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パーティーの終わり
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ユリウスに連れられて長い廊下を進む間、クリスティーナは内心不安でいっぱいだった。
彼からは悪意や敵意を感じなかったが、何を考えているのか全く分からなかったからだ。
「伯爵は……ジュリアスとモール領を取りまとめているのでしたね。弟が迷惑をかけていませんか?」
「迷惑だなんて……丁寧に指導していただいています」
クリスティーナがそう答えると、ユリウスは少しだけ目を見開いた。
「そうですか。あの子が指導を……弟は随分貴女を気に入っているようだ」
「そう、でしょうか。ジュリアス殿下のお役に立てれば良いのですが」
「きっと大丈夫ですよ。……さあ、ここです」
ユリウスはノックせずに部屋を開け、クリスティーナの肩をそっと押した。
部屋の中にはヘンリーとジュリアスがいた。二人はクリスティーナを見て驚いていた。
「あれー? 兄さん、連れてきちゃったの?」
「もう帰ってしまうところだったんだよ。ジュリアス、あまり女性を虐めてはいけないよ」
「はーい」
ユリウスはジュリアスと仲睦まじげに会話した後、再び部屋の外に出た。
「では失礼。伯爵、またお会いしましょう」
「あ、ありがとうございました!」
クリスティーナが慌ててお礼を言うと、優雅に微笑んで去っていった。
本当にヘンリーのところまで送ってくれたのだ。
(疑ってしまって悪かったわ。親切な方だったのね)
兄弟揃って面倒目が良いのかもしれない。
ヘンリーと会えたクリスティーナはほっと安堵していた。
ただ、「離れないで」と言われていたのに、はぐれてしまったのが申し訳なかった。
「ヘンリー、会えて良かったわ。一人になってしまって……ごめんなさい」
「いえ、謝るのはこちらの方です」
「え?」
ヘンリーもクリスティーナと同じくらい申し訳なさそうな顔をしていた。
二人で謝り合っていると、ジュリアスが横から口を出した。
「ごめんねぇ、クリスティーナを一人にさせたのは僕なんだ。パーティーでどんな振る舞いをするか観察したくてさー」
「観察? 何のためにそんな……」
「そりゃあ……君が貴族に相応しいかどうか、だよ」
ジュリアスの見定めるような目つきに心臓がドキリと跳ねた。
「僕はね、君が領主に相応しいと思ってる。だけど、貴族に相応しくなければ領主にはなれない。いくら良い政策をしたって、外交をミスったら領地はおしまいだからね。だからヘンリーにも離れてもらって、一人で他の貴族とどう対話するか見てたんだー」
ジュリアスの言う事はもっともだ。いくらクリスティーナが仕事を覚えても、他人と対話出来なければ領主には相応しくない。
引きこもりだったクリスティーナの能力を不安視するのは当然だろう。
「そうでしたか。それで、結果はいかがでしたか?」
クリスティーナが尋ねると、ジュリアスはにんまりと笑って両手を広げた。
「もちろん合格ー! 社交界初日にしては上出来だよ!」
「本当ですか? 良かったー」
「会場の隅で観察しようと思ったけど、ヘンリーとも話したくてね。こんな部屋にいたってわけよー」
「ではお邪魔してしまいましたか?」
「ううん、大丈夫! バッチリ話せたから。今日は二人の事を知れて、良い誕生日だったなー」
満足そうなジュリアスを見て、クリスティーナとヘンリーは顔を見合わせて微笑んだ。
彼からは悪意や敵意を感じなかったが、何を考えているのか全く分からなかったからだ。
「伯爵は……ジュリアスとモール領を取りまとめているのでしたね。弟が迷惑をかけていませんか?」
「迷惑だなんて……丁寧に指導していただいています」
クリスティーナがそう答えると、ユリウスは少しだけ目を見開いた。
「そうですか。あの子が指導を……弟は随分貴女を気に入っているようだ」
「そう、でしょうか。ジュリアス殿下のお役に立てれば良いのですが」
「きっと大丈夫ですよ。……さあ、ここです」
ユリウスはノックせずに部屋を開け、クリスティーナの肩をそっと押した。
部屋の中にはヘンリーとジュリアスがいた。二人はクリスティーナを見て驚いていた。
「あれー? 兄さん、連れてきちゃったの?」
「もう帰ってしまうところだったんだよ。ジュリアス、あまり女性を虐めてはいけないよ」
「はーい」
ユリウスはジュリアスと仲睦まじげに会話した後、再び部屋の外に出た。
「では失礼。伯爵、またお会いしましょう」
「あ、ありがとうございました!」
クリスティーナが慌ててお礼を言うと、優雅に微笑んで去っていった。
本当にヘンリーのところまで送ってくれたのだ。
(疑ってしまって悪かったわ。親切な方だったのね)
兄弟揃って面倒目が良いのかもしれない。
ヘンリーと会えたクリスティーナはほっと安堵していた。
ただ、「離れないで」と言われていたのに、はぐれてしまったのが申し訳なかった。
「ヘンリー、会えて良かったわ。一人になってしまって……ごめんなさい」
「いえ、謝るのはこちらの方です」
「え?」
ヘンリーもクリスティーナと同じくらい申し訳なさそうな顔をしていた。
二人で謝り合っていると、ジュリアスが横から口を出した。
「ごめんねぇ、クリスティーナを一人にさせたのは僕なんだ。パーティーでどんな振る舞いをするか観察したくてさー」
「観察? 何のためにそんな……」
「そりゃあ……君が貴族に相応しいかどうか、だよ」
ジュリアスの見定めるような目つきに心臓がドキリと跳ねた。
「僕はね、君が領主に相応しいと思ってる。だけど、貴族に相応しくなければ領主にはなれない。いくら良い政策をしたって、外交をミスったら領地はおしまいだからね。だからヘンリーにも離れてもらって、一人で他の貴族とどう対話するか見てたんだー」
ジュリアスの言う事はもっともだ。いくらクリスティーナが仕事を覚えても、他人と対話出来なければ領主には相応しくない。
引きこもりだったクリスティーナの能力を不安視するのは当然だろう。
「そうでしたか。それで、結果はいかがでしたか?」
クリスティーナが尋ねると、ジュリアスはにんまりと笑って両手を広げた。
「もちろん合格ー! 社交界初日にしては上出来だよ!」
「本当ですか? 良かったー」
「会場の隅で観察しようと思ったけど、ヘンリーとも話したくてね。こんな部屋にいたってわけよー」
「ではお邪魔してしまいましたか?」
「ううん、大丈夫! バッチリ話せたから。今日は二人の事を知れて、良い誕生日だったなー」
満足そうなジュリアスを見て、クリスティーナとヘンリーは顔を見合わせて微笑んだ。
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