ───────

 地下蔵は多くの米俵や食材が保管されている貯蔵庫。
 銅製の扉と鉄壁の岩造りで備えられており、頑丈であるものの、地上で砲弾が落ちる度に塵が天井から降り注いでいた。

 地下蔵へと降り立った千姫は、伯母である常高院の安否を確かめに向かった。幸いにも常高院は避難路近くに居た為無事だった。二人はお互い無事を確認し抱き合った。

「おぉ……千! 無事であったか?」

『はい……伯母上様もご無事で何よりにございます……』

 周りを見やると、秀頼の側室、小石の方や伊茶の方が着物を乱したまま呆然としていた。母の袖を掴んで身を潜めていた国松と千代姫が、千姫に気付き泣きながら駆け寄って来た。
 千姫は勢いよく二人を抱き締め無事を喜んだ。安堵な気持ちに浸りながら、千姫は天を仰ぎ御仏に感謝した。

 各々家臣らの無事を確認した後、ようやく秀頼と淀殿に会えた千姫は、挨拶もそぞろに二人に進言した、

『秀頼様!』

「千! 無事であったか……よかった」

『秀頼様、今すぐにでも祖父と和睦をお交わし下さい!! このままでは、秀頼様も義母上様も、お命を落としてしまいまする!!』

「……案ずるでない。大丈夫じゃ……」

 秀頼は、涙にむせぶ千姫の頬を摩りながら慰めた。千姫は気を取り持とうとして、淀殿の方を見やると、放心状態なのに気付く。
 なにやら、ぶつぶつと念仏の様に唱えているのが見え、近付いて耳を澄ますと、

すんが……花が……ゆきが……」

『は……義母上様?』

 訳の分からない言葉を呟き続ける義母に、思わず声を掛けながら肩に触れようとすると秀頼に止められた。

「今は話しかけぬ方が良い。あの砲撃で、母上の傍で警護をしていた侍女達が死んだのだ……」

『え……?』

「母上が、御殿で身を潜めていた折、廊で薙刀を構えていた侍女の三人の上に砲弾が落ち、屋根の下敷きにあったのだ。ちょうど、母上の御殿に砲が命中したのだよ」

 衝撃な話に口を押えながら、ふと大蔵卿に千姫が目線を移すと、治長の肩に寄り掛かり、虚ろな目で空を見つめていた。大蔵卿もその一部始終を目撃していたのだろう。
 犠牲者は淀殿の侍女に留まらなかった。長局を命からがら逃げ出そうとした侍女数人、家臣、牢人衆が死亡・怪我を負い、精神的に参る者達も多く現れた。

 突如として起きた徳川方の砲撃はその後しばらく続いた。最新鋭の砲弾は城を大きく揺らし、地鳴りを引き起こしながら屋根柱を崩壊させて行った。
 引き続き撃ち込まれるその恐怖は計り知れず、城内は混乱を極めた。無事に地下蔵へ逃げおおせた多くの兵達や家臣達でさえ、身を震わせていた。

───────────────────────

 大筒が大坂城へ一斉攻撃を受ける以前から、文書にての和睦交渉が行われて来たが、お互い、気沿わぬ議案を投げ掛け続けて来た。

 砲撃を受ける前日、大野治長は徳川方に対し、『淀殿が人質として江戸に差し出す替わりに、籠城した牢人衆に対し、領地を与えられたし』という条件を送った。これは、淀殿本人の有無を言わせぬ、秀頼との間で取り決められた内容だったが、家康はそれを拒否した。
 反対に、徳川からの条件は、『関東の二国を与えるので大坂城を退去なされ』という無理難題を呈した。それを聞いた秀頼は激しく拒否し、それ以上、講和条件を出す事は保留とされた。

 長らく先延ばしにして来た交渉の最中に、引き起こされた此度の砲撃に脅され、豊臣方は直接徳川方と話し合う事を決断した。

 豊臣秀頼と大野治長、そして木村重成ら家臣の間で、交渉役の人選を行った。家臣の二人の内の誰か、はたまた、大野治長の実母である大蔵卿局か。
 そして、合議の結果、常高院が任命された。

 常高院の義理の息子である、京極忠高は徳川に属し、隊を率いていると言う事を知る、秀頼の考えからであった。

『伯母上様が和睦の交渉役に?』

 砲撃が止み、崩れた自らの御殿の片付けを侍女達と行いながら、千姫は聞き返した。常高院も、壊れた襖を掲げながら応えた、

「秀頼、直々の頼みなのじゃ」

『大事なお役目ではありませぬか……。されど、大丈夫なのでございますか?』

「私も心もとない……。なれど、あちらも女子おなごを立てて来るという。確かお相手は、家康殿のご側室・阿茶局あちゃのつぼね殿と仰せであったか……」

 常高院は思い出すように言った後、千姫はその名に聞き覚えがあった、

『阿茶局……』

「存じておるのか?」

 常高院が訊ねると、千姫は徐に縁に出て、荒廃した庭を悲しそうに見つめながら言った、

『はっきりとは……。ただ、お祖父様の数ある側室の中で唯一、力のある方だと聞き及んでおります』

 すると突然、刑部卿局が庭の方から顔を出して口を挟んで来た、

「お口挟みご無礼を……」

『如何した?』

「姫様がお産まれになってしばらく、阿茶局様は御自ら伏見城においでになり、姫様をお抱き遊ばした事がございます。それはそれは、『我が孫が如く』と仰せになられ、喜んでおいででございました」

