48 / 91
第二章
1. 月日
しおりを挟む
結ばれたあの夜から、俺達の関係は変わった……かと言われれば、あまり変わらない日常を過ごしていた。
俺は、相変わらず家事代行としてお給料も貰いながら家事をこなしつつ、元気に大学へと通っている。
早川は月刊誌での連載が決まったものの、朝晩の食事は必ず共にするし、忙しくて時間が合わないなんてことはない。
そして、夜は必ず二人揃ってソファーでくつろぎ、BL漫画の研究をして……
「なぁなぁ……今どんなの描いてんの?そろそろ教えてくれたっていいじゃんか」
俺の膝に乗るミルクティー色の髪を指先で遊ばせながら、今夜も尋ねる。
しかし、返ってくる答えはいつも一緒だ。
「んー……、まだ内緒。だって意識すると君、自然体でいられなくなるでしょ?」
銀縁眼鏡の奥に隠された瞳は、手元の漫画から目を離さずに答える。
そうなのだ。
早川は、俺をモデルにした漫画の連載準備をもう始めているというのに、肝心の作品を一度も見せてくれたことがなかった。
あまりに俺がごねると「じゃあ連載が始まってからね……」なんて言って、簡単にはぐらかされる。
どうやら、今夜も教える気はないようだ。
俺はもともと漫画家の『早川悠介』のファンでもあるから、今の現状は不満だった。
思わず、その髪を引っ張るくらいには。
「……っ、いたいよ」
「だって、教えてくんねぇんだもん」
「僕がハゲちゃったらどうするのさ」
「いいもん。責任とるし……」
不貞腐れて顔を逸らす。
すると、いつの間にか伸ばされていた大きな手が、俺の頭を少し強引に引き寄せた。
ちゅ、
気がついた時には間近にヘーゼルの瞳が迫り、唇が重なっていた。
彼を覗き込むような体勢のまま無理矢理されるキスに、余計に不満が募る。睨むと、早川は楽しそうに目を細めた。
「なに……っ! ふ、んぁ……」
再び、唇が重なる。
文句も言えないまま、それは次第に深い口付けへと変わり、溺れさせられる。
あっという間に形勢は逆転していて、俺の体はソファーに沈んだ。
最後に下唇を甘噛みして離れてゆく唇を目で追いながら、ようやく息を吸う。
はぁ……っ、と深い吐息を零すと、早川は俺の濡れた唇を指で拭いながら言った。
「責任、とってもらおうかな」
外された銀縁眼鏡の向こうから現れた瞳は、溢れるほどの熱を孕んでいる。
俺が頷けば、それは長い夜の始まりの合図ーー……
俺と早川の関係は変わらない。
漫画家と絵のモデル。
雇い主と家事代行人。
でも、そこへ関係はさらに増えた。
それは、全身を蜜に浸されるかのような甘い時間を共にする関係だった。
俺は、相変わらず家事代行としてお給料も貰いながら家事をこなしつつ、元気に大学へと通っている。
早川は月刊誌での連載が決まったものの、朝晩の食事は必ず共にするし、忙しくて時間が合わないなんてことはない。
そして、夜は必ず二人揃ってソファーでくつろぎ、BL漫画の研究をして……
「なぁなぁ……今どんなの描いてんの?そろそろ教えてくれたっていいじゃんか」
俺の膝に乗るミルクティー色の髪を指先で遊ばせながら、今夜も尋ねる。
しかし、返ってくる答えはいつも一緒だ。
「んー……、まだ内緒。だって意識すると君、自然体でいられなくなるでしょ?」
銀縁眼鏡の奥に隠された瞳は、手元の漫画から目を離さずに答える。
そうなのだ。
早川は、俺をモデルにした漫画の連載準備をもう始めているというのに、肝心の作品を一度も見せてくれたことがなかった。
あまりに俺がごねると「じゃあ連載が始まってからね……」なんて言って、簡単にはぐらかされる。
どうやら、今夜も教える気はないようだ。
俺はもともと漫画家の『早川悠介』のファンでもあるから、今の現状は不満だった。
思わず、その髪を引っ張るくらいには。
「……っ、いたいよ」
「だって、教えてくんねぇんだもん」
「僕がハゲちゃったらどうするのさ」
「いいもん。責任とるし……」
不貞腐れて顔を逸らす。
すると、いつの間にか伸ばされていた大きな手が、俺の頭を少し強引に引き寄せた。
ちゅ、
気がついた時には間近にヘーゼルの瞳が迫り、唇が重なっていた。
彼を覗き込むような体勢のまま無理矢理されるキスに、余計に不満が募る。睨むと、早川は楽しそうに目を細めた。
「なに……っ! ふ、んぁ……」
再び、唇が重なる。
文句も言えないまま、それは次第に深い口付けへと変わり、溺れさせられる。
あっという間に形勢は逆転していて、俺の体はソファーに沈んだ。
最後に下唇を甘噛みして離れてゆく唇を目で追いながら、ようやく息を吸う。
はぁ……っ、と深い吐息を零すと、早川は俺の濡れた唇を指で拭いながら言った。
「責任、とってもらおうかな」
外された銀縁眼鏡の向こうから現れた瞳は、溢れるほどの熱を孕んでいる。
俺が頷けば、それは長い夜の始まりの合図ーー……
俺と早川の関係は変わらない。
漫画家と絵のモデル。
雇い主と家事代行人。
でも、そこへ関係はさらに増えた。
それは、全身を蜜に浸されるかのような甘い時間を共にする関係だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
40
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる