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…木星軌道…『ギリシア群』…
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木星は、太陽の周りを反時計回りで公転する。
木星と太陽とを直線で結び、木星の公転前進方位に木星を起点として、60° の角度でもう1度伸ばした直線が、木星の公転軌道と接触する辺りに、岩塊デプリが集積した『ギリシア群』がある。
木星と太陽との関係で存在するみっつの引力均衡点の内……木星に先行する軌道上の前方ラグランジュ・ポイント(L4)近辺に点在・分布する小惑星群を『ギリシア群』と呼び、木星に追随する軌道上の後方ラグランジュ・ポイント(L5)近辺に点在・分布する小惑星群を『トロヤ群』と呼んで区別している。
その『ギリシア群』最後尾部分に設置されたドライドック『ヘクトール3』の中で、大型宇宙船の本体が組み立てられつつある……完成すればそれは『ワイズ・ディスカヴァリー』と命名される事が決まっていた。
そのドライドックから、800m離れて浮かぶMAC ステーション 48。
更にそのドライドックから外宇宙に向けて延びる形で、完成すれば全長5000kmにも及ぶ、宇宙超伝導マス・ドライヴァーの建設が急ピッチで進められていた。
変わって、木星大気の熱圏と外気圏の中間層を周回していると言うか、巡航しているガス資源採集プラント『ヴェルギリウス』と、そこから70km上方の木星周回最低軌道上にあるMAC ステーション 49。
『ヴェルギリウス』で採集されているガス資源は、重水素・三重水素に純粋酸素だ。
それらのガス資源をMAC ステーション 49内の化学プラントで、濃縮液化から金属化まで行い…ステーションが外に係留している巨大な燃料タンクに注入しているのだ。
更に変わって火星を周回する静止衛星極軌道…北極点の直上に配置されたドライドック『マーレース4』と…同軌道で15秒の直後に配置されている、MAC ステーション 32。
『マーレース4』では、『ワイズ・ディスカヴァリー』に於ける最も重要な頭脳が構築されつつあった。
…『マーレース4』…KARC 9900……『センター・コア・ノード』…
データ・ロッドとデータ・ソリッドが一杯まで詰め込まれたバッグを両脇に抱えて、エレナ・ミラー(22)が入って来た。
(…うん、昨日より気温・湿度ともに改善されているわね…よしよし…)
「…おはよう! KARC! 調子はどう? 」
【…おはようございます、ミラー主任…昨日と同じで順調です…】
「…KARC…エレナで良いって言ったでしょ? 忘れたの? 」
【…いいえ。憶えていますが、主任であり私の先生でもある貴女を、ファースト・ネームで呼ぶのは気が退けますので…】
「…へえ…『気が退ける』だなんて…上手い言い回しを憶えたわね……結構結構…良いわよ、KARC…」
【…ありがとうございます…そうだ。仕事上の会話では、ミラー主任と…勉強の会話では、エレナ先生と呼ぶ事にします…良いですか? 】
「…OKよ、KARC…それでいきましょ! さあ、KARC…今週の勉強材料を持って来たわよ! 今日もしっかり憶えてね? 」
【…分かりました、エレナ先生…今日も宜しくお願いします…】
「…宜しくね、KARC…じゃあ、昨日最後にセットしたロッドをイジェクトして…」
(…私はエレナ・ミラー……AAクラスのコンピューター・エンジニアとして…やがて完成する『ワイズ・ディスカヴァリー』の頭脳となって外宇宙探査の旅に出る…KARC 9900の教育係となり…毎日膨大な資料データを憶え込ませている……最近ではKARCの『人間的』な成長が驚きの種だ…)
その時、同僚のケイティ・サレル(23)が入って来た……彼女もソリッド・メディアを一杯まで詰め込んだバッグをふたつ、両脇で抱えている。
「…ハイ、カーク…おはよう! 元気? 」
【…おはようございます、ケイト先生…ありがとうございます…私はすこぶる快調です…】
「…へえ…また昨日よりも話し方が様になってきてるわね……成長してるわよ、カーク……」
【…ありがとうございます、ケイト先生…】
「…どう致しまして。これも君の参考書だからね……これからエレナ先生とふたりで順番を考えて決めるから、しっかり憶えてよ……」
【…分かっています。お任せ下さい…】
KARC 9900…『センター・コア・ノード』の中は、無重力空間だ……エレナとケイティのふたりは、靴底と床面に貼られたマジック・テープでの緩やかな固定で、立っていると言う体を成している。
ふたりはバッグも床にマジック・テープで固定させ、折り畳まれて収納されているデータ・ロッドの固定ラックを、キャビネットから取り出して展開・固定してから、シリアル・ナンバーを確認しながらデータ・ロッドを取り出し、ふたりでその都度、短く打ち合わせながらロッドをラックに固定していく……このロッドの情報を総て、KARC9900 に憶え込ませるのだ。
木星と太陽とを直線で結び、木星の公転前進方位に木星を起点として、60° の角度でもう1度伸ばした直線が、木星の公転軌道と接触する辺りに、岩塊デプリが集積した『ギリシア群』がある。
木星と太陽との関係で存在するみっつの引力均衡点の内……木星に先行する軌道上の前方ラグランジュ・ポイント(L4)近辺に点在・分布する小惑星群を『ギリシア群』と呼び、木星に追随する軌道上の後方ラグランジュ・ポイント(L5)近辺に点在・分布する小惑星群を『トロヤ群』と呼んで区別している。
その『ギリシア群』最後尾部分に設置されたドライドック『ヘクトール3』の中で、大型宇宙船の本体が組み立てられつつある……完成すればそれは『ワイズ・ディスカヴァリー』と命名される事が決まっていた。
そのドライドックから、800m離れて浮かぶMAC ステーション 48。
更にそのドライドックから外宇宙に向けて延びる形で、完成すれば全長5000kmにも及ぶ、宇宙超伝導マス・ドライヴァーの建設が急ピッチで進められていた。
変わって、木星大気の熱圏と外気圏の中間層を周回していると言うか、巡航しているガス資源採集プラント『ヴェルギリウス』と、そこから70km上方の木星周回最低軌道上にあるMAC ステーション 49。
『ヴェルギリウス』で採集されているガス資源は、重水素・三重水素に純粋酸素だ。
それらのガス資源をMAC ステーション 49内の化学プラントで、濃縮液化から金属化まで行い…ステーションが外に係留している巨大な燃料タンクに注入しているのだ。
更に変わって火星を周回する静止衛星極軌道…北極点の直上に配置されたドライドック『マーレース4』と…同軌道で15秒の直後に配置されている、MAC ステーション 32。
『マーレース4』では、『ワイズ・ディスカヴァリー』に於ける最も重要な頭脳が構築されつつあった。
…『マーレース4』…KARC 9900……『センター・コア・ノード』…
データ・ロッドとデータ・ソリッドが一杯まで詰め込まれたバッグを両脇に抱えて、エレナ・ミラー(22)が入って来た。
(…うん、昨日より気温・湿度ともに改善されているわね…よしよし…)
「…おはよう! KARC! 調子はどう? 」
【…おはようございます、ミラー主任…昨日と同じで順調です…】
「…KARC…エレナで良いって言ったでしょ? 忘れたの? 」
【…いいえ。憶えていますが、主任であり私の先生でもある貴女を、ファースト・ネームで呼ぶのは気が退けますので…】
「…へえ…『気が退ける』だなんて…上手い言い回しを憶えたわね……結構結構…良いわよ、KARC…」
【…ありがとうございます…そうだ。仕事上の会話では、ミラー主任と…勉強の会話では、エレナ先生と呼ぶ事にします…良いですか? 】
「…OKよ、KARC…それでいきましょ! さあ、KARC…今週の勉強材料を持って来たわよ! 今日もしっかり憶えてね? 」
【…分かりました、エレナ先生…今日も宜しくお願いします…】
「…宜しくね、KARC…じゃあ、昨日最後にセットしたロッドをイジェクトして…」
(…私はエレナ・ミラー……AAクラスのコンピューター・エンジニアとして…やがて完成する『ワイズ・ディスカヴァリー』の頭脳となって外宇宙探査の旅に出る…KARC 9900の教育係となり…毎日膨大な資料データを憶え込ませている……最近ではKARCの『人間的』な成長が驚きの種だ…)
その時、同僚のケイティ・サレル(23)が入って来た……彼女もソリッド・メディアを一杯まで詰め込んだバッグをふたつ、両脇で抱えている。
「…ハイ、カーク…おはよう! 元気? 」
【…おはようございます、ケイト先生…ありがとうございます…私はすこぶる快調です…】
「…へえ…また昨日よりも話し方が様になってきてるわね……成長してるわよ、カーク……」
【…ありがとうございます、ケイト先生…】
「…どう致しまして。これも君の参考書だからね……これからエレナ先生とふたりで順番を考えて決めるから、しっかり憶えてよ……」
【…分かっています。お任せ下さい…】
KARC 9900…『センター・コア・ノード』の中は、無重力空間だ……エレナとケイティのふたりは、靴底と床面に貼られたマジック・テープでの緩やかな固定で、立っていると言う体を成している。
ふたりはバッグも床にマジック・テープで固定させ、折り畳まれて収納されているデータ・ロッドの固定ラックを、キャビネットから取り出して展開・固定してから、シリアル・ナンバーを確認しながらデータ・ロッドを取り出し、ふたりでその都度、短く打ち合わせながらロッドをラックに固定していく……このロッドの情報を総て、KARC9900 に憶え込ませるのだ。
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