16 / 31
第一章 「始まりの日」
監理者
しおりを挟む漆黒の闇に支配された、広大な空間。
その中心には、世界地図を映し出したモニターが床に設置されており、それが空間を照らす唯一の光だった。
そこには、そのモニターを取り囲むように、まるで死人のように青白い肌をした七人の男達が立っている。
その男達は、髪も眉も無く、そしていずれもが人形のように同じ容姿をしており、唯一違うのは、身に纏う白い外套を彩るラインの色だけであり、それだけが唯一の判断材料だった。
男達は、感情が存在しない、死んだ魚のような双眼でモニターを見下ろしていた。
「永らく続くと思われていた秩序と均衡…。我々が作り上げてきた理想郷が、終わりを告げようとしている…。どうやら、奴等が動き出そうとしているようだ」
最初に口を開いたのは、赤いラインが走る外套を纏うドゥーべという名の男だった。
「仕方あるまい。未来永劫続くとは、我々も思ってはいない」
「左様。そもそも、今の世界は我々が求める真なるものではない。あくまで虚像に過ぎないものだ」
ドゥーべに続き、青いラインの外套のフェクダ、緑のラインの外套のメラクが続く。
「我々の手中にある福音…。それを得てしても、未だ掴めないとはな」
「皮肉な話だ。もっとも、その福音こそが全ての始まりではあるが」
黄のラインの外套を纏うアリオト、橙のラインの外套を纏うメグレズが言葉を発する。
五人の行動をなぞるように、藍のラインのミザール、紫のラインのベネトナシュが、それに続いた。
「人類が積み重ねてきた歴史…。それら全ての叡智すらも凌駕する存在だ」
「故に、福音であると同時に、災厄にもなろう。総てはそこから始まったのだからな。無論、奴等との因縁でさえも」
七人は、それぞれ言葉を並べる。
しかし、その言葉には感情が込められておらず、念仏のように低い声だけが響き渡っていた。
そして以後、また彼らの会話は、同じ順番で進められていく。
まるで、会話自体が機械のように仕組まれ、それぞれが同じ思考を持つかのように。
「確かにな。過去に囚われた、忌々しい存在よ…」
「奴等さえ動かなければ、我々の計画も遂行できていたやも知れぬというのに」
「福音こそが始まりであるならば、奴等との永き因縁も致し方あるまい…。寧ろ、ここで終わらせるべきものだ」
それぞれは悔恨の言葉こそ口にするものの、表情には変化一つなく、また言葉にも抑揚が一切ない。
そして瞬きもしない眼はモニターだけを見据え、口だけを動かし続けるその姿は不気味そのものだった。
「奴等の抑止力…。その為のレギオンが、我々にあるはずだ。如何に奴等が人智を超えた存在であろうと、十分対抗手段になる」
「対抗だけでは無意味だ。レギオンには多額の資金を提供したのだ、奴等に勝る程の武力でなければ意味があるまい?」
「空白だった剣王の称号…。それを継ぐ者も、今や我らの手中にある」
「その実力、信用できるのか?如何に剣王という称号を継ごうとも、所詮は人間であろう?」
口論のような話であるが、彼らの口調は依然として変わることはなく、息継ぎもしないままただ淡々と規則的に並べられていく。
言葉も重なることなく、ただ事務的に、そして台本を手にして朗読しているかのような感覚だった。
「案ずるな。剣王という称号は伊達ではない。その実力はレギオンからも報告を受けている」
「ならば、精々期待でもしておこう。人ならざる者達に人が勝てるかどうか、見物にはなろう」
「奴等との永き因縁の輪廻…。それも、この戦いが最後になるやも知れぬ」
「さすれば、我々の計画も完成するであろう」
「それこそが我々の望みであり、そして我々の目的と役割…」
「絶望に支配された旧世紀より、変革を生み出した福音を手にした者達の使命…」
「左様。福音を得た我々は、「監理者」なのだから…」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる