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第8話
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風呂場と呼ばれる部屋全体は10畳程度の広さになっていて、手前半分が脱衣所。
ガラスのドアで仕切られた向こう側は、普段は真っ白で何もない部屋になっている。
液晶パネルに触れてからその部屋……何もない空間に足を踏み入れると、ドアが閉まる音声が流れ出す。
そして自動でドアが閉まり、小さな隙間も残さない。
ドアが閉まってほんの数秒後、、、白だった壁の色が少しずつ変わり始める。
もちろんガラスのドアの部分も、同じように色が変わり始める。
枝が伸びるように色づく薄い緑、月に照らされる深い緑、そして光の中で輝く明るい緑……
景色はどんどん変わってゆき、やがて写真から飛び出したような……立体的なホログラムの森林になる。
チーチーと鳴く鳥の声に耳を澄ませていると、ゴロゴロという音と共にザァーッと激しい雨が降り出す。温かい雨だ。これがシャワーの代わりになる。
やがて雨が止み、晴れた青空に虹のグラフィックが出ると同時に、シャボン玉のような泡が沢山降ってくる。これが全身洗える石鹸だ。手でちょっとこするだけで、身体中が泡だらけになる。
見上げる天井の青空に、羊の形の雲が流れていくのを見るのが好きだ。雲の形はランダム設定にしてあるので、毎回違っている。
雲が壁の隅に吸い込まれるように消える頃には風景が変わり、、、今度はドドドドッと激しく落ちる水の音が響き出す。
まるで自分が滝の真ん中にいるような、ダイナミックなホログラムだ。
映像と連動するように大量のぬるま湯が天井から何度も降ってくるが、さすがに滝ほどの勢いはない。
それでも身体を洗い流すには十分だった。
滝の音が小さくなって消えていくと、今後は床からぬるめの湯が吹き出してくる。
さりげなく床のグラフィックがクジラの背中に変化しているのも楽しい。
クジラの背中に乗っているような……楽しい気分をちょっとだけ味わえる。
だんだんクジラが大きくなって壁に溶けてゆき、風景はいつのまにか湖に変わる。
湖の真ん中に立っている自分。遠くに見える青々とした木々を観察しているうちに、視界にはホログラムの魚が泳ぎ始める。
小さな魚から大きな魚まで色々……。
多分湖にはいないであろう魚もいるのだけど、リアルさをこだわりたければ種類等の設定も可能。俺はランダムにしているから、日によってはペンギンや恐竜が泳いでいたりもする。
魚たちは色んな角度から現れて、目の前を通り過ぎると薄くなって消えていくのを繰り返す。
魚を目で追っているうちに増えてきた湯は腰元で止まり……
立っていても座っていてもいい感じの水量で、俺の身体を温めてくれる。
俺はこの時間を、風呂の中で歩いたり座ったりして適当に過ごす。
その時に思い出すのは、大半じーさんばーさんのことだ。
この風呂場は、じーさんばーさんのこだわりで作ったものだ。
二人がまだ現役で働いていた頃、お互いがほんとに忙しくて、色々とすれ違うことも多かったそうだ。
そんな時、「一緒にどこかへ行けなくても、一緒にリラックスできる空間を」と色々考えて開発したのが、この風呂場のシステムだったそうだ。
当時はまだ都会に住んでいたので、会社の近くの家にこのシステムを作り、「どんなに忙しくても、風呂だけは一緒に入ってその日のことを話そう」と二人で決めていたらしい。
疲れてしゃべりたくない日も、喧嘩して口をききたくない日も、二人で多彩な景色の中にいると癒されて、風呂を出る頃には普通に会話がしたくなったと言っていた。
まぁ大半は、「ここをもっと改良しよう」とか「この風景も追加しよう」とか、そういう話ばかりだったらしいけど。
だけど二人にとってはとても大切な時間で、じーさんばーさんの子供……俺の親に会社を引き継いでこの田舎に引っ越した後も、ずっと一緒にお風呂に入って色々なことを語っていた。
俺がこの家に来たばかりの頃は3人でよく一緒に入って、泣いてばかりいた俺に、「今日の楽しかった事は何? 明日は何をしたい?」と聞いてくれた。
家族に見放された過去の絶望よりも、未来の自分に希望を持つこと。
変えられないことじゃなくて、変えられることを大切にすること。
それを何度も何度も教えてくれた。
だからじーさんばーさんが亡くなった今でも俺はその思考を受け継いで、いつだって未来を見るって決めている。
いい日にするのも、そうでない日にするのも、自分次第なのだから―――――
少しずつ少しずつ……俺の周りを泳いでいた魚がいなくなり、景色がどんどん変わり始めた。
風呂場使用の設定時間は30分ほどで、どんな映像を使っても……最後の演出は決まっていた。
優しい音楽と共に湯がどんどん減ってゆき、風景は海が見える砂浜になる。
太陽が海の向こう側からゆっくり現れて、室内に温かい風が吹き始める。これがドライヤーの代わりになって身体を乾かしてくれる。
上がってきた太陽がゆっくり沈んで夜になると、ガラスのドアが自動的に開いて脱衣所に出るよう音声で促される。
俺は脱衣所に出てから身体が乾いていることを確認し、新しいTシャツと短パンを着た。
脱衣所には作り付けの棚があり、洗濯が終わるたびにそこに衣類を補充するので不足することはなかった。
―――――さて、と。
リフレッシュして少し目が覚めた俺は、脱衣所の隅にいるピンクのスライム・ロボを両手で持ち上げた。
モチモチ・ロボと大きさはそう変わらないが、スライム・ロボの方が重量がある。
形はなんと形容していいかわからないが……つぶれたボールのようにブヨブヨしている。
これを風呂場に置いておくと、自分で這って動いてカビの原因になるゴミや残った水滴を身体に吸着して風呂場を奇麗にしてくれる。
吸着した水分は起動中の熱でだんだん浄化していき、くっついたゴミや汚れは水洗いすれば簡単に落ちる。
しかし充電が切れると室内のどこかで動かなくなっているので、見つけた時に回収するという手間はかかる。
天井を這っていて動かなくなった場合も、必ず下に落ちるよう設定されているので問題ない。落ちてもブヨブヨしているから壊れることはないし。
ちなみに充電は、電源の近くに置いておくと、時間をかけて電気をゆっくり吸うそうだ。
充電中はぷるぷると小動物のように震えていて、充電が完了すると微動だにせずに止まっている。
素早い充電ができない分、素早く動くことはできないが、ノロノロとした動きでも時間をかけてきちんと掃除はしてくれるし、見た目も可愛いから俺は好きだ。
―――――スライム・ロボの動作はABCトリオが研究中でまだ試作段階だけど、もっと改良を重ねたらいずれブレイクするんだろうな……
そんなことを考えながら風呂場を出て廊下を歩くと、物音が全くしないことに気が付いた。
―――――そっか、あいつら帰ったのか……。
電気がついたままのリビングに戻ると、元通りに整頓された部屋には誰もいなかった。
最初から、誰もいなかったみたいに……。
(まぁ、いつものことだけど……)
俺は少し乱暴に歩いて回れ右し、背中から倒れるようにソファーに座った。
つづく。
ガラスのドアで仕切られた向こう側は、普段は真っ白で何もない部屋になっている。
液晶パネルに触れてからその部屋……何もない空間に足を踏み入れると、ドアが閉まる音声が流れ出す。
そして自動でドアが閉まり、小さな隙間も残さない。
ドアが閉まってほんの数秒後、、、白だった壁の色が少しずつ変わり始める。
もちろんガラスのドアの部分も、同じように色が変わり始める。
枝が伸びるように色づく薄い緑、月に照らされる深い緑、そして光の中で輝く明るい緑……
景色はどんどん変わってゆき、やがて写真から飛び出したような……立体的なホログラムの森林になる。
チーチーと鳴く鳥の声に耳を澄ませていると、ゴロゴロという音と共にザァーッと激しい雨が降り出す。温かい雨だ。これがシャワーの代わりになる。
やがて雨が止み、晴れた青空に虹のグラフィックが出ると同時に、シャボン玉のような泡が沢山降ってくる。これが全身洗える石鹸だ。手でちょっとこするだけで、身体中が泡だらけになる。
見上げる天井の青空に、羊の形の雲が流れていくのを見るのが好きだ。雲の形はランダム設定にしてあるので、毎回違っている。
雲が壁の隅に吸い込まれるように消える頃には風景が変わり、、、今度はドドドドッと激しく落ちる水の音が響き出す。
まるで自分が滝の真ん中にいるような、ダイナミックなホログラムだ。
映像と連動するように大量のぬるま湯が天井から何度も降ってくるが、さすがに滝ほどの勢いはない。
それでも身体を洗い流すには十分だった。
滝の音が小さくなって消えていくと、今後は床からぬるめの湯が吹き出してくる。
さりげなく床のグラフィックがクジラの背中に変化しているのも楽しい。
クジラの背中に乗っているような……楽しい気分をちょっとだけ味わえる。
だんだんクジラが大きくなって壁に溶けてゆき、風景はいつのまにか湖に変わる。
湖の真ん中に立っている自分。遠くに見える青々とした木々を観察しているうちに、視界にはホログラムの魚が泳ぎ始める。
小さな魚から大きな魚まで色々……。
多分湖にはいないであろう魚もいるのだけど、リアルさをこだわりたければ種類等の設定も可能。俺はランダムにしているから、日によってはペンギンや恐竜が泳いでいたりもする。
