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父の訴え
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「本当に来た……」
クラウスの言う通りだった。あの人達は、招待されずとも来た。しかも滅茶苦茶に怒っている。
パッと隣にいるクラウスを見ると、こちらの視線に気づいてにやりと笑った。
「いった通りだろう? しばらく暴れさせとけ」
「分かりました」
とりあえず、騒然としている会場を見守ることにした。
「お集りの皆様! あそこに座っている新婦は、我が娘のカレン・リドリーです! どうして私たち家族が披露宴に招待されないのでしょうか? 今日は私たちの大切な娘を送り出す日だというのに……見送ることも許されないのですか?! こんな横暴が許されて良いのですか?!」
父は大きな声で皆に訴えている。
父の言葉を聞いた人々はざわめき始めた。
「カレン様のお父様?」
「確かに、カレン様のご親族は参加されていないようだが……彼らが?」
「顔つきはどことなく似ているかも……」
「なぜ招待されなかったのかしら?」
「ずっと家柄を隠してらっしゃったものね」
皆の困惑した表情を見た父は、ますます演説に力を入れた。
「皆様! そこにいるクラウス・モルザンは、私たちの大切な家族を突然奪っていったのです! 私たちは皆様と同じタイミングで結婚のことを知りました。とても悲しいことですが、カレンが幸せなら良いのです……。ですが、本当にこのような仕打ちをする人の下で幸せになれるのでしょうか?」
情に訴えかけるように、身振り手振りを交えた熱演だ。これだけ聞けば、なんて哀れな父親なのだろうと同情してしまうだろう。
現に皆の中には、父の言葉を信じる者も出始めた。
「リドリー子爵、大変だったろうに……」
「クラウス様は強引に話を進め過ぎたんじゃないか?」
だが、大半は父に疑いの目を向けていた。
「リドリー子爵家の次女は、病弱で家から出られないと聞いたことがある。カレン様はあんなにも元気じゃないか!」
「病弱だっていうのは嘘なのかしら……」
「仮に子爵の娘ならば、なぜ今まで社交界に姿を現さなかったんだ?」
「そもそも本当の娘ならば、カレン様はなぜ黙っていたんだ?」
「子爵の言うことが本当ならば、結婚を無効にすれば良いことだ。なぜ今更こんなにも騒ぎ立てるんだ」
父は皆から疑われていることに気づいたようだ。だんだんと、言葉が支離滅裂になっていた。
「カレンは……確かに病弱で社交の場へ出たことがありません。ですが、成人して少し回復したのです! それでっ、今回の出来事が起こったのです。私は嘘をついていません! カレン、カレン! お前の父親は俺だろう?」
急に父がこちらを向いて手を差し伸べるポーズをした。
何と答えるべきか一瞬判断に迷っていると、横にいたクラウスがゆっくりと立ち上がった。
「皆様、お騒がせして申し訳ありません。招かれざる客が来てしまったようです。警備を甘くした私の責任です。申し訳ありません。……あそこで騒いでいる方々には退場いただきましょうか。リドリー子爵、今日は大切な日です。どうかお引きとりください」
皆に丁寧にお辞儀をした後、あの人達を見つめながら扉を指さした。
(これは……完全に煽っているわよね?)
私でも分かるくらいの分かりやすい煽り方だ。
あの人達はクラウスの言葉を聞いて、顔を真っ赤にした。
「ふっ、ふざけるな! お前のせいで俺たちがどれだけ苦労したと思ってるんだ! おい、カレンこっちに来い!」
「侯爵様、横暴すぎますわ! これは誘拐です!」
「カレン、あなた調子に乗るのもいい加減にして! 私たちにこれ以上迷惑かけないでよ!」
父の後ろにいた母や姉までも騒ぎ始めてしまった。
あまりの取り乱しっぷりに、皆が静まり返った。
クラウスの方を見ると、こちらを見て「どうする?」という顔をしていた。私の反応を試しているような、面白がっているような表情だった。
(仕方がない……)
私も立ち上がって、口を開いた。
「あまり大きな声を出さないでください。それに、もうあなた方は家族じゃありません。元、家族です」
私がそう言うと、皆がひそひそと話し出した。
「本当にリドリー家の次女だったのか?」
「あまりに薄情ではないか?」
「全く病弱には見えないが……」
「子爵の言っていることが正しかったの?」
あの人達はというと、怒りでぷるぷる震えていた。
「お、お、お前! 好き勝手言うのもいい加減にしろ! 結婚を取り消してやろうか?!」
皆の声が一瞬で止まるほど大きな声が響き渡った。父は真っ赤な顔で震えながら、私を指差している。
そしてその周りには黒い靄が渦を巻き始めていた。
クラウスの言う通りだった。あの人達は、招待されずとも来た。しかも滅茶苦茶に怒っている。
パッと隣にいるクラウスを見ると、こちらの視線に気づいてにやりと笑った。
「いった通りだろう? しばらく暴れさせとけ」
「分かりました」
とりあえず、騒然としている会場を見守ることにした。
「お集りの皆様! あそこに座っている新婦は、我が娘のカレン・リドリーです! どうして私たち家族が披露宴に招待されないのでしょうか? 今日は私たちの大切な娘を送り出す日だというのに……見送ることも許されないのですか?! こんな横暴が許されて良いのですか?!」
父は大きな声で皆に訴えている。
父の言葉を聞いた人々はざわめき始めた。
「カレン様のお父様?」
「確かに、カレン様のご親族は参加されていないようだが……彼らが?」
「顔つきはどことなく似ているかも……」
「なぜ招待されなかったのかしら?」
「ずっと家柄を隠してらっしゃったものね」
皆の困惑した表情を見た父は、ますます演説に力を入れた。
「皆様! そこにいるクラウス・モルザンは、私たちの大切な家族を突然奪っていったのです! 私たちは皆様と同じタイミングで結婚のことを知りました。とても悲しいことですが、カレンが幸せなら良いのです……。ですが、本当にこのような仕打ちをする人の下で幸せになれるのでしょうか?」
情に訴えかけるように、身振り手振りを交えた熱演だ。これだけ聞けば、なんて哀れな父親なのだろうと同情してしまうだろう。
現に皆の中には、父の言葉を信じる者も出始めた。
「リドリー子爵、大変だったろうに……」
「クラウス様は強引に話を進め過ぎたんじゃないか?」
だが、大半は父に疑いの目を向けていた。
「リドリー子爵家の次女は、病弱で家から出られないと聞いたことがある。カレン様はあんなにも元気じゃないか!」
「病弱だっていうのは嘘なのかしら……」
「仮に子爵の娘ならば、なぜ今まで社交界に姿を現さなかったんだ?」
「そもそも本当の娘ならば、カレン様はなぜ黙っていたんだ?」
「子爵の言うことが本当ならば、結婚を無効にすれば良いことだ。なぜ今更こんなにも騒ぎ立てるんだ」
父は皆から疑われていることに気づいたようだ。だんだんと、言葉が支離滅裂になっていた。
「カレンは……確かに病弱で社交の場へ出たことがありません。ですが、成人して少し回復したのです! それでっ、今回の出来事が起こったのです。私は嘘をついていません! カレン、カレン! お前の父親は俺だろう?」
急に父がこちらを向いて手を差し伸べるポーズをした。
何と答えるべきか一瞬判断に迷っていると、横にいたクラウスがゆっくりと立ち上がった。
「皆様、お騒がせして申し訳ありません。招かれざる客が来てしまったようです。警備を甘くした私の責任です。申し訳ありません。……あそこで騒いでいる方々には退場いただきましょうか。リドリー子爵、今日は大切な日です。どうかお引きとりください」
皆に丁寧にお辞儀をした後、あの人達を見つめながら扉を指さした。
(これは……完全に煽っているわよね?)
私でも分かるくらいの分かりやすい煽り方だ。
あの人達はクラウスの言葉を聞いて、顔を真っ赤にした。
「ふっ、ふざけるな! お前のせいで俺たちがどれだけ苦労したと思ってるんだ! おい、カレンこっちに来い!」
「侯爵様、横暴すぎますわ! これは誘拐です!」
「カレン、あなた調子に乗るのもいい加減にして! 私たちにこれ以上迷惑かけないでよ!」
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