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「ごご、ご忠告とは何のことでしょう? 我々はただ、ルイーゼを迎えにきただけで……それにっ、オリヴァー様にはルイーゼよりもアニーの方がふさわしいかと……」
父は目をそらしながら小さく反論した。声が上擦っている。
「くどい。今日貴方がたをここへお通ししたのは、ルイーゼとの結婚について承諾していただくためです。まぁ、こちらとしては承諾なんて必要ないですが」
オリヴァーはルイーゼの腰に手を回し、ぐっと引き寄せた。
「オ、オリヴァー様っ!」
「ルイーゼ、いくら貴女のご両親でも僕は許せません。ルイーゼは命の恩人なのですよ? 貴女の代わりはいないのです」
オリヴァーが見せつけるように甘い言葉を囁くと、無視されていたアニーが苛立ったようにルイーゼを指さした。
「私だってあんたの代わりなんて御免よ! こんな無能と一緒なんて嫌! あんたもねぇ、調子乗りすぎなのよ! 何が恩人よ。私達に迷惑かけてるの分かってる!? さっさと馬鹿なこと言ってないで帰るわよ」
アニーは喚きながらルイーゼに拘束魔法を放った。いつもお仕置きの時に使われる魔法だ。
けれど、今のルイーゼにはその魔法がスローモーションのように見えた。
(結構痛いのよね。あぁ、このままだとオリヴァー様にも魔法が当たってしまう)
そう思った瞬間、ルイーゼは無意識に手を伸ばした。
パリンッ!
ガラスを割るような音が響き渡ると、アニーがその場に座り込んでいた。
まるで縄で縛られたかように窮屈そうな体勢をしている。
「なんで……なんであんたが私の魔法を跳ね返すの!?」
アニーは身体を動かそうともがきながらルイーゼを睨みつけた。
父と母が慌てて魔法解除を施そうとしているが、難航しているようだ。
「おいルイーゼ! 何しているんだ!」
「アニーを放しなさい!!」
両親の大声を聞きながら、ルイーゼは彼らに近づいた。
「お父様、お母様、アニー。ご覧の通り、私は本当に魔法が使えるようになったのです。その魔法、解けませんか? でしたら私の方が魔力が強いようです」
父がルイーゼを睨みつける。彼の瞳には動揺と恐怖が入り混じっていた。
「……我が家の当主にでもなるつもりか」
「順当にいけばなれるのですよね? 今、この中で一番魔力が強いのは私のようです。我が家は魔力がすべて、ですものね」
苦々しい顔をしている父を見ていると、哀れにも思えてくる。
(我が家は魔法に呪われているのね。皆、魔力に逆らえない)
「嫌よ! こいつに従うのだけは嫌! どうしてよ! お父様もお母様も、早くこれを解いて!」
「口を閉じろアニー。お前は負けたのだ」
「そんな……」
アニーのすすり泣く声が聞こえる。
その隣では青い顔をした母がぶるぶると震えていた。
「そんなに睨まなくてもいいですよ。私は当主になるつもりはありませんから。……もうお帰りください。オリヴァー様や王宮の方々にご迷惑です。それから、もう私には構わないでください。その方がお互いのためでしょう? 育てていただいた恩は忘れません。でも、今までされたことも忘れられません」
どうかお帰りください、と再度頭を下げると、三人は黙り込んだ。
「ルイーゼがそう言っている間に帰った方がいいですよ。でないと、アンダーソン家が貴族でなくなる日が早まりますよ」
オリヴァーの皮肉たっぷりな言葉に父は黙って立ち上がる。
「おい、帰るぞ」
両親は拘束魔法に囚われたままのアニーを抱えて、静かに部屋を出て行った。
父は目をそらしながら小さく反論した。声が上擦っている。
「くどい。今日貴方がたをここへお通ししたのは、ルイーゼとの結婚について承諾していただくためです。まぁ、こちらとしては承諾なんて必要ないですが」
オリヴァーはルイーゼの腰に手を回し、ぐっと引き寄せた。
「オ、オリヴァー様っ!」
「ルイーゼ、いくら貴女のご両親でも僕は許せません。ルイーゼは命の恩人なのですよ? 貴女の代わりはいないのです」
オリヴァーが見せつけるように甘い言葉を囁くと、無視されていたアニーが苛立ったようにルイーゼを指さした。
「私だってあんたの代わりなんて御免よ! こんな無能と一緒なんて嫌! あんたもねぇ、調子乗りすぎなのよ! 何が恩人よ。私達に迷惑かけてるの分かってる!? さっさと馬鹿なこと言ってないで帰るわよ」
アニーは喚きながらルイーゼに拘束魔法を放った。いつもお仕置きの時に使われる魔法だ。
けれど、今のルイーゼにはその魔法がスローモーションのように見えた。
(結構痛いのよね。あぁ、このままだとオリヴァー様にも魔法が当たってしまう)
そう思った瞬間、ルイーゼは無意識に手を伸ばした。
パリンッ!
ガラスを割るような音が響き渡ると、アニーがその場に座り込んでいた。
まるで縄で縛られたかように窮屈そうな体勢をしている。
「なんで……なんであんたが私の魔法を跳ね返すの!?」
アニーは身体を動かそうともがきながらルイーゼを睨みつけた。
父と母が慌てて魔法解除を施そうとしているが、難航しているようだ。
「おいルイーゼ! 何しているんだ!」
「アニーを放しなさい!!」
両親の大声を聞きながら、ルイーゼは彼らに近づいた。
「お父様、お母様、アニー。ご覧の通り、私は本当に魔法が使えるようになったのです。その魔法、解けませんか? でしたら私の方が魔力が強いようです」
父がルイーゼを睨みつける。彼の瞳には動揺と恐怖が入り混じっていた。
「……我が家の当主にでもなるつもりか」
「順当にいけばなれるのですよね? 今、この中で一番魔力が強いのは私のようです。我が家は魔力がすべて、ですものね」
苦々しい顔をしている父を見ていると、哀れにも思えてくる。
(我が家は魔法に呪われているのね。皆、魔力に逆らえない)
「嫌よ! こいつに従うのだけは嫌! どうしてよ! お父様もお母様も、早くこれを解いて!」
「口を閉じろアニー。お前は負けたのだ」
「そんな……」
アニーのすすり泣く声が聞こえる。
その隣では青い顔をした母がぶるぶると震えていた。
「そんなに睨まなくてもいいですよ。私は当主になるつもりはありませんから。……もうお帰りください。オリヴァー様や王宮の方々にご迷惑です。それから、もう私には構わないでください。その方がお互いのためでしょう? 育てていただいた恩は忘れません。でも、今までされたことも忘れられません」
どうかお帰りください、と再度頭を下げると、三人は黙り込んだ。
「ルイーゼがそう言っている間に帰った方がいいですよ。でないと、アンダーソン家が貴族でなくなる日が早まりますよ」
オリヴァーの皮肉たっぷりな言葉に父は黙って立ち上がる。
「おい、帰るぞ」
両親は拘束魔法に囚われたままのアニーを抱えて、静かに部屋を出て行った。
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