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蛇人の祭り
しおりを挟む99:へびんちゅ(ハード:蛇人の祭り)
は? 何? PTメンバーいきなりいなくなったんだが。
難易度はハードのダンジョン、人間たちに示される名は蛇人の祭り。
いくつかの人間が、その場に招かれている。
人間たちは状況がわからないのか戸惑いを隠せないでいるようで、蛇人種の中で今や支配者たる権利を得た神降ろしの巫女はそれを哀れに思った。
殺し合っている中ではあったが、蛇人達の中に彼らへの恨みなどなかったのである。
100:いたるところは蛇ばかり(ハード:蛇人の祭り)
なにこれ一部だけのイベントかなんかなんか?
同じようで、違う。
贔屓されているようで、そうでない部分もある。
蛇人達は確かに慣れてもくればもう一方的に殺されてしまう程に力の差がある。
ここに蛇人種たちやこの人間たちを連れてきた慈悲深き傲慢な上位者たるものたちのお気に入りなのだろう。その後押しを強烈に受けている自らのいた世界からすれば食料でしかなかった種に似ている生き物たち。
なければ蹂躙していたのはこちらの方だという自信があったが、それでも羨ましいとも妬ましいとも、憎いという気持ちさえ湧かなかった。
彼らは、どうしてここに連れてこられたのかも理解していなければ、どうすればよいのかという指針もない。
そして、何よりまとまりというものが見受けられない。
同じ種であるのに、互いが互いを受け入れられないし理解の度合いも低い、争いの主であり未熟な種であることが見るだけで分かるのだ。
だから、哀れだと感じてしまう。
111:蛇はイイゾ!(ハード:蛇人の祭り)
なんか見たことない蛇人おる。
もしかすれば、自分たちも元の場所で自分たちだけが知能や暴力が成熟していたのなら、こうなっていたかもしれない。
目の前の生き物たちは、そう思わせる自然な傲慢さを見ることができたのだ。
自然に、自分たちのほうが格上だと思っている。
自然に、自分たちに敵う者などないと思っている。
自然に、自分たちはそうしていいのだと考えている。
自然に、自分たちはそうするのが当然だと思っている。
自然に、そうしても神に許されるのだとすら意識していない。
自然に、目の前の生き物より自らの種は優れていて、相手は結果蹂躙される対象だと思っている。
自然に、立場違うのだという錯覚をしている。
自分たちは違う。自分たちは優れているから。自分たちは星の支配者だったのだから、ここにいる他種は蹂躙されるべきである。
殺されるべきで、殺す我々が正義であると、意識せずに思い実行している。
蛇人種から見て、強い後押しを受けたこの生き物たちはそう見えた。
そんなことなどないのに。
1種として団結することの美しさを。
困難に立ち向かう所の安らぎを。
神の存在を。
知らないのだ。
哀れだった。
112:蛇はイイゾ!(ハード:蛇人の祭り)
けもみみ生えとる。
ここにいる蛇人は、今支配者となれる格を得た大陸北方、敵対者である蛙人種の天敵たる石灰樹木球が徘徊する森の中で暮らす、神聖石の神狼の信徒だけではなかった。
風の神鳥の信徒も、山の神猪の信徒も、数多くいた。
そうなるように上位者は連れてこられたのだろうと各々察することができた。それは試練であった。
ただただ、相手を暴虐にて支配すればよいというものでないことを、全ての蛇人が理解できたことは僥倖であり、しかし必然でもあった。
確かに、崇めるところの神は違う。それでも同じ蛇人であり、神を奉っていることは同じであるのだ。
元の場所にいたと同じく、それを理由に争う必要などなかった。
ここにいる生き物たちと決定的に違うのはそこかもしれないと巫女は考えている。
彼らは1つ1つがあまりに種である意識というものが薄い。それは、蛇人にとっては見たことがないほどだった。最低限度に見えた。後押しを除外しても同じく、星の生物の中で格が上だったのだろうと推測できる――恐らく暴力に向いているとは思えない初期の貧弱さ等から考えて、鳥人種の一部のように特に頭が回ることで格を挙げてきたのだろうと察している――が、だからこそ周りに他にその格に到達できるものがいない場所であったのだろうということが見て取れたのだ。その傲慢さは、周りに同格がいないことで産まれるものだと。
113:おみこし(ハード:蛇人の祭り)
変化してるのもいるじゃん。こいつらのせいか?
