光が眩しすぎて!!

きゅうとす

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足掻く世界

ならないんだ!

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5分毎の魔法強化はそんなに長く続かなかった。エレの魔力も少なくなったからだ。
街が見えて来た頃には僕だけじゃなくエレもアランも走るのを止めて歩く事になった。アランもエレも僕の歩く速度に合わせて歩いてくれていた。何度かエレの魔法強化を受ける事で魔力が僕の何処にどんなふうに掛かっているのか分かって来た。

僕には何故か魔力視が出来ていたらしい。昼間は見たことが無いから夜だけだ。もしかしたら闇魔法のせいかも知れない。
まだ自分の魔力を操作出来ないから『身体強化』にはならないけど、もっと観察したり、エレの魔法強化を受ける事でコツが掴めるかも知れない。
うん、そうなれば自分の足で歩いたり走ったりが自在になる。はは、楽しみだ。そうなれば冒険者としてもっと強くなれる筈だ。

歩きながらそんな事を考え、エレの言ったことを聞き逃していた。

「だからー、ブルグもあたし達のパーティに入らない?」

エレは命を助けられた僕に恩返しの為にそう言ってくれた。でもアランが嫌がる。

「確かにエレの命を救ってくれたみたいだけどさ。ブルグはさあ、その、足が悪いんだぜ。まともに戦えねえだろう?」

アランの言うことは正しい。

「あら、だからあたしの魔法強化じゃない」

「・・・エレの負担が大きくなり過ぎねえか?」

アランの指摘は正しい。エレはアランの言う事を考え込む。
街の門をくぐり抜けて冒険者ギルドに向かう道すがらも考え込んでいた。
互いに無言なまま冒険者ギルドに到着した。

「ブルグは商業ギルドで換金よね。終わったら此処に来てちょうだい。話の続きをしましょ?」

アランとエレは依頼の報告をするらしい。エレの救助に来た職員には大まかな事は伝えてあっても依頼を受けてるから報告が必要なようだ。

「じゃ、後で」

僕は裏口を抜けて商業ギルドへ行く。
商業ギルドではいつも通りにカラムさんが対応してくれた。僕の出したピードエイプの肉と皮には驚かれたけどね。背中と腕に傷があって重傷の逃げてるピードエイプをたまたま倒せたと言う話を信じてくれたよ。

「たまたまでも、ピードエイプを倒してるからまたまた、上級よ!」

ピードエイプは猿系のE級魔物だったらしい。ちゃんと冒険者ギルドに行くようにと注意を受けてお金を受け取る。
銀貨6枚にもなってちょっとびっくりだ。今日は誰にも絡まれずひっそりと商業ギルドを出て冒険者ギルドに戻った。

ギルドの中ではエレとアランの報告は済んでいたみたいで酒場で待っていた。

「ブルグの換金は済んだの」

エレの言葉に僕は頷き、手続きがある事を伝えた。僕が受付を探していると優しそうな受付嬢が僕に手招きしていた。だから僕は近付き、椅子を引いてその上に乗って話をした。

「すみません、商業ギルドから手続きをするように言われました。」

受付嬢の名前はエメレーヌさん。首席受付嬢で受付嬢の指導と取り纏めをしているらしいんだ。誰にも冷たい対応をするけど僕を軽蔑している様子は無いんだ。だから安心して話が出来る。

僕の言葉にエメレーヌさんが無言で手を出したので慌てて冒険者証を載せる。僕の様子にエメレーヌさんの顔に一瞬笑いが走った気がしたけど見間違いだよね。
冒険者証を受け取って魔導具で確認してくれた時も小さく驚きの声が漏れたけど直ぐに無表情に戻ったんだ。エメレーヌさんが僕に向き合って冒険者証を返しながら言った。

「確認しました。今からブルグさんはランクG1級です。」

えっ?G4級から一気にG1級になったの?僕が驚いているとエメレーヌさんの冷たい声が聞こえた。

「次の人どうぞ!」

説明も無く僕は次の冒険者に席を譲って移動したよ。

冒険者証を確認しながらエレとアランの待っている席に移動した。エメレーヌさんとのやり取りが聞こえていたらしくアランが言った。

「おい!お前まだランクGなのかよ」

その言葉にエレが噛みついた。

「なんてこと言うのよ、アラン。ブルグはまだ冒険者始めて一月も経ってないのよ」

「でもなぁ~」

「あたし達だって今回E級魔物のピードエイプにやられて帰ってきたのよ。まだ戦い慣れてないブルグだってこれから直ぐにランクも上がるわ」

エレはアランにランクが低い内は色々あった事を言ってやり込めていた。

「まぁ、こいつに助けられたから仲間にするのは良いけど」

「大丈夫よ。ちゃんとあたしがフォローするから」

エレの言葉にアランは渋々認めた。

「だから、明日受ける依頼を確認しましょ」

エレが席を降りて受付ボードに歩いていった。



僕とアランはその後を追った。
色々見て吟味した結果、C級依頼の草原の魔物グラブホーンを狩る事になった。

内容は数が増えすぎているので複数のパーティに依頼しているみたいだった。一度の討伐で3頭以上の討伐となっていた。期日は5日だった。

草原の魔物グラブホーンは毛の固い牛型の魔物で草原に集団で生息する。草食で普段は大人しいが暴れ出すととても危険だが肉•毛皮は高値で売れる。魔法鞄(マジックバッグ)があれば良いが無い場合は荷車を使用する事になる。当然僕達は持って無いからギルドから格安で借りる事になった。

ひとまず解散して身体を休める事になった。なんと言っても僕はほぼ徹夜しているからだ。冒険者ギルドに連絡してエレを迎えに来たアランも同様だ。
万全を期さないと依頼を熟せず失敗してしまう。大怪我を負った割にはひと晩休めたエレは元気なんだ。

帰りながら僕に魔法強化を掛け続けてくれたけど、魔力が増えてるみたいな事を言って居たな。

そうそう魔力の事だ。誰でも魔力を持って居るけど魔法として使える人はあまり多く無い。魔法を使える能力のある人しか魔法は使えない。
ほとんどが魔法属性に沿った生活魔法しか使えないのだ。教会で聞いた事は鍛えればそれなりに使える様にはなるけどスキルを得られればちゃんと魔法として発動するらしい。

だからエレは魔法のスキルを持っているのだ。属性については聞いてはいない。根掘り葉掘り聞くのは失礼に当たるらしい。ただ、パーティを組んだら戦うために教え合う事はするらしい。

僕はパーティに入れて貰ったけど仮の様なものだ。僕の身体のせいもあるし、ランクの事もある。本当ならランクが同じでないとパーティには貢献出来ない。いわば僕は『寄生虫』の様なもので冒険者仲間で言う所の『寄生』と言う行為らしい。

エレとアランが僕を許容しているから僕の『レベリング』をしている事になるのでまだ外聞は良い。今はまだエレも僕に助けられたと言う気持ちがあるからアランほど文句は言わないけれど本当に重荷に感じ始めたら仲間と言えなくなるだろうと思う。
もっとも僕もそんなに長く仮パーティに居るつもりも無い。出来れば『身体強化』を覚えられたらパーティを抜けようと思ってる。ただ、エレもアランも『身体強化』が出来ないから何時になるのか分からないのが悩みの種だ。

いっその事オーガストさんに直接教えて貰った方が良いのかも知れないとも思うのだ。ただ、あまりオーガストさんの好意に甘えるのもどうかと思う。エレとアランに『身体強化』をどうやって覚えるつもりなのか聞いてみるか。
僕も一緒にできるならふたりの負担にならずに済むかも知れない。

翌日、日が昇って少しした時間に西門前に向かった。

待ち合わせの時間は特に決めて無かったけど早めに待っていた方が良いだろうと思ったからだ。案の定ふたりはまだ来ては居なかったけどそれほど待たずにふたりが荷車を引いて現れた。冒険者ギルドに寄って荷車を借りてきてくれたらしい。

エレを荷車に乗せてアランが引いていた。

「あら、ブルグ早いわね」

エレが呑気に言った。僕は頷くとアランに言った。

「代わった方が良いか」

「いや、まだ軽いから大丈夫だ。帰りに交代してくれ」

まぁ荷物が増えたらずっとアランが引くと言う訳にはいかないよな。アランは戦いのメインだし。
そうなると僕が引くのか?

「アランは元気が余ってるから任せて良いのよ」

エレが言うとアランが渋面になった。

「エレの魔法強化を掛けて貰えばコイツだって使い物にはなるだろ」

確かに魔法強化して貰えれば一人前に荷車を引く事も出来るに違いない。エレの魔法強化が『身体強化』のヒントになるような気がする。
僕は荷車に乗ってるエレに手を引かれて荷車の上に上がった。

「アランはエレの魔法強化を受けた経験が多いから分かるだろうけど『身体強化』はどうやって覚えるつもりもなんだい?」

僕の質問にエレとアランは顔を見合わせた。
それからエレがアランに魔法強化を掛ける。まだ午前中で明るく眩しいから僕には魔法強化の魔力は見えていない。魔法を掛けた者と掛けられた者には分かるからアランがニヤリとした。ふたりが乗った荷車を軽々とアランが引きながら言った。

「俺たちは冒険者ギルドの講習を受けるつもりなんだ。」

「講習?」

僕は聞いたことがなかったので反問してしまった。

「あら、知らないの?C級になれば冒険者ギルドの訓練講習を受けれるのよ。その時に『身体強化』を学べるの」

「そのためにちょっと無理してピードエイプの依頼を受けたんだぜ。まぁ結局失敗しちまったけどな。だから今回の依頼もその為つう訳だ。」

なるほど、それなら僕のような心配は要らない。

「まだG級のブルグは受けられないから何処かのパーティの上級者に教えて貰うしか無いわね。あたし達が学んだ後に教えてあげても良いけど、どうする?」

「願ったり叶ったりだけど、良いの?」

僕的には余りにも都合が良すぎる。

「そりゃー良いぜ!但し有料だ!」

まぁそうなるよね。

「ええー!そうなの?あたしはお金を取らずに教えても良いと思うわ」

「おいおいエレ。幾らこいつに助けられたからってそりゃあねえぜ」

アランの言うとおりだ。僕はエレに向かって言った。

「好意はありがたいけど冒険者ギルドの訓練講習だって無料じゃ無いんだろ?教えて貰えるんだったら同額を僕も出すよ。」

アランが僕の言葉に振り返って言った。

「訓練講習は銀貨2枚だ。お前が出してくれれば俺たちも助かるな」

ニヤリとするアランにエレが顰める。

「アランったら、ブルグに厳しくない?」

このままだとアランとエレが喧嘩しそうだったから僕は少し強めに言ったんだ。

「当然さ。教えて貰うのに無料ただは怖すぎるよ」

「あら、ブルグはもうあたし達のパーティなかまよ」

少し上機嫌なエレの言葉にアランが言った。

「しっかりとパーティに貢献出来るほど戦ってくれるならな!」

全くもってアランの言う通りだった。エレに魔法強化をして貰った感覚ではゴブリンやコボルトなら問題無いように思えた。ただ、これから戦うグラブホーンに対してはどうだろうか。


その後はアランとエレの故郷の話や僕の妹の話など差し障りの無い無駄話をしながら目的地に向かった。

西門から出た草原はかなり広かった。草原の草丈は車輪程の高さは無くて何とか荷車を動かす事が出来た。
魔法強化を受けたアランは何てことも無いように荷車を引いて行くと遠くから獣の鳴き声が細く聞こえて来た。そこでアランは荷車を止めた。

「クラブホーンが居るぜ。荷車は此処に置いて先に進もう」

パーティリーダーはアランだから言う事を聞く。荷車からエレと僕は降りた。
エレとアランに取って下草は膝にも届かないけど僕には腰に届いている。この下草の中を行くのかと思うと憂鬱になる。

僕の様子を見てエレが僕に魔法強化を掛けてくれたので膝立ちから立ち上がる。少し体が揺れるけど何とか走れるだろう。

「ブルグ、戦えそう?」

エレが気を使ってくれる。そんな僕たちを放って草原を睨んていたアランが言った。

「こっちだ!走るぞ!」

アランが先走る後を追い掛ける。うん、アランに置いていかれない程度には走れる。
僕の横をエレが気遣わしそうに走った。

そうか、魔法強化された走りをしているのは僕だけなんだ。エレもアランも普通に走ってるだけなんだ。少し悔しかったけどこれが現実、これが事実、認めるしか無いんだ。
溢れそうになる涙を首を振って吹き飛ばし、少し力を込めて走る。

ちょっと走っただけでアランが制止した。僕にはクラブホーンの鳴き声が聞こえるけど何処に居るのか良く分からなかった。キョロキョロしているのをエレが声を出さずに姿勢を低くして指差して教えてくれた。

エレの指の先を辿ると緑の草の先に同じ様な色のこんもりとした場所が見えた。注意して見ると少しづつ移動しているのが見えた。そうか、あれがクラブホーンか。
僕はびっくりした。同色だから分かりづらかったけどエレの指し示す方向には同じ様な場所が幾つかあった。

