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【4話】これが愛?
神崎家族とキャンプ2
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「ゆーせー。ゆーせーはママの友達?」
「ママ……というよりは、基城の友達かな?」
長女の三歳の娘──琴音は基城のほうを見た。チャイルドシートに座った琴音は、腕を組んで不思議そうに首を傾けた。
「ぜんぜんタイプがちがいましゅね」
──この、クソガ……。
と、言いそうになってきつく飲み込んだ。言葉を喋りだす前は、基城も姪っ子を溺愛していたが、保育園に入ってからは口も達者になり、可愛さの欠片もなくなった。
琴音は女王様のように、紙パックのジュースを持って、ストローの差し口をとんとんと指差した。飲めるようにしろ、と甘えているのだ。
優生は指示通りにストローを差して、ジュースを差し出す。
「もときはあんまりしっかりしてないので、ゆーせーよろしくおねがいしましゅ」
「うん。こちらこそよろしくお願いします」
「そこはよろしくしなくていいっ!」
基城は軽く優生の肩を叩いた。
「こーら。呼び捨てにしない。優生じゃなくて優生お兄ちゃんでしょ?」
「俺はいいのかよ!?」
「基城は基城で覚えちゃったもん」
琴音はすぐに「優生お兄ちゃん」と呼び方を改める。優生は姪っ子達に人気ですぐに打ち解けていった。
高速を通った後は単調な景色が続き、基城は早起きした分の睡眠を取り戻すように、車内で眠っていた。姉と姪、そして優生に起こされたときには、もうすでに時刻は昼過ぎだった。
パーキングエリアで休憩をかねて昼食をとることになった。海沿いのパーキングエリアは道の駅とも繋がっており、基城と同じように夏休み中の家族客がたくさんいる。
都会とは違い、潮風が常に吹いているので気持ちいい。真夏だが、からっとした風のおかげで過ごしやすい。
基城と優生は休息を取る姉達に代わり、姪達の面倒を見ることになった。瞳の子供は三歳と一歳、文香の子供は二歳の双子だ。美奈はまだ歩けない乳児を抱いている。
一時間もしないうちに、先に基城のほうが追いかけっこでバテてしまい、日陰に移動した。優生の足には双子がそれぞれ抱きついて、琴音とその妹の詩が優生の周りをくるくると回っている。
芝生の上で尻もちをついた優生を、基城は思い切り笑い飛ばした。
「基城、サボらないでこっち来て」
「無理、俺はもうギブ」
基城は座りながら手をひらひらと振った。それでも優生に名前を呼ばれるので、基城は水を一口飲んだ後、戻ることにした。
しばらく遊んでいると、子供達は飽きたのか、姉達の元へ走っていった。一人ならまだしも、四人だとさすがに体力がもたない。
「はぁー……疲れた!」
「子供って元気だよね」
「前会ったときは琴音しか歩けなかったのに。夜は優生が面倒見ろよ」
基城がそう言うと、優生は何も言わず困ったような、嬉しそうな……曖昧な表情をした。
「でも姉妹がいるっていいよね。賑やかで楽しそう。基城もお姉さんがいるし」
「そうかぁ? ああ、優生は一人っ子だもんな」
「……うん」
神妙な面持ちで返事をするので、基城も言葉に詰まってしまった。遠くの海を見つめる優生の背中を、強く叩いた。
「あんな姉ちゃん一人でも大変なのに、三人もいたら地獄だぞ。欲しかったら優生に三人ともやるよ」
「……何かこの会話、中学のときにもした気がする」
「そうだったか? よくそんな昔のこと覚えてるな」
優生はよく兄弟がいることへの憧れを口にしていた。昔は口煩い姉が実家にいたが、全員結婚して出て行ってしまったため、今なら優生の気持ちがほんの少し分かる気がする。
「まあ、これからこういう集まりもあるだろうし、よかったな。頻繁に会ってたら嫌になるかもだけど」
「ならないよ。基城のご家族は全員素敵な人だし」
そう言う優生の横顔はどこか寂しげだった。ふいに基城のスマホに姉から連絡が入る。出発は三〇分後という内容だった。
日陰とはいえ、三〇分も同じ場所にいたら熱中症になりそうだ。基城は浜辺へ続く階段を降りて、白い砂浜へ足をついた。スニーカー越しでも砂の熱気が伝わる。
遠くから見るよりも、水は透き通っていて、ほのかに青に澄んでいる。冷たさに期待して、基城はスニーカーと靴下を脱いだ。
慌てて後ろから優生がやって来る。
「入るの?」
「足だけな。水着持ってくればよかったなー。て言っても実家だけど。優生、一緒に入ろうぜ」
基城が誘うと、優生も靴を脱いだ。予想通り、温度はちょうどよく、冷たい感触が足から全身に伝わる。不思議なことに、上半身にかいていた汗も乾いていく気がした。
「琴音達がいたらこうやって入れないだろ? あいつら絶対沖のほうに流されそうだし」
「だね」
優生が今朝よりも浮かない顔をずっとしているので、基城は両手に掬った海水を身体に目掛けてかけてやった。優生は身を翻して、それをほとんどかわした。
「なにっ?」
「何となく元気なさそうに見えたから! 夏バテかなーって思って。涼しくしてやってるのに!」
優生は大柄の部類に入るのに、身のこなしは軽い。それでもしつこく追いかけて、ばしゃばしゃと水をかけてやる。足をついた先が思ったより砂が柔らかく、体重をかけるとずるずると沈む。基城は前のめりになり、そのまま転びそうになった。
「ママ……というよりは、基城の友達かな?」
長女の三歳の娘──琴音は基城のほうを見た。チャイルドシートに座った琴音は、腕を組んで不思議そうに首を傾けた。
「ぜんぜんタイプがちがいましゅね」
──この、クソガ……。
と、言いそうになってきつく飲み込んだ。言葉を喋りだす前は、基城も姪っ子を溺愛していたが、保育園に入ってからは口も達者になり、可愛さの欠片もなくなった。
琴音は女王様のように、紙パックのジュースを持って、ストローの差し口をとんとんと指差した。飲めるようにしろ、と甘えているのだ。
優生は指示通りにストローを差して、ジュースを差し出す。
「もときはあんまりしっかりしてないので、ゆーせーよろしくおねがいしましゅ」
「うん。こちらこそよろしくお願いします」
「そこはよろしくしなくていいっ!」
基城は軽く優生の肩を叩いた。
「こーら。呼び捨てにしない。優生じゃなくて優生お兄ちゃんでしょ?」
「俺はいいのかよ!?」
「基城は基城で覚えちゃったもん」
琴音はすぐに「優生お兄ちゃん」と呼び方を改める。優生は姪っ子達に人気ですぐに打ち解けていった。
高速を通った後は単調な景色が続き、基城は早起きした分の睡眠を取り戻すように、車内で眠っていた。姉と姪、そして優生に起こされたときには、もうすでに時刻は昼過ぎだった。
パーキングエリアで休憩をかねて昼食をとることになった。海沿いのパーキングエリアは道の駅とも繋がっており、基城と同じように夏休み中の家族客がたくさんいる。
都会とは違い、潮風が常に吹いているので気持ちいい。真夏だが、からっとした風のおかげで過ごしやすい。
基城と優生は休息を取る姉達に代わり、姪達の面倒を見ることになった。瞳の子供は三歳と一歳、文香の子供は二歳の双子だ。美奈はまだ歩けない乳児を抱いている。
一時間もしないうちに、先に基城のほうが追いかけっこでバテてしまい、日陰に移動した。優生の足には双子がそれぞれ抱きついて、琴音とその妹の詩が優生の周りをくるくると回っている。
芝生の上で尻もちをついた優生を、基城は思い切り笑い飛ばした。
「基城、サボらないでこっち来て」
「無理、俺はもうギブ」
基城は座りながら手をひらひらと振った。それでも優生に名前を呼ばれるので、基城は水を一口飲んだ後、戻ることにした。
しばらく遊んでいると、子供達は飽きたのか、姉達の元へ走っていった。一人ならまだしも、四人だとさすがに体力がもたない。
「はぁー……疲れた!」
「子供って元気だよね」
「前会ったときは琴音しか歩けなかったのに。夜は優生が面倒見ろよ」
基城がそう言うと、優生は何も言わず困ったような、嬉しそうな……曖昧な表情をした。
「でも姉妹がいるっていいよね。賑やかで楽しそう。基城もお姉さんがいるし」
「そうかぁ? ああ、優生は一人っ子だもんな」
「……うん」
神妙な面持ちで返事をするので、基城も言葉に詰まってしまった。遠くの海を見つめる優生の背中を、強く叩いた。
「あんな姉ちゃん一人でも大変なのに、三人もいたら地獄だぞ。欲しかったら優生に三人ともやるよ」
「……何かこの会話、中学のときにもした気がする」
「そうだったか? よくそんな昔のこと覚えてるな」
優生はよく兄弟がいることへの憧れを口にしていた。昔は口煩い姉が実家にいたが、全員結婚して出て行ってしまったため、今なら優生の気持ちがほんの少し分かる気がする。
「まあ、これからこういう集まりもあるだろうし、よかったな。頻繁に会ってたら嫌になるかもだけど」
「ならないよ。基城のご家族は全員素敵な人だし」
そう言う優生の横顔はどこか寂しげだった。ふいに基城のスマホに姉から連絡が入る。出発は三〇分後という内容だった。
日陰とはいえ、三〇分も同じ場所にいたら熱中症になりそうだ。基城は浜辺へ続く階段を降りて、白い砂浜へ足をついた。スニーカー越しでも砂の熱気が伝わる。
遠くから見るよりも、水は透き通っていて、ほのかに青に澄んでいる。冷たさに期待して、基城はスニーカーと靴下を脱いだ。
慌てて後ろから優生がやって来る。
「入るの?」
「足だけな。水着持ってくればよかったなー。て言っても実家だけど。優生、一緒に入ろうぜ」
基城が誘うと、優生も靴を脱いだ。予想通り、温度はちょうどよく、冷たい感触が足から全身に伝わる。不思議なことに、上半身にかいていた汗も乾いていく気がした。
「琴音達がいたらこうやって入れないだろ? あいつら絶対沖のほうに流されそうだし」
「だね」
優生が今朝よりも浮かない顔をずっとしているので、基城は両手に掬った海水を身体に目掛けてかけてやった。優生は身を翻して、それをほとんどかわした。
「なにっ?」
「何となく元気なさそうに見えたから! 夏バテかなーって思って。涼しくしてやってるのに!」
優生は大柄の部類に入るのに、身のこなしは軽い。それでもしつこく追いかけて、ばしゃばしゃと水をかけてやる。足をついた先が思ったより砂が柔らかく、体重をかけるとずるずると沈む。基城は前のめりになり、そのまま転びそうになった。
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