都落ちしたB級冒険者アゼスト、頭のおかしい女神に黄金の芋を貰い、荒野を黄金郷に変える。

きゅうとす

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ハズレ村の泉の女神

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◆ハズレ村
荒野にある寂れたハズレ村に都落ちしたB級冒険者の俺は村人として暮らしている。都落ちした理由はまぁあれだ。色々あるんだよ、俺にも。

その日も俺は村にある唯一の水場の池に水汲みに行った。夜が明けやらない時間に起き出して天秤棒と桶を2つを担いて歩いて向かう。
時間的には少し村人が来るより早い。俺はよそ者だから村人に遠慮しなくちゃいけないんだ。それに会ったらなんやかんや言われるからなー。

歩いて15分も掛からない森の中で村人が余り寄り付かない泉を見つけた時は歓喜したぜ。これで村人に会わずに済むからな。
まぁなんで森の中のこの綺麗な泉に村人が来ないのかはわかるけどな。きっと魔物が怖いんだろうさ。
俺は腰に下げた剣があれば大抵は心配いらんけどな。

最初、村に居付きたいと村長に言ったら荒野から村に来る魔物退治を頼まれたわ。その見返りに荒野に近い廃屋を充てがわれたんだ。

荒野に生息する魔物は蠍の魔物デザートスコルピオン、蜥蜴の魔物グランドリザード、蛇の魔物ヒートバイパー、蚯蚓の魔物ホットロープ等だ。

荒野を更に進んだ砂漠に入ると砂の中に潜んで獲物を襲う大型の魔物が増える。こちらは村を襲うことが無いから考える必要は無いだろう。

B級冒険者である俺にはソロでも群れで無ければ対応出来る。
今のところは何度か退治してその素材を村長に渡して喜ばれている。王都で売ればそれなりの価格になる筈だが荒野のハズレ村ではなあ、宿賃くらいのもんだと思うしか無いだろ。

◆桶を泉に落とす
泉の桟橋で桶に水を汲んで家との往復をする。水は汲み置きをして汚れを沈殿させないと使い物にならないのだ。村では王都のように捻れば飲める水を得られるなんて事は無いんだ。水汲みの往復は大した労力では無いけど面倒くさい。必要な事だけどな。

3度目の水汲みで面倒くさくて一度に泉に桶を下ろしたらそのまま沈んでしまった。綺麗な泉の中に桶が沈んで行くのを俺はただ見ている事しか出来なかった。

◆泉が光り女神が姿を現す
すっかり桶が沈んで見えなくなって帰るしか無いかと泉に背を向けた時に泉が底から光りだして泉の上に光る何かが姿を見せた。
剣に手を置いて警戒した俺だがその姿を見て啞然とした。

女神様が姿を見せたんだ。白く輝く貫頭衣みたいな服に白磁のように透き通った体に細い腕、スラリと長い足。そして水面の上に浮いていた。
人では無いことは確かだった。

目を伏せ、俯き気味に微笑むその顔は正に女神様だと分かった。精霊や幽霊のような非現実的な存在じゃなくて神々しさが合ったから間違いないと俺は確信したんだよ。

◆B級冒険者を慰める女神
「おお!人よ、なんと儚くか弱き者よ。」 
切れ目を薄く開けて俺を見て言った。あまりの場違い様に俺は口をパクパクさせるしか出来ずに女神様を罰当たりに指差した。そんな俺の無様さを女神様は気に止めずに言ったのだ。

「汝が落としはこの黄金の桶か?それともこの魔銀(ミスリル)の桶か?」
「どちらも違いますが?そんなに重い桶は使いづらいっす!」
俺の突っ込みに女神様は大袈裟に溜息を付いて言った。

「人よ、正直は美徳なれどここは嘘を付いて欲望に素直にならん!」
こっちが溜息付きたいわ。

「人に嘘を付くことを勧めんなや!品性に掛けるわ」
「ああなんてこと!人よ貧乏性に蝕まれておるのだな、可哀想に!」
言うに事欠いて貧乏言うなよな。好きでこんな事してるのさ。

「慰めてくれなくて結構です!早く桶を返して下さい。仕事を早く終えたいんで!」
そしたら、伏していた目をカッと見開き女神様は言ったのだ。

「なんてこと!私と過ごす時間を無駄と言うか!」
「いやいや、そこまで言ってませーんて!」
「いやいや、いやいや、いーや!言ってるぅ!」
なんか面倒臭いな、この女神様。

◆言っていることがまるで違う
興奮を収めたのか、コホンと咳払いをして女神様は言った。

「して、人よ何が望みか?」
おいおい、今更かよ。

「だから~、桶を返して?」
「嫌じゃ」
「なして?」
すると女神様はもじもじし始めた。乙女か?嫌、女神様だよね?

「せっかくこうして地上に出て来たのに桶を返して終わりなんて詰まらん」
「桶を返しに出て来たんだよね?」
「嫌じゃ」
「どーしたら返してくれんの?」
「話を聞いてくれんかのぅ」
どうにも桶を返してくれないので諦めて言うことを聞くことにしたよ。


◆あること無いことを言ってひとりで憤慨する女神
「それで何を聞いて欲しいのかなぁ」
嬉しそうに女神のような笑顔を見せてきたよ。あっ、女神様だったな。

「実はな大神がなあ、あっ大神と言うのは妾の父のような神のことじゃ。創造神様とか人に崇められている神のことじゃ。
大神がなあ、とても心配性でなぁ、中々地上に顕現させてくれんのじゃ。地上にはみみっちい人が沢山蔓延っておって、妾を邪な目で見てくるから穢れる言うてな、行ってはいかんと駄目だしするのじゃ。」
目を伏せて憂いを漂わせる女神様。

「妾とて人に穢されたくは無いがなぁ、人に崇められたいのじゃ。そもそも人前に顕現せんと崇められんし、妾の力も信じて貰えんと、力も得られんしなぁ。
もしかして、それを妾が父なる大神は嫉妬してるのかなぁ。嫌、妾が女神なので大神よりも慕われ崇められるのを邪魔してるのかも知れんなぁ。
あああー、きっとそうなんじゃ!うう~、大神なのになんて事をぉ~」
空中で地団駄を女神様が踏み始めた。
おお、凄ぇ~器用だ。おお、綺麗なお御足がチラチラ見えるぅ~。
って助平な事を考えている場合じゃ無かった。

◆桶を返してと頼むと桶の中に黄金の芋がある
「女神様は人に好かれておりますから、桶を返して?」
憤慨していた女神様は俺の言葉に反応して地団駄を止めたわ。

「本当に?」
「はいはい、桶を返してくれれば俺は毎日女神様を拝み捲ります。村人みんなに女神様の凄いことを吹聴して回ります。」
「えへへ~」
にこにこし始めたからもうひと押しだ。

「だから~俺の桶、返してぇ~」


◆女神の好意で芋を貰う
「良かろう、返そう、人の桶を。」
女神様が両掌を上に向けるとそこに俺の桶が現れた。おお、やっとだ。そしてふわふわと空中を漂いながら俺の前に着地した。

喜びの踊りを踊りながら桶の中を見ると桶の中に芋が入ってた。女神様を見上げて俺は言った。
「女神様、この芋は?」
ころころと可愛らしい笑い声を上げると女神様は言った。

「それは妾の話を聞いてくれた礼じゃ。何、水さえやればどんなところでも育つ。美味いぞ。」
俺が芋から女神様に目をやった時には女神様は消えて行く所だった。













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