歩きづらかったけど僕は膝立ちに戻ってアランが移動していく方向に倣った。少し遅れてエレが付いていく。いや、エレが距離を取って居るみたいだ。

アランや僕が直接戦闘をするのと違いエレは魔法使いだから離れて攻撃するつもりな事が分かった。アランは視線の先の少し低いこんもりとしたクラブホーンを得物に決めたらしい。アランが僕を手で制し、さらにゆっくりとクラブホーンに近付いた。

クラブホーンは牛の様な姿をしているようで頭に大きな角が1本ある。がっしりした身体には長い毛が垂れ下がり全身を覆って居るらしい。まぁこれから倒せば分かるけど。

アランが動く緑の山の後ろの方に回り込んで行く。

んん?あれで良いのか?
僕もアランの後を少し離れて付いて行くけどエレはその場から動かなかったようだ。アランばかり見ていたから気にしていなかった。

ある程度近付くとアランが立ち上がってクラブホーンに突撃した。アランに気付いたクラブホーンがブフォブフォと鳴きながら走り出そうとした時クラブホーンの頭の当たりに魔法が爆発した。炎では無かったし氷でも無く衝撃だけが当たった様に見えたから風の魔法だったのだろうと思う。

慌てた所で頭に衝撃を受けたクラブホーンは動きが鈍った。そこにアランの剣が刺さる。

叢から飛び上がったアランの剣がクラブホーンの首筋を縦に傷つける。かなり強く斬りつけた様に見えたけどクラブホーンの出血はそれほど多く無い様に見えた。

僕は飛び退るアランの後から同じ場所目掛けて跳び上がった。魔法強化の力は凄かった。
アラン以上の高さにアランより遠くから跳べた。

僕の魔剣クルワナが持った途端に突き刺せと命じた。跳び上がり反らせた身体を使って思いっ切りアランが傷付けた場所に魔剣クルワナが上手いこと突き刺さる。

アランの剣には驚いただけだったクラブホーンがブモモモーと悲鳴を上げて暴れ出した。魔剣クルワナを必死で両手で掴み、足でクラブホーンの体を挟む。
魔剣クルワナがもっと押し込めと言うが体勢が厳しい。血で濡れたクラブホーンの長い体毛はガチガチに固い癖に何故か滑りやすい。

クラブホーンが暴れて跳ね上がった時に片手を離してクラブホーンの長い体毛を掴み、魔剣クルワナを引き抜いては突き刺した。ザクザクと余り深くは無いけどアランが傷付けた首筋と思われる辺りを滅多刺しにする。

不意に魔剣クルワナが深く食い込んだ。少し体勢を崩した所でクラブホーンが身体を跳ね上げたせいで足がクラブホーンから離れてしまった。

慌てて魔剣クルワナを両手で掴むと魔剣クルワナがクラブホーンの身体を引き裂いた。そして僕はクラブホーンから落下する。

ドスン、ズサササーと叢の上を滑ってクラブホーンから離れてしまった。
お尻から落ちたせいで怪我は無いが立とうとして魔法強化の効果が切れていた為にヨロヨロした後に横倒しになった。

両手で掴んでいた魔剣クルワナが無理をするなと言う。はっとしてクラブホーンを見ると僕から少し離れた場所で鳴きながらヨロヨロ歩いてから横倒しになった。

横倒しになっても弱々しく鳴いている。どうやら出血で倒れたらしい。僕が座り込んでいると僕の横をアランが駆け抜けてクラブホーンの出血部分に剣を深く差し込み、止めを刺した。クラブホーンの弱々しい悲鳴が聞こえなくなった。

「殺ったー!」

アランが雄叫びを上げる。その姿を見て僕ははははと力なく笑った。凄く長い時間戦ったようだったけどエレが再び魔法を放つ事も無いほど短かったらしい。
エレも僕の近くに駆け寄り言った。

「凄い、凄い。ブルグ凄かったよ!」

そう言いながらエレはもう一度僕に魔法強化を掛けて手を差し伸べてくれたから魔剣クルワナに付いた血を叢で拭き取って僕は立ち上がった。
暖かいエレの手は意外にも力強かった。

「結構、無謀な事するね!ブルグ!」

「たまたまだよ」

本当にたまたまだった。
跳び上がったら思った以上に高さも距離もあった。アランの傷に魔剣クルワナを刺せたのも幸運以外の何物でもない。


アランが僕とエレの近くを通りながら荷車を取ってくると言って歩いて行った。
僕とエレは倒れているクラブホーンに近付いた。クラブホーンの周りには血溜まりが広がっている。