魚たちは色んな角度から現れて、目の前を通り過ぎると薄くなって消えていくのを繰り返す。
魚を目で追っているうちに増えてきた湯は腰元で止まり……
立っていても座っていてもいい感じの水量で、俺の身体を温めてくれる。
俺はこの時間を、風呂の中で歩いたり座ったりして適当に過ごす。
その時に思い出すのは、大半じーさんばーさんのことだ。
この風呂場は、じーさんばーさんのこだわりで作ったものだ。
二人がまだ現役で働いていた頃、お互いがほんとに忙しくて、色々とすれ違うことも多かったそうだ。
そんな時、「一緒にどこかへ行けなくても、一緒にリラックスできる空間を」と色々考えて開発したのが、この風呂場のシステムだったそうだ。
当時はまだ都会に住んでいたので、会社の近くの家にこのシステムを作り、「どんなに忙しくても、風呂だけは一緒に入ってその日のことを話そう」と二人で決めていたらしい。
疲れてしゃべりたくない日も、喧嘩して口をききたくない日も、二人で多彩な景色の中にいると癒されて、風呂を出る頃には普通に会話がしたくなったと言っていた。
まぁ大半は、「ここをもっと改良しよう」とか「この風景も追加しよう」とか、そういう話ばかりだったらしいけど。
だけど二人にとってはとても大切な時間で、じーさんばーさんの子供……俺の親に会社を引き継いでこの田舎に引っ越した後も、ずっと一緒にお風呂に入って色々なことを語っていた。
俺がこの家に来たばかりの頃は3人でよく一緒に入って、泣いてばかりいた俺に、「今日の楽しかった事は何? 明日は何をしたい?」と聞いてくれた。
家族に見放された過去の絶望よりも、未来の自分に希望を持つこと。
変えられないことじゃなくて、変えられることを大切にすること。
それを何度も何度も教えてくれた。
だからじーさんばーさんが亡くなった今でも俺はその思考を受け継いで、いつだって未来を見るって決めている。
いい日にするのも、そうでない日にするのも、自分次第なのだから―――――
少しずつ少しずつ……俺の周りを泳いでいた魚がいなくなり、景色がどんどん変わり始めた。
風呂場使用の設定時間は30分ほどで、どんな映像を使っても……最後の演出は決まっていた。
優しい音楽と共に湯がどんどん減ってゆき、風景は海が見える砂浜になる。
太陽が海の向こう側からゆっくり現れて、室内に温かい風が吹き始める。これがドライヤーの代わりになって身体を乾かしてくれる。
上がってきた太陽がゆっくり沈んで夜になると、ガラスのドアが自動的に開いて脱衣所に出るよう音声で促される。
俺は脱衣所に出てから身体が乾いていることを確認し、新しいTシャツと短パンを着た。
脱衣所には作り付けの棚があり、洗濯が終わるたびにそこに衣類を補充するので不足することはなかった。
―――――さて、と。
リフレッシュして少し目が覚めた俺は、脱衣所の隅にいるピンクのスライム・ロボを両手で持ち上げた。
モチモチ・ロボと大きさはそう変わらないが、スライム・ロボの方が重量がある。
形はなんと形容していいかわからないが……つぶれたボールのようにブヨブヨしている。
これを風呂場に置いておくと、自分で這って動いてカビの原因になるゴミや残った水滴を身体に吸着して風呂場を奇麗にしてくれる。
吸着した水分は起動中の熱でだんだん浄化していき、くっついたゴミや汚れは水洗いすれば簡単に落ちる。
しかし充電が切れると室内のどこかで動かなくなっているので、見つけた時に回収するという手間はかかる。
天井を這っていて動かなくなった場合も、必ず下に落ちるよう設定されているので問題ない。落ちてもブヨブヨしているから壊れることはないし。
ちなみに充電は、電源の近くに置いておくと、時間をかけて電気をゆっくり吸うそうだ。
充電中はぷるぷると小動物のように震えていて、充電が完了すると微動だにせずに止まっている。
素早い充電ができない分、素早く動くことはできないが、ノロノロとした動きでも時間をかけてきちんと掃除はしてくれるし、見た目も可愛いから俺は好きだ。
―――――スライム・ロボの動作はABCトリオが研究中でまだ試作段階だけど、もっと改良を重ねたらいずれブレイクするんだろうな……
そんなことを考えながら風呂場を出て廊下を歩くと、物音が全くしないことに気が付いた。
―――――そっか、あいつら帰ったのか……。
電気がついたままのリビングに戻ると、元通りに整頓された部屋には誰もいなかった。
最初から、誰もいなかったみたいに……。
(まぁ、いつものことだけど……)
俺は少し乱暴に歩いて回れ右し、背中から倒れるようにソファーに座った。
つづく。
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