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第零章
神話
しおりを挟む万物を司り、万物を生み出す神、『ディーヴァ』。
その母なる存在は、かつて世界を作り出し、そして自らの知恵と生命を分け与え、そこに二人の子供を世界に産み落とした。
秩序と再生を司る者、『コスモス』。
混沌と破壊を司る者、『カオス』。
その二つの存在は、それぞれ非なる力を持ち、そして対極した力を持って生まれたが、互いが互いを理解し、互いの大いなる力を以て世界を導いた。
自らが生み出した二つの生命の可能性を知った母なる神『ディーヴァ』は、世界の未来を託し、可能性の先に生まれる世界を願って深き眠りについた。
やがて『コスモス』と『カオス』は、かつて母なる神がそうしたように、自身の子供達を世界に産み落とす。
神の加護を受け、神に等しき力を持つ、新たに世界を導く者達。
神より生まれし者、『イリス』。
そう呼ばれる者達は、神が作り出した世界で産声を上げた。
高い知能と技術を持つ『イリス』と呼ばれる者達は、高度な文明を生み出し、そして社会を築き、世界は繁栄と発展を遂げる。
だが、その中に生まれる、異端の存在があった。
『イリス』の血が薄れ、文明と社会に取り残される宿命を背負った者達。
特異な力を持たぬ、神の加護を受けられなかった存在。
進化とはおよそ遠い彼らは、『ヒュムス』と呼ばれた。
『イリス』の民は、その異端の存在を受け入れようとはしなかった。
そして『ヒュムス』の民は、自らの力で生きようとした。
神に愛されし者達と、神に愛されぬ者達。
神に託されし者達と、自らで生きようとする者達。
『イリス』と『ヒュムス』は、互いが互いを理解しようとせず、互いが互いを分かり合おうとはしなかった。
そして『ヒュムス』の民は、『イリス』の民のみならず、神をも憎み、恨み、怒りを向けた。
数を増した『ヒュムス』の民は、『イリス』の民とは異なる文明と社会を築き、神と『イリス』を否定するようになる。
『イリス』の民は、神を冒涜する『ヒュムス』を否定するようになる。
思想と理念が相容れぬ二つの民が衝突するのは、何ら不思議ではなかった。
『コスモス』と『カオス』は、その争いを止めようと動き出す。
神の血が薄れても、母なる神に代わって『ヒュムス』を愛し、受け入れようとした。
だが、既にそれすらも受け入れない『ヒュムス』は、『コスモス』と『カオス』を殺してしまう。
二つの心臓は抜き取られ、その大いなる力は『ヒュムス』の手に渡り、秩序と再生、混沌と破壊を司る力を『ヒュムス』は手に入れた。
絶大な力を以て『イリス』を蹂躙し、『ヒュムス』は世界を手中に収めようとする。
その『ヒュムス』に対して、永き眠りについていた『ディーヴァ』は、彼らを止める為に目覚めた。
『ヒュムス』と『ディーヴァ』は世界を巡って争うものの、かつて二つの子供達に力を分け与えていた『ディーヴァ』は、苦戦を強いられることとなる。
そんな『ディーヴァ』に、生き残った僅かな『イリス』は加勢し、そして『ヒュムス』と戦った。
だが、『ヒュムス』を最後まで止めることはできず、『ディーヴァ』の身は朽ち果ててしまう。
結果的に、母なる神は死んでしまうが、その身を呈して『イリス』は守られ、『ヒュムス』はその姿を見て、初めて愛というものを知った。
そして己の愚かさを知った『ヒュムス』は悔やみ、初めて涙を流した。
『ディーヴァ』の命は犠牲になったが、その命は『ヒュムス』に心を与え、『イリス』の命をも守ったのだった。
『ヒュムス』は、秩序と再生を司る『コスモス』から奪い取った心臓を『ディーヴァ』の亡骸に与え、命を蘇らせようとする。
だが、『ディーヴァ』の命は蘇らず、代わりにその亡骸から血が溢れ出た。
止まることを知らない血は、やがて広大な世界に行き渡り、世界をより豊かなものへと変える。
この時『ヒュムス』は、『ディーヴァ』の身は蘇らずとも、その命は世界と一体化し、そして自らの願いを再び『ヒュムス』と『イリス』に託したのだと悟った。
己の愚かさと過ちを悔やみながらも、新たに心を持った『ヒュムス』は、『イリス』と手を取り合おうとする。
だが、母なる神という生命の拠り所を失った『イリス』は、決して『ヒュムス』を許すことはしなかった。
『イリス』は『ヒュムス』を憎み、恨み、怒りを向けた。
かつて、『ヒュムス』がそうであったように…。
『ヒュムス』と『イリス』は、手を取り合うことなく再び争いを始めた。
数で劣るが、神より与えられし力を持つ『イリス』の力は驚異であり、『ヒュムス』を次第に追い詰める。
だが、全滅を避けるべく、『ヒュムス』は混沌と破壊を司る『カオス』の心臓の力を使い、『イリス』に対抗した。
その大いなる力の前に、『イリス』は壊滅的な状況にまで追い込まれ、戦いは『ヒュムス』が勝利を収めた。
その代償として、『カオス』の心臓は力を失うこととなるが、戦いを終えた『ヒュムス』にとっては不要であり、『ヒュムス』は神を殺した忌まわしい過去と共にその心臓を大地へと還した。
全滅は免れたものの、数を減らした『イリス』は人知れず姿を消し、世界は『ヒュムス』が見守ることとなる。
そしていつしか、『イリス』という存在は忘れ去られ、過去の存在となった。
しかし、『ヒュムス』は気付かなかった。
神と大地に還した心臓が、再び鼓動したことを。
『イリス』が、まだ生きていることを。
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