エレは僕に少し離れて居てねと言ってクラブホーンに近付くとブーツに血が着くのも構わずクラブホーンに触れた。そして魔法を使ったらしい。

エレの背中を見ていた僕にはエレの呟くような詠唱は聞こえなかったけどクラブホーンの血溜まりが吹き飛んで消えていった。うわっ凄いな。どんな魔法だろうと僕は思ったけど僕に振り向いたエレは笑顔だった。

後ろから荷車を引いてきたアランが手伝えと言ったので僕は荷車を引くアランの後に付いていく。アランは荷車をクラブホーンの横に着けて、頭の方に歩いて行きながら僕に脚を持ってくれと言った。

エレは慣れて居るのかクラブホーンのお腹の辺りを持ちせーので荷車に乗せた。荷車の半分がクラブホーンで塞がれる。

「殺ったな!エレ!」

アランがエレを褒める。少しエレは顰めたけど言った。

「ブルグが頑張ったからよ。アランの剣はあんまり効いて無かったわよ」

エレの非難にアランが笑った。

「ははは、今度は魔法を使うよ。あんなに切れにくいとは思わなかった。」

アランもクラブホーンに自分の剣がどれ程効くか分からなかったから普通に使ったらしい。でも、魔法を使うともっと切れるのか。僕には良く分からなかったけど次は良く見ていようと思った。

「頼むわよ、アラン」

少し呆れ気味にエレがアランに釘を刺す。

「よう、そっちを持ってくれ」

アランが僕にクラブホーンの後ろ足を持ち上げて荷車に載せる様に指示した。
分かったと手を上げて倒れているクラブホーンを持ち上げようと掴み少しふらついた。エレが見ていて言った。

「あたしも手伝うわ」

エレの魔法強化は素晴らしいが僕自身の力が足りないようでエレの協力を得てやっとの事でクラブホーンを荷車に乗せられた。クラブホーンの大きさは小さい方であるものの荷車の半分くらいを占有している。

「少し休みましょう」

エレは直ぐに次の獲物を見定めようと動き出したアランに言った。僕達の狩りで近場に居たクラブホーン達は散り散りになっていたけど時間が立つに連れて少しづつ集まり初めていた。

そう言えばアランが見定めたのは群れから少し離れて草を喰んでいたクラブホーンだった。しかも少し小さかった。

「ねぇ、エレ。アランはもしかして小型のクラブホーンを狙ってる?」

アランを見つめていたエレが振り向きながら言った。

「え?今頃気づいたの?そうよ、アランは群れから離れた若い雌クラブホーンを選んでるの。」

「それは」

「狩り易いのもあるけど肉質が良いから高く売れるのよ。元より毛皮なんかも高いわ」

エレの説明でさっきのアランの攻撃の意図が分かった。きっとアランもエレもクラブホーンの事をしっかりと調べて来たんだな。僕とエレが話をしている間にもアランが次の獲物を定めた。

叢を揺らしながら音を殺して近づくアランを見てエレが再び僕に魔法強化を掛けてくれた。

僕はエレに頷くとアランの定めた獲物の反対側に歩を進めて包囲を狭めて行く。アラン、草を喰む獲物、僕の位置が整った所でエレの魔法がクラブホーンの頭を下に打ち付けた。

いきなりガクンと頭を叢に打ち付けたクラブホーンが嘶く。その時にはアランが既に近かづいていた。
アランから魔法が放たれた直後に剣が下から切り上げられてクラブホーンの首筋を深く穿ったようだ。エレの魔法で下げられた頭が一瞬押さえつけられアランの剣が深く斬り上げられる、見事な連携だった。

だってエレとアランはそんな連携を話して居なかった。お互いを信頼しあっているからこその攻撃だったのだろう。僕は先ほどの経験を元に頸を斬られて悲鳴を上げるクラブホーンの首筋を更に追撃した。喉を突き刺しまくる。脚をクラブホーンの身体に巻きつけ、身体を固定しながらの攻撃は深くクラブホーンの喉元を確実に切裂いた。
クラブホーンの血がドバドバと僕に掛かるのも無視して必死に突き立てているといつの間にかクラブホーンの悲鳴は止んで横倒しになっていた。


倒せた事が分かって僕はクラブホーンから後退り立ち上がった。足がガクガクしていたが何とかまだ魔法強化の効果は残っていた。
自分の魔力をエレの魔法に乗せようと意識して立っているとアランがクラブホーンの反対側から言った。

