無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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冒険者Dと近隣国

商人B

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俺は王都で宝石類の商いをしていた。インベントリがあるのだから大荷物の移送も商売になっていたが、俺のインベントリの力を囲い込もうとする貴族に目を付けられ始めていたのだ。

最初は荷物の収納に大きさも量も関係無く収納する力がみんなの羨望を集めるのが嬉しくて隠す事もしなかった。商人として王都に出てから話を持ち掛けて来る奴らの目的が俺の商人としての才能ではない事に何度か交流する事で分かって来た。
それでも良かったのだが奴らは俺の間抜けさを利用して金をピンハネしていたのだ。つまり俺は商売としての情報も相場も知らない単なるカモだった訳だ。

まだ、俺は自分のスキル『無貌』の力を充分に把握していなかったのが致命的だっただろう。俺が商人べゼット•ワイグマのスキル『公正』を持っていたのも騙されやすい原因だったのかも知れん。

とにかく、俺は商人として利益率の高い宝石商として貴族や豪商の女性との交流へ身を隠す積りだったのだ。相手の顔を見て暴利を貪らないべゼットはそれなりに重宝されて、インベントリを持つ商人では無く『公正』な商人として見られたがっていたのだ。

そんな時に接触して来たのがイクアウト•プコーンだった。

イクアウトは狡猾な商人だった。食料を安く買い付けて高く売る事をしていたが、財が小さくて中々大きな商いが出来ずに金を蓄えて居た俺に目を付けたらしい。
接触は安価な宝石の仕入れを融通する話だった。商業ギルドで話し掛けられ、手持ちの処分を依頼されたのだ。
イクアウトは商業ギルドで無い別の場所での交渉を望んだが、俺がそんな態度を訝しがりギルドの一室を借りて、担当のギルド職員が同席した。

ギルド職員の同席は任意で高額の取引のときに保険を掛けると共に保証を引き受ける為にあるのだ。イクアウトの提示した宝石は高額とは行かないが少なく無い額だったから、俺も注意を払っていた。
きっとその時は俺を値踏みしていたのだろう、どれくらい注意深いか、性格はどうなのか、資産はどれ程あるのかと。

幸いにしてイクアウトとの宝石の商売は損を出さずに済む程度の儲けは出せた。だから数日後の再会時にイクアウトの誘いに乗ってしまったのかも知れない。

イクアウトの商売は不思議なものでスキル『第七感』に従っているのだと説明を受けたのだ。それに依ると近々王都で食料不足に陥る可能性があるのだと言う。話を持って来た時期が豊作と言われた秋口で、麦や晩夏の野菜が安く仕入れる事が出来る時期でもあった。
そうそう信じられる話では無かったが買い溜めをして俺のインベントリに収納して置けば時間経過が無いから痛む事は無い。上手く回れば大きな商いとなり、大きな収益も見込める。

例え、イクアウトが言うような食料不足が起きなくても問題なく売り切る事が可能だろうと予想出来た。俺はイクアウトの言う領地から食料を買い漁った。勿論、イクアウトも同行して、イクアウトが仲介する形での購入になったのだ。

そういった意味ではイクアウトの方が産地に顔が効いたのだ。
イクアウトは蓄えて居た私財を殆ど消費していたから、俺が旅の費用を出すことになったりもした。見た目の胡散臭さ程に性格が悪くなかった事が俺を油断させたのだろう。

イクアウトは売りに出す交渉は自分が算段するからまた3ヶ月後に会おうぜと言って消えた。俺が集めた食料を勝手に売払うことを疑って居なかった。
舐められて居たのか、信用されて居たのか分からなかったが俺はその間、もう一度宝石商として過ごした。

年を越し、春先になって天気がぐずつき、野菜の収穫や秋の麦が不作になることが確定した初夏の頃にイクアウトは姿を現した。
見れば直ぐに分かるほど成金趣味の姿のイクアウトは会うなり言った。
「よ!ビィー!」

何を間違えてんだよ、べゼットだからVから始まるんだぞ。指摘するのも面倒くさくてそのまま話に入る。
「聞いて回ったけどイクアウトの予想した通りになったな。軒並みどこも食料不足だ。野菜だけじゃなくて小麦が全滅しているらしい。冬の戦争で小麦が荒らされたせいもあるみたいだ。」
「だろ、だろ。マーダラーの戦争は予想外だったが天候はどんぴしゃりだぜ。」
「俺は国を出ていなかったけど、イクアウトは他国に行ってたんだろ。何処だ?」
「あん?・・・そりゃ商売になれば何処でも行くさ」

イクアウトは何処とは言わなかったが、もう面会の予約は取れてるから行くぞと先にたった。

向かったのは王城だった。
王城の守衛にイクアウトが言えば直ぐに通され、イクアウトは食料管理の主幹監事と元へ、俺はと言うと食料保管倉庫の担当者の元に案内された。

そこには宮廷魔術師が数名居て、物によって温度管理の魔導具の起動を監督していた。この部屋に食料を出す様にと言われた場所は藁積みされた場所で野菜類などの青物の保管庫らしかった。

宮廷魔術師の男は俺が魔導具も何も持って居ないのを不審に思ったらしく声を掛けて来た。
「お主、野菜類はどの様に保管庫しているのだ?」

俺がインベントリ持ちと聞いていなかったのかそんな質問をしたのだ。
「はぁ、魔導具無しで・・・スキルみたいなものですかねえ」

俺は言われた様に藁積みの上にインベントリから種類別にどんどん出していった。葉物野菜やら茄子の様な物、根菜などの沢山の野菜を種類別に置いていく。それを見た宮廷魔術師の男は目を剥いた。
「な!何だとぅ!」

それを俺は勘違いして数が分からなくなることを気にしたものと思い、言ってしまった。
「ああ、大丈夫ですよ。数量はこちらの紙に書き詰めてありますから」

俺は野菜やら穀物やらを仕入れて支払った時の値段と数の明細を宮廷魔術師の男に渡した。再び宮廷魔術師の男は目を剥いた。
「何だとぅ!これ程なのかぁ!」

俺は嘘を付いて居ない。インベントリに物を収納すれば種類別に数を勝手に集計してくれるのだ。まるでインベントリに管理者が居て仕分けているかのようである。しかも意識すればその仕分け内容も変える事が出来るから便利なものである。

最初に保管されて居た野菜類の前に山のように積み上げられて行くのをワナワナと震えながら見詰めて居た宮廷魔術師の男は叫んだ。
「貴様は本当に商人なのかあ?空間魔法を使う魔術師では無いのだな?」

俺は最後の野菜を取り出しきってから言った。
「さあ、スキルの様なものなので魔力は使っておりませんよ」
「な、な、なんとぅ!」

宮廷魔術師の男は叫び声を上げて何処かに駆けて行ってしまったので俺は仕方無しに、他の食料庫に行って続きを行った。

でも穀物の倉庫でも同じ様なやり取りをする羽目になり、なんだかなぁと思って食料保管倉庫の担当者の元へ行くと・・・そこで何故か束縛されてしまったのだった。



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