今も、戸惑い、同種を疑い、団結しようという意志が感じられない。
そうするべく支配者を決める以外に敵対するよう意識づけられ延々終わらぬ殺し合いを続けられてきた蛇人種を目の前にしても。
それをして、哀れに思った。
そして、安心するのだ。
あぁ、このように哀れな生物でなくてよかった。
神に感謝します。
と、そう思わずにいられないのだ。
巫女は神聖石より降ろし、今や融合を果たした神狼の力から更に大きな神の存在を感じている。
だがその前にも上位者たるものたちの存在は感じずにはいられないものだったのだ。
目の前の生き物たちは、それを感じていない。それがわかる。わかってしまう。
感じられない未熟な生物であることが明らかだった。
だから、哀れでどうしようもなくて――恨み、敵対する、というには、あまりに足りなかった。いくら後押しにて、一方的にこちらを殺しせしめる生き物になっているとしても。
119:添付食品(ハード:蛇人の祭り)
ちょっとした変化してないのにこいつらのせいか? は草なんだ。頭大丈夫かな?
つか、けもみみ蛇人さん見たことないくらいでかくて草。
なぁにぃこれぇ……圧もすっごいんですけど……?
蛇人達をして、ここにいる条件としてのお役目を果たしながらも団結するのは難しい試練であった。目の前の生き物と違い、種としての連帯感、困難を打破する共通した気持ちや、同種で争わないという当然の思考。それらがあっても……いいや、蛇人たちにとってはだからこそ、ただその中より生き抜くため、切り捨てられぬためにとはいえ、強き力を持つ支配者たるものを選び出すのは難しい事だった。
やらねばならないこととはいえ、殺し合いも体験する死も心を削った。
相手のいない待機状態とて、ある程度以上には自由にはならず、互いが互いを気を遣う事も難しい。
そんな状況で――独りぼっちにさせてしまう、支配者を選び出すという事が、蛇人達には難しかったのだ。
どうやるべきか、という話でも合った。
結果、巫女の1人を選ぶのにも時間がかかったし――その方法をとることにも猶更時間がかかった。
神をその身に降ろし、格を上げ、新たな上位者として進行して団結する。
巫女は悲しかった。悲しかったが、嬉しかった。
これで進めるのだ。
これで、蛇人達は条件をクリアする鎖を掴んだのだから。
悲しくとも、辛くとも満足だった。
125:蛇はイイゾ!(ハード:蛇人の祭り)
強制ボス戦とか勘弁してほしいんだよなぁ。やる気萎える。
愚かにも状況を理解していない生き物たちを、哀れには思うが今より蹂躙せねばならない。
ここにいる、後押しをうけた生き物の中でも選ばれし数名。
彼らは、自分たちがこれよりどうなるかを理解していない。
ここがどういう場所なのか、全く想定していない。
やはり、哀れでしかなかった。
哀れでしかないし――不快ではあったが、それでも見逃してやるわけには行けない。拒否するわけにはいかない。
巫女は、強く槍を握る。その大きくなり、狼のような毛に覆われた手に違和感を覚えながら。
136:ギャラクティカ号(ハード:蛇人の祭り)
は? なにこれチート?
手始めに――戸惑う生き物の目を覚ますように。
その槍の一撃を振るうことにした。
一撃はまるで光のように見えた事だろう。
巫女が放った一撃は、その神狼の牙でできた神聖の槍の一撃は。
当然のように直撃し、特殊な力場等による防御許さず肉や骨の抵抗で止まることもなく撃ち貫き。
その刺さった部位から、逃がせぬ衝撃で――バラバラにそれらをまき散らした。
ばらばらと当たる同種の肉、骨、血、装飾品。その数々に、目を覚ますどころか未だ呆けた顔をしている生き物たちに――やはり、巫女は哀れみと、愚かさを覚えずにはいられなかった。
彼らは出るべきだったのだ。
ある程度、慣れたのならばそうするべきだったのだ。そうできるよう特別視――蛇人種にとっては別れることが苦痛でも、苦痛に思わぬ種であるのだから――されていることは実際見ているのだから蛇人種にはわかる。
そうすることができたのだから、そうしたらよかった。
なぜそうしないのかがわからないくらいだった。
そうしたのならば、自分たちだけの問題になったのだろうに、と蛇人の巫女は確信している。
そうできるのに、ずるずると無意味に危険な場所にいるから上位者にこんなことをされる羽目になるのだ、と。
上位者の存在を感じ取ることもできない。己の弱きに恐れを抱かない。周りの種を無意味に見下さない。
それをできないことは、恐ろしい事だと実感する。
今いる彼らは――そうできるようになるだろうか。
彼らのいく先考えると巫女はいまだに不快な気持ちになるが――そうできればいいと思う。できるようになればいいと思う。
それは、優しさであった。
例え、それが巫女が相手に感じて哀れに思う理由の一つである――傲慢に他ならない感情補発露であり、そして伝わらないもので、相手を救うものでも決してないとしても。
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