「おい、無茶をするな」

確かに無茶だった。近づいてきたエレも言った。

「そうよ、狩る時は一撃入れたら離れるものよ」

「獲物を逃したくないのは分かるが下手をしたら怪我をするぞ。そんな事になったら儲けがすっ飛ぶ。」

確かにそうだ。

「す、済まない。夢中になって」

僕は足が悪いから一撃入れて離れるなんて事をしていたら獲物に逃げられてしまうから捕まえたら確実に止めを刺す戦い方ばかりしていた。今はエレの魔法強化があるんだからアランやエレのやり方に習わなくちゃ。

「とは言え、良く殺ったぜ。・・・なぁお前のその短剣短すぎねえか」

今気づいたとばかりにアランが魔剣クルワナの事を指摘した。確かに研ぎすぎて普通の短剣より短い。

「アランの言う通り稼ぎで短剣を修理したほうが良いわよ。」

「間合いが近すぎると危険だぜ」

アランの言う通り魔法が狩りに有効に使えれば良いのだろうと思う。アランの指示で荷車を移動してクラブホーンを3人で乗せる。その作業をしながら僕は先ほどのアランの魔法に付いて聞いてみた。

「アランの魔法はどうやって使ったんだ」

他人の魔法属性を聞くのはマナー違反とか言われるが今はパーティ仲間だから大丈夫だろ。
少しだけ躊躇った後にアランは教えてくれた。

「俺の魔法属性はジュール様なんだ。だから剣使う前にクラブホーンの首筋を凍らせて斬った」

「それにしては魔法詠唱してなかった気がするけど」

「それはねぇ、魔力をぶつけるだけでも多少の属性効果が出るよの」

ええ?そんな話知らない。僕が驚いているのに気をよくしたのかアランが言った。

「詠唱は魔力の力と形を与えるものだけど属性を帯びた魔力は持ち主の意志を反映する・・・だよね、エレ」

エレに確認する所を見るとエレからの受け売りなのかも知れなかった。

「ええそうよアラン。込める意志に依って効果は違うらしいわ。詠唱と同じくらいの意志を魔力に与えて放てれば詠唱破棄、無詠唱が出来るらしいわ。あたしにはまだ無理だけど、」

なるほど、そういう効果があるのか。

「そういうブルグの属性は何?あたしはパスカル様なの」

「僕の属性は・・・なんだろう?」

「ええー!知らないの」

エレが驚くけど神様の名前なんて気にしてなかったから仕方ないだろう。

「闇魔法が得意だけど」

エレがそれを聞いて言った。

「なら、光も闇も支配するカンデラ様よ」

「そうなんだ」

僕はもっと自分の魔法属性を知らないといけないみたいだ。僕が無知なせいでエレの教えたがりが始まった。荷台に2匹のクラブホーンを乗せてアランが引っ張り、エレと僕が押しながら帰る。隣でエレが得意そうに話し始めた。

「ブルグだって神様が沢山居るのを知ってるでしょ?」

神様については絵本とかで小さい時から読み聞かせられて居るからそこそこ知ってる。でも魔法属性との関係なんて知らなかった。

「うん、アランの言ったジュール様、エレのパスカル様、僕の・・・カンデラ様?」

「詳しく言うと光(カンデラ)•熱(ジュール)•風(パスカル)•砂(グラム)•水(ガロン)•雷(ワット)の属性神様ね。それから創造神ウェンバ様の恵み(スキル)があるわ」

「エレのパスカル様は風なんだね。ああ、だから見えない打撃を加えられるんだ」

「そうよ、単純な力だから詠唱も短くて済むわ。」

「でも傷つける程の威力は無い?」

「ううん、風の刃を飛ばすことはできるわ。風の刃は切り裂く事が出来る筈なんだけど、あたしはまだ切り裂けないのよ。何かコツがあると思うんだけど」

エレは自分の魔法が上手く扱えない事で少し考え込んでしまった。これじゃあ僕の魔法の事が聞けない。

「えっと、えっと。僕の属性はカンデラ様の光ってどう言う意味なんだろ」

考え込んだエレに話し掛けて、無理矢理に僕の話にする。

「えっ、ああ。ブルグの闇魔法の話ね。それはカンデラ様が闇も司って居るからよ。よく言うでしょ、光と闇は共にあるって」

そんな話は聞いたことが無いよ。全く相反していると思うんだけど。

「余計に分からないよ」

僕が不貞腐れた様に言ったらエレが笑った。


















    
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