無能令嬢の数奇な運命。〜上から落ちてきた冷徹宰相様を助けたら、結婚することになりました!?〜

香木陽灯

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 にこにこと微笑んでいる王女に、オリヴァーは時計を指差した。

「ミラン王女殿下、そろそろ時間です。今日は皇太子殿下とともに孤児院への訪問をするのでしょう? 早く行かないと殿下がしびれを切らしてしまいますよ」
「分かってるわよ。バタバタしてごめんなさいね。お礼が言えて良かったわ。またね、ルイーゼ姉様!」

 そのまま席を立つと、颯爽と去っていく。王女ともなれば、公務が忙しいのだろう。


(わざわざお礼を言うために、お茶の席を設けてくれたんだわ……)

 ありがたくも申し訳ない気持ちでミラン王女を見送ると、グッと腕を引かれた。
 引かれた方向を見ると、オリヴァーがまたケーキをフォークに刺している。


「やっと煩いのがいなくなりましたね。おや、よそ見ですか? まだお菓子はたくさんありますよ?」

 またも食べさせようとしてくるので、ルイーゼは慌てて彼の手を掴んだ。
 彼にはまだ肝心なことを聞いていない。

「オ、オリヴァー様」
「なんでしょう」
「わ、私とオリヴァー様は結婚、していないですよね?」
「えぇ。今はまだ」

 さも当然のように頷く彼は「それが何か?」という顔をした。

「でしたら妻、というのは……」
「貴女は僕の妻になるのでしょう? 互いの両親の許可も得たので、そろそろ届けを出そうかと」
「りょ、両親!? 私の両親と話したのですか?」

 思わず声が大きくなる。
 ここ数日の異様な環境のせいですっかり忘れていたのだ。両親との約束を。

(貴族なら誰でもと言ってはいたけれど、こんな高貴な方と結婚だなんて、父が許すはずないわ! それよりも、何日も帰らず怒っているに違いないわ。今度こそ殺されるっ……!)

 ルイーゼの顔がみるみる青白くなっていく。
 するとオリヴァーはケーキをおろし、ルイーゼの手をつかんだ。


 オリヴァーの瞳は全てを見透かしているような落ち着いた光を放っている。

「心配いりませんよ。何かあっても貴女を奴隷商人に渡したりしません。ルイーゼのご両親には、どんな手を使ってでも諦めてもらいます」
「そんな……オリヴァー様がそこまでする必要はありません!」

 ルイーゼは確かにオリヴァーを助けたかもしれない。けれど、そこまでしてもらう程のことではないはずだ。

(この結婚、オリヴァー様には何の得もないのに)

 ルイーゼがオリヴァーを見つめると、彼はふと微笑んだ。

「僕と結婚出来たら素敵だと、言ったのは貴女でしょう? 僕は貴女が欲しくなりました」
「え……?」

 まるで告白のような言葉が聞こえてきたものたから、ルイーゼは目を丸くした。

「アンダーソン家のしがらみから離れて、僕と一緒になりませんか? ってことです。ほら、そろそろお話を止めてケーキを食べてください。食べてくれないと僕が医師に叱られてしまう」

 そう言われればケーキを食べるしかない。
 ルイーゼは何故かドキドキと高鳴っている心臓を沈めながら、ケーキを頬張った。
 今度は自分の手で――。

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