『そうか。私に取り、縁の無い方では無いのか……』

 刑部卿の話を聞いて、千姫の気持ちはざわつき始めた。十一年前に、『徳川の為に嫁ぐ』と覚悟して豊臣に嫁いで来た頃の事を思い出した。
 豊臣家には無い、【家族としての愛】を感じた。母・江は父に側室を持つ事を許さなかったが、祖父・家康は多くの側室を持つ。側室同士争い合う事無く、家族の様に団欒としていると聞き及んでいる。千姫はそれに憧れを持ち、秀頼の側室とも分け隔てなく接したいと心掛けている。

 しかし、今や生家・徳川は敵方。邪まな心を持たぬ様にと頭を振った。幸いにも、常高院や刑部卿には気付かれなかった。

「和議の交渉は息子の陣で行われる。若狭を離れて以来の再会故、いささか気が落ち着かぬが……。姉上の為、そして豊臣の御為、そして何より、そちの為にも努めて参る所存じゃ」

 常高院が千姫の目を見つめて決意を表すと、手を取ってすがる様に千姫は懇願した、

『どうか……豊臣を救う講和をお交わし下さい』

慶長十九年(1614)十二月十八日 ───────

 京極忠高の陣営が置かれている東の寺にて、豊臣方からは常高院と大蔵卿局。そして徳川方からは阿茶局と本多正純が集い、和睦の交渉が行われた。
 戦を巡り、女子同士が協議をするのは極めて稀な事だった。男同士で起こした戦の和睦を、男同士で話し合えば再び争いの種が生まれる。そのことを懸念していた秀頼の、切なる提案であった。

「初めてお目に掛かります。大御所様の側室・阿茶と申します」

 海老茶色の渋い柄の打掛を着、落ち着いた表情をしている阿茶局が深々と挨拶をした。

 続いて、淡い乳白色に花々が描かれている打掛を着た常高院が挨拶をした、

「豊臣秀頼公生母、淀の妹・常高院初と申しまする。どうぞ、本日は宜しゅうお願い申し上げまする」

 常高院はがちがちに緊張していた。それもそのはず、人生の中で、この様な重大な場に出た事は未だかつて無かったのだから無理も無い。
 ぎこちなく頭を下げた常高院を見て、阿茶局は小さく笑いながら口を開いた、

「まぁまぁ、そうかしこまらずに。我々がこうして、男共が起こした戦の最中に、和議の話し合いをするのは極めて珍しい事。なれど、それは女子なればこそ出来る事です。気兼ねなく話しましょうぞ」

「はい、ありがとうございまする。されど私は、豊臣家の御為、こちらに参ったのでございます。恐れながら、こちらの条件を申し上げます」

 常高院が一呼吸置いてから、早速に条件を述べた、

「一つ、大阪城は、本丸を残し、二ノ丸・三ノ丸を破壊。更に惣構えの南堀、西堀、東堀を埋めます。一つ、姉・淀は、人質として送られる事を拒み続けております。よって、大野治長、木村重成両名を人質として差し出しまする。以上が条件でございます」
 
 常高院が頭を下げながら条件を述べ終えた。無論、秀頼と治長に相談した上での条件の提出だ。
 
 ふと阿茶局を見ると、微笑みながら出された菓子を一口食べて、茶をグイと飲み干した。同じく、常高院と大蔵卿の二人もお茶に手を伸ばそうとすると、

「では、大御所様よりあらかじめ取り決められし、お考えを申し上げます」

 突然、阿茶局が神妙な面持ちで声を張り上げたので、茶に伸ばした手を引っ込め、耳を傾けた。

「秀頼公の御身の上のご安全と、ここ、大坂の領地のご安堵。そして、牢人衆達の処分につきましては不問、と致しまする」

「え?」

「そちら様がどの様なご条件を申されましょうと、この事を申すようにと仰せられました。 よろしゅうございましたねぇ?」

 阿茶局はまるで子供を誉めそやす様は猫なで声で言った。思いがけない好条件に、常高院と大蔵卿は顔を見合わせた。常高院は不審に思い、再度聞き返した、

「真に宜しいのでございまするか? 我々にとって、とても良い事ずくめでは……」

「当たり前ではありませんか。そちらが戦にお勝ちになられたのです。まぁ、大筒で一度は攻撃してしまいましたが、それは、兵たちが勝手にしでかした事。大御所様のご判断ではございませぬ故、ご安心遊ばせ」

 阿茶局は、自軍に非があるという低い姿勢を見せながら、安心させる様に言った。常高院はついに心を決めて条件を飲み、和議が成立した。

───────────────────────

 こうして、ひと月に渡って続いた【大坂冬の陣】は終わりを迎えた。大坂城を取り囲んでいた徳川軍の武装解除が進み、ぞろぞろと大名衆はそれぞれの国元へと帰還して行った。

 一方、千姫は、崩壊した城内を見て回り、切なさと安堵の気持ちで綯い交ぜになっていた。金ぴかで煌びやかだった装飾は剥がれ落ち、華やかな襖や障子は全て倒れ、大きく穴の開いた天井からは雪が舞い落ちて来ていた。原型を留めている所は、もうこの奥御殿には残されていなかった。思い出も遠い脳裏の片隅に見え隠れしていた。

 千は、ふと、天守閣を見上げた。初めて見た日を今も忘れられない。しかし、陽の光に照らされた金箔の輝く天守ではもう無くなっていた。屋根瓦が崩れ、金箔は剥がれ、金鯱きんのしゃちほこの片方が無くなった、ただの巨大な漆黒の天守と成り果てていた。

 千姫は、遠い江戸にいる実母・江と、同じ城にいても慰める事も出来ない義母・淀殿を哀れに思いながら、手を合わせた。

 豊臣と徳川が再び手を携え、太平の世が築かれる事。そして、これから先、夫・秀頼を支え、お助けし、徳川家の娘なればこそ出来る事をすると願い、誓った。


 しかしこの四カ月後に、再び争いの嵐が起こる事になろうとは、まだ誰も知らなかった。

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