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【4話】これが愛?
神崎家族とキャンプ1
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期末考査が終わり、結果が続々と返ってくる頃。基城はほとんどを涼しい自宅で過ごしていた。テストの解放感でぱーっと遊びに行ったのは最初の数日で、大学の友人達はバイトに明け暮れたり実家に帰省したりで、基城とは違って予定がある。
優生もアルバイトはしておらず、実家からの仕送りのみで暮らしている。
落単こそしなかったものの、成績はどれも基城よりも優生のほうが上だった。高校くらいまでは何かにつけて優生をライバル視していたが惨敗し、大学からは特に気にも留めなくなった。
だから別に、自分よりも優秀な成績を修めていようがどうだっていいはずなのだが──。
テストが終わったばかりだというのに、浮かれることなく、優生はちまちまと問題集を進めている。時々、家を出て、カフェや大学で勉強しているようだ。
「なー、何してんの」
「勉強」
「それは分かってるけど……簿記?」
「九月過ぎまで休みだし、何か将来に役立つものをと思って。うちの大学、勧めてるし結構取る人多いよ」
「うわぁ……意識たかっ」
基城は一歩退いてしまう。問題集には付箋やマーカーが引かれていて、結構やり込んでいるのが見て取れた。
しばらくごろごろしていると、眠気が襲ってくる。実家にいるときは休みの間は昼夜逆転していることも珍しくなく、食事も好きなときにとっていた。
しかし、同棲生活を始めてからは、料理担当の優生が規則正しい時間通りにしか食事をつくらないので、基城もしぶしぶそれに合わせている。
それでも怠惰な生活からは完全には脱却できておらず、オフの日は昼寝を挟んでいる。涼しい部屋で本を捲る音を聞きながら、基城は目を閉じる。
後少しで眠れそうなところで、基城のスマホに着信が入った。ディスプレイに映し出されているのは、三つ子の次女──文香の名前だった。
気付かなかったふりをしてかけ直そうか……と、考えたが、着信拒否のボタンを押したら後が怖いので、基城は応答ボタンをスライドさせる。
「……もしもし?」
『基城、今家にいるの?』
「あーそうだけど。何か用?」
『どうせ寝てたんでしょ。起きたばっかりの声してる。学生は休みがたくさんあって羨ましいわー』
姉も三人大学に進学して同じように夏期休暇があったはずなのに。と、基城は心の中で、思ってはいても口には出さない。二〇年間、三人の姉達と暮らして得た教訓だ。
『明日と明後日、予定ある?』
「ないけど」
『優生くんも?』
「聞いてみる。ゆーせー。姉ちゃんが明日と明後日予定何かあるかって聞いてる」
優生は「ない」と答えた。返事は向こうに聞こえていたようだ。文香は話を続ける。
『よかったー。私達、キャンプに行くんだけど、あんた達も来るわよね?』
「はっ……? キャンプ?」
どこからその話に繋がったのか。基城と優生の予定が埋まってないことをいいことに、文香は話を進める。
「行くとか言ってないけど……」
『瞳と美奈も子供連れて来るのよ? 基城と優生くんも新婚なんだからいらっしゃい』
「いや、だから! 優生とはまだ夫婦じゃねぇって!」
『まだ?』
言葉尻をとらえた姉が基城に問いかける。電話口の向こうで、きっとにやにやしているに違いない。文香は「後で詳細を送る」とだけ言って通話を切った。
基城は深く長い溜め息を吐いて、近くにあったクッションを軽く拳で殴った。
「……大体分かったか?」
「ああ……うん。明日からキャンプに行く、で合ってる?」
「ありえねぇ……」
姉……いや、姉達の突発的な行動には、いつも頭を悩ませる。ああだこうだ言っても仕方ない。基城と優生は二人で手分けしながら、キャンプに持っていく荷物や着替えを纏めた。
……────。
翌日。基城は朝五時に叩き起こされた。優生が朝食を用意してくれていたが、食べる時間はなく、半分眠りながら姉が運転してきた車に乗り込んだ。
文香の夫にコテージを所有している知人がいるため、まるまる一棟を貸してもらったという話だった。食事やシャワー、寝室も用意してもらえるそうなので、基城達の荷物は着替えのみでボストンバッグ一つに収まった。
「文香姉ちゃん、大型の免許持ってたっけ……?」
「仕事で必要だから取ったの」
文香は一〇人乗りの大型車を、容易く乗りこなしている。基城の母親に押しつけられた、数億円の負債を抱えた酒蔵の息子が、今の文香の夫である。
今や酒蔵の代表を務める文香だが、新しい販路を探す際には自ら酒を車に積んで、各地を回っている。
数十軒と回る際には、トラックで酒を運ぶのだという。
「すみません、乗せてもらって」
優生がぺこりと頭を下げる。
優生とは両家の顔合わせ以来だ。姉達は一トーン高い声で、優しく返事をした。
「いいのいいの、そんなに緊張しないで」
「優生くん。喉渇いてない? パーキングエリア寄るから好きなもの何でも買ってね」
「急に誘ってごめんなさいね。遠慮なく寝てていいからね」
──何だこの俺との態度の差は……!?
姉の子供達も、優生のことが物珍しいのか遠巻きに様子を伺っていたが、姉の知人だと分かると親しく話しかけてきた。
優生もアルバイトはしておらず、実家からの仕送りのみで暮らしている。
落単こそしなかったものの、成績はどれも基城よりも優生のほうが上だった。高校くらいまでは何かにつけて優生をライバル視していたが惨敗し、大学からは特に気にも留めなくなった。
だから別に、自分よりも優秀な成績を修めていようがどうだっていいはずなのだが──。
テストが終わったばかりだというのに、浮かれることなく、優生はちまちまと問題集を進めている。時々、家を出て、カフェや大学で勉強しているようだ。
「なー、何してんの」
「勉強」
「それは分かってるけど……簿記?」
「九月過ぎまで休みだし、何か将来に役立つものをと思って。うちの大学、勧めてるし結構取る人多いよ」
「うわぁ……意識たかっ」
基城は一歩退いてしまう。問題集には付箋やマーカーが引かれていて、結構やり込んでいるのが見て取れた。
しばらくごろごろしていると、眠気が襲ってくる。実家にいるときは休みの間は昼夜逆転していることも珍しくなく、食事も好きなときにとっていた。
しかし、同棲生活を始めてからは、料理担当の優生が規則正しい時間通りにしか食事をつくらないので、基城もしぶしぶそれに合わせている。
それでも怠惰な生活からは完全には脱却できておらず、オフの日は昼寝を挟んでいる。涼しい部屋で本を捲る音を聞きながら、基城は目を閉じる。
後少しで眠れそうなところで、基城のスマホに着信が入った。ディスプレイに映し出されているのは、三つ子の次女──文香の名前だった。
気付かなかったふりをしてかけ直そうか……と、考えたが、着信拒否のボタンを押したら後が怖いので、基城は応答ボタンをスライドさせる。
「……もしもし?」
『基城、今家にいるの?』
「あーそうだけど。何か用?」
『どうせ寝てたんでしょ。起きたばっかりの声してる。学生は休みがたくさんあって羨ましいわー』
姉も三人大学に進学して同じように夏期休暇があったはずなのに。と、基城は心の中で、思ってはいても口には出さない。二〇年間、三人の姉達と暮らして得た教訓だ。
『明日と明後日、予定ある?』
「ないけど」
『優生くんも?』
「聞いてみる。ゆーせー。姉ちゃんが明日と明後日予定何かあるかって聞いてる」
優生は「ない」と答えた。返事は向こうに聞こえていたようだ。文香は話を続ける。
『よかったー。私達、キャンプに行くんだけど、あんた達も来るわよね?』
「はっ……? キャンプ?」
どこからその話に繋がったのか。基城と優生の予定が埋まってないことをいいことに、文香は話を進める。
「行くとか言ってないけど……」
『瞳と美奈も子供連れて来るのよ? 基城と優生くんも新婚なんだからいらっしゃい』
「いや、だから! 優生とはまだ夫婦じゃねぇって!」
『まだ?』
言葉尻をとらえた姉が基城に問いかける。電話口の向こうで、きっとにやにやしているに違いない。文香は「後で詳細を送る」とだけ言って通話を切った。
基城は深く長い溜め息を吐いて、近くにあったクッションを軽く拳で殴った。
「……大体分かったか?」
「ああ……うん。明日からキャンプに行く、で合ってる?」
「ありえねぇ……」
姉……いや、姉達の突発的な行動には、いつも頭を悩ませる。ああだこうだ言っても仕方ない。基城と優生は二人で手分けしながら、キャンプに持っていく荷物や着替えを纏めた。
……────。
翌日。基城は朝五時に叩き起こされた。優生が朝食を用意してくれていたが、食べる時間はなく、半分眠りながら姉が運転してきた車に乗り込んだ。
文香の夫にコテージを所有している知人がいるため、まるまる一棟を貸してもらったという話だった。食事やシャワー、寝室も用意してもらえるそうなので、基城達の荷物は着替えのみでボストンバッグ一つに収まった。
「文香姉ちゃん、大型の免許持ってたっけ……?」
「仕事で必要だから取ったの」
文香は一〇人乗りの大型車を、容易く乗りこなしている。基城の母親に押しつけられた、数億円の負債を抱えた酒蔵の息子が、今の文香の夫である。
今や酒蔵の代表を務める文香だが、新しい販路を探す際には自ら酒を車に積んで、各地を回っている。
数十軒と回る際には、トラックで酒を運ぶのだという。
「すみません、乗せてもらって」
優生がぺこりと頭を下げる。
優生とは両家の顔合わせ以来だ。姉達は一トーン高い声で、優しく返事をした。
「いいのいいの、そんなに緊張しないで」
「優生くん。喉渇いてない? パーキングエリア寄るから好きなもの何でも買ってね」
「急に誘ってごめんなさいね。遠慮なく寝てていいからね」
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