人生崖っぷちですが王子様に拾われました!?〜崖っぷち元人気漫画家×崖っぷち大学生が協力してBL漫画で一発逆転狙います!〜

一色

文字の大きさ
49 / 91
第二章

2. 課題

しおりを挟む
 季節は移り変わり、すっかり夏だ。
 新緑が青々と輝く爽やかな季節に、俺には二つ課題があった。


 一つは、トレードマークのパーカーから、何故かお洒落な服へと進化すること。
 きっかけは、些細な会話だった。

「君の服は、いつもオーバーサイズだね」

 そう言って揶揄うように笑う早川に、服なんて着られれば良い主義の俺は「友達のおさがりだからな!」と何気なく答た。
 すると、彼は途端に真顔になった。

 え、表情筋死んだ?

「俺、パーカー好きじゃん? ついパーカー着てる奴いるとめっちゃ褒めて、素材の確認とかしたくなっちゃうんだけど……。なんでか皆おもむろに着てるやつ脱いで、プレゼントしてくれるんだよなぁ」
「な……、なんて褒めるの?」
「え? 普通に。『お前が着てるやつが欲しいな』って。おかげで服要らずでさ!」
「そ……、素材の確認とは?」
「お? そりゃあもちろん、モフモフしたりギュッて抱きしめたりっしょ」
「な……、なんて言って皆くれるの?」
「ん? あー。よくわかんねぇけど『さみしい思いさせてごめんな』とか『彼シャツならぬ彼パーカーもいいね』とか言ってたかな。かわいいなんてよく馬鹿にしてくるけど、なんだかんだ皆いい奴らだよな!」

 優しい友人達のエピソードを語れば語るほど、早川はますます真顔になった。
 そして、なんとその日のうちに買い物に連れ出され、着せ替え人形にされ、大量の服を贈られたのだ。値札がついていない服屋なんて初めてで断固として断りたかったのに、真顔の圧には耐えきれなかった。

(イケメンの真顔……、怖っ!!)

 そう心の中で叫ばずにはいられなかった。
 後日、早川に燃やされそうになったパーカー達を丁重に返却して、その優しい友人達を泣かせてしまった話は、ここだけの秘密だ。


 そして、もう一つ課題はーー……


「ほら、呼んでごらん?」
 重ねた手を指先で撫でながら、甘い声が低く囁く。

「…………っ、ゆっ、ゅ、ゆっ」
「ゆ?」
「ゅ、……ゃだ。も、無理!」
「じゃあ、今日もお仕置きだね」

 その言葉に、息を詰める。
 間近に迫る整った顔が、この時ばかりは酷く憎らしい。

「っ、ここ。カフェだし!」
「一番端の席だから、他の客からは死角になってて見えないよ」
「そういうことじゃ、ねぇって……」
「でも、で呼べなかった方が自分からキスするって約束したじゃない」

 慌てて並べた言い訳すら聞き入れて貰えず、机越しに互いの鼻先が掠める。


「キスしてよ、蒼大くん」


 毒のように甘い声に、思考なんて奪われる。俺は甘い蜜に誘われてしまう獲物のように、いつだって彼の言葉に逆らえない。

 そっと、唇同士が触れ合う。

 ちゅ……、と軽いリップ音を響かせた先には、満足そうなヘーゼルの瞳が見えた。


「良い子だね」

 
 キスの名残を惜しむように、ペロリと唇の端を舐める赤い舌に、思考はノックアウト寸前だ。俺が照れくさくて名前で呼べないのを分かってるくせに、彼はずるい。

 こう言う訳でもう一つの課題は、互いを名前で呼び合うこと。

 なのにーー……、

 こうして今日も、俺はもう一つの課題を達成できずに悪戦苦闘しているのだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~

蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。 転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。 戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。 マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。 皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた! しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった! ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。 皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

